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サイゼリヤ VS ゼンショーのオリーブの丘


 ゼンショーが昨年夏に開店したオリーブの丘を訪問した。新青梅街道沿いのフラカッソ(フラカッソの前はファミレスのサンデーサンだった古い店舗)の業態を変更した低価格イタリア料理店だ。メニューや価格帯、店内内装(特にグリーンのソファー席まで)はまるでサイゼリヤだ。メニューは殆ど同じで1円だけ安くしている。そこでオリーブの丘のオペレーションをサイゼリヤと比較して、実力を調査することにした。
1)料理提供時間の比較
 訪問時は土曜日夕食時、店内には約60名の客が食事中。早速注文してみる。
生ハムとルッコラのサラダ  458円
マルゲリータピザ      398円
ボロネーゼドリア      298円
ハンバーグ&ハーフチキン  558円 
オリーブの丘ペペロンチーノ 298円
を一度に注文して料理提供時間を計測。

計測結果
生ハムとルッコラのサラダ  3分4秒
マルゲリータピザ      7分5秒
ボロネーゼドリア      10分9秒
ハンバーグ&ハーフチキン  12分20秒(740秒) 
オリーブの丘ペペロンチーノ 19分19秒(オーダーミスでハンバーグを運んできた際に確認したら再度注文を入れていた。そこからの提供時間は6分59秒となる)

とファミリーレストランの基準の15分以内であり、合格の料理提供時間だ。
では、サイゼリヤと比較するとどうなるだろうかと翌日日曜日の昼12時にサイゼリヤを訪問した。客席30人が30分後には60名。昨晩のオリーブの丘とほぼ同様の売上時間帯だ。昨晩と同様のメニューを同時に注文し料理提供時間を計測した。

計測結果
生ハムサラダ    459円  料理提供時間 2分15秒
マルゲリータピザ  399円  以下の料理が同時に提供 7分30秒(450秒)
ミラノ風ドリア   299円
ハンバーグステーキ 399円
ペペロンチーノ   299円

ハンバーグ提供までの時間はオリーブの丘より60.8%短く大きな差があるといえるだろう。

2)人員配置
 オリーブの丘のホールは4名、厨房は2名+責任者、の合計7名であった。
 サイゼリヤの標準店舗の場合、一番売上の低い時間帯の場合、ホール1名、キッチン1名で運営できるようになっている。客数が増加すると店長がキッチン兼ホールで加わる。多くてもホールに3名、キッチンに3名、店長が両方にサポートするという形で計7名でピーク時をこなせるようになっている。オリーブの丘はサイゼリヤの人数と同じであるが、料理提供時間が4分50秒も長い。

3)ホールの生産性
 サイゼリヤの従業員は障害競走のように客席を走り回る。その動きには無駄がない。通常のファミリーレストランでは丸いトレンチを持って料理を運んだり片づけをするが、トレンチはサイゼリヤには存在しない。
高級なフレンチレストランのように両手で何枚もの皿(最大5枚)を持って運ぶ。従業員を採用したらすぐに皿の持ち方と歩くスピードを教える。トレンチを取りに行く時間が節約でき、両手が自由に使えるため歩数を削減できるからだ。
オリーブの丘は通常のファミレスのように丸いトレンチを使うし、歩行速度も緩やかだ。

4)厨房の生産性
 サイゼリヤの最大のノウハウは自社運営のセントラルキッチンで食材の加工度を最大限に高め、店舗での調理作業を最低限にしていることだ。
 例えばサラダは収穫時から温度管理し、店舗にはカット野菜として冷蔵状態で運び込み、店舗では冷蔵庫内で皿に盛り付けている。注文後、冷蔵庫から出したサラダにドレッシングをかけトッピングを乗せれば提供できるようにしている。
ハンバーグやステーキ、ドリア、ピザ等のグリル料理は全て2段式のエアーインピンジメントオーブン(コンベアーオーブン)で自動調理する。大体5分程度で殆どの焼き物が仕上がるようにしている。サイゼリヤは料理の数は多いように見えるのだが、焼き物は全て同じ時間で出来るように工夫するなどして、料理提供時間を合理化している。
一番すごいのはパスタだ。セントラルキッチンは全館が冷蔵庫のように温度管理が徹底している。そのメインの調理機器はパスタボイラーで、大型の茹で上げ機器で乾燥パスタを茹で上げ、即座に冷却し包装する。包装したパスタを冷蔵状態で店舗に運び込み、注文後、鍋にソースと一緒に入れ蓋をして、電磁プレートで加熱する。蒸気が勢い良く出てきたら出来上がりだ。店内には包丁は存在しない、食材の包装を切るためのカッターがあるだけだ。ここまで合理化した厨房はファストフード以外には見たことがない。
オリーブの丘の厨房を拝見すると、コンベアーオーブンと電磁調理機器が中心の調理機器であるのは同じであるが、2段式のコンベアーオーブンのレイアウトが悪い。設置位置が高く、料理の出口が狭く、取り出す際に時間がかかるので、従業員はやりにくそうだ。
現在3〜4店舗しかない状況では専用のセントラルキッチンは持っていないだろう。従来のフラカッソやジョリーパスタの加工品の活用程度ではサイゼリヤのレベルに達するのは容易ではないと思われる。その結果、料理の提供時間が6割も長くなるのだ。
4)料理の完成度と味
 味に関してはサイゼリヤとほぼ同様であるが、全般的にやや塩分が強い印象だ。この点についてはオリーブの丘のメニューにカロリーと塩分の表示がないので比較できないが、それはまだ味が固まっていないからだろう。
ファミレスの人気商品のハンバーグに関してはサイゼリヤのハンバーグがひき肉のメッシュが粗く肉の食感があるが、オリーブの丘のハンバーグは混ぜ物が多いのか蒲鉾のような食感である。
 サイゼリヤはここ数年、目立たないがハンバーグやステーキなどの肉製品の品質を大幅に上げている。この低価格イタリアン業態はパスタとピザ、ドリアの品質さえ高ければよいと思うと大きな間違いだ。土日のファミリー客が多い際には肉料理で客単価をしっかり稼ぐことが出来るからだ。

5)サイゼリヤの弱点
以上のように現時点ではオリーブの丘はサイゼリヤに完敗であるが、サイゼリヤも弱点はある。それは、ファストフードのようにセントラルキッチンをきちんと設計し、店舗の調理機器も限定しているので、新メニューの開発に難があるということだ。サイゼリヤの最大の長所は徹底した合理化により業界一の低価格を実現したことだ。しかし、現在の農産物の状況は値上がり傾向にあり、輸入農産物を低価格で買える最大の武器である円高も限界にある。それが、サイゼリヤがこれ以上低価格を実現できない理由だ。その現実は同社の既存店の月次の前年対比に明確に現れており、昨年9月から今年8月までの売上は93.0%と苦しい状況だ。
牛丼、ハンバーガー、ファミリーレストラン、居酒屋、等の業界を見ても、低価格路線に限界が見え出している。ファミリーレストランはいち早く、高品質の料理、店舗のリニューアル、新業態、の開発に乗り出して成功しつつある。それに乗り遅れているのがサイゼリヤであり、その虚を突いて、同じ価格帯でより高品質のメニューや、良いサービス、お洒落な内装を実現できればサイゼリヤを凌駕することは可能だろう。
また、アルバイトのモラルも店舗によりかなりばらつきがある。これが、店舗によりサービス時間が長かったり、サービスレベルや料理の味が悪い原因だ。
この新メニュー開発と従業員教育(モラルを高める)の点で、サイゼリヤを上回れば勝機は十分にあるだろう。ゼンショーグループの力とノウハウを終結すれば、サイゼリヤもうかうかとしていられない、目を離せない戦いだ。


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