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フードサービス地区部長の仕事 第9回目


チェーン化と相反するデザイン

ファミリーレストランは郊外型を中心として展開していたので、標準化をしたデザインでよかったが、ファーストフードのように都心の立ち食いから、客席を備えた店、そして、郊外のドライブスルーの展開、など多様な立地に最初から取り組まざるを得ない場合は、立地別にあった店舗デザインの必要性に早くから迫られていた。
 店舗標準化のプロジェクトチームを発足し、店舗デザインの多様化と標準化に取り組むことにした。当時はデザインもシステムだ、論理的に構築できると慢心していた。都心型の店舗は米国を連想させるステンレスを多用したメタリックなデザインであったが、郊外型の場合、子供や家族連れが多いので、子供にアッピールする色彩を取り入れようと赤や緑黄色などの原色(いわゆるミキハウスカラー)を採用したり、客席の多い都市型の店舗は木目を多用するなどのデザインを行い、いくつかのパターンで標準化を行った。もちろんデザインだけでなく、厨房レイアウト、客席レイアウト、什器備品、などの標準化も行った。標準化は成し遂げたが反面、どの店舗に行っても同じようなつまらない内装デザインとなってしまった。
米国の店舗デザインを研究したところ、各地の景観規制にあった外装デザインや町並みにあった内装を、専門のデザイナーに作業をさせていた。そこで、テスト的に米国デザイナーと家具製造業者を選定するなど、店舗内外装デザインは専門家に任せることにした。その結果、スタイリッシュなお店ができあがり、客だけでなく社内の評判も大変よかった。店舗デザインの善し悪しは客の評価をあげるだけでなく、経営陣の満足感も充実させる効果があったのだ。
それからの店舗はなるべく異なるデザインを目指し、担当者は競って見栄えのする内装デザインを取り入れた。しかし、店舗ごとに異なる資材やデザイナーを使うわけだから、見栄えは素晴らしいがコストが上がり、資金面で多店舗展開に支障が出始めた。
そこで指定の建設業者1社に加えて、新規の建設業者を幅広く募集し、各店舗異なるデザイナー、異なる建設業者を使うようにした。その結果、個性的な内外装の店舗をローコストで建設することに成功した。しかしそれは大きな副作用も抱え込むこととなった。
 優秀なデザイナーは如何に芸術的な内外装になるかを考える。感性で設計をするわけだ。個性的な魅力のある店舗を実現するためには、内装材の床材、壁紙、天井、に工夫をこらす。天井であれば平坦でなく、凹凸をつけ変化を醸し出す。照明はより輝度の高い特殊なスポットライトを多用する。客の目線にさらされる床材にもこだわり、凹凸や艶のある石材やタイルを使う。壁も同様だ。
 予算が十分あればよいのだが、合い見積もりで予算をぎりぎりまで切りつめさせるから、床などはベテランが時間をかけて丁寧に貼ればよいのだが、新しい業者はコストを意識し、未熟練の職人に短時間で作業をさせるのであるから、床はよけいでこぼこになり清掃性が悪化する。
 清掃性が悪く後でメインテナンスにお金がかかるのは何とかなったのだが、火災の発生と客の居心地を悪くさせるという問題も抱え込んでしまった。古い店舗は軽天に不燃の石膏ボードと吸音ボードを貼り、蛍光灯器具を多用していた。デザイナーが作る凹凸と変化のある天井を安く作るために、天井に可燃性の合板や木材を多用する。デザイナーが好んで使う輝度の高いスポットライトは高温になり、長年使用すると周囲の木材を乾燥させ、着火させるという問題を生じたのだ。
また、見栄えのよい内装材でコストが上昇するので、それをカバーするために空調機器の台数を減らしたり、凝った店舗外観のために空調の室外機を狭い風通しの悪い場所に設置する。天井の凹凸にも妨げられて、空調のムラが発生するだけでなく、数の少ない室外機の冷却が不十分で、夏場は暑いと客のクレームが続出した。
 それまで、店舗の使い勝手という主張からデザイナーの主張に沈黙を守っていたが、デザイナーにすべてを任せることは危険であることにも気がつき、素晴らしいデザインと両立できる、店舗の安全性、高い人時生産性、低ランニングコストと言うスペックを満足させなければいけないと気づかされたわけだ。以下はその内容だ。

<人命や怪我に関わる重大な問題>
1)火災や造作の不備による顧客の怪我
内装の安全性、不燃材、天井内部の配線の管理、非常階段、消火器などの整備をきちんと行う。最近でもある居酒屋チェーンで内装材に外装に使用する瓦を使い、開店時に瓦が落下し客を怪我させマスコミをにぎわせた。内装に使う場合は安全な軽量瓦を使うのをチェックしなかったのが原因だろう。内外装資材の安全性の知識も必要だ。

2)駐車場での事故
 夏休みなど子供が多い場合は駐車場の事故も多い。通路幅をしっかりとったり、死角をなくしたりする必要がある。
3)階段での転落事故
 階段での転落は骨折したり最悪の場合は死亡者もでる。滑りにくい床材は手すりの整備を怠らないようにする。階段の傾斜も大事だ。
4)自動扉での衝突事故
 都心型の店舗でガラスの自動ドアーを使う場合があるが、子供が入り込んだり、眼鏡をかけた人がぶつかっての怪我が多い。ガラス面にクッション材を入れたり、安全性の赤外線の作動を確認する。
5)ガラス窓の事故
子供が遊んでガラスを突き破っり大事故になったことがある。ガラスをあまりきれいに磨くと事故が起きるので、ガラス面にはシールなどを貼る対策をとる。

<売上の確保>
内外装のデザインがよくても以下の内容を怠ると売上が上がらない。
1)チェーンとしての統一性の維持
やはり、チェーンとしての統一性を保つためにはロゴマークとその視認性には気を配るべきだ。
2)看板の大きさ、色、設置場所と数
 デザイナーは看板をなるべく小さく少なくし、穏やかな色を使いたがる。しかし、売上を上げるには看板はやはり重要である。
3)客席レイアウト 
 いくらデザインがよくても十分に客を確保できる客席がなければだめだ。一組あたりの客数とテーブルと客席数のバランスを考慮した効率のよい客席は店舗運営サイドが主張しなくてはいけない。また、従業員が働きやすい通路幅と従業員導線を確保する。さもないと熱い料理を運ぶ途中、客にぶつけたり、かけたりして事故を起こす危険があるからだ。

4)厨房機器とレイアウトの標準化
 ある居酒屋の設計でデザイナーに任せたら標準店舗よりも30%ほど人件費が高いことが判明した。素晴らしいデザインだけでなく、高い生産性も発揮する、厨房機器やレイアウトはきちんと主張する。

5)駐車場の配置
 客席と同様に十分な広さの駐車場と駐車のしやすさは、ファミリー客や女性客を確保するためには重要だ。駐車場台数を確保するあまり、一台あたりのスペースを削減すると女性客にいやがられるので注意をはらう。

<ローコストオペレーション>
1) 省エネルギー
デザイナーに任せると、照明 照度、使用する照明器具の標準化を無視し、ランニングコストが高くなる。また、省エネルギーの観点からのスイッチなどの配置、空調機器室外機の設置場所と清掃性などは、きちんと指定する。

2) 調理機器の省エネルギー
 ランニングコストに大きな影響を与えるのは効率のよい調理機器の選択だ。調理機器の選択はデザイナーに任せてはいけない。フライヤー一つとってのメーカーにより性能は大きく異なるから、使いやすい最適の調理機器を選定し、使用しなくてはいけない。

3)内外装の耐久性 清掃性 交換時の入手のしやすさ
 いくらデザインが大事であっても1年も持たないのではコスト的にあわない。耐久性、入手のしやすさ、清掃のしやすさは必ず確認しよう。

 本誌先月号でデザインの重要性の特集を組んでいるようにこれからよりいっそうデザインの重要性は高まり、優秀なデザイナーを使う機会が増えてくるだろう。地区部長はデザイナーの仕事で店舗は関係ないと無視しないで、安全性、使いやすさ、ランニングコスト、清掃性の機能面など、標準化しそれをデザイナーに伝えよう。また、デザインの優れた店舗を日頃から見学し、その良さと店舗運営上の問題をしっかり把握しておかなくてはいけないのだ。

(続く)

お断り
このシリーズで書いてある内容はあくまでも筆者の個人的な経験から書いたものであり、実際の各チェーン店の内容や、マニュアル、システムを正確に述べた物ではありません。また、筆者の個人的な記憶を元に書いておりますので事実とは異なる場合があることをご了承下さい。


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