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フードサービス地区部長の仕事 第8回目


地区部長に必要不可欠な店舗改造

開店後10年以上も経過し、老朽化した店舗では売上が低迷するのは当たり前だ。しかし、地区部長の皆さんは売上不振の店舗を改造して綺麗にすることにより売上を上げられるという自信はあるだろうか?特にチェーン展開間もない企業の地区部長はまだ経験が浅く、理論的にはわかるが本当に改装したら売上が上がる、と言い切れる人は少ないはずだ。筆者も実はそうであり、店舗改装では色々悩んだ物だ。
筆者がマクドナルド時代の統括SV(約30店舗を担当)の時だった。JR駅前の百貨店にある3号店の問題だった。マクドナルド開業当時は米国が主張する米国型郊外店舗の出店と銀座などの都心店舗出店のどちらがよいかまだ迷っていた時期だった。1号店、4号店は都心の百貨店の1階出店であったが、2号店はJR駅前のイートインタイプ、3号店は東京からやや離れたJR駅前百貨店1階のイートインタイプだった。都心の立ち食いスタイルと客席スタイルの両方をテストしたのだった。皆さんもご存じのように銀座店や新宿店は歩行者天国の開始とともに立ち食いのスタイルが流行となり、大繁盛した。その立ち食い全盛の中で、苦労したのが客席を持つ3号店だった。狭い店舗の厨房を狭くして、40席ほどの客席を確保した。しかし、中途半端な客席のため、百貨店に来店する客が多い日曜日には着席できず売上は伸び悩み、累積赤字は溜まる一方だった。
当初の数十店舗の建設は銀座店が数日で作り上げたという伝説が残っているように、組み立て式店舗であり、その内装設備は最低限度で、耐久力は全く考慮されていなかった。そのため5年も経過した3号店は空調も効かず、厨房の水漏れなどの設備問題に悩まされていた。マクドナルドではQSCを守れないと売上は取れないと言うのであるが、現実の所、新店舗以上の改装費をかけて、現在赤字の店舗を黒字転換できるのかと言われると誰も自信がなく、改装計画を実行に移すことはできないでいた。その状態で引き継いだ筆者も店舗の設備状態のひどさと累積赤字の矛盾に悩まされていた。
ある日、どうやって改装を軌道に乗せるかと言うことで、担当のSVと打ち合わせに店舗裏の喫茶店に行った。さて、飲み物を注文しようと店舗内を見渡すとそこら中にアルバイト求人ポスターが貼ってある。しかも古ぼけたポスターで年中アルバイト不足であることが伺えた。しかも、働いているアルバイトはやる気がなく、お店の経営者もいなかった。担当のSVにどんな店かと聞いてみたら、経営者はまだ年齢が若く、遊び盛りであり、麻雀などの賭け事に熱中しお店に来ないと言うことだった。この店舗は権利譲渡であり、経営している人が了承すればその賃借権を買い取ることができるのだった。早速、筆者はSVにその交渉に当たらせた。その結果2000万円で店舗を譲渡して良いという返事をもらった。 
しかし、大きな問題にぶち当たった。2000万円で店舗権利を取得し、7000万円ほどかけて改装する価値があることを経営トップに説得しなければいけなかったのだ。当時まだ店舗改装が売上向上につながるという理論的な構築を行っていなかった。デザイン面での改装では売上を維持することはできても、向上することはできない。ということは店舗改装をする際には売上が上がる仕組みを考えなくてはいけない。この店舗の場合の仕組みとは客席の増床だった。拡張により従来40席であったのを150席にできるのだが、それによりどれだけ売上が上がるか詳細に検証し、改装にかかる費用をカバーするだけの利益が出るのかを算出し説得しなくてはいけなかった。幸い、客席の回転率を向上させることで売上が上がるという実験をスーパーバーザーの際に経験していたので、その経験数値を使い算出することにした。それはテーブルレシオと同伴客数、回転率、などの理論であった。詳細については98年9月号を参照していただきたい。
http://www.sayko.co.jp/article/syogyo/insyoku/98/98-09.html
次に大事なのは店舗のデザインだ。当時のマクドナルドはチェーン理論に基づきすべての店舗が同じデザイン、材質、色合いだった。そうすると立地や店舗の形状によっては合わない現象が出てきた。また、すべての店舗で同じデザインでは客は飽きてしまう。そこで、米国出張の際に米国の店舗の写真を撮り、そのデザイナーを聞き出し、初めての大改装に米国のデザイナーと内装家具を使用して、本格的なお店を作ることにした。デザインと簡単に言っても経営トップを説得するだけではうまくいかない。建築担当部と資材部、そして資金を出す財務部、を納得させなくてはいけない。そのために米国出張の後、詳細なレポートを作成し、スライドで撮影した店舗の写真を使って何回かプレゼンテーションを開き、全社の洗脳を図っていった。一番てこずったのは直属の上司だった。どんどん改装資金をエスカレートする筆者にあきれた上司は「わしは知らん、稟議書に印鑑だけ押すから、お前責任取れ」と言う。「やった」と思った筆者は改装を実行したのは言うまでもない。苦労して改装にこぎつけた結果、売上は順調に伸びて開店当初の売上の10倍以上まで伸び、累積赤字はあっという間に解消し、利益を生み出す金の卵に成長した。
競合にうち勝つための積極的な改装計画も実施したことがある。3号店の改装で大金を使ったのを危ぶんだ上司は、筆者を米国に2年間駐在をさせた。ま、左遷と同様であった。何しろ英語ができないで米国駐在なんぞ拷問と同じだからだ。しかし、つらい英語の反面、米国駐在はマクドナルド本体の全てのノウハウを学ぶことができて、大変勉強になった。米国駐在の後に関西地区の地区部長に帰任した際は、米国最新のドライブスルーレイアウトを持ち帰り、関西地区でのドライブスルー店舗を展開することにした。
その成功ぶりを見た、関西地場のレストランは米国のWという中堅のハンバーガーレストランと提携し道頓堀の担当店舗の真ん前に開店した。矢継ぎ早に2号店を担当地区京都の稼ぎ頭のドライブスルー店舗前に開店するという。この稼ぎ頭を攻められたらたまらない。そこで急遽改造計画を策定した。売上を上げるためにドライブスルー機能の強化と駐車場の増設だ。
しかし、当時の日本のドライブスルー店舗の設計はひどい物だった。当時の建設担当者、不動産担当者、営業責任者の全員が運転免許を持っていないので、ドライブスルーレーンの設計は旨くいくはずはなかった。基本的な考え方は道路からドライブスルーレーン入り口を入り、商品の受け渡し窓口まで何台の車が並ぶかということであるが、十分な台数が並べず、道路にはみ出ると客は並んでくれない。また、出口から道路に出るまでに何台か並ぶようにして、信号が変わった時などに数台同時にでれるようにしないとスムーズに台数をこなすことができない。駐車場やドライブスルーレーンに書く字も、上から見るのではなく、車から見て見やすくしなくてはいけないなど、色々な工夫が必要なのだ。まず、担当者に運転免許を取得させ、車を運転させ、良いドライブスルーと悪いドライブスルーを経験させ、修正ポイントを明確にする事から開始した。そして、客席の数と駐車場の適正数の算出方法など実際に店舗を観察し、計算式を作り上げた。
そんな、色々な準備をしてドライブスルー機能を向上させた結果、目の前に開店したW社は暫くして撤退をし、とうとうチェーン展開を諦めてしまった。
改装を積極的に行うことは売上が上がり利益が出るのだが、その改装を担当の地区部長の経験と勘でやっていては直属の上司は冷や冷や物だ。そこで、誰が改装を行っても、問題点の明確化、改装費用の算出、売上向上効果、競合対策、等が明確にしなくてはいけない。それらの経験を数値化し、文書化、マニュアル化、しようと言う考え方が出てきたのは当然だろう。それが、第5,6,7回目で店舗の履歴、再投資、利益管理、の考え方だ。地区部長の方はそれを参考にして、自らのチェーンに最適の改装マニュアルを作って見よう。

 

(続く)

お断り
このシリーズで書いてある内容はあくまでも筆者の個人的な経験から書いたものであり、実際の各チェーン店の内容や、マニュアル、システムを正確に述べた物ではありません。また、筆者の個人的な記憶を元に書いておりますので事実とは異なる場合があることをご了承下さい。


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