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10店舗を越えるチェーン店の店長になるためには
シリーズ第一回
店長最大の仕事売上


  1. 店長の最大の仕事は売上を上げることだ。

    現在ではマクドナルド、KFC、モスバーガーバーガー、すかいらーくグループ、など1000店舗を越えるチェーンがあり、それらのチェーンのシステムや組織、販売促進、教育制度、アルバイトのトレーニング方法などの本が数多くでている。しかし、それを読めば読むほど皆さんの悩みは深まるだろう。「何でこんなに複雑なシステムなのだろう」「やればよいのはわかるが時間がない」等だ。良く考えて欲しい、どんなチェーンでも最初は1店舗から始まり、10店舗を開店するまで数多くの失敗を通して、システムの構築をしている。あのマクドナルドでもKFCでも1号店は失敗に終わっているのだ。

    マクドナルドは1号店は銀座であるといわれているが、実は幻の1号店があったのだ。本当の一号店はアメリカと同様に郊外に開きたいということで実は茅ヶ崎の海岸に1号店の建物まで建てていた。それが色々な理由により幸運にも開店できなかった。その代わりに1号店を銀座に開き、それが大躍進を遂げるきっかけとなった。もし、幻の1号店を開いたら大失敗したことだろう。当時まだ日本の郊外のマーケットは熟成していなかったからだ。マクドナルドに先行して米国大手ハンバーガーチェーンのバーガーシェフが同じ茅ヶ崎に店舗を開き直ぐに閉店したでそれは明らかだった。

    筆者がマクドナルドに入社した時は日本進出後2年目でありまだ一桁台の店舗数だった。その当時はまだ新入社員用のトレーニングマニュアルは無かったし、オペレーションマニュアルは米国とは異なる独自の粗末なものだった。入社後3年たったときに米国研修旅行をして驚いた、日本のマニュアルと米国のマニュアルが大きく異なるからだ。例えば、ハンバーガーのミートにかける塩に、米国では胡椒を混ぜているが、日本では混ぜていないとか、ケチャップ、マスタードの計量方法が異なるなどだ。

    担当者に「なぜ胡椒を混ぜないの?」と聞いたら、「胡椒を買ってきて混ぜたら、肉にかけるとき全部ダクトに吸い込まれた」と言うではないか。そこで「どんな胡椒を使ったの?」と聞いたら、「ラーメン屋でつかっている物だよ」と言うではないか。米国で使用するブラックペッパーの粗挽きではなく、ラーメンに使う白胡椒の細かい物では吸い込まれるわけで、大笑いをした経験がある。文化が異なるからこんな笑い話には事を欠かない状態だった。マニュアルを米国と同じに修正するのに実は日本上陸後10年以上かかった思い出がある。

    良く勘違いされるのだが、マクドナルドのマニュアルやシステムが優れているから、1000店舗を越えるチェーンになったと思われることだ。マクドナルドが店舗数10店舗を越えるまでに最大の課題は売上げを上げることだった。どんなに優れたシステムを持っている飲食店であっても売れなくては、商売が成り立たない。最初に開店した店舗が大繁盛しなければ、次に店舗を開く資金を調達できないし、大家も安心して店舗を貸してはくれない。最初の数年間はサービスに重点を置きどうやって売り上げを上げるのかが最大の優先事項だった。当時はアルバイトマネジャーである、スイングマネージャー制度もないし、アルバイトのトレーニングシステムなんてなかった。トレーニングは各店舗の店長の努力と気合いにまかされていたのだ。しかし、売り上げに対する素晴らしい努力により、売上げを上げ、その結果、社員、アルバイトの士気が高く、活気のある店舗を作り上げお客様に大きく支持されたのだ。

    チェーン展開を行う最初の段階での店長の最大の業務は売上げを上げる事だ。売り上げを上げるためにサービスの向上が必要で、そのためにトレーニングが必要であれば、そこだけ集中する。最初から利益管理、QSC、管理、トレーニングなどそろえる必要はないし、時間の無駄だ。

  2. 筆者の経験、ゼロからのスタート

    今でこそ筆者は本誌などで経営のあり方や、キッチンデザインなどを述べさせていただいているが、25年前は飲食業の知識は全く持っていなかった。大学を卒業後、父親の経営している飲食業に入社した。当時父の会社はナイトクラブや、喫茶店、飲食店など幅広く経営していたが、個人経営であり、経営のノウハウが全くなかった。当然そんな家業に何の知識もなく飛び込んだ筆者は数多くの経営上の失敗を重ね、父親とうまくいかなくなってしまった。

    そこで悩んだ筆者は最初から勉強しようと、レストラン西武(現、西洋フードシステム)に入社した。最初は洋食のコックを志望したのだが、人事課で大卒からコックは出来ないから、フランス料理のウエイターをやりなさいと言うことになった。

    当時のレストラン業界は職人の世界であり、体系だったトレーニングがあるわけではない。これじゃ家で修行をしても同じだなと思ったときに、レストラン西武がダンキンドーナツの展開を開始することになり、1カ月でそちらに転籍した。

    ダンキンドーナツというと現在でも80店舗くらいで低迷しているのだが、米国ではミスタードーナツを吸収合併するほど強大なドーナツチェーンであり、フランチャイズシステムの運営がもっとも優れた外食産業の一つである。特に優れているのは職人芸の必要なドーナツの発酵技術を1カ月で徹底的に教え込むという、トレーニングシステムだ。また、フランチャイズ中心の店舗展開のためにマニュアルの整備がしっかりしているという事だ。25年前の時点では外食産業のなかではもっとも優れてたマニュアルであった。当時のマクドナルドよりはるかに優れていた。

    転籍後2カ月後に、ダンキンドーナツの実験店の店長に指名された。前任の店長の消極的なやり方で売り上げはどんどん落ちている状態だった。実験店の成功がないとチェーン展開が出来ないので、お前やって見ろと言うことで筆者に白羽の矢がたった。筆者より経験の長い年とった従業員のリーダーになったのだ。此の時点でやらなければいけないことは単純だった。売り上げを上げることだけだ。

    売場は池袋のショッピングセンター内にあり、ショーケース2台のスペースで、単なる物品販売だ。キッチンは同じく池袋にあったトレーニングセンターから車で配送するというものだ。

    ショッピングセンターの閉店時間は7時であり、忙しいのは5時から閉店時間までの2時間にすぎない、つまり此の時間に殆どの売り上げを上げなければいけないと言うことだ。しかし、ダンキンドーナツの原則は作ってから4時間たったドーナツは販売してはいけないと言う厳しいものだった。つまり、閉店時点で余ったドーナツは廃棄処分しなければならないのだ。その廃棄ロスを恐れた前任者は閉店間際の商品陳列を極端に絞っていったのだ。品数だけではなく、種類も絞ってしまったのだ。その為客数はどんどん落ちていったわけだ。

    勿論原材料コストは大事だが、まず売り上げを上げることが重要になる。ショッピングセンターは閉店間際が最も忙しい。それは廃棄ロスを恐れる販売店が生鮮食品などを値下げして売り切るからだ。その最も忙しい時間の陳列を増加することが大事なのだ。勿論販売できない廃棄ロスは問題だ。つまり、客からは陳列が多く見え、実は在庫数が少なくすれば良いのだ。その為に売り上げを正確に見積もり、各種のドーナツの種類をそろえ、1種類当たりの個数は少なくても各種のドーナツを豊富に陳列するようにした。

    次に大事なのは美味しいという事を客に教えることだ。そこで他の売場を研究した。ショーケース販売で重要なのは試食販売だ。まず食べさせることが重要だ。勿論従来も試食販売をしていたのだが、ドーナツのカットサイズも大きいし、積極的に試食を勧めていなかったのだ。また、客が何個も食べようとすると嫌な顔をするのだ、変な話だが、会社のものだから、どんどん食べさせればよいのに何か自分が損をするような気持ちになるようだ。

    貴方もスーパーなどで試食をした経験があると思うが、従業員が嫌々試食をさせているかどうかすぐわかるものだ。嫌々やっているマネキンからは絶対に買わないものだ、客とマネキンの関係は気合いなのだ。如何に気分良く売りつけるかが試食販売の基本なのだ。 ドーナツのカットサイズを従来の1/3にし、その代わりに種類を増加した。売場の前を通りかかる客に積極的に試食をさせ、基本になる4種類の生地を試食させた。

    こんな乱暴なやり方では原材料コストがかかるようだと思われるが、逆に原材料コストは下がったのだ。というのは、従来は管理が悪く、トレーニングセンターから出荷されるドーナツの数量を確認していなかった。また、オーダーもきめ細かくしていないから同じ種類のドーナツが大量に送られてくるので、売り切れず販売ロスが発生していたわけだ。また、量目不足や不良品があっても受け取っていた。そこで検品を厳しくし、オーダーした物、品質の良い物しか受け取らないようにした。オーダーも毎日検討し本当の売れ筋を見つけ、配送時間を厳格に定め新鮮なドーナツがきちんと配送されるようにした。試食させるドーナツも廃棄する直前の物を選ぶことにより、無駄もなくなった。

    ショーケースの並べ方により売れ筋が変わると言うことを発見した。当然の事ながら、上段の真ん中がもっとも売れると言うことだ。時々ローテーションを行う事により、まんべんなく売れるようになることや、同じ色のドーナツを並べるよりも、異なる色のドーナツを互い違いに並べることにより、カラフルで楽しい陳列になると言うこともわかりだした。此の陳列の工夫により、廃棄しなければならないドーナツの数を大幅に減少させることが可能になり、食材原価はかえって低減したのだ。

    通行人に試食をさせるには数多くの売場の中からダンキンドーナツの売場に立ちどませる工夫が必要になる。ダンキンドーナツが何であるか教えなければいけない。ブランドの確立していない商品を売るには、客の教育も必要になる。そこで目立たせる事と、客の教育のためにドーナツのポスターとダンキンドーナツの歴史をかいた派手なPOPを掲示した。

    次に立ち止まらせるためにキャッチフレーズを作った、「アメリカからきた、世界最大のドーナツチェーンで52種類の新鮮なでき立てのドーナツです」と叫ばせたのだ。

    そこで立ち止まった客に4種類の試食をさせると殆どの客が購入するようになった。最初はこわごわ購入するので、客単価が上がらなかった。そこで単価を上げるために12個買うとお得ですよと、割引システムを導入し、客単価も向上するようにした。

    ショーケース販売で大事なのは従業員の訓練だ。優れたマネキンを雇えば簡単なのだが、我々は自社の社員で売ることに決めた。従来レストランで働いていた女子社員をショーケース販売させるわけだから、それなりの訓練が必要になる。必要な訓練とは、大きな声を出し、他のショーケース販売のマネキンに負けないようにすることだ。

    そこで、「いらっしゃいませ」からセールストークまでの文章を作り、毎日売場にたつ前にロールプレイで、それを10回唱えさせた。

    しかし、ロボットのように喋られても効果がない。何が必要かというと笑顔だ。25年前の飲食業で笑顔を出すのは少なかった。つまり、笑顔を出せればそれだけで、成功するはずであった。そこで笑顔を出す訓練を考案した。笑顔なんていうのは単なる顔の筋肉の動かし方だ。客の顔を見たら条件反射のように笑顔がでるように訓練すればよいのだ。

    まず鏡の前で冗談を言い笑わせる、そしてその時の顔の筋肉の状態を覚えさせ、楽しくなくても笑顔を出せるような訓練を行った。もちろん気分が良くないと笑顔がスムーズにでないから、常に冗談を言ったりして笑顔がスムーズにでるように心がけ、筆者がまず実践して見せた。

    上記のトレーニングをする前に、サービスを担当する部下の女子社員の最初の閲兵式を行って驚いた。若いかわいい女子社員でなく筆者の母くらいの従業員たちだった。しかも、制服はだらしなく、汚れたエプロンを着用している。靴も履かないでサンダルだし、髪の毛も乱れて疲れ切った表情だった。店舗の売り上げがどんどん下がっていき、くらい雰囲気になったことが従業員の気持ちや態度に現れていたようだ。そこで、まず服装をきちんとさせ、髪の毛の結い方、化粧の方法まで細かく指導した。

    最初の内、年上の女子従業員たちは、筆者の言うことをあまり聞かなかったのだが、実際に売上げが上がり出すと、筆者のやり方を認め、ちゃんと言うことを聞くようになってきた。店長として有能であることを部下に認めさせるには、命令するより、売上げを上げられる能力だ。次に未来を語ることが出来る、夢を語ることが出来るかだ。会社の将来、自分の将来、部下の将来を語ることが出来ることも重要だ。部下とのコミュニケーションをとるために、勉強会を開催し、全員が会社の方針、やり方を理解できるような工夫を地道に行うことにより上記のスパルタトレーニングが成功したようだ。

    以上の努力の結果売り上げは夏場にも関わらず30%以上のびたのだ。ドーナツ、パンなどは夏場になると20%くらい売り上げが下がるのが普通なのにそれが、逆にあがったのだ。その成果は当時のフランチャイズ募集のパンフレットに掲載され、ダンキンドーナツのシステムが如何に優れているかの実証に使用されたが、実は上記のような努力を行っていたわけだ。

  3. 成功と失敗のノウハウの集大成が生きた使えるマニュアルになる 飲食業にとって最も大事なノウハウはどうやって売り上げを上げるかという事だ。まず売上げを上げ、利益を上げるのが最も大事だ。

    次に売れてくれば、売り上げに対応するQSCの維持管理、次にそれを実践する人間への教育、モチベーションの与え方を確立する必要がでる。更に売り上げが上がるともっと人員が必要になるが、全部正社員では経費がかかりすぎる。そこでアルバイトの有効的な使い方のためのスケジューリング管理、アルバイトマネージャー制度等の導入が必要になる。このように貴方のチェーンの段階において必要な項目は時事刻々と異なってくる。必要なときに必要なマニュアルを作るのが基本で。使いもしないマニュアルを見よう見まねで作っても、使わなければ宝の持ち腐れだ。最初から、大チェーンのマニュアルを真似しても無駄だ。

    しかし、闇雲に手あたり次第仕事をしても旨くいくものではない。毎日仕事が終わってから、今日の問題点をじっくり反省する。何が原因で旨くいかなかったのか、ドウしたら改善できるか、をまとめて記録する、そして解決策を考え、実行する、実行した結果をまた反省し、記録する。次に改善案を実践する。此の繰り返しを必ず記録することが大事だ、此の記録がすなわちマニュアルになるのだ。

    数多くの本を読んで頭でっかちになって、悩んでいても問題解決は出来ない。もしやり方がわからなくなったら、同業他社の繁盛店を見に行く、必ず自分の目で何が成功の理由かを肌で知ることが重要だ。そしてヒントをつかんだらそれを自分の店で実行する。体で学ぶことが最も大事なのだ。

    筆者はダンキンドーナツに入社以来マクドナルド時代に至るまで、毎日の仕事を全て記録してある。特に、方針決定、ミーティング内容、抱えている問題点、解決方法とその結果、等だ。この実践に則った失敗と成功の事例が筆者最大のノウハウあり、それを次号からご説明していくつもりだ。


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