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フードサービス地区部長の仕事 第11回目


地区部長の開発業務

ハンバーガー業界もマクドナルド等の低価格戦略からの脱却から、高級ハンバーガーの商品開発にトレンドが移っている。モスバーガーは8月13日から匠味バーガー(580円、640円)の販売に取り組み、マクドナルドはマクドナルドダイニングというデザイナーにデザインさせた洒落た店舗でクラシックという高級ハンバーガー(350円,370円)を販売している。
味はモスバーガーの匠味がダントツで、マクドナルドダイニングの肉質はぱさぱさしていた。しかし、モスバーガーは注文後13分待たされてしまったし、1日10食限定だ。
提供時間とおいしさの実現がファーストフードで成功を収める秘訣なのだが、どうも最近のファーストフードは両方を実現できているとはいえない。ファーストフードの調理システムは簡単だと思いがちだが、資材の調達から加工、調理システムまで緻密に構築されている。
 2001年にマクドナルドの調理システムの変遷を詳細に述べているが、筆者は調理システムの改善の過程において、筆者はSVや統括SV、運営部長、全国統括運営部長として、開発に関与してきた。その経験を紹介しよう。
 ファーストフードと言う業態と言われるためには注文後1分以内で料理を提供できないといけない。マクドナルドはファミリーレストランやステーキレストランで使用するグリドル(3cmほどの厚さの鉄板をガスなどの熱源で加熱する)でハンバーガーを焼いていた。45gの肉で片面1分づつ焼き上げていた。
注文後できあがるまでに2分30秒必要なシステムであった。それを注文後1分間で提供するために考えたのが、作り置きだ。お客様の来店を予測して、あらかじめ焼き上げ、完成品として包装紙で包んで保温庫に保温しておく。その他、フレンチフライ、アップルパイ等も揚げた後、包装保温しておき、注文後ハンバーガーと一緒に短時間で提供する。商品の品質を維持するためにハンバーガーであれば10分、フレンチフライは7分で廃棄し、できたてのおいしさを保つようにした。
当初は売上が高くハンバーガーとチーズバーガーと種類が少なかったのでそのシステムで問題はなかったが、その後商品アイテムが増加してくると、保温してある商品を切らしたり、賞味期限が切れて廃棄処分をしなくてはならないと言う問題を抱えるようになった。
 米国マクドナルド社は商品が切れてから一度に大量に調理を開始するとできあがるのに時間がかかる対策として、ハンバーガーを売上予測により少量ずつ作るシステムを開発した。時間帯の売上を元に10分間で何が何個必要か計算し、常に少量のハンバーガーを製造し続けるというシステムだった。そのために計算尺を開発し、売上を見ながら調理個数を上下させる仕組みだ。アイディアは良かったが、調理をしながら計算をするのは不可能であった。そこで、筆者が考えたのが、POSデーターの活用だ。
POSは秒単位で販売個数を把握している。その商品別の販売個数と時系列から販売予測を建てようと言う考え方だ。1時間当たりの販売個数を4等分し、その間に必要な陳列数と過不足を計算しようと言う簡単な物だった。しかし、この簡単なシステムは、忙しいときの手作業の計算を省き、自動化することに成功した。その後、POSのプリンターに1時間ごとに15分単位の使用量と必要保管個数を表示させるようにした。このシステムはその後15年以上使われていた。
 ところがその後のマクドナルド商品開発の方向は調理速度短縮と自動化に向けられた。マクドナルド社の最大の競争相手はバーガーキング社であり、彼らはコンベアーブロイラーという両面から自動で焼き上げる調理機器を開発し、焼き上げたミートパティ、バンズ、揚げたフィッシュフライを保温し、客の注文によりそれを取りそろえ、電子レンジで温めて出すという仕組みを考案した。通称アッセンブル・ツー・オーダーと呼ばれる考え方だ。
 そこで、マクドナルド社は15年ほど前より調理システムを根本的に変更した。ミートパティを両面から同時に焼き上げるクラムシェルグリルを開発し、ミートパティの調理時間を半分にした。次に、精度の高い蒸気保温庫と電子レンジを組み合わせた、ステージングシステムを開発し、客の注文が入ってからできたてのハンバーガーを作るようにした。
5年ほど前からはその改良型のメイド・フォー・ユーと言うシステムを開発した。電子レンジはどうしても客のイメージが悪いし、味も良くなかったからだ。そこで、焼き上げたミートパティやフライ物を遠赤外線の保温庫で保温し、客の注文が入ってから、20秒ほどで焼き上げる高速のトースターを開発し、できたてのハンバーガーを提供できるようにした。しかし、どちらのシステムもバーガーキングの保温システムの模倣にすぎなかった。
 その結果、スピードサービスは早くなるはずであったが、現実の店舗の売り上げパターンに追いつけず、サービス提供時間が長くなると言う混乱を呼んでしまった。しかも、クラムシェルグリルで焼き上げたミートパティは、ぱさぱさで、それを更に保温するから、ハンバーガーのミートパティは競合他社に比べ美味しくないという評価を受けてしまった。
 実は、売上予測を厳密に行うことで大成功したのはセブンイレブンだ。2500種類以上の商品の品切れを起こさず、賞味期限が36時間しかない弁当などの商品を廃棄処分しないようにするには厳密な発注予測システムが必要になる。食品の売上は天候に左右される。たとえばドーナツやパン類の一番売れるのは3月〜4月、10月〜11月、など湿度が低く、カラットした陽気だ。同じことは弁当にもいえる。夏になり気温と湿度が上がると弁当の売上は極端に低下する。その対策が冷麺だ。アイスクリームは夏場に売れると思いがちだが、28℃を越えると油分がしつこいので売れなくなり、かき氷などのさっぱりしたデザートが売れ出す。その商品の変わり目をとらえるのが一番早いのがセブンイレブンだ。同社はコンピューターに過去の販売データーと天気予報を組み合わせを、発注を行い、販売ロスをなくすようにしている。 
売上は天候に左右される。そこで1平方メートルあたりの緻密な天候予測のデーターと過去の商品別の販売数を、同時に表示する。更に、商品の売上を左右する広告宣伝費については当該商品のテレビコマーシャルのテレビ放映量(総視聴率GRP)で判断するわけだ。このセブンイレブンの正確な発注予測を可能にしたPOSソフトウエアーが外食の売上を浸食したと言っても過言ではないだろう。
 当時、POSの発注予測システムを考えた筆者の次の開発目標は、もっと高度なシステムだった。
通常の繁華街立地の店舗で、客が店舗に入り、注文をするまでを考えてみよう。客が店舗前を通りかかる時が勝負だ。店舗から離れた場所を歩いている通行人に目立つように袖看板などで店舗所在を告知する。そして、店舗前を通りかかる客に店頭のキオスク看板で、店名を告知し、店頭を見させる。そして、店頭にはその時に売りたい商品や売れそうな商品のPOPを自動的に変更掲示できるようにする。天候、湿度にあった商品を見ることにより、客は店内に吸い込まれる。店頭のPOPは商品が美味しく見えるような色合い、照明の種類に気を配る。テストではその最適なPOPと販売員のおすすめ売りにより大きく売上が左右した。
繁華街立地のファーストフードの売上は店前の通行量に左右される。この仕組みを完成させるには、天候と通行量のデーターをリアルタイムに処理することが必要であり、当時のPOS演算性能は貧弱であり、天候や通行量データの入手と入力が不可能であり断念した。
しかし、技術は日進月歩だ。最近ではデジタルカメラ等で使用されるCCDの高性能化と演算処理の高度化により、店舗前通行量を正確に計算できるようになった。そのシステムは大型のショッピングセンターやビルなどで実際に使用されるようになっている。このシステムと安価で高性能なPOSを組み合わせれば筆者のアイディアは実現できる時代となったのだ。
http://www.trastem.co.jp/
http://business1.plala.or.jp/hci-c/plalaboard/message/1649.html
地区部長はそのような色々な技術の進化に注意を払い、常に改善をしようと心がけなければいけない。ファーストフード各社も調理時間の短縮だけにとらわれないで、正確な売上予測システムの構築に取り組む時期に来ているといえるだろう。

(続く)

お断り
このシリーズで書いてある内容はあくまでも筆者の個人的な経験から書いたものであり、実際の各チェーン店の内容や、マニュアル、システムを正確に述べた物ではありません。また、筆者の個人的な記憶を元に書いておりますので事実とは異なる場合があることをご了承下さい。


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