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均一低価格居酒屋の動向
ワタミの低価格居酒屋 仰天居酒屋 わっしょい2 


 五反田東口を出て、駅前ロータリー奥に広がる繁華街に向わず、線路沿いに目黒に戻ってすぐに小さな居酒屋ができた。間口が狭く店舗外装は板張りで「仰天居酒屋 和っしょい2」と銘打っている。如何にも手作りの安い居酒屋の趣だ。平日の午後8時頃空いていると思ったら30分ほど待たされるほど繁盛している。店内に入ると目の前に客席がカウンターにそって30席ほど、入り口横の2つの大テーブルに20席ほど、その他合わせて合計70席ほどの規模だ。客席に平行にカウンターが長く設けられている。
 客席に案内される前に、セルフサービスのカードシステムの使い方を教わる。カード発行機にお金を2000円以上投入するとカードが出てきて、そのうち1800円分を使える。200円は清算時にカードを挿入すると戻ってくる。客席にはタッチパネルの液晶ディスプレーがあり、そこで自分の好きな料理や飲み物を注文する。そして、入金してあるカードをディスプレーにかざすと決済が終了し調理が始まる。しばらくして料理や飲料が出来上がるとディスプレーに用意ができたと表示が出る。カードを持ってカウンターに行き、カードを見せて自分の注文した料理や飲料をもらう。そう、この店はファスト・フードのようなセルフサービスのお店なのだ。ワタミが気合を入れて参入した均一低価格居酒屋の「和っしょい2」なのだ。
 他の大型居酒屋が業態変換した均一低価格居酒屋と異なり、立地を選定した新しい小型の均一低価格居酒屋を開店したことだ。均一低価格居酒屋の最低価格270円(税込284円)の単一価格ではなく、250円(税込)と500円の2つの価格帯を持つことと、完全なセルフサービスが特徴だ。
筆者はメカニカルなセルフサービスはあまり好きではないが、このお店は比較的年配のサラリーマン層から、OLのグループ、カップルなど幅広い顧客で大繁盛だ。ただし、このセルフサービスの均一低価格の業態が面白いとテレビ番組や雑誌などで紹介されているパブリシティ効果が多いことを差し引く必要はある。
 待っている間に年配のサラリーマン層の反応を見てみると、皆さん自分でタッチ式のディスプレーに入力するのに抵抗がない。現在の会社員は会社でパソコン等のIT機器を操作せざるを得ないし、個人ではアップルのiPhone等のタッチ式の機械に慣れているからなのだろう。
 さて、筆者が席に着き、注文を始めた。なれなくて困るかと思ったら、ディスプレーの表示が分かりやすくて助かった。慣れない人のためだろう、印刷した一覧できるメニューがパウチしてカウンターに置いてある。それを一覧した後、ディスプレーでジャンル別に呼び出し、入力し、注文、そしてカードで決済する。数分後にはディスプレーに出来上がりが表示され、客が取りに行く。
 テーブル上の印刷したメニューには250円メニューのみが表示されている。ワタミによれば250円メニューが7割を占めて安さを訴求するとしている。メニューはわかりやすく、すぐ出る料理、刺身、煮込み、焼きもの、揚げもの、食事、口直し、で分類されている。

メニューは

すぐ出る料理
枝豆
豆もやしのナムル
トマトの朝漬け
味噌キュー
トマトサラダ
生野菜サラダ
みょう苗サラダ
マカロニ&ポテトサラダ
タコワサキューリ
チンジャ&チーズ
珍味!このわた
ガツ刺し ポン酢
店づくりチーズ煎餅
有機大豆の奴さん
メヒカリの南蛮漬け

お刺身
 エンガワポン酢
 平貝のブツ刺し
 マグロ納豆
 マグロ切り落とし
 
煮込み
 コラーゲン!豚テールチゲ
 牛モツ煮込み
 マグロのアゴ煮
 ブリカマ大根

焼き物
 焼鳥3種串
 牛シマチョウ串
 焼豚3種串
 野菜3種串
 イカ丸焼き
 メヒカリ一夜干し
 丸干し鰯
 厚揚げ焼き
 ベーコンエッグ
 和風トマトピザ
 豚平焼き
 
揚げ物
 イカ唐揚げ
 ポテトフライ
 ハムカツ
 海老カツ
 甘海老の唐揚げ
 揚げ出しナス
 
お食事 
 納豆つまみ寿司
 ネギトロつまみ寿司
 牛モツ煮丼
 モツカレー

口直し
 懐かしサッパリ シャービック
 2色チョコアイス

飲み物は
 生ビールはサントリーモルツ
 ウイスキー
 ハイボール
 焼酎
 日本酒
 ワイン
 梅酒
 カクテル
 ソフトドリンク


一押しの一品(500円)は店内壁などに告知している。
 馬刺し
 牛ハラミ串
 甘旨!塩水生ウニ
 刺身盛り合わせ
 ブリカマ&頭の炭火焼き
 骨付き鶏モモの炭火焼き
 アワビの沖漬け
 活アワビ刺身
 マグロのトロカルビ揚げ
 デカホタテの刺身
 デカホタテの貝焼き
 デカホッキ貝の刺身
 等だ

一押しの一品のお酒は
 鹿児島の人気酒蔵の西酒造の宝山の綾紫、白豊、紅東、
 八海山 吟醸
 久保田 千寿
を置いている。 

どちらかと言うとオジサンメニューだ。特殊な調理機器を使用しなくても早く出るように事前に用意できるメニューが多い。食事でもモツカレーを訴求してすぐに出るようにしている。
 特筆するべきはお通しがないことだ。しかも価格が消費税込だから大きな差が出る。例えば金の蔵Jrは270円だが消費税を入れると284円となる。居酒屋の標準の2ドリンク3品を注文すると、お通し代284円を入れて、1704円にもなる。ワタミなどの通常の居酒屋の2300円と比べるとそんなに安く感じない。しかし、この和っしょい2はお通しをとらないので、1250円と金の蔵Jrに比べ454円も安く、圧倒的なお値打ちとなる。飲み物もサントリーのモルツの生が250円と言うのは圧倒的な価値観がある。
 安いメニューだけでは、年配の方は満足できない。料理は少なくても良いから品質の高い物をほしいという方にはアワビやウニを揃えている。料理はつまみ程度で美味しいお酒を飲みたいという要望もある。そこで、500円で、西酒造の人気焼酎や久保田千寿、八海山等等のオジサン定番のお酒を用意している。この価格設定により、低価格指向の若いサラリーマンも、美味しいお酒志向の年配の方も満足させることができる。低価格のメニューとちょっと美味しい料理をそろえる上手な戦略で、立地や客層による対応がフレキシブルになる上手な戦略だ。
 しかし、料理を何品か食べたが、開業したてでまだ品質にばらつきはある。和っしょい2のピザは早く焼くためだろうチーズを薄く塗ってある程度で、金の蔵Jrのチーズたっぷり!マルゲリータと比較すると価値感が低い。また、デザートの種類が少なく、女性にはちょっと物足りないだろう。
 
ここで、低価格居酒屋の歴史を見てみよう。チェーン展開している低価格居酒屋の元祖は株式会社テラケンが展開するさくら水産だろう。居酒屋の村さ来にフランチャイズ加盟して7店舗ほど展開していたが、ある時、門前仲町の老舗居酒屋魚三のカウンター中心の低価格業態に感銘し、つまみを50円からの低価格で提供するさくら水産を平成7年に開業し、その低価格が支持され急速なチェーン展開を開始し現在まで160店舗ほどを展開している。周辺のサラリーマンにアピールして集客するためにランチは500円で、おかず以外のご飯、みそ汁、卵、ふりかけ、海苔、の食べ放題を実施して大人気だ。夜のメニューはカウンター上に魚肉ソーセージ50円、コンニャクのピリ辛50円、まぐろあら煮80円、オニオンスライス80円、等の目立つ低価格メニュー、その他のメニューも300円台と言うリーズナブルな価格を打ち出し、サラリーマンに支持されるようになった。
 その後に、関西の株式会社イターナルサービス経営の鳥貴族が270円の均一価格を武器に2005年に東京に進出し、価格の分かりやすさと料理のボリュームで大人気となった。
 そして、リーマンショック後の居酒屋の経営不振を打開するべく、比較的にお洒落で大型の居酒屋、東方見聞録や月の雫を経営していた三光マーケティングフーズが270円の低価格居酒屋の金の蔵Jrへの転換を開始し大成功した。その成功を見て現在は大手居酒屋チェーンがその価格帯に雪崩の如く参入を始めている。
 その動向を見ながらじっくりと考えてワタミが開発したのが、250円と500円の2つの価格帯を売り物にする「仰天居酒屋 和っしょい2」だ。五反田には飲み屋街が林立する繁華街があるが、駅から近いが周囲には飲食店の殆どない場所に開店した。
さて、ここで低価格居酒屋の低価格のノウハウを見てみよう。

さくら水産は
食材コストを低減するために、市場で自ら吟味しコストに見合う食材を最低価格で買い入れる。人件費の面では外国人労働者を多く使う。

鳥貴族は
鳥を店で串うちする。店内内装を自ら手掛けて低投資コストにする。店舗展開はフランチャイズ中心に行う。一つのフランチャイズに多店舗展開させる。ローコストにするため私鉄沿線の小さな店舗を展開する。

金の蔵は
人件費に注目し、注文を顧客が入力するディスプレーを各テーブルに設置し、注文をとる人件費を削減する。食材については国内外から徹底的な低コスト食材を入手する。既存店の転換により新たな投資が発生しない。と言うことだ。さらに金の蔵Jrが行ったのが注文を顧客がタッチタイプのディスプレイで自ら行い、注文をとる人件費を削減したことだ。

そこで、ワタミが和っしょい2で行ったことは
単一価格でなく250円と500円と言う価格を打ち出し、ある意味では250円と言う最低価格を訴求し、500円の価格で料理や酒の品質と客単価の確保を狙った。
人件費の面ではタッチタイプのディスプレーに顧客が注文を自らするだけでなく、料理も顧客が取りに行くファストフード方式にした。会計も事前にカードを購入し、タッチタイプのディスプレーに注文を入れるときに同時に決済するようにした。既存店の転換でなく、面積の比較的狭い2等地立地を狙い、内装もシンプルで低コストにする。

和っしょい2の投資内容を見てみよう。本誌8月号でワタミ桑原豊社長は「
セルフサービスのタッチパネルや決済システム等のシステム投資で700万円かかったが、その他の投資を削減し初期投資1800万円、客単価1800円で月商630万円、投資回収は2年半」としている。情報システムに700万円かけているとしているが、通常のレストラン用のタッチパネルではなく、パチンコホール業界で使われる簡素なディスプレー(マースエンジニアリング社製)を使うなど
工夫を凝らしており、よりコストダウンが可能になるだろう。また、ディスプレーの表示は金の蔵Jrのように画像を多用せず、シンプルでわかりやすくなるようにするなど、他社の研究を綿密に行い、ワタミ独自のシステムに仕上げたのには感心する。

 オペレーションでは「ピークタイムでキッチン4名、ホール1名。人件費は19%以内、フードコストは通常の1.5倍の42.5%。調理カウンターを客席向けにして全員でお客を迎えるようにする。客が注文で迷っていてもすぐにわかり、フォローできる。」としている。
料理の注文と決済、料理の配膳を顧客にやらせるために、ホールの従業員は極端に少ないのがメリットだ。訪問日当日はマスコミに取り上げられたためか忙しく、調理場に7名、ホールに2名いた。これが軌道に乗れば、ピーク時調理場4名、ホール1名でまわせるようになるだろう。
売上が低ければ、調理2(一人がドリンクと調理、もう一名が調理専任)
ホール1の3名で回せる。この人件費の削減によりローコストオペレーションが可能で、しかも売上管理などの余分な仕事が減少する管理上のメリットもある。
 桑原社長も述べているが、今後5年ほどで100店舗をじっくりと開店するとしている。この和っしょい2の本当の狙いはDFC(ワタミの社員独立制度)の普及だろう。
上場前からDFCを従業員へのモチベーションとして重要な戦略として掲げているワタミだが、進捗具合が若干遅い。それは従来のワタミでは重装備過ぎて、資金的にも経営的にも負担が多いからだ。そこで、軽量でオペレーションが簡素なわたみん家を開発し、さらに夫婦での営業が可能な炭旬を開発した。その社員向けのDFCを加速させるのが、この低投資で人件費を抑えられる和っしょい2だろう。
関西のマルシェは小型の八剣伝と言う焼鳥業態を中心に地方都市でフランチャイズチェーンを展開している。この全国のマーケットに展開できる低投資の小型店の展開を行えば行き詰ったと言われる居酒屋チェーンの売上を伸ばすことができる。ただし、低コストで地方出店するには個人経営で地元に密着するフランチャイズチェーン形態をとらなくてはいけない。
そのような地方都市展開と社員の独立を志向する社員のフランチャイズ化を実現できる可能性が高いのがこの和っしょい2の店舗形態だ。実際ワタミの発表している経営計画によるとDFC(社員独立制度)推進は新規出店の拡大と新業態の立上げによって行い、2011年3月期末には110店舗をDFCとする計画を打ち出しており、その大きな原動力となるのがこの和っしょい2ではないだろうか。

 


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