ファスト・カジュアルで必要不可欠な食のトレンド
最近ハンバーガー業態や特にチキンバーガーに参入する企業は多いのですが、トリキバーガーのように海外展開を考える意味では、日本の外食産業に影響の強い米国の食トレンドを正確に把握する必要があります。
<1>SDG’S
米国では蛋白質として牛肉を好みます。その牛にもSDGSの観点が必要です。顧客は環境にやさしい牛肉(サステイナイリビティ・ビーフ)sustainable beefを求めています。
http://nrn.com/nra-show/meeting-consumer-demand-sustainable-beef
通常の牛はトウモロコシなどに動物性蛋白質を混ぜた濃厚飼料で育てます(肉質が良く育成が速いので)。しかし、顧客は環境にやさしく育てた牛肉を求め始めています。環境にやさしいとは無農薬の牧草(grass-fed)で健康的な放し飼いで育てた牛(sustainably produced beef)を別にオーガニックビーフと言います。マクドナルドも長年秘密裏に取り組んでいますが困難にぶつかっています。マックは1989年に, 南米の熱帯雨林からの牛肉を調達しないと発表しました。2014年には Sustainable Beef検討会に参加しています。( Global Roundtable for Sustainable Beef) しかしその歩みは遅々として進みません。大きな理由はスケールと定義が不明確なためです。
さらに、一般的な牛飼育では病気にならないように抗生物質を与え、早く大きく育つように成長ホルモン剤を使用します。人間が使用するのと同じ抗生物質を与えると、耐性菌ができ、人間の病気治療に悪影響を与えます。また、成長ホルモン剤が残留した牛肉や乳製品を食べると、子供の成育が異常に早くなるという問題も生じます。
圧力グループには、CALPIRG Education Fund、Friends of the Earth、Center for Food Safety、Consumers Union、ブロガー/活動家のVani Hari(Food Babeとして知られる)などが含まれます。保健当局は、家畜における抗生物質の日常的な使用が抗生物質耐性菌の増加に寄与しており、 年間約23,000人のアメリカ人を殺していると推定しています。連邦規制は、混雑した飼育条件によって引き起こされる病気を防ぐ手段として、低用量の抗生物質の使用を許可しています。
CALPIRG Education Fund HP
https://calpirgedfund.org/
Center for Food Safety HP
https://www.centerforfoodsafety.org/issues/302/animal-cloning/press-releases/4962/consumer-coalition-calls-on-in-n-out-burger-to-fulfill-promise-to-reduce-antibiotics-use-in-beef
Consumers Union HP
https://www.consumerreports.org/cro/index.htm
カリフォルニア州は家畜への抗生物質の使用を制限する 法律を採択しましたが、それらの規則は2018年1月1日まで発効しませんでした。
マクドナルドは鶏肉に抗生物質を使用するためのタイムラインを設定しましたが、ハマーシュラグ氏は、連立が今春、牛肉と豚肉で同様の立場を取るようにハンバーガーチェーンを推進する株主決議を支持していると述べました。同様の株主決議は、ウェンディーズとバーガーキングの年次総会でも提案されるそうです。
一方、Subwayは、鶏肉は4月までに通常の抗生物質の使用をやめると述べ、すべての肉での抗生物質の使用をやめると約束しました。
Pizza Hut は保存剤と抗生物質不使用に取り組ンでいます。
チポトレメキシカングリル、シェイクシャック、パパジョンズ、チックフィレイ、パネラブレッドなど、他のチェーンは抗生物質を使わないと宣伝しています。
カリフォルニア州は家畜に抗生物質を与え続けることを禁止にします。
消費者は,低価格だけではなくより安全で健康的で環境に優しい外食を求めるようになっているのです。
健康的な食材が売り物のファストカジュアルFast-casualチェーンの チポトリChipotle Mexican Grill(メキシコ料理)を例に紹介しましょう。注文カウンターの前に立つと、目の前に料理が並んでおり、希望の食材を言うと組み合わせてくれます。目の上のメニューボードには使っている食材のこだわりを訴えているのです。
鳥
放し飼いで、抗生物質を投与していません、餌は動物性タンパク質を含んでいません。
豚
ストレスがないように広い場所で放し飼いで、抗生物質を与えていません。
牛
餌に抗生物質や成長ホルモンを混ぜていません。
乳製品
地元の農場から調達し、乳牛の食べる牧草には農薬(BHCベンゼンヘキサクロリド)を散布していません。
野菜
無農薬の旬の野菜を地元で調達しています。
と健康的であることを訴えているのです。
オーガニックやSDGSの考え方は魚でもあります。サーモンの場合、養殖でなく天然ものですが、その採取の方法が、一本釣りでないといけないのです。大きな網でとると食べられない小さな魚も取り、天然資源の枯渇につながるからです。
< 2>塩分規制
塩分は高血圧の大きな原因であり、肥満と重なると心臓に大きな負担を与えます。ニューヨーク州ではNY塩分規制の法制化が進んでいます。
http://nrn.com/government/ny-judge-grants-restraining-order-salt-law?NL=NRN-02_&Issue=NRN-02__20160301_NRN-02__194&sfvc4enews=42&cl=article_1_1&elqTrack=true
<3>炭酸飲料規制
子供の肥満の大きな原因であり、砂糖分の含んだ炭酸飲料の規制が進んでいます。
<4>栄養 オバマ大統領夫人ミシェルの活動
前大統領夫人のオバマ・ミシェルさんはホワイトハウスに家庭菜園を設け、子供たちの栄養問題に取り組んでいました。このころより、米国で子供の肥満対策が大きくクローズアップしています。
<政府栄養指針が5年前よりだされています。>
現在PDF
https://www.dietaryguidelines.gov/sites/default/files/2020-12/Dietary_Guidelines_for_Americans_2020-2025.pdf
5年前HP
https://www.dietaryguidelines.gov/
連邦政府が最近発表した新しい食事ガイドラインは、消費者がすでにある程度食事に加え始めている変更を反映しており、短期的には変更される可能性は低いものの、国の食事パターンに長期的な影響を与える可能性があります。ガイドラインは、米国農務省と保健福祉省によって5年ごとに発行されます。2015-2020レポートのリリースは延期され、今月まで発行されませんでした。
いつものように、ガイドラインは果物、野菜、全粒穀物、赤身の肉の消費量を増やし、飽和脂肪の消費量を減らすことを推奨しています。また、1日のカロリー摂取量の10パーセント以下が砂糖の添加によるものであるべきだと述べました。食事中のコレステロールの300ミリグラムの制限を取り除き、代わりに人々はそれをできるだけ少なく食べるべきだとしています。
ガイドラインはまた、男性と10代の男性は、肉、鶏肉、卵を少なく食べ、代わり に、食事で野菜やその他の食品を多く摂取することを推奨しました。
これらの制限にもかかわらず、ガイドラインは初めて、バランスの取れた食事を確保するために、個々の食品の追加または削除に焦点を当てず、全体的な食事パターンをよりよく考えることの重要性を強調しました。
「これらのガイドラインは…健康的な食事パターンは厳格な処方箋ではなく、個人、文化、伝統的な好みに合った、予算内に収まる食品を楽しむことができる適応可能なフレームワークであるという考えを具体化しています」とガイドラインは述べています。 。
多くのアメリカ人は、代替の甘味料、全粒穀物、果物、野菜に移行する一方で、特定の食品ではなく、全体的な構成に重点を置いているとカルト氏は述べています。
全粒穀物とマメ科植物は、「ヒップでカリカリのグラノーラベジタリアンレストラン」から、新しいファストカジュアルのコンセプト、さらには大衆文化の一部であるレストランへと移行しているのです。たとえば、Chick-fil-Aは最近、メニューからコールスローを削除すると発表し、ケール、ブロッコリーニ、ドライフルーツ、ナッツを使ったスーパーフードサイドを導入しました。
シカゴに本拠を置く消費者調査会社NPDGroupは、砂糖の制限も消費者のパターンを反映していると指摘しました。
「全体として、米国の消費者は砂糖が彼らの食事療法で避けようとしている一番のアイテムであることを示しました」とNPDは最近のリリースで言いました。
ガイドラインのコレステロール制限の重要性の低下は消費者の態度にも反映されているとNPDは述べ、食品のコレステロール含有量に対する懸念は2006年以降減少していると述べた。
Kalt氏は、FDAガイドラインは消費者の傾向を反映しているものの、「[ガイドライン]が広範な波及効果を生み出すかどうかは考えにくい」と述べています。
New York Timesによると、これらのガイドラインには法的効力はありませんが、学校給食で提供される食糧に影響を与える傾向があり、貧困層の食糧援助プログラムにも影響を与える可能性があります。
<5>トランス脂肪酸
米国で大きな問題になっているのはトランス脂肪酸だ。牛や豚の油を精製するヘッドやラード、牛乳から作るバターなどの食用油はコレステロールが堆積しやすく心臓病などの原因になると言うことで、植物油に水素添加して製造されたマーガリンやショートニング(揚げ油)が広く普及している。しかし最近、その水素添加した植物油は危険だと言う研究結果が出て、プラスチック食品だと言う表現で、欧米ではトランス脂肪酸の食品への含有量を表示するような規制が出されるようになった。
米国でもその動きが加速し、2006年1月には食品に含まれるトランス脂肪酸の量を表示するように義務付けられ、ニューヨーク市ではレストランなどでのトランス脂肪酸を多く含む油の使用禁止条例が可決され、シカゴ市などにその動きが広がるなど米国全体で規制の方向にある。水素添加した植物油は揚げ油だけでなく、マーガリン、ショートニングを多用するケーキ、クッキー、パン、カレーなどの加工食品、に幅広く使用されており、総合的に見ると日本人もかなりのトランス脂肪酸を摂取していると見られる。
<6>ノロウイルスや、o-157、サルモネラ
以前は、牛豚鳥などに細菌やウイルスが付着して、よく加熱しないといけないと言われていました。しかし、最近は生食の野菜にそれらの菌やウイルスが付着して、大きな問題となっています。ファストカジュアル最大手のチポトリは数年前に3年ほど苦しみました。
<7>グルテンフリー
グルテンとは、小麦や大麦、ライ麦といった穀物に含まれるたんぱく質のことを指します。小麦などの穀物を食べると息切れやめまいといった不調を起こすアレルギー体質の人びとの間で “グルテンフリー“という言葉は以前から知られていました。グルテンをとらないことで「自然に体重が落ちた」とダイエット効果をうたわれています。
グルテンには、食欲をコントロールする中枢神経を刺激する作用があるため、摂取すると食欲がアップ。だからグルテンを摂らないことで食欲が抑えられ、結果的にインスリンの過剰な分泌が防げるため太りにくくなるわけです。また、炭水化物の含有量の多い小麦などに含まれる糖質の摂取も自然に抑えられ、脂肪の元を血中にたくさん送り込むことを防ぎます。
1800万人の米国人はグルテンにアレルギー反応があります。Chick-fil-Aはいち早く
gluten-free bunを使用始めています。
https://alishan-organics.com/blog/post/2020/03/27/3234/
<8>アトキンスダイエット
モスバーガーの匠レタスのような糖質ゼロの食べ方が人気です。例えばアウトバックステーキハウスで提供する、ステーキサラダやチキンサラダはアトキンスダイエット対応です。
<9>宗教 イスラムのハラルフード、ユダヤ向けのコーシャフード
イスラム教とユダヤ教は、中近東に同じく起源をもち、食事に対する宗教上の規制が強いのです。両宗教とも不衛生な豚は禁止です。人口の多いインドのヒンズー教徒は、牛を食べません。宗教の規制を受けない動物性蛋白質は、鳥と羊です。日本では東南アジアに多いイスラム教徒の影響で、ハラル食品が良く知られていますが、数が少ないユダヤ教徒は米国では富裕で存在感が大きいのです。ユダヤ民族は国を追われ、イスラエルを建国し、中近東の火種となっています。迫害され、米国に逃れてきたユダヤ教徒は、自分たちの住める街を作りました。それがロサンゼルスに隣接したハリウッドです。ハリウッドに多い映画関係者の多くがユダヤ教徒です。ユダヤ教徒は迫害され、国をさまよっているので独特の職業を持っています。どこの国でも生計を立てられる職業の、会計士、弁護士、研究者、等が多いのです。ビジネスでは換金性の高い、高価な貴金属や、宝石(特にダイヤモンド)、毛皮、食肉(特に牛肉)を扱います。また国際間の輸出入を扱う貿易商が多いですね。石油業や金融業も多いですね。
その富裕なユダヤ人の多いハリウッドでは、映画の祭典が開かれます。その多くはハリウッドのヒルトンホテル行われます。10数年前までハリウッドヒルトンに杉浦総料理長がいたので、親しくなり、5回ほど宿泊し、勉強させてもらいました。厨房を見学したら、ある大型のウオークイン冷凍冷蔵庫に厳重な封をしたカギがかけられていました。敬虔なユダヤ人の食べる料理は、ユダヤ人司祭のラビが管理、調理したものでないといけないのです。その食材の取り扱いはラビしかできないのです、
ハリウッドの映画の祭典は面白いのです。米国人のほかに多くのユダヤ人が参加しますが、映画に出資するオイルマネーで豊かな中近東のイスラム人大族も多いのです。ですから、料理はハラルもコーシャフードも出さないといけないのです。
<10>禁酒
清教徒が作った米国のキリスト教徒は厳格な戒律があり、お酒の販売だけでなく、レストランで提供する場合もリカーライセンスが必要です。リカーライセンスの審査は厳しく、経営者の犯罪歴、納税歴、マフィアとの関係などをチェックされます。
<11>ベジタリアンとビーガン
米国では健康志向のベジタリアンが多いのですが、動物性たんぱくの玉子や乳製品もとらない、ビーガンもあり対応が必要です。
<12>動物愛護。アニマルウエルフェアー
フォアグラ、北京ダック、チョウザメなどの高級食品は、飼育や採取方法などに残酷な問題があり、米国の州によっては販売禁止です。
アニマルウェルフェアは「動物の生活と死に関わる環境と動物の身体的・心的状態」と定義され、アニマルウェルフェアを考える上での指針として、下記5つの自由を国際獣疾事務局(OIE)は提示しています。
1. 飢え、渇き、栄養不良からの自由
2. 恐怖、苦悩からの自由
3. 物理的、熱の不快さからの自由
4. 苦痛、傷害、疾病からの自由
5. 通常の行動様式を発現する自由
この考え方によれば、牛豚鳥は狭い日の当たらないケージで育てるのでなく、健康的な放し飼いで飼育しないといけません。また、屠殺も苦しまないようにしなければならないのです。
日本の捕鯨に対して欧米では批判的で、環境問題抗議団体のグリーンピースが問題です。種の保存もあるのですが、時間をかけて苦しませる捕鯨方法が残酷だとしているのです。
農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/chikusan/sinko/animal_welfare.html
玉子肉、生協パルシステム
https://kokocara.pal-system.co.jp/2021/04/30/animal-welfare/
Animal Welfare Food Community Japan
https://awfc.jp/about/about-awfc/
公益社団法人 畜産技術協会
http://jlta.lin.gr.jp/report/animalwelfare/
フォアグラ販売中止運動 – 日本食糧新聞電子版
https://news.nissyoku.co.jp/column/takeda20210612
フォアグラ、ヴィーガンの情報サイト
https://www.hopeforanimals.org/foiegras/218/
以上、まだほかにもいろいろな食に関する規制や枠組みがあるので、そのトレンドを把握しないと、世界進出は難しいですね。
この食トレンド問題はファスト・カジュアル各社のHPを見ましょう。
終わり