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2004年2月号

危機管理 

商品戦略安定のために相当の時間を費やせ


 今回のBSEの事例を見ると、危機が発生してからの対策では不十分だと言うことが判明した。


1) 吉野家の問題点
吉野家の最大の失敗は国内でBSEが発生して2年以上経過しているにも関わらず、以下の3つの対策を怠っていたことだ。

<1> 代替え商品の開発を怠っていた
吉野家と松屋を比べるとそのメニュー開発のスピードは大きく異なっていた。BSE事件が発生してから、カレー、焼き鳥丼、鮭いくら丼、等を導入しようにも牛丼の鍋と湯煎器だけではメニューに限界が出る。競合の松屋の場合、ハンバーグを焼く本格的なグリドル、フライドチキン用フライヤー、再加熱できる大型電子レンジ、等を設置しており、FRが出しているほとんどのメニューを提供できるだろう。

<2> 牛丼以外の多業態化を行っていなかった。
ゼンショーは多業態化を真剣にすすめ、現在ではCOCO'S、ウエンディーズと言う、ファミリーレストランとファーストフードを手中に収めており、収益性は低いが、企業としての安全性は高い。
吉野家の正式社名は吉野家D&Cだ。その名称の由来はダンキンドーナツ部門をもっていたことによる。小麦粉、油、砂糖と言う安定した原料を扱うダンキンドーナツは業界第一位のミスタードーナツに負け、1998年に撤退してしまった。経営陣に取ってドーナツは古くさく、生産性の低いビジネスに見えたのだろう。しかし、今、米国でクリスピークリームというドーナツチェーンが急成長していることを見てみるとその判断はやや拙速だったかもしれない。その他、吉野家は居酒屋、惣菜、カレー、等の新規事業を手がけているが、効率という壁に阻まれ大きなビジネスとして成功していない。

<3> 牛肉の調達を2ヶ国以上に広げていなかった
これからオーストラリアから輸入をしようとしても味と価格の問題が大きな壁となって立ちはだかる。オーストラリアに食品加工工場を設置したサイゼリアでも本格的な稼働の前に異物混入などの事件を抱え、稼働が遅れているのをみても、本格的に購入を検討してから、数年、品質改良を考えたら、5年以上の期間が必要なのだ。

しかし、吉野家を無策だと責めることはできない。セゾングループによる支援で会社を更正した吉野家は、後にセゾングループが解体する際に、グループ負債の分担と言う問題等のために、健全な財務を守らなければならず、それが、新規事業への本格的な投資を妨げたという不幸な側面もあるからだ。

2)米国外食産業から学ぶこと
米国最大の外食企業であるマクドナルドも吉野家と同じ苦境にあえいでいた時期がある。
マクドナルド創業時にはビーフ100%のメニューであったが、1970年代後半からポークや玉子などの朝食メニューを導入し、売上の20%近くの売上比率とした。次に1980年台初めにチキンマックナゲットという鶏肉メニューをヒットさせ、メニューにおける牛肉の比重を大きく引き下げることに成功した。
しかし、1982年にオレゴン州やミシガン州のマクドナルドで販売されたハンバーガーによる腸管出血性大腸菌o-157が原因とする大規模な食中毒が報道され、翌日からマクドナルドの売上は30%も低下するという危機におそわれた。 

対策として、品質管理の専門家として米国大手食品メーカーの品質管理のプロを取締役として招聘し、品質管理に当たらせることにした。大手食品メーカーの品質管理はアポロ計画で使用された食品の安全管理システムHACCPを採用するなど外食企業よりも10年以上進んでいたからだった。
マクドナルド社が取り組んだのがグローバルパーチェシングと言うプログラムだ。世界中から一番安い価格の商品を買え、それが65円ハンバーガーを実現したと思われているが、実はこのプログラムこそが究極の危機管理対策だったのだ。
グローバルパーチェシングとは世界中から同一品質の食材を手に入れることである。同じ工場を造れば同じ品質が変えると簡単に思えるがそうではない。牛肉で言えば、BSEや口蹄疫、等の問題があり簡単に輸出入できないし、牛肉の味の問題がある。さらに食肉加工工場の衛生管理、等膨大な作業が待っている。

工業化でき、比較的に安全なバンズ工場だと、同じ工場を造れば世界で同じ味になるはずだったが、世界で提供していたバンズは千差万別であった。世界で同一の機械を使うことができないし、小麦粉、イースト菌、の違い、国による添加剤の規制、等、同じ味を実現しない障壁は限りなく存在した。
それを乗り切るために行ったのが、世界レベルで行った、味の比較テストだ。世界から食材を集め、マクドナルド社の人間だけでなく、食材メーカーの担当者も参加させた。食材のプロだから、他のメーカーと比較され、その優劣が明らかにされることは最大のプレッシャーなのだ。また、旨くいったときにはそれは最大の勲章となる。このプログラムは20年ほど継続しているが、やっと最近は世界で同じ品質を実現できるようになり、どんな事故が発生しても食材の供給は世界規模で保証されると言われようになった。
日本の外食産業は危機管理対策には相当の時間がかかるのだと言うことを学ばないといけないだろう。


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