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フードサービス地区部長の仕事 第3回目


続・地区部長の最も重要な仕事は人材育成だ

4)抜擢の弊害と対策

抜擢をしていくと物静かで能力をあまり見せないおとなしい従業員は無視をされるという不満を持ってしまう。抜擢=依怙贔屓となってしまう危険がある。チェーンによっては自慢げに「当社は厳しく従業員を育成指導しているので退職率が高いのだ。その厳しい競争を生き残っていく従業員がこれからの戦力となる」と言っているが、それは間違っている。外食産業がチェーン化を成し遂げる30年前にはまだその産業が育っていないから、早く従業員が育つと職位もないし、給料も払えない、そのため、従業員を酷使したり、見て覚えろと言う徒弟奉公制度を取り入れていたのだ。

しかし、最近の従業員は新しい職場で3年以内に将来の方向性が見えないと辞めてしまう。やめないのは40歳以上で転職が不可能な人材だけだ。その時代の変化に応じた教育制度、人事制度、待遇、を考えないといけないのだ。
そのためには抜擢しない社員に対しても常に新しい仕事に挑戦する機会はあるのだと言い聞かせ、常に彼らの不平不満を聞き出す事が重要だ。その手法として、昨年の11月号で述べた、非公式のコミュニケーション手法の、働きがいアンケート調査や問題提起ミーティングを開催することが有効だ。

コミュニケーションは社員だけでなく、アルバイトとも必要だ。アルバイトの定着性や店舗のQSCが低い場合にはかなり問題がある。そのような場合にはベテランのアルバイトやパートとじっくりコミュニケーションを取るとよい。日頃からコミュニケーションを取ったり、卒業後の進路の相談に乗っていると、問題が発生した際にアルバイトから地区部長に情報が上がってくるようになるだけでなく、色々なメリットがある。

社員の採用や教育は人事部だけの仕事でではない。社員一人の採用コストは100万円前後もかかる。しかも採用した新卒社員がやめてしまうとそのコストは無駄となる。新卒の場合、採用してから使えるまで数ヶ月は必要で、その間の給料やトレーニングに当たる社員の人件費を考えると実際には200万円以上のコストがかかる。ベテランのアルバイトが大学を卒業し入社すれば、即戦力となりそのコストが浮くばかりでなく、店舗のQSCとアルバイトのモラルも向上する。
 アルバイトとコミュニケーションを取るのは店舗で立ち話をしても良いし、場合によっては店舗でコーヒーを飲みながら気楽に話するとより一層親密になれる。時間があれば、アルバイトと昼ご飯を食べたりするとより効果的だ。大した金額でなくても1時間ほどアルバイトと食事をすることは、彼らにとっては雲の上の人が親切に声をかけてくれ、食事までおごってくれたと言って、記憶に刻み込まれるのだ。そんな人間関係を築き上げた後、「どうだい当社に入社しないか?」と声をかければものすごく効果的なリクルート手段となる。また、ベテランのアルバイトと親密になると店長やSVから上がってこない本当の店舗の問題点を知ることができると言うメリットもある。

地区部長が自分のエリアの人材教育が順調かどうかを判断する一つの数値は退職率である。退職率とは期首の在籍者員人数で期間の退職者を割った数値だ。 退職率については社員とアルバイトにわけて分析を行う。どんなに売り上げの伸びや利益の額が多くても、従業員の退職率が高いと、将来QSCが低下し、売り上げや利益が大幅に減少するからだ。これらの数値は短期間では改善できない、通常数年はかかる。退職率は地区部長単位、SV単位、店舗別で把握し、評価の基準項目に加える。

 実際に退職率の高いエリアや店舗は必ず、店長やSVに問題がある場合がある。そのような場合は店舗を訪問して観察しても問題点を発見しにくい。それらの問題のある店は、店長やSVが一所懸命に働いていたり、地区部長が訪問したときに胡麻を擂ったりするので発見しにくいのだ。そんな時には普段からコミュニケーションを取っているベテランのアルバイトやパートタイマーに声をかけ、最近何か変わったことないか?と聞いたら即座に正確な回答を聞くことができ
るはずだ。

5)面談ばかりが問題点を発見する手段ではない

区部長は、何時も同じ時間に店舗を訪問するのではなく、早朝や深夜、土日の繁忙期などまんべんなく店舗を観察する必要がある。そうして店舗を総合的に判断し、すべての時間帯従業員の状態を把握しなければならない。忙しさの中で店舗の状態をキチンと把握するためには色々な工夫が必要になる。例えば店舗に社員用の営業日報があればそのコメントや対処の方法を読んでみる。また、アルバイト同士やアルバイトと社員のコミュニケーションノートを付けさせるとそのお店の状態、雰囲気がよくわかる。コミュニケーションノートに不満や、クレーム、言い争いがかかれていれば要注意だ。誰がどんな不満を持っているか、誰が何も言っていないのか(サイレントクレームの可能性があるからだ)を読みとり、それから、その従業員と話をするとより具体的な不満や問題点を聞き出すことが可能になる。

 しかし、上司の上司である地区部長の存在は年齢差もあり、怖く感じるのは事実だ。アルバイトやパートが地区部長に親しみを感じてくれなくては本音を聞き出すことはできない。と言っても、個別に話すのはなかなか時間がないのも事実だ。そこで、店舗単位で、ソフトボール大会やボーリング大会、新人歓迎会送別会、懇親会、バーベキュウ大会、等を定期的に開かせるようにして、その際に地区部長自ら出席し、それらの懇親会の世話役と一緒になり、働いて普段は一所懸命に働くアルバイトにサービスをすると親近感が増すようになる。

 公式のミーティングでは、店内のアルバイトミーティング等や永年勤続従業員表彰式、パートコンベンション、等を開催し、そこで、従業員の懇談の場を作り、丁寧に会社の状況や、会社へのアルバイトパートの貢献度への感謝を示せばよい。社員の集まりでも同様に振る舞う。社員の合同ミーティングやコンベンションなどを開催する場合には、昼休みの食事や飲み物のサービスや夜の懇親会などで地区部長が自ら料理を作ったり、サービスをしたりすることで、より親しみが沸く。忘年会や懇親会の場合も同様だ。上司だからと上座にどんと座って、お酒のお酌を受けるようでは駄目だ。席の上下をなくす配置をし、地区部長自ら各テーブルを回り、話をするなどの工夫が必要になる。


6)地区部長の部下への接し方

 地区部長は強大な権限を持っているが、店舗の仕事だけでなく本社本部のスタッフとしての仕事もあり猛烈に忙しく、つい傲慢な態度を見せがちになる。店舗を回るときは、自分は強大な力を持っているが、それは仕事上だけであり、
ごく普通の思いやりのある人間だと言うことを見せなければいけない。店舗を回っているとQSCや管理の問題点を発見しつい店長やSVを大声で叱りつけたり、アルバイトを無視したりしがちだ。アルバイトは上司の姿を見て、会社の姿勢と同一視してしまう。店舗の人間にとって地区部長の姿勢が会社の姿勢なのだ。そのために店舗に入る時にはニコニコと挨拶をし、帰りには「お先に失礼します」とか、「これから忙しくなるけど頑張って」と声をかけることが必要 だ。この一言で従業員の会社や上司に対する印象が大幅に変わるはずだ。

 店舗を見回るときには、往々にして何処何処が汚いとか、料理の盛りつけが悪い、サービスの言葉が不足しているなどと、現象面だけを観察し、従業員が何を考えているかを観察しない場合が多い。店舗巡回で最も重要なのはそれぞ
れの従業員が何を考え、どのように行おうとしているかと言うことだ。立ち話でよいから、どう、元気?クラブ活動や授業は順調かい、等と声をかけていく。 また、トレーニング状況はどうなっているか、誰がどのように教えてくれるか、働きだして何年経っているか、その間、何時事給が上がったか、どの従業員が親切に教えてくれたのか、等、さりげなく聞き出すことだ。最初は、口の重い従業員でも何回か訪問して会話をする内にうち解けてくれるはずだ。その際の一番のポイントは丁寧にニコニコと話しかけることだ。

人材育成に当たってはだれが最も早く店長やSVになれるかを見極め、優先順位をつけ、年功序列でなく、最短距離で管理職になれるような店舗配置と上司との組み合わせを考える。この見極めが地区部長に取って最も重要な仕事となる。SVまでの育成には2〜3年かかる。ここで、それぞれの人材の素質を見極め効率よく経験と教育の機会を与えていかないと後で、人材難という難題に直面する。

(続く)

お断り
このシリーズで書いてある内容はあくまでも筆者の個人的な経験から書いたものであり、実際の各チェーン店の内容や、マニュアル、システムを正確に述べた物ではありません。また、筆者の個人的な記憶を元に書いておりますので事実とは異なる場合があることをご了承下さい。


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