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外食産業の海外進出


 2011年月号でも海外進出企業の動向を述べたが、それから1年の間に日本外食企業の海外進出は勢いを増している。その原因は日本の人口の減少と東日本大震災などによる景気低迷により、経済成長が続く海外への進出を図っているからだ。海外進出の中心は人口13億人の巨大な人口を抱え、まだ経済成長が続いている中国だ。

1) 中国の動向
中国に進出している企業は店舗数の順位で見ると、味千ラーメン(約500店舗)、吉野家(約300店舗)、サイゼリヤ(約100店舗)、等の順だ。その中でも味千ラーメンは急成長を続けて行列の絶えない店舗であった。外食業界ではKFCとピザ・ハットを約4000店舗展開するYumブランド中国社がトップ企業だ。その日米のトップ企業が2011年夏の同じ時期に中国の消費者と政府から品質に問題があるとして厳しく指摘されてしまった。
味千ラーメンの場合は店舗で豚骨からスープをとっており、カルシウムの含有量が多く健康的なのだとメニューに訴求していたが、工場で生産した濃縮スープを店舗で100倍に希釈しており、カルシウムの含有量は表示よりもはるかに少ないという指摘だった。KFCは中国人向けの商品開発で成功していたが、朝食の豆乳が粉末のものだと指摘されてしまった。中国では毎朝新鮮なしぼりたて豆乳を提供する店舗が多いのに,そのしぼりたての豆乳より高いのに粉末を使うとはケシカランという指摘だった。
中国の消費者は日本の消費者よりも食材の安全に敏感であり、ネットの普及も相まって悪い評判が急速に広まり、行列のできていた味千ラーメンもガラガラの状態になり株価も大幅に下落してしまった。KFCは広報戦略をしっかり行い、あまり被害は少なかったようだが、従来高品質の商品を提供するイメージが低下してしまった。中国は経済の発展と共に健康に影響を与える食品の品質に関する関心度が急速に上がっているので注意が必要だろう。
吉野家は1991年から積極的に中国出店をしており、現在297店舗(2011年9月時点・香港含む)近く店舗を構えているが、一番店舗数が多いのが北京で159店舗ある。吉野家の成功要因は現地の外食状況に強い起業にエリアフランチャイズ権を与えているため、メニューの現地化に成功していることだろう。牛丼の他に、牛丼にブロッコリーなどの野菜を乗せた丼、魚(鯖)の丼、牛肉カレー丼、チキン照り焼き丼、チキンと牛肉とのコンビネーションにブロッコリー等の野菜の丼、とんぽうろ丼(チャーシュー)、キノコ丼、等、豊富なメニューで価格は20元から30元と現地のファストフードよりちょっと高めだが、ブロッコリーやカリフラワー、人参などの蒸した野菜を多く組み合わせて、日本食の安全安心、健康的と言うイメージを全面に打ち出しており、それが女性客に大人気だ。ただ、このカテゴリーではKFC(何と丼を発売した)、味千ラーメン(日本とは異なり、カツ丼、うな丼等もある)、真功夫(香港風の広東料理のファストフード)、永和大王(台湾風の味付)などとの熾烈な競争があるので油断できないだろう。
 味千ラーメンや吉野家も現地で展開する企業は地域フランチャイズであり、日本側の収益はロイヤルティだけであり、収益的にはメリットが大きくなく、また、メニュー開発や他企業との連携など日本側のコントロールが完全でないのが今後の課題だろう。
 中国での展開で注目しなくてはいけないのはサイゼリヤだ。2003年ころから進出を開始し、現在はなんと中国に100店舗近く、上海には39店舗も展開している。日本では2等立地に展開しているが、中国では1.5等地と若干良い場所に、日本標準客席の倍の300席規模で展開している。先日、上海と北京の繁華街にあるサイゼリヤを訪問したが、凄いのは価格だ。サラダが8元〜10元、パスタ(14種類)9元〜12元、ピザ(10種類)19元〜22元、ドリア・グラタン(8種類) 9元〜11元、料理(12種類)13元〜29元、(チキンのディアボラ風 13元、ハンバーグ13元)、ワイン グラスワイン6元、ボトル 48元〜68元、と日本の半分位の低価格で、吉野家や現地の中華ファストフード店と同等の低価格なのだ。同社は日本と同じ商品だとしているが、味の現地化を行なっており、海鮮のパスタ(トマトソース味)の味は日本よりもソースがコッテリしており、ピザはピザ・ハットのように分厚く、トッピングやチーズも量が多く美味しい。客層も日本のように若い学生が楽しそうに会話を楽しみながら食事をしている光景が印象的だった。ただ、上海と北京ではピザの提供する皿が異なったり、味が異なるなど、まだ試行錯誤の状態だ。サイゼリヤは直営店なので店舗展開が進めば収益的なメリットは大きくなるだろう。
 ファミリーレストランではセブン&アイ・フードシステムズやロイヤル、すかいらーくが数店舗を展開しているが、この分野は難しそうだ。デニーズなどを展開するセブン&アイ・フードシステムズは2009年7月に北京の金融街に1号店を開き、現在では北京に2店舗を展開している。主力業態のデニーズと同じファミリーレストランであるが、デニーズの名称は中国では使えず、All Day'sと言う店名にしている。先日北京お店を訪問した。金融街にある店舗で味千ラーメン、吉野家、中国系の真功夫、台湾系の永和大王、米国のKFC等の競合が軒を並べている。
価格はファストフード系のお店よりもやや高いが、ホールにいるウエイトレスは日本のデニーズのように丁寧に接客をしてくれるのでリーズナブルな価格だ。ランチの料理の価格帯は28元〜38元。ハンバーグランチは38元。付け合せは目玉焼き、フレンチフライ、人参、ほうれん草と日本と同様だが、日本の220gに対し北京は380gの肉を使いボリューム感を出している。また、メニューには使用している牛肉の産地を明記して、安全性を訴求している。中国で日系外食店に人気があるのは品質に対する安心感だからだ。店名がありきたりで、価格帯にしては内装があまりお洒落でないのが欠点だが、サービスのレベルは素晴らしい。しかし、出店目標のペースには達していないようで、ファミリーレストランの展開の難しさを感じさせる。中国人はブランド、特に米国のブランドに憧れを持っている。ファミリーレストランで一番の競合はYUM社が展開するピザ・ハットで日本とは異なりフルサービスのカジュアルレストランで、そのサービスレベルは素晴しいし、店舗の内装も豪華で米国のカジュアルレストランのようだ。日本のファミリーレストランは店舗の内外装をカジュアルレストランレベルにグレードアップし、メニューも特徴のある肉料理等のレベルアップが必要なようだ。
中国はまだ後進国だと思われがちだが、中国人の富裕層は日本の人口よりも多く、レストランも豪華なお店が多い。食生活も北京オリンピック、上海万博を契機に大きく変わり始めているようだ。中華料理は脂っこいというイメージだったが、中国人の中華料理に対する好みが変わってきている。北京ダックの場合、全聚徳と言う老舗(中国全土でチェーン展開している)があるが、最近は全聚徳の北京ダックは脂が乗りすぎているとして、北京の一等地に2店舗を展開している「大董焼鴨」(ダードンカアウヤ)DADONGと言うお店が地元富裕層に人気がある。生後40日以内のダックを使い、皮には脂がついておらず、カリカリとクリスピーなのが特徴だ。また、モダンな店舗デザインと健康的なメニューで現在予約の取れない人気店となっており、中国人の好みの変化に注意深く対応する必要が出ているのだろう。
 今後中国に進出する日本企業で注目されるのは、カレーのcoco壱番とモスバーガーだろう。両企業とも欧米のファスト・フードとの差別化のできるライスメニューと味の現地化(モスバーガーは醤油味)ができる点だ。また、中国を含めた海外進出で着実に店舗展開をしているのが元気寿司だ。現時点で、ハワイ 14店舗、米国ワシントン州4店舗、香港・中国 50店舗弱と店舗数を伸ばしている。日本の特許とも言える回転寿司を武器にどこまで成長できるのか注目される。

2) 韓国
 日本の外食産業が進出をしても撤退を迫られる難しい韓国だが、回転寿司の進出が注目される。韓国人は近年健康志向が強く、ファミリーレストランやファストフード等の売上が低迷しているが、海鮮物を使う回転寿司業態が成功しそうだ。韓国人は鮮度の高い魚料理が好きで回転寿司などの低価格の寿司業態は難しいかと思っていたが、2009年10月にかっぱ寿司が店舗展開を始め、現在2店舗展開しており、続いて業界最大手のあきんどスシローが2011年12月5日に進出した。
 回転寿司は簡単そうに見えて機械の設置や運営方法、低価格のネタ確保などかなりのノウハウが必要であり、日本の回転寿司業界のノウハウが魚好きな韓国でどう受けるか注目されている。

3) その他の東南アジア
 タイに展開している大戸屋は定食屋ではなく、高級な和食店として人気が出ている。居酒屋業界のワタミが香港に進出し大成功し、現在は台湾、中国上海、シンガポールなどに進出している。東南アジア各国はアルコール比率が低く、ワタミは和食店として人気が高い。日本よりもオシャレで大型の店舗を展開し現地で人気を呼んでいる。ワタミの成功の秘訣は現地を熟知したやる気のある人材と、創業時からのベテラン社員のミックスだろう。ただし、ワタミも中国本土や東南アジアへの展開は現地の企業に対するエリアフランチャイズ権の付与であるのが残念だ。

4) 米国
過去数多くの外食企業が米国に進出をしてきたが、成功したといえるのはベニハナ(現在では米国企業)、吉野家(ニューヨークでは苦戦を強いられている)、の2社に過ぎないほど難しいマーケットだ。最近ではカリフォルニアに出店しているグローバルダイニングなども苦戦を強いられている。
 その米国に進出しようとして注目されるのはダイヤモンドダイニングだろう。同社は元ワタミ常務の江村氏が設立して大成功したSHOKUDOを買収し、米国での展開の足がかりにしているようだ。個性のある店舗展開は米国人に受けるかもしれないと注目されている。
 その他、米国進出するのはトリドール「丸亀製麺」、「カレーハウスCoCo壱番屋」、グルメ杵屋、フジオフードシステムのうどん専門店「浪花麺之庄つるまる」
等があるが、個性のあるメニューとノウハウが必要とされるだろう。

4)海外進出の注意点
 中国等の東南アジアに進出する際に注意が必要なのは、必要な基盤が整備されていないので、セントラルキッチンを自ら建設し運営するという投資が必要だということだ。また、場合によっては自社で物流を行う必要もある。
 また、中国に進出する場合には現地を良く知った企業と合弁を組まないと、政府の政策などの変更による被害を受けることが多い。そんなリスクを嫌って、現地の企業と提携し、地域フランチャイズ制で展開する企業が多いようだ。しかし、リスクを取らないと成功した段階での収益が僅かなロイヤリティ収入に過ぎないという結果になってしまう。海外に展開する時には米国のYUM社はマクドナルド社のように少なくても50%を所有する合弁でスタートし、次回の契約更改時には米国側がより有利な契約になるような法的な整備をきちんと行うべきだろう。そのような圧倒的に強い立場に立つためには、ブランドの強化と、商品や経営面における圧倒的なノウハウの確立が必要なのだ。その点では、ファスト・フード業態が有利であるといえるだろう。


4)海外からの日本進出
海外、特に米国からに日本進出というと案外成功例が少ない。成功したといえるのはマクドナルドとKFCくらいであろう。米国ハンバーガー業界のナンバー3のウエンディーズは撤退、2位のバーガーキングも最進出したが苦戦を強いられるというように日本進出の米国企業は苦戦している。
しかし、最近進出したアンティ・アンズ、フーターズは成功したといえるだろう。その理由は
1)日本側の提携していいる企業がマーケットを熟知し、外資系外食の日本事業展開手法を熟知 
アンティ・アンズはロッテリアの再建を手がけたり、バーガーキングやクリスピークリーム、コールド・ストーン・クリーマリーを日本に誘致運営した経験豊富なリヴァンプが経営しているし、フーターズ提携先のエッチジェー社長の田辺満男氏は日本マクドナルドで長年働いた後、外食向けのコンサルタントとして活躍しているベテランだ。
2)商品の特徴がはっきりとわかりやすい
 アンティ・アンズは健康的なドイツパンのプリッツエルを目の前で造り上げるし、フーターズは若いピチピチした女性従業員のセクシーサービス、と特徴がわかりやすく、若者層に人気のある業態だ。
3)1号店の立地選定 
アンティ・アンズは池袋の一番通行量が多い一等地に立地をし、常に行列の繁盛店となって話題となり、新聞雑誌に大きく取り上げられた。フーターズも赤坂見附の一等地に展開し、開店と同時に行列の出来る繁盛店となり話題が沸騰した。

 などだろう。いずれにせよ、業態がわかりやすく、若者に受けることが必要なのだ。
この2社の成功をみたウエンディーズは日本にドミノ・ピザを持ち込んだヒガ・インダストリーズと提携して再進出を準備中だし、カールス・ジュニアも日本マーケットに再進出を計画している。その他、日本進出を狙っているのは米国で勢いのあるファスト・カジュアル業態だ。
 また、最近は米国の外食チェーンと提携して大規模なチェーン展開をするのではなく、欧米や東南アジア等の繁盛店と提携してブランドと商品のアイディアをもらい、日本のチェーン技術で展開しようという動きだ。伊藤忠がベルギーの人気パン料理店と提携し、ラーメンチェーンのホッコクが店舗運営する担当するル・パン・コティディアン。セブン&アイ・フードシステムズがベトナムの小規模なチェーンと提携して7月1日に開店したフォー専門店「PHO24」等がその典型的な例だ。


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