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10店舗を越えるチェーン店の店長になるためには
シリーズ第二回
不採算店の改善


チェーンを3〜4店舗開店する内に必ず不採算店舗が発生する。此の不採算店舗をどう改善するかが10店舗を越えるチェーンになるかどうかの最初の関門だ。

店長の貴方にとっても同じだ、売れる店は何をやっても旨く行くが、売れないと何でも旨く行かなくなる。、売り上げを上げるために赤字を覚悟で経費を使い、売り上げが上がってから経費をコントロールすればよいと言う。しかし現実のところまだ数店舗のチェーン店にとって、そんな悠長なことは許されない、まず経費の削減と同時に売り上げを上げるという矛盾を解決しなければならない。

ダンキンドーナツは実験店のテストの後いよいよ独立店舗を開店した。まず話題性をねらって、銀座、次に郊外の国立、田無と連続で3店舗を開店した。筆者はその3号店の田無店の店長として開店をすることになった。1号店の銀座、国立店は話題を呼び大変売り上げが高く、3号店の田無店も期待されてオープンした。

新店舗開店の時は売り上げが高いので、高品質なQSCを実現しなければ、一回きた客が定着してくれないのだ。ではどんな問題を抱え、解決したのか見てみよう。

1. 「Q、品質の向上」

まず、何時も安定した品質の確保のため、作業の標準化を行わなければならなかった。

チェーン店舗で売り上げを上げるにはQSCを向上させなければいけないと言う。ダンキンドーナツはドーナツ以上にコーヒーの品質に気を使っている。コーヒーを入れ手から18分すぎた物は廃棄すると言う基準がある。売れないときにそれを厳格に守れば販売するより、多くのコーヒーの廃棄が必要になる。

ドーナツもおなじだ。お客様を満足させるためには数多くの品揃えが必要になる。ドーナツもコーヒーと同様に製造後4時間すぎた物は廃棄するというマニュアルがある。しかしながら売り上げの3%以上の廃棄ロスを出してはいけないと言う基準も存在する。売り上げの3%と言うと売り上げの高い銀座店などはよいのだが、売り上げのもっとも低い田無店などではそれは無理な数字であり、それを守るためには閉店間際には殆ど商品を陳列することができなくなる。売り上げの5%を守るのがやっとの状態だった。

また、当時はまだ供給されるドーナツミックスの品質自体が安定せず、かなりの品質のムラがあり、それが、廃棄処分そのものを増やす原因にもなっていた。つまり品質管理の強化そのものも必要になってきたのだ。

イーストドーナツはパンと一緒で発酵技術が必要になる。イーストドーナツは、まず小麦粉の産地、品質(蛋白質の含有量など)、時期(春、秋)、イースト菌の種類、活性状態、イーストフードの種類、添加物の量、質、砂糖の含有量水の質、室温、湿度、ミキシングタイム、発酵の温度湿度、等で微妙に異なり、とても標準化の出来ない世界だ。ミックスの供給は日本の最大手のメーカーで米国ダンキンドーナツにミックスを供給しているメーカーとの合弁でスタートした。ドーナツの製造はミックスと、イースト菌の量、水の量、ミキシング時間、ミキシング後ドウ温度、発酵時間、発酵湿度、発酵温度がマニュアル化されており、それに基づいてドーナツ製造の職人を1カ月で育成するシステムのはずだった。

マニュアル化されていると言ったがそれでもその日の状況、イースト菌の活性状態、粉の水分吸収度によりミキシング時間や発酵時間を微妙に変えなければならない。それでも1種類のミックスなので1カ月でイースト発酵技術を身につけることが出来た。しかし、難題はその年の秋だった。ある日突然ドーナツの品質が変わってしまった。発酵が旨く行かず、揚げるときに油を大量に吸い出したのだ。いろいろとトライしたが旨く行かない。そこで原材料をチェックしたところ、小麦粉には秋と春とがあり入れ替わりの時期であったのだ。メーカーはスペック通りの配合でミックスしているのだが、肝心の原材料の粉の性質(蛋白の含有量)が変わっていたのだ。その粉のスペックにあわせるために数多くの製造テストを行い、マニュアルの数値の幅を大幅に変更する必要に迫られた。

次に問題になったのは油の酸化だ。ドーナツは揚げる課程で油をかなり吸う。その為に高品質の揚げ油を使い、その食材コストに占める割合はかなり高い物がある。ドーナツがある一定量の油を吸収すると、油を継ぎ足しながら揚げることになる。ある一定量の油を入れれば油は廃棄すること無く使い続けることが出来る。ところがある時に突然油が劣化するようになり、ドーナツの味も悪くなってしまった。最初は作業手順の問題かと思ったが、良く調べると、揚げる際にドーナツをおいておく金属製のスクリーンが銅にメッキをした物で、そのメッキがはがれ、油が銅に直接接触することで揚げ油が急速に酸化することが判明した。

作業上の問題点では、こんな笑い話もあった。当時オレンジジュースと、グレープジュースを販売していた。ジュースはジュースディスペンサーにいれて冷却してから販売し、閉店後もジュースディスペンサーで冷却しっぱなしにするか、冷蔵庫に保管する必要があったわけだ。それがある日、ジュースディスペンサーにグレープジュースを入れたまま電源を切って帰ってしまった。その次の日、味見をして販売をすれば良かったのだが、そのまま販売してしまった。そうしたら子どもがグレープジュースを飲んで顔が真っ赤になってしまい、親がおかしいと言い出した。飲んでみたらなんと発酵してワインになっているではないか。100%のグレープフルーツを砂糖で甘く味付けをしているので、ドーナツのイースト菌が混入し、暖かい店内で発酵しワインになってしまったわけだ。それから、必ず、冷蔵庫にしまい、味見をしてから販売するようになったのは言うまでもないことだった。

その他の問題点では、売り上げが低いためにジャムやクリームなどが劣化し廃棄処分にしなければならない物が増加してきた。種類を絞れば廃棄処分は減るが、販売品目が減って売り上げが落ちるという問題も発生すると言う悩みも抱えてしまった。

このように、当初のマニュアルだけでは対応できないことがどんどん発生してきた。本来はチェーン本部で品質管理を行うのだがチェーンの店舗数が少なければ、店長がその作業を行う必要がある。そこで問題点を早期に発見し、なるべく早く解決をしようと言うことで、表2の業務日誌を作成し、従業員のコミニュケーションをはかるようにした。業務日誌の中に品質の項目を入れることにより、各従業員が品質管理に責任を感じ、問題点の解決方法まで考えるようになってきた。

2「S」サービスの問題点

ある時に出前の売り込みで幼稚園を回っていたときに、幼稚園の責任者から貴方の店は感じが悪いから嫌だと言われてしまった。理由を聞くと2月に実施した無料クーポン券を店舗に何回か回収に行ったら、また来たのかと言うような顔をされたというのだ。クーポンの回収期間は2月であり表1のようにかなり売り上げが高かった。忙しすぎて顧客に十分な気配りが出来なかったのだ。実験店の時とはメンバーが全員入れ替わり、最初からトレーニングの必要性が出てきた訳だ。此の幼稚園回りは筆者だけでなく、全従業員で分担して行っており、此のクレームを聞いたのはその従業員の一員だった。筆者がこれを聞いて文句を言っても信用されなかっただろうが、ミーティングで彼らから問題提起されたので、その解決策を具体的に提案することができた。

そこで作成したのが、表3のセールストークマニュアルだ。これは実験店で開発したマニュアルを更に進化させた物だ。まず、客がドーナツを購入するまでの分析し、どうやって話しかけたり、商品説明をするか具体的インセールストークを決め、それをロールプレイで徹底して教育した。

3「C」クレンリネス

クレンリネスも問題が出てきた。閉店時の担当者により清掃の度合いが異なるのだ。そこで開店と、閉店の作業マニュアルを細かく作成し直した。筆者が自分で作成しても担当者が理解できなければいけないので、時間はかかったがミーティングを何回も開き、部下に考えさせ作成した。自分達で作ったマニュアルだから、率先して守るし、店長の筆者がうっかり掃除をして帰らないと、彼らから厳しく叱責されるようになった。筆者から彼らに文句を言う必要は無かったのだ。

そうこうしている内にQSCはかなり向上していった。しかしながら現実は厳しい物があった。46年の12月15日が開店日であり、最初の半月の売り上げは大変好調であった。そして2月にクーポン券を配布し1月より18%も売り上げが良かった。しかし、その後が続かず、表1のように売り上げはどんどん低下していき、6月には1月の売り上げに対して75%まで下がってしまった。そこで、具体的な販売促進策の必要性に迫られてきた。(売り上げは47年1月の売り上げを分母として各月の売り上げを割った物である。)

4「マーケティングの必要性」

焦ってあまり色々なことをやっても旨く行かない。現状の把握をする事にした。まず、ここで問題点と機会点を明確にしてみたのだ。

ダンキンドーナツの機会点は、今までの日本にない高品質なドーナツとコーヒーで、店内の飲食はもとより、テイクアウトが出来るという点だろう。しかし、それが顧客に伝わっているか調べる必要があるわけだ。

  1. 商圏調査

    田無店の立地は西武新宿線の駅ビル内部にあり、外部からも出入りできる構造になっていた。しかしながら通行人の殆どはバスの乗降客であり、買い物目的の客はやや離れた、西友前の商店会がメインであった。

    そこで、まず、クーポン回収時に顧客アンケートを行い、商圏を把握することにした。内容は、何故当店を知ったか、どこに住んでいるか、品質サービスはどうかなどだ。その結果わかったことは、顧客はダンキンドーナツの店舗を見て初めてその存在を知ったことだ。クーポンや宣伝よりも店舗の存在感の方が宣伝効果が高いと言うことだ。また、商圏は普通円形に考える物だが、実際の商圏はアメーバーのように不規則な形をしており、更に飛び地をしているという事を発見した。その理由を見てみると交通機関ではバスの利用者があり、そのバスでの通勤、買い物途上に当店によることだと言うことがわかった。

    通行量調査を行ったところ、朝と晩の通行量が圧倒的に多いが、開店時間の10時からの通行量は激減してしまうことだった。それは店舗が商店街からややはずれた場所で、バスターミナルと西武線の田無駅の中間に所在するため、朝、晩は通勤客が数多く通ると言うことだった。しかしながら、朝の通勤時間が終わってから開店するためその通行量を売り上げにつなげることができなかったのだ。元々ダンキンドーナツはコーヒーとドーナツというのは朝食が大きなビジネスであり、その朝食時間を逃すのはもったいないのだ。

    更に店舗の問題点を明確にするために周辺の売り上げデーターを分析することにした。 周辺のデーターとは、本社のメインバンクであったD銀行の顧客データーと、関連会社のスーパー西友の顧客データー、商店街の調査などであった。その結果よくわかったのは西友の来店頻度とダンキンドーナツの来店頻度が大きく異なることであった。

    おなじテナントに聞いてみたら、西友の地下の食品売場でショーケース販売をすることにより、売り上げが5万円くらいあがるし、知名度もあがると言うことだった。そこでまず、西友の地下の食堂にショーケース販売をし、どのくらいの人が知っているかを見ることにした。

    その結果が好調であったので、もっとも場所の良い店頭で売らせてもらうことにした。ところが大きな問題が持ち上がった。スーパーでも百貨店でもおなじだが、売場の担当制度がある。ダンキンドーナツは駅前のビルに所在していたが、管轄は西友の青果部となっていた。しかし、西友の地下食品売場は青果の所属であったが、店頭は食品の所属であった。食品の担当課長に頼んだが、いくら売れても彼の成績にならないので当然の事ながら取り合ってはくれなかった。

5「経費の削減、特に人件費の削減の必要性」

売り上げを上げるために数多くの活動をしなければいけないのだが、売り上げの低下は赤字額の増加を招き、本部からは経費の削減を強く要求された。売り上げが上がらないとまず、人件費の削減が必要になる。当時の飲食業はまだ、社員が中心であり、アルバイトを使用するのはわずかであった。ダンキンドーナツも開店時には男子のドーナツマン(筆者も含んで)6名、女子が5名の総勢11名の人員だった。女子は2人が主婦の社員3名が高卒の女子社員だった。そんな豪華な人員構成だったが、当時の給与ベースは現在と比較にならないくらい安かったわけだ。

しかしながら、売り上げが低下すると正社員の削減が必要になった。チェーン展開をするためにその人員を移動し、補充をしないわけだ。4月頃から人員を削減をはじめ、調理を担当する人間を筆者を含んで3名にし、販売担当の従業員も削減し、アルバイトで補うことにした。当然の事ながら調理の人間を削減するには合理的に生産性を上げる必要に迫られた。

イーストドーナツは20kgのドーナツを作るのに仕込から発酵、フライまで含めると図1のように3時間半かかるのである。20KGのイーストドーナツでドーナツは655個できる。8時間労働であるとイーストドーナツは2回製造できるそうすると1310個のイーストドーナツができる。ケーキドーナツは10KGを50分間でできるので、1回のケーキドーナツを製造できる。10kgでドーナツは310個できる。イーストを40kg,ケーキドーナツを10kg製造すると、1620個の製造能力である。これ以上になるともう一人ドーナツ製造の人間が必要になる。

ドーナツの製造行程を見ると、1次発酵と2次発酵の間は作業をすることがないのである。そこでこの間にケーキドーナツとチョコケーキドーナツを10kgづつ製造できるのである。そしてイーストドーナツをフライした後、フレンチクルーラー5kgを30分間で製造することができる。フレンチクルーラーは5kgで230個のドーナツになる。つまり4時間でドーナツを1505個製造できる。8時間労働で3010個の製造ができるのである。つまり作業時間の無駄を無くすことにより、生産性を86%も向上することができ、人員を5名から3名に削減することが可能になったわけだ。

以上色々なことをやって売り上げを伸ばそうとしているのだが、此の時点で最も大事なのは、色々な改善策を記録して、後のチェーン展開に役に立てなければいけないと言うことだ。その為には営業日報や、記録、報告書を明確に残すことだ。筆者はノートで克明に記録をしているために、此の経験を25年たった今皆さんに説明することが可能になるわけだ。

以下次号


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