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緊急提言

従来の常識を超えた徹底した衛生管理に着手せよ


イクラによるO157食中毒発生に寄せて

北海道別海町のイクラ製造業者の製造した「イクラの醤油漬」を食べたとされる病原性大腸菌のO157の食中毒患者は、6月22日現在、富山県17人、東京都6人、千葉県6人、神奈川県8人、大阪府1人の計38人に達しており、かなり広い範囲に及んでいる。

O157が検出された同社のイクラの醤油漬は、1997年9月15日に製造されたものであることが分かっており、すでに東京都では約3.7tが回収されている。しかし、まだ製造元からはO157が検出されておらず、感染源も明らかになってはいない。

O157はもともと牛の腸内に生息している菌であり、屠畜の際に上手に処理していないと肉についてしまう。米国ではO157による食中毒患者が増加する傾向にあり、現在その数は年間数万人に達している。

米国のO157の多くは、水から感染している。米国は農業国で、牛を飼う牧場が市街地を離れたところには数多く散在する。家畜の糞便が湖沼や川へ流れ込んだりして、O157菌がそれらの湖沼や河川に入る。沼や湖を泳いだときにその水を飲んだり、水で洗った野菜を食べたりして感染しているケースが多いようである。

今回のイクラの醤油漬によるO157の感染も、水による感染の可能性が高い。加工作業に使う地下水が厳禁処理されていなかったという。イクラは温水を使って皮をむくが、その温水はO157の繁殖に最適の温度とされる。もし温水が汚染されている場合には、O157が急速に繁殖することになる。

一昨年の堺市での食中毒事件のあおりで、カイワレ業者の数が約70%も減少したといわれている。今回の事件の場合は、ようやく上向きに転じてきた回転寿司店にとって打撃が大きい。もちろん、外食業界全体にとっても大きなマイナスである。体力の弱いところは、倒産に追い込まれてしまうことも考えられる。

水の管理を万全にせよ

O157を初めとする食中毒を防止するには、まず、水質のチェックが必要になる。飲食店は食品の衛生管理には注意するが、水の管理にはむとんちゃくの場合が多い。だが、意外と水による事件が多いのも事実である。

飲用水は年1回の水質管理が義務づけられている。また、きれいな一升瓶に水を入れて保健所に持ち込めば、検査をしてくれる。水道水などに含有するとされる塩素濃度は0.1〜0.2PPMが基準で、それ以下の場合は細菌が発生する恐れがある。

屋上の貯水タンクの場合は、フタが開いていたりかぎがかかっていないと、侵入したネズミや猫の死がいがあったり、ゴキブリが侵入することもある。したがって、貯水タンクの清掃殺菌を最低年1回は行い、かぎの破損などを徹底的にチェックするべきである。

井戸水を使う場合には、次亜塩素酸ナトリウム溶液を必要量混入する設備があるので、それを利用したほうが望ましい。その装置が正しく作動しているかをチェックするために、有効塩素キット紙が発売されているので使ってみるとよい。

次は、従業員に対する衛生管理の徹底である。これは単に保管や調理作業において食中毒の危険を意識的に取り除くといった環境づくりの意味だけではなく、より切実な理由がある。それは最近、食中毒菌の健康保菌者が多く、その人を媒介に食中毒が拡散する傾向があるからである。

例えば、サルモネラ菌の健康保菌者は、実は人口の0.03〜0.05%を占めるという調査結果がある。大腸菌の健康保菌者はサルモネラ菌と同等、あるいはそれ以上の可能性がある。

この健康保菌者からの感染を防ぐには、定期検診の検便の際にO157の項目を追加し、正社員だけでなくパート・アルバイト(P/T)にも行う必要がある。

最近では海外旅行者が増えており、その人たちから国内に食中毒菌が持ち込まれることが多い。海外旅行に行って下痢をした従業員には、自己申告をさせ、検便を行い、勤務を休ませたほうがよい。それは調理スタッフだけでなく、ホールスタッフも対象にすべきである。

もちろん、身だしなみをきちんとすることも重要である。髪の毛は短くし、調理中には必ず帽子やヘアネットを着用する。爪を短く切り、手に傷がないか確認するといったことは守らせなければならない。

料理の味見などで、おちょこやスプーンなどを使うことも忘れてはいけない。最近の料理ブームに火をつけた某テレビ番組には、多くの優れた料理人が出演しているが、彼らの中には鍋に直接指をつけて味見をしたり、レードルに口を付けてそのまま鍋に戻すなど、とんでもない行為をしている人が多い。影響のあるものだけに、厳に慎んでもらいたいものだ。

ある旅館から衛生管理の指導を依頼されたことがある。最初は調理スタッフへの衛生管理の指導を行った。しかし、その後で仲居やフロントにも衛生管理の指導を行う必要があると感じた。例えば、旅館ではお客の夜食用に客室におにぎりを持っていく。しかし、そのおにぎりは多くの場合、布団を敷くときに持っていくことが多い。中には、仲居が握るケースさえある。そして6時間ぐらい放置され、夜中にお客が食べる。これでは、いつ食中毒が起きても不思議ではない。

食品衛生責任者の資格を取得しているスタッフも安心してはいけない。食中毒や衛生管理に関する情報は、日進月歩の勢いで変化している。3年くらいしたら、再び講習を受けておいたほうがよい。

現在、各社とも教育に対する投資を抑える傾向がある。特に十分な衛生教育を行っていないところが多い。これからは衛生教育に対する投資を惜しんではならない。

以前に作成した衛生管理マニュアルや洗浄・殺菌のマニュアルは、現実に即しているか見直す必要があるだろう。そのマニュアル類はP/Aにも分かりやすい内容でなくてはならない。

3つの基本を徹底する。

食中毒対策の基本は、「つけない」「増やさない」「殺す」の3つである。

1つ目の「つけない」とは、食中毒の原因である食中毒菌を厨房に持ち込まないことである。それにはしっかりした取引先から、よい安全な食品材料を購入する必要がある。食中毒を起こした場合、原材料業者が悪いという言い訳は通用しない。特に、鶏卵や鶏肉、牛、豚、魚介類などは、食中毒の汚染の危険が高く注意しなければならない。食材の包装状態なども、汚染の少ないポーションパックものを使うなど、できるだけ汚染を少なくすることである。

仕入を行う際には、その製品加工工場の見学をしたほうがよい。製造工場の知識がなくても、見学するだけで、その会社の安全に対して取り組む姿勢がわかる。例えば、製造に携わる人間の衛生管理はどうか、ユニホームはきれいか、工場に入るときは靴を履き替え、外のゴミを持ち込まないようにしているか、手洗いをしないと工場には入れないようになっているかといったことである。

手の洗浄・殺菌にも細心の注意が必要である。厨房にはいるときに手を洗浄することは当然だが、それだけでは不十分だろう。少なくとも洗浄して除菌した後、残った細菌を殺菌することが必要になる。

一般的には石けんで手を洗い、その後塩化ペンザルコニウムなどの逆性石けんで殺菌する。塩化ペンザルコニウムは殺菌剤として広く使われているが、石けんで洗った後によく手をすすがないと殺菌効果が落ちるので、注意して扱うことが大切である。

手をいくら洗浄・殺菌しても、その後どのように水をふき取るかによって、効果が変わってくる。例えば、せっかく洗浄・殺菌しても、汚れたタオルや前掛けで手を拭けば、また細菌を付着させてしまう。だから、ペーパータオルやドライヤーを使うことである。手洗いは30分置きに行い、トイレに行ったとき、髪の毛や身体・顔などに触れたとき、床に落ちているものや汚物に触れたときなどに必ず洗浄するようにすべきである。

魚のさばき方も工夫が必要である。まず魚を3枚におろし、腸と頭を取り除く。次におろした切り身を水洗いし、水をよく切ること。真水で洗うことで好塩菌は減少する。さらに、別の人が別のまな板と包丁を使って、刺し身などの最終加工を施せばよい。

2つ目の「増やさない」とは、食材ごとの細菌管理を徹底して、わずかでも付着した細菌を増殖させないことである。これは特に、冷蔵庫での保管がポイントになる。冷蔵庫は食材を詰め込みすぎると、冷気の循環が悪くなり冷却能力が落ちる。だから、適度な収納を心掛けたほうがよい。冷却が十分できるように、コンデンサーの清掃も怠ってはならない。

食材の下ごしらえなどのために、調理場の室温に長時間置かないことも重要である。5℃〜60℃の間が細菌増殖の危険温度帯なので、その温度帯に4時間以上放置しないというのが原則である。

調理後の料理も同様である。75℃の加熱調理では食中毒菌が身体に危険がない量まで減少するだけで、死滅するわけではない。料理の温度は5℃〜60℃の間になると、生き残った食中毒菌が繁殖を始める。

厨房の温度・湿度は、なるべく低く保つことが必要である。それには、厨房の温度をコントロールできるように空調機器の増設や整備が求められる。温度は少なくとも30℃以下、できれば25℃を保てるようにしたい。

3つ目の「殺す」とは、食品についた菌を加熱調理することにより殺すということである。

厚生省では75℃1分間の加熱を提唱している。調理済みの食材を冷蔵保管した場合でも、出す場合にはもう一度温度を75℃まで上げなくてはならない。調理後保存する場合は、温度が60℃以上で2時間までだ。途中で温度が下がったら、もう一度75℃まで再加熱する。

調理した食品を翌日使用する場合には、急速冷却機や冷水で食品の中心温度を2時間以内に5℃まで下げないと、細菌が増殖するので注意したい。

万全な品質管理が予防策

衛生管理をきちんと行うには、温度管理が適正に行われていることが必要である。

調理機器には、正確な温度コントロールの付いているものを使う。堺市の食中毒事件が発生してから、厚生省もその重要性に気がつき、オーブンなどで芯温センサー付きのものを購入する場合には、半額を助成援助するようになっている。

もちろん、温度コントロール装置が付いているからといって、安心してはならない。どんな機械でも初期の性能が低下したり、誤差が発生するからだ。定期的にグリドル、フライヤー、オーブン、冷蔵庫、冷凍庫などの温度を確認したり、必要なメンテナンスを行う必要がある。

温度コントロールを行うには、正確な温度計も必要になる。特にデジタル式のセンサーを使ったものが、その精度において優れている。この製品はデジタル温度計とセンサーがセットになったもので、数社のメーカーから5万円程度で発売されている。

センサーには、食品の内部温度を計測するミートプローブ、フライヤーの油量を測るディープファットプローブ、そしてグリドルなどの表面温度を計測する表面温度プローブがある。このプローブの構造によっては、温度を正確に計測できないため、値段ばかりに目を奪われずに、いろいろ比較して購入することをお勧めする。

このように、温度管理は品質管理そのものであると理解してほしい。温度管理がきちんと行われていない場合は、食中毒を起こす危険性が高まるのである。

最近、米国で開発された食品衛生管理システムのHACCPが脚光を浴びている。

従来の食品衛生管理は、完成した食品の検査をして、食中毒菌が検出されるかどうかで判定していた結果管理方式だ。これに対し、HACCPは食品加工の各工程でチェックポイントを置き、完成品で問題を出さないようにする工程管理方式(プロセスコントロール方式)を取っている。

このほど米国のHACCPの衛生管理の基準が一部改正された。以前の基準に比べ、手洗いやP/Aの身だしなみなどに細かな基準が追加されている。

HACCPが注目されるのは、外食産業はまだ勘に頼った商売をしており、科学的な商売をしていない証拠でもある。従来の勘に頼った商売から科学的な商売に脱皮しない限り、O157をはじめとする食中毒の予防は難しい。 米国のロサンゼルスの保健所では、衛生管理の良い店、悪い店をA・B・Cでランク付けし公表している。日本の保健所では、衛生管理の良い店は別として、悪い店は公表しない。しかし、今後は日本の保健所でも米国の保健所と同じように、ランク付けを公表するようになる可能性がある。

米国では生物を極力食べないようになっている。ステーキでもレアで食べる人はあまりいない。大部分の人は、肉の中までよく焼いてから食べている。食中毒に対して非常に神経質になっている。

現在、世界的に食中毒の危険性が高まっている。今後O157は増加することはあっても減少することはない。もはや、従来の衛生管理の常識は通用しない。食品衛生という観念を中心にした、品質管理運動の実践が強く求められているのである。


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