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飲食店経営価格競争時代に打ち勝つ
第五回
人件費の削減


    <人件費のコントロール>

  1. 中小のチェーンでは人件費の削減の前にやることがある。

    だいぶ以前に筆者がダンキンドーナツの3号店をオープンしたとき、月間の売上予算450万円に対し売上がどんどん下がり250万円になり、2人の女子アルバイトを削らなければならなくなった。彼女達は一所懸命働きお客様の人気者だったのだ。その彼女達を解雇するのはお客様だけではなく社員のモラルも下げる心配があった。

    当時の営業時間は朝の10時から夜の8時までであった。日本に進出した当時のドーナツの位置づけはおやつであった。米国のマニュアルを見てみたら、朝の売上の増進策が載っていた。そこで朝7時から営業を開始することにした。そこで、朝食セットのセットメニューディスカウントをし、徹底して朝の通勤客にアッピールを開始したのである。

    ドーナツにコーヒーは付きものであるが、マニュアルでコーヒーを抽出してから18分間しか保管をしないのを、抽出後10分間で廃棄し、引き立てのコーヒー豆をg単位で正確に抽出するという品質を訴えた。

    また、ドーナツも出来たてのものを熱いうちに出し、イートインのお客様に新鮮さを訴えたのである。アルバイトと社員のトレーニングを実施し、オーダーを受けたら必ずお勧め売りを徹底するようにした。勿論押し売りに感じさせないように最大の笑顔がいつもでるように特訓したのである。

    さらに、近所の西友スーパーの入り口に出店をさせてくれるように日参し、OKをとった。近隣での店舗のイメージをあげるために、第一勧業銀行と交渉し、銀行のお客様サービスの一貫として店内の臨時出店を実現したのである。

    子供の時代から味の教育をしようと思い近所の幼稚園、保育園の給食用の出前の訴求を行い、定期的に出前の注文を受けるようになった。味を覚えた子供たちは親を連れて店舗まで来てくれるようになった。

    それらの相乗効果のため、1年後には売上が600万円近くまで上昇したのである。売上が上がった最大の理由は、アルバイトの従業員をカットすることなく彼女達と社員のやる気を最大限に保ったことではないかと思っている。

    人件費を下げるには2通りの方法がある。簡単なのは時間数や人数を削減することである。しかし、モラルやQSCの低下という副作用を忘れてはならない。

    しかし、人数と時間数を削減しないでも、売上を上げれば人件比率を下げることは可能なのだ。従業員の質が良ければ何も削る必要はない、それよりも売上をあげる対策に振り向ければ良いのである。つまり、セールスプロモーションに活用するのである。良くトレーニングした従業員をカットするのは従来投資してきたトレーニング時間を全く無駄にするのである。水道光熱費、備品費の節約で売上に対し、1〜2%は簡単に節約できるし、原材料費もトレーニングすれば0.5%は節約できる。節約には良くトレーニングされた、モラルが十分に高い従業員が必要なのだ。

    勿論無駄な人件費は節約するのは当然であり、バーグラフチャートの売上高に基づいて人件費をコントロールしなければならないのである。しかし、節約する前に質を向上させ、サービスの質を上げ、売上を向上することはもっと重要なのである。

  2. 社員、アルバイトの再トレーニングをする良いチャンス

    バブルの時は社員やアルバイトの数を揃えるのに精いっぱいであり、トレーニングに力をいれてこなかったのである。また、止められたら困るから、甘やかし、厳しいトレーニングをせず、時間的にも余裕をもって作業に当たらせるようになっているのだ。そこでまず、売上に対して本当に必要な時間数を入れ、不要な時間数をカットする。だからと言って解雇してはならない。まず、もう一度トレーニングを厳しく行うのである。社員マネージャー及び本社のスタッフにもう一度基礎のトレーンングコースを受講させ、原点をみつめなおす。アルバイトも、店内のトレーニングコースでもう一度何をするべきか厳しくトレーニングをし直すのだ。

    不況だと言って嘆いていないで、ちょうど良いトレーニング期間だと前向きに考えるべきなのだ。

  3. アルバイトの最低時間給の見直し

    時間数をカットしないでも人件費の削減が可能なのだ。最低時間給の見直しである。バブルの時期、アルバイトの募集時間給は東京地区で、ほぼ1000円まで上昇した。ところが現在では買い手市場であり時間給は750円くらいまで下落しているのである。現在いるアルバイトより時間給が低い募集賃金で募集することにより、実質的な人件費の支払額は低下するのだ。新しいアルバイトの方が賃金が安いからと言って、現在のアルバイトの賃金を下げたり、解雇してはならない。アルバイトのモラルが大幅に低下するからである。アルバイトの平均勤務期間は大体半年である。最低募集賃金を常に見直すことにより、1年後にはかなり平均賃金を下げることが可能なのである。

    アルバイトのモラルを高めるために、階級制度を使用し、各タイトルにより時間給を上げるという、定期的な評価制度で時間給を上げて生産性を高める方法をとっている企業は多いはずである。この評価時に最低時間給を連動するのである。従来いるアルバイトの時間給を下げるのでなく、新しい給与体系を示し、本当であれば金額は上がるのだが、最低時間給を変更するので据置になる。しかし、新しいアルバイトよりこれだけ時間給が高いのだよと説明し、納得してもらうことができるのだ。勿論、能力が期待するより上がらなければ、本人の納得の上で下げることも可能ではあるが、十分な説明と時間が必要である。

  4. QSCを悪化させない人件費のカット方法

    人件費カットはQSCに影響を与えない方法で行わなければならない。アルバイトの人件費は労働時間×時間給である。労働時間は固定労働時間と変動労働時間に分かれる。固定労働時間と言うのは、店を運営していく上で売上に関係なく必要な労働時間のことである。朝、開店前には1日に必要な食材などの補充、ご飯を炊く、グリドル、フライヤーなどの調理機器の点火と余熱などが必要である。また、閉店後は使用したグリドルやフライヤーの清掃、使用した調理道具の洗浄殺菌、シェイクフリーザーの洗浄殺菌、作業台の洗浄殺菌、ダスターの洗浄殺菌、厨房の床壁天井の洗浄作業。客席、トイレ、ガラス、建物外観、の清掃作業。建物周囲の掃き掃除など多くの作業がある。

    変動労働時間は売上に応じて発生する作業であり、調理作業、オーダー受け、配膳、キャッシャーなどの営業時間中に発生する作業であり、バーグラフチャートでコントロールされるのである。

    QSCを悪化させないで人件費を合理的にカットするには、固定労働時間を削減するべきである。作業を細かく分析し、朝晩の作業で営業中の暇な時間帯にできる業務があれば、削減する。また、作業方法を見直すことも必要だ。洗浄作業の場合には洗剤の工夫をすれば時間が短縮でき、さらに水の使用量も減量できるのだ。

    たとえば、ソフトクリームやミルクシェイクのフリーザーを洗浄するときに、一般的には中性洗剤で洗浄、リンス、ブリーチ殺菌、最後に再度リンスする。これを洗浄殺菌の効果を持った洗剤で洗浄すれば、洗浄時間と水の量は半分になるのだ。

    さらにミルクシェイクフリーザーを自動殺菌型のタイプに変更することにより、毎日、朝晩の組立洗浄殺菌作業の固定労働時間を削減できるのだ。勿論、機械を購入するための投資は必要であるが、人件費の削減と毎日廃棄するミルクミックスの金額を考えると1年から2年で元がとれるのだ。

    固定労働時間の削減をソフトとハードの両面からじっくり見直すことは、現在の損益計算書を改善するだけではなく、将来の人手不足に役に立つのだ。

    変動労働時間の生産性を上げるためには、作業に無駄がないか細かくチェックし改善する。例えば、客席を清掃に行くとき、テーブルの汚れを発見してから、ダスターや箒、塵取り、ごみ袋を持って行くのでなく、常時まとめて持ってテーブルを巡回し、往復の無駄な時間をなくすこと等の工夫が必要である。

    さらに抜本的に生産性を向上させるためには、生産性の高い調理機器の導入(コンベアーグリドル、コンベアーフライヤー、など)をするとか、セントラルキッチンの1次処理加工を高度化し現場での調理を必要最低限にするなどの工夫が必要である。詳細については別項で説明する。

  5. 大手チェーン店で正社員の削減が必要な場合

    大手チェーンでは社員を退職させないで、新卒や中途の社員の採用を控え、新規の開店をすることで、社員の人件比率を下げることができるのだ。

    スイングマネージャー制度を導入し正社員を減らせば多額の経費削減になる。しかし、アルバイトに正社員の仕事をやらせるには、アルバイトのモラルを高く保つことが必要である。そのために将来正社員になりたくなるように正社員の仕事と報酬に魅力を高めることが必要である。少ない正社員で運営するためには、正社員の待遇、つまり、給料、休暇、将来の保証など魅力のあるものでなければならない

    朝の開店前に社員が入る必要があるのは、釣り銭の金を金庫から用意するためであり、アルバイトに金庫の管理をさせることができないからである。では、なぜアルバイトに金庫の管理を任せることができないのかというと、若いアルバイトによる金銭盗難事故を恐れるからである。

    しかし、現実にはアルバイトの犯罪は単に食材を無断で食べるとか、釣り銭を1万円盗むとかの簡単な犯罪が多い。なぜそのような犯罪を犯すかというと、誰も見ていないという軽い気持ちでゲームのように思い、罪悪感がないからである。責任感のない、若い高校生がそれらの犯罪をおかしやすい。

    だからといって高校生が駄目なのだというわけではない。アルバイトに責任感を持たせることが重要なのである。また、犯罪を犯してもそれを早期に発見する監査体制がしっかりしておき、誰に問題があるかを、すぐに発見できる体制を作らなければならない。また、その体制があることをアルバイトに教えることが必要である。

    金庫をあけることをアルバイトに任せるればかえって責任感が身につくのである。勿論どんなアルバイトにも金庫の開閉を任せて良いわけではない。社員と同じ責任感を持たせる、アルバイトマネージャーのスイングマネージャー制度をしっかり確立する必要があるのである。

    社員であっても、責任感がなければアルバイトより問題がある。筆者の現金事故の経験ではアルバイトが盗んだ金額は10万円を越えることはほとんどないが、社員の計画的な横領の場合には1000万円を越えたこともあるのだ。社員の方がモラルが高く安心できるというのは幻想である。

    勿論、金庫内の売上は1日以上おかないとか、金庫は常にダブルで鍵をかけており、表1の金庫内管理帳に基づき、マネージャーは朝晩残高を確認し、シフト交代時にも鍵の受け渡しと、金額の確認など具体的な安全対策を明確に実施する必要がある。

    もう一つ社員が必要なのは現金管理より重要な、安全管理である。安全管理の中でもっとも大事なのは火事を出さないということである。

    朝の調理機器の点火は安全を確認しながら行い、ガス爆発や火事の発生を防ぐよう慎重に行わなければならない。特にガス機器に点火する際に安全を確認しながら、点火しなければならない。換気扇を作動してからガス機器に点火しないと、不完全燃焼してガス中毒になったり、ダクトのなかに高温の排気ガスが充満し、火災を発生し易いからである。

    そのためには、ダクトの換気扇を作動しないとガス機器に点火できないような、インターロックを取り付けることにより、換気扇を作動しないと点火できないようになる。インターロックは電気的な回路であり、ダクトスイッチを作動させないと、ガス機器のコントロール用の電気が遮断されたままになるシステムである。

    これが作動しても、ダクト排気ファンのファンベルトが切れていると、この安全装置が働いても、排気せずダクト内が高温になり、火災を発生する原因になる。万が一ダクト中に火災が発生しても、自動の火災消火装置を備え付けておけば安心である。また、ダクト内が高温になっても内部に油がたまり付着していなければ、火災は発生しないわけであるから、常時ダクト内の清掃を実施し、可能性のある災害を未然に防ぐ必要がある。表2、3の安全管理チェックリストを参考にしていただきたい。

    このようにスイングマネージャー制度を実施するには単にトレーニング方法だけではなく、安全に実施できるような店舗システムが具体的に確立している必要があるのだ。 項目の1、2、3はチェーン数に関係なく実施できる。大手チェーンは4と5に挑戦していただきたい。


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