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運営部長、統括SVのための実力養成講座
第11回
「統括svのリーダーシップ」


筆者は店長、SV、統括SVとキャリアを積んでいったわけだが、昇進の度に、「どんな風にして部下を指導して行ったらよいのだろうか?部下に信頼され、上司として尊敬されるにはどうすればよいのか?」と悩み続けてきた。昇進したての時には必ず部下と競争して疲れてしまうのが常であった。統括SVに昇進した際には、その仕事の範囲と責任に戸惑うばかりだった。当時のマクドナルドには統括SV用のトレーニングカリキュラムや研修コースは用意されていなかったから、失敗を通じて、独学で学ばなければならなかった。統括SVは部下にSVを6名、SVは店長を5名、店長はアシスタントマネージャー4名を管理下に置いている。合計156名の社員を管理する。アルバイトまで入れると2000名近い部下を持つわけだ。統括SVに要求される能力は、SV時代のようなQSCのポリス(監視員)ではない。SV時代は店長を率いるために店長よりも優れたQSCを維持できるフロアーコントロールの能力やトレーニング能力を誇示する必要があった。店長が不在で店舗を訪問した際に、忙しくて人手が不足したり、予測以上の売り上げで混乱しているときには、店舗に飛び込み見事に切り回すという現場の能力が必要だった。

統括SVに必要なのはそんな体力だけではない(必要とあれば、レジでの販売でもハンバーガーの製造でも、清掃でも何でも出来ないと行けないのは勿論だが)。一番必要な能力は強烈なリーダーシップだ。SVまでのリーダーシップは身体で表現できるが、2000人の部下をコントロールするには頭脳面でリーダーシップを発揮しなくては行けない。この統括SVについていったら間違いないのだという信頼感を生み出すことが重要だ。

マクドナルドの統括SVを評価するのは数字だ。QSCや人物金の管理が上手だと言っても上司は誉めてくれない。冷たく「それで売り上げの前年比の伸びは?利益の伸びは?」と聞かれるだけだ。途中経過は評価されない、結果だけなのだ。統括SVは結果を出さないといけないから、利益であれば数字で、人材育成であれば上司や他の統括SVやSVの面前でそれを実証する。

1店舗1店舗の数字ではなく、エリア全体の数字の責任を負っているわけだから、それを達成するためには1年以上の入念な準備が必要だ。筆者の統括SV時代は店舗数158店舗から500店舗の時代であり、毎年10店舗以上開店している時代だった。統括が5人の時代だったから、各統括あたり10店舗を開店しなくてはならない。そうすると店長が10名、アシスタントマネージャーが40名、合計50名の新規採用をしなくてはいけない。また、当時は未だ福利厚生や労働条件が良くない時代であり、会社も将来性がまだ不透明で、退職率は年間30%(退職人数を在籍人数で割ったもの)にも達していた。と言うことは150人の社員がいるから45人は辞めるわけだ。さらに、SVが2名は必要だから、合計で97名の新規採用が必要だ。ほぼ65%が新しくなる勘定だ。こんな人数を短期間でトレーニングすることは出来ない。1年前から新規開店を予測し、SV、店長、アシスタントマネージャー、新人、の教育を計画的に実行しなくては行けない。採用もそうだ。開店して人手が不足すれば人事部が採用してくれるだろうと口を開けて待っていてもしょうがない。人手が不足して店舗のQSCが低下し、利益が減少すればその全責任は統括SVにあるからだ。人材が不足すればアルバイトから昇格させたり、競合のファーストフードやファミリーレストランに言ってスカウトをすることもしなければいけない。

単に体力勝負の行き方では行けないと言うことがおわかりいただけるだろう。マクドナルドの統括SVは体力も勿論だが頭脳をフル回転で働かさなくてはならない。部下にかなりの無理を言ってもついてこさせるだけのリーダーシップがないと行けない。道を前進している際に二又の交差点にさしかかったら、右左どちらに行こうかと迷っていては部下はついてこない、即座に正しい決断を下せないと信頼されないのだ。

統括SVが部下から信頼されるようになるには決断力と共に、実績が第一だ。店舗単位ではなくエリアとしての実績だ。実績とは売り上げ、利益、人材育成だ。個々の店舗では売り上げと利益の伸びが凸凹していても、統括SVエリアとして30店舗もまとまると数字の傾向が明らかになる。SV単位の損益計算書は造っていないが、統括SVのの損益計算書と売り上げ日報、MOR(月次報告)はあるので、それを見れば何をしているかが明らかになる。売り上げを伸ばすのか、経費を削減するのか、経費でも人件費はどうなのか、原材料費、水道光熱費はどうなっているか、統括エリアで見ていくと傾向値は明らかで、何をしていたか説明しなくてもわかってしまう。上司は統括SVに何も言う必要はない。損益計算書を見たか?と言えば終わりだ。

統括エリアとして損益計算書に反映するには傘下の店が同じ目標を持って活動するようにしないと行けない。統括エリアの目標を明確に打ち出し、それを達成するためには毎月、毎週、具体的にどのように仕事に取り組むかと言う実現達成可能な活動計画を立てる。言葉だけで頑張ろうではなく、各SV、店長の業務を詳細に定めて行くわけだ。必要なら投資をして、ハード面でも対応したり、店長や社員の知識が不足すれば勉強会を開いたりする。他の統括エリアに比べ際だって数値を良く見せるには、肉体労働や精神論では達成できない。もっと科学的、合理的な改善が必要になる。そこで役に立つのが筆者のハードウエアーとマニュアル、プロジェクト活動等の最新の知識だ。スーパーバイザーやプロフェッサー時代に、深夜苦労して研究した成果を収穫する時が来たのだ。

もう一つの事情がある。統括SVになっても以前からのプロジェクトチームを引きずっていた。店舗の標準化や、省エネルギー店舗、洗剤の開発、調理機器開発、スタープログラム(店舗販売促進活動)、等だ。SVやプロフェッサーの頃は、プロジェクトの活動をしているだけで評価を受けたが、統括になると一転した。「君のエリアの数値はどうなんだ。プロジェクト活動とはなんだ。それで数値はどうなったんだ。」とプロジェクトの評価はしてくれない。統括エリアの数値が全てだ。そこでプロジェクトへの関与の方向を一転した。辞めるのではなく、プロジェクトの成果をいち早く取り入れて成果につなげるようにしようと言う方向転換だ。

経費削減を考えると、原材料や人件費の削減を考えやすい。両方で60%にも達する金額だからホンの数パーセント削減するだけで大きな金額となる。しかし、ホールディングタイムの切れた商品を出したり(マクドナルドでは製造したハンバーガーは10分、上げたポテトは7分経過すると廃棄処分にする)、人件費を削減すれば、一番忙しいピーク時に人が不足し、サービングタイムが長くなり、客を帰してしまい結局売り上げを低下させる原因となる。

客に迷惑をかけないで原材料費や人件費の削減をすることは可能だが、これらの削減にはPOS、オーダーリングシステム、バックオフィスの採用、が必要で、数年の年月が費やさざるを得なかった。此の詳細については別途見て見るつもりだ。

そこで、現在ある知識を使い、客に迷惑をかけないで経費を削減することを考え出したわけだ。

  1. 経費管理
    1. 照明の管理
    2. 水道光熱費の場合は、当時の技術の範囲内で合理的に無理無駄を省けば客に不快感を与えずに経費を削減することが可能だった。電気代については、店舗標準化の中で必要な照度を定め、最適な色温度の蛍光灯を採用することや、照明器具の配置、スイッチの配置を工夫することで電気代がコントロールできる。

      日中であれば、窓際の席は太陽光線で十分に明るい。窓側から離れた客席は照明が必要だが窓際は必要ない。しかし、従来の照明設計はフロアーをブロック別に分けてあるだけで外部の太陽光線をどう利用するか考えてはいない。そこで照明のブロックを窓際と中側を分けて配置し、窓側は昼間は蛍光灯を半分点灯し、夜間は全部点灯できるような配線にした。

      夜間の照明も同じだ。マクドナルドでは当時は夜間にメインテナンスのアルバイトが徹夜で清掃をしていた。客が居るときには十分な明るさの照度が必要だが、清掃をする場合には必要最低限の照明でよい。また、清掃する場所だけ明るければよいのだ。そこで、メインテナンス用の照明回路を設け、全部消しても清掃できるだけの照明を残すことにした。 もう一つの改良点は心理学だ。夜間など照明をこまめにつけたり消したりしたらよいのだが、照明のスイッチが操作しにくい奥にあると、消したりしない。そこで、人が一番通りやすい、操作のしやすいカウンターの出入り口にスイッチボードを設置し、こまめに消灯をできるようにした。

      勿論失敗もある。照明器具は太陽光線をフルに使用すればかなり節約できるが、人間に頼っていると消し忘れが発生する。そこで、全ての電源にタイマーを組み合わせ、時間帯により電源のONOFFを自動制御するシステムを開発し新店舗に導入した。最初は旨く作動したのだが、数年たち訪問してみると使用していない。停電などがあるとタイマーが狂ってしまい、それを修正するのは面倒なので操作盤のスイッチをバイパスしてしまっていた。あまり凝るよりもやはり人間を教育してこまめに清掃したりスイッチのONOFFを徹底させるほうが良いという教訓だ。

    3. エアコンディション
    4. 水道光熱費を左右するのは電気代の最も消費するのは夏冬のエアコンディショナーのコンプレッサーの駆動だ。夏場にエアコンが作動する時間を必要最小限にすればずいぶん電気代は節約できる。客席を観察してみるとフロアーの中心は涼しいのに窓際が暑いのに気がつく。窓際は太陽光線が直接照りつけると人体を温めるのでもの凄く暑く感じる。そのためにはカーテンで太陽光線を遮断するのが一番だ。しかし、普通のカーテンでは店内がくらくなってしまうし、せっかくの外観が台無しだ。外からも暗くて店内が見えないと入りづらい。そこで、プラスチックのブラインドを採用することにした。ブラインドの角度を変更すると外は見えるのに上から照りつける太陽光線を遮断することができるのだ。そこで標準仕様をブラインドに変更した。

      次に徹底したのは温度管理だ。夏場の客席の温度は26〜28°Cと決まっているが、その温度管理を徹底しないといけない。旧型の温度コントロールは精度が低く、温度差が4°C以上もあり、ノンコントロールだった。そこで、デジタルの温度計を導入し、正確な温度コントロールをすることにした。店舗巡回時は徹底して温度を確認して歩いた。

      最大のコスト削減はメインテナンスだ。以前も説明したが、空調機器はコンデンサーとエバポレーターの清掃が一番効果的だ。その清掃方法のトレーニングと、店舗訪問時に徹底してチェックをすることにより、抜群の効果を上げることが可能になった。

    5. 水道代
    6. 水道料金は機械の知識があるかないかにより大きく左右される。特に冷却機器のの知識を正しく持っていないと大幅に経費が異なる。冷却機器は簡単に言うと、コンデンサー、エバポレーター、コンプレッサー、蒸発弁、で構成されている。エバポレーターが庫内を冷却し、コンデンサーが放熱する。此のコンデンサーの冷却を空気で行うのが空冷、水で冷却するのが水冷だ。ウオークイン冷凍庫、製氷器、シェークマシン、水冷空調機器などのように夏場に大量の冷却能力が必要な場合には、空冷では間に合わないから水冷を使う。水冷の空調機器の場合には大量の水が必要なので、屋上にクーリングタワーを設置し、水を循環する。しかし、小型の水冷冷却機器の場合、冷却水をそのまま放流してしまう。水冷の場合、冷却水が多ければよいと勘違いしやすいのだが、蒸発弁におけるフレオンガスが一定の圧力になるに十分な冷却でよいので、冷却水が多すぎても効果がない。その原理を知らないと大量の水が無駄に費やされる。また、機械が古くなると節水弁が機能しなくなったり、ゴミが詰まったりして、冷却機器が停止している時でも水が流れっぱなしになる。時々は排水溝を覗いて水が無駄に流れていないかチェックが必要だし、新店舗設計の際に簡単に排水溝をチェックできるように配管図面をチェックしておくべきだ。

      また、新店舗に置いてはなるべく空冷の冷却機器を使用し、かつ、室内に放熱をしないようなリモートコンデンサーの設置が効果がある。その知識があれば、新店舗設計の際に注文を付け、最初から省水の店舗となるのだ。

      古い店舗は多くの水冷機器を使っているからしょうがないと諦めることはない。製氷器などの排水を手洗いや、シンクで使用すれば、適度な温水がでるので、水だけでなくガスの節約にもなる。そこで、製氷器から簡単に配管をして排水を使用できるように改造した。

      一番最後のポイントは評価だ。店舗から上がってくる、WOR(週報)、MOR(月報)に常に目を通し、店舗巡回の際にSVが数値を把握し、コントロールしているか?店舗マネージャーもしっかりチェックしているかを観察し、評価にしっかり反映するようにする。

      後に他の外食チェーンで節水の指導を行ったが店舗のマネージャーやSVがやりたがらないし、効果も出てこない。疑問に思って調査をしたら、立派な節水ガイドブックを制作し配布したが、その企業は肝心の評価システムを導入していなかったのだ。店長やSVが経費管理に努力したらそれに対して正しい評価をするというのが、経費削減の基本だということを理解しなくてはならないと言う教訓だ。

  2. 経費管理の成果
  3. さて、その他にガス代の節約など色々な手法があるが、それらをきちんと指導、教育、評価することにより水道光熱費の10%は客に迷惑を全くかけないで達成することが可能だ。当時の水道光熱費は売り上げ比率で5%であったから、損益計算書で言えば0.5%の経費削減となる。0.5%と言う数字はわずかに思われるが、設備や機器の寿命も延び、商品の品質も向上すると言う副次的なメリットもある。最大のメリットは店長や社員、SVが経費削減の具体的な手順をマスターすることであり、その手法を用いて他の経費も削減できるようになったということだ。

    そして、筆者の的確な知識と指導、教育、評価、でその成果がキッチリ出るので、筆者に対する信頼感は上がり、段々とリーダーとして認められるようになってきた。

    最初は筆者が自らの成果だと誇っていたが、段々、部下のSVにその成果をSV会議などで発表をさせることにした。これにより、部下のSVのやる気と自信も出すことに成功した。やる気と自信がでれば人材育成は殆ど終了だ。

  4. 統括SVの人事異動
  5. 筆者は統括SVとして1年ごとに4つの異なる地域を担当した。統括SVになり立ての地域では、まだ、リーダーシップのなんたるかを学ぶ段階であり、ホンの少しの成果が出た段階で移動になった。新しい地域に行けばその自信と手法で、スーパーSVにならないで済むからだ。

    人事異動のもう一つの必要性は、部長になる前になるべく多くの地域の社員と、状況を把握する必要があるということだ。地域により社員の傾向は異なるし、売り上げや顧客の反応も異なるから、なるべく多くの地域を担当することが役に立つわけだ。

  6. リーダーシップのあり方
  7. 筆者がリーダーシップとは何か迷ったときに何時も眺めたのが、M.T.P.(マネージメントトレーニングプログラム)のリーダーシップというガイドだった。リーダーシップのためには色々な知識や技術が必要と言うことがおわかりだろう。重要なことはリーダーシップとは観念的なことでなく、具体的な行動だと言うことだ。以下の内容全てを身につけることはなかなか出来ないが、何か一つ自分の得意な分野を身につけることだというのが筆者の経験だ。後に米国駐在員となり米国人を使う際に役に立ったのも同様な機器の知識だった。皆さんもぜひ自分の得意な分野を持っていただきたい。

効果的リーダーシップのために

以上

お断り

このシリーズで書いてある内容はあくまでも筆者の個人的な経験から書いたものであり、実際の各チェーン店の内容や、マニュアル、システムを正確に述べた物ではありません。また、筆者の個人的な記憶を元に書いておりますので事実とは異なる場合があることをご了承下さい。


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