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チェーン本部サポート


第6回目 チェーン展開のポイント SVへの経営者教育 

その1 店舗訪問

SVは単なる中間管理者やロボットではない。経営者の分身として、経営者と同じ考え方、視点にたって行動してくれなくてはいけない。SVは経営者としての判断力や考え方、視点が必要になるのだ。チェーン展開の初期において、経営者は核となるSVの育成に心がけなくてはいけない。ではどのようにトレーニングをするべきなのか見てみよう。

1)店舗の評価

SVのもっとも重要な業務は店舗のQSC(料理の品質、サービス、クレンリネス)と、人物金(従業員の採用、トレーニング、評価、施設建物調理機器の保守営繕管理、売り上げ、利益、販売促進など)の管理である。それらの項目のトレーニングは本社で座っていてもできない。SVとともに店舗を訪問して、オン・ザ・ジョブ・トレーニングをする必要がある。経営者の時間を考えると一人で思い立ったときに店舗を巡回し、その場で指示を出した方が効率的だ。しかし、それでは店舗の人間はSVの言うことを聞かなくなるし、30店舗以上の店舗となると経営者がきめ細かい管理をすることはできない。時間調整が大変であるが、SVと一緒に店舗を回り、SVがどんな仕事をしているのかを観察し、必要な教育を施さなくてはならない。

しかし、SVと店舗を回った際に、経営者自ら率先して店舗のQSCや人物金の指摘をしてはいけない。SVと一緒に店舗を巡回する目的は、SVの店舗を見る目が正しいか、経営者と同じ視点で判断しているか、を見極めることで、自ら店舗の評価をすることではないということを認識しておこう。

2)店舗訪問の手法

SVと店舗を訪問する際には、予告する場合と予告しない場合がある。新人のSV教育の場合には、訪問する店舗をあらかじめ伝えて、一緒に訪問する。SVが店舗訪問する際には必ず目標を持っていなくてはいけないからだ。店舗ではQSCのチェック、店舗販売促進のチェック、新商品売り出し時のオペレーションフォロー、監査、新人教育のチェック、等多彩な仕事をこなさなくてはいけない。新人のSVの教育にはそれぞれの店舗訪問の目的を伝えて、準備をさせ店舗を訪問する。

SVと店舗を訪問する際には、経営者は、それぞれの店舗の歴史、賃貸などの契約条件、大家の氏名、連絡先、建物の状況、開店日、総投資額、売り上げ動向、販売促進状況、過去の損益計算書、過去の月報、店舗従業員の歴史と過去の評価の流れ、店舗独自の問題点、等の書類を読み、問題点の優先順をつけて頭の中に入れておく。それらの準備をしないで店舗の表面上のQSCや人物金の問題点を見ても店舗の抱えている本当の問題点を理解しないからだ。新人のSVがそれらの問題点を認識し、優先順位をつけているか、店舗を観察しながらチェックをする。SV店舗観察の際に、問題点を明確にできない場合はそれらの準備を怠っているのが原因である。

SVになって半年ほど経過してから、店舗訪問の手法をチェックするには予告をしないで予定の時間より早めに店舗に到着し、SVが時間通りに到着するか、どのように店舗に入ってくるかを見極める。そして店舗訪問の目的を明確に持って来店するのか、どんな仕事の手順をとるのかを観察する。SVを経営者は常時把握する事はできない。特に時間通りに店舗に行っているかを常時チェックできないので、抜き打ちでどのように時間管理を行っているかチェックと、牽制も必要なのだ。

3)店舗に入る前に

店舗を訪問する場合は、お客の立場に立って、店舗の外観、駐車場、大看板、導入看板、告知看板、等の状況と老朽化、陳腐化をチェックさせる。目が慣れてしまうと問題点に気がつかなくなるからだ。

売り上げが不振な店舗は店舗の外観、看板を精査する。店舗の売り上げが低いとすぐに無料券やクーポン券のついたチラシを折り込んだり、店頭で配布するなどの販売促進に走りがちだ。しかし、店舗に来る客になぜこの店を知ったのかと質問をすると、半分以上の人が店舗の看板や外観を見て知ったと答えるはずだ。店舗の看板や外観はそれだけ重要だと言うことだ。もちろん、一度設置した大看板や、店舗外観を変更するのは難しいが、看板の下に垂れ幕をつけるとか、店舗外部の目立つ場所にキオスク看板、捨て看板や幟を設置する、店舗外壁の照明を明るくする、等は可能であるからだ。筆者は看板や告知をするだけで売り上げが最低でも5%〜10%延びた経験を持っている。関西の郊外型の幹線道路からはずれた店舗の売り上げが不振で、30mほど離れた幹線の角の交差点に大きな看板を設置したところ、売り上げがあっという間に30%伸びたことがある。そのくらい看板は重要であるのだ。

ある商業施設に入っているファミリーレストランの売り上げが、商業施設の売り上げの伸び率よりも低いお店を訪問した際に、最上階にあるそのお店の告知が商業施設のどこにもないことを発見した。そのお店よりも古いお店を訪問すると、店舗正面や、エスカレーターに告知をしていたが、新店舗ではそれを怠っていた。そこで、店舗正面や店内、エスカレーター等に告知を徹底することにより、せっかく店舗の所在する商業施設まで来ているる買い物客の導入に成功した。その告知の投資額はポスター製造コストだけであり、対費用効果の高い販売促進なのだ。お店に長くいると、客は自分の店を知っているだろうと思いがちだが、街や客は動いている、常に店舗の告知を新しい客の視線に立って見直してみる必要があるのだ。

4)店舗に入ったら、

店舗訪問の際にはチェックリストなどを片手に入ってはいけない。店舗の従業員が緊張してしまうからだ。チェックリストは事前に頭の中に入れておき、自然なそぶりで店舗観察を行わせる。通常の客と同じ態度で店舗に入り、料理を注文し試食をする。ここで店舗のQSCを評価させるわけだ。

店舗に入ってから客席に着くまでのあいだに、クレンリネスのチェックを行う。入り口のポスターは季節にあっているか、販売促進計画通りか、レジ周辺は整理整頓されているか、通路にはゴミが落ちていないか、客の帰った席は直ちにバッシングをしているか、照明は切れていないか、空調は適切な温度に設定しているかを見ていく。料理を食べた後にトイレや、厨房のチェックを行う。トイレのチェックは単に床がきれいなだけではいけない。小便器や大便器の内部に汚れが溜まっているか、臭いがないかまでチェックをする。そして汚れていれば、掃除道具、洗剤が適切であるか、確認を行い、従業員に清掃をさせて作業方法まで確認する。その他時間があれば、屋上の排気ダクト周辺の油汚れがないか、エアコンディショナーなどの室外機のコンデンサーがきれいになっているか確認する。

それらの仕事は汚い人のいやがる仕事であり、その場所がきれいに清掃されていれば他の箇所も同様にきちんと清掃されているはずだからだ。

サービスであれば、従業員の印象、服装、言葉遣い、正確な接客用語か、等をチェックするだけでなく、数量的な評価も行わせる。注文後、料理がでるまで、ファーストフードであれば1分以内か、コーヒーショップであれば7分以内か、ファミリーレストランや居酒屋であれば15分以内か、チェックをする。時間のチェックの際にはストップウオッチなどを使って大げさに計測してはいけない。経営者やSVはクロノグラフ(ストップウオッチ機能の付いた時計)で、さりげなく時間をチェックする。サービスの遅いお店の大きな原因は店長やSVが時間を計測していない、とか、従業員がサービス時間を把握していないからだ。担当店舗のサービスの遅いSVをチェックすると大抵はファッショナブルな秒針のついていない時計をしているはずだ。

料理を注文する際には、どの料理を注文するかをチェックする。多くの場合は自分の食べたいものを注文しがちだからだ。注文しなくてはいけない料理は、販売促進や季節販売をしている料理、新しく導入した料理、調理が難しい料理、などだ。運ばれてきた料理を食べる前に盛りつけ、温度、皿の清潔さ等をチェックしているか確認する。温度が重要であれば必ず温度を確認させる。もちろん、通常温度計を使って客席で温度計測をはかるのは見苦しいので、食べて温度を確認できるようにさせる。普段から料理を食べ、その温度を正確な温度計で確認するようにすれば、一口食べるだけで温度をプラスマイナス5℃程度で判断することは容易だ。

5)現象面だけでなく、その原因を正確に把握しているか

ファミリーレストランを訪問して商品をチェックする場合は、ハンバーグ等のグリドルで焼いた料理か、フライ物を注文し、温度チェックをする。新人のSVが食べる際に温度をチェックしているか、食後、厨房のチェックをする際に、食べた料理を調理するシェフの手順や、調理機器の状態をチェックしているか観察をする。

たとえば、ハンバーグの中心温度は68℃以上ないと食中毒菌である、o-157を殺菌することはできない。フライ物は油の温度が一定であれば、大量に連続調理しない限り、中心温度が低いことはないが、グリドル調理の場合には調理をする人のオペレーションや、グリドルなどの調理機器の調整や、清掃が不十分であると焼けない場合が多い。

あるファミリーレストランをSVトレーニングで訪問した際に、ハンバーグの温度が低かった。しかし、そのSVは温度の問題に気がつかなかった。そこで厨房に一緒に入り、オペレーションのチェックを見てみた。このチェーンは基本的にグリドルで調理するはずであるが、売れない時間帯であるということでフライパンを使って調理をしていた。薄いフライパンで調理をするのでは、厚めの冷凍ミートパティーの中心まで火が通らないのは明らかである。厨房をチェックした後、そのSVに問題点を聞いたが全く気がついていなかった。料理の質をチェックするには、まず料理の注文、温度チェック、原因追及と、きちんと手順を踏むという訓練が必要になる。

またある店舗ではハンバーグの表面が焦げているのに内部が冷たい現象を発見した。その原因は店舗では内部温度を上げようとグリドルの表面温度をマニュアルよりも高めに設定していたためだった。よく勘違いするのだが、ハンバーグの中心温度を上げるためにはグリドル表面温度を上げれば良いと思うことだ。グリドルの適正な表面温度は170〜190℃が正しいのだ。表面温度を220℃以上にあげると、ハンバーグからでた肉汁や、ハンバーグのミートの滓が、鉄板表面に残り急速にカーボン化して、グリドル表面に断熱皮膜を作り、鉄板の温度をハンバーグミートに伝えることができなくなる。ハンバーグミートの表面にはグリドルに付着しているカーボンが付着し、焦げているように見えるので、良く焼けているように見えるが、実は内部温度が低くなると言う問題を引き起こす。

グリドル表面に付着した堅いカーボン皮膜を取り去るには、専用のスクレーパーで削り落とすのだが、そのスクレーパーをきちんと研いでいないと、付着するカーボン皮膜はどんどん厚くなり問題が大きくなる。

グリドル表面のカーボンの問題は温度だけではなく、夜の清掃の方法、営業中の清掃の方法の両方をチェックしなくてはいけない。もし営業時間中に問題を発見したら、夜間の清掃と朝開店前の準備がきちんとしているか確認する。 

夜間にグリドル表面を洗剤で洗浄した後に錆止めの油を塗っており、朝その油分をきちんとふき取らないでグリドルの温度を上げると、カーボン化してしまう。グリドルが冷たいうちに油を拭き取ることはできない、油は温度が低いと粘度が高く拭き取りにくいからだ。温度が完全に上がって油がカーボン化する前に、グリドル専用の堅いダスターで油を何回かふき取り、水を軽く浸したダスターで仕上げをする。営業中の清掃はハンバーグパティを焼いたら直ちに、良く刃を研いだグリルスクレーパーで正確にカーボンを書き落とす。ピークが過ぎアイドルタイムになり、そのままグリドルを放置するとグリドル表面の細かい傷に浸透していた油がでてきて、それがカーボン化するので、時々、しめらせたダスターでグリドルの上を清掃しておかなくてはいけない。

フライ料理の場合は揚げ色と中心温度の差をチェックする。揚げ色が濃いのに中心温度が低い場合は、油の温度設定が高すぎるのだ。油もグリドルと同じく適正な温度以上に設定すると周囲が焦げるが中心温度が上がらない。油の温度設定が正しいのに、揚げ物の中心温度が低い場合には、フライヤーの熱交換機の清掃が悪い場合が考えられる。フライヤーは電気ヒーターか、ガス燃焼管が油を加熱する。そのヒーターやガス燃焼管の表面温度は油の設定温度よりもかなり高くなっているので、熱交換機の部分に油がカーボン化して付着する。カーボンはグリドルの場合と同様に熱交換を妨げ、油の温度回復時間を遅くする。フライヤーのチェックは温度設定だけでなく、一定の温度に回復する時間が規定通りか確認する、リカバリータイムチェックを定期的に行わなくてはいけない。

熱交換機に付着するカーボンの堆積を防ぐには、毎晩油を濾過する際に内部をフライヤー専用清掃布で研磨しなくてはいけない。厨房のチェックする際にはその研磨布の研磨能力があるか、専用の研磨布を使っているかまで、確認する。毎日清掃していても1〜3ヶ月ほどするとカーボンが厚く付着するので、フライヤーを専用の強力アルカリ洗剤で煮沸洗浄してカーボンを落とさなくてはいけない。それらのメインテナンスをスケジュール化しているか、実施しているか、専用の洗剤の備えがあるかを確認しなくてはいけない。

経営者はSVがその清掃やメインテナンスの知識があるか、清掃道具や洗剤の使い方を知っているか確認しないと本当の料理の品質を高く保つことはできないのだ。

6)SVは従業員を把握しているか

グリドルやフライヤー調理の問題を発見したら、従業員がどのようにしているか、知識はどうなのか、店長からどのようにトレーニングされているか、勤務後どの位働いているか等を聞いてみよう。そうすると調理の問題はこの従業員の資質にあるのか、店舗のトレーニング方法にあるのか、機械の整備上の課題か、機械の老朽化か、清掃用具の備えがないのか、等を発見することが可能になる。

従業員全員と話すときには、質問だけではなく、表情を観察し、なにか悩みを持っていないか、店舗や人間関係で不満を持っていないか、を探り出す。そのほか、会社に良い建設的な提案があるか、勤務経験はどのくらいか、どのようなトレーニングを受けているか、定期的なコミュニケーションやミーティングはあるか、会社の方針をどのように説明されているか、など、立ち話で聞いてみる。

店舗の観察のあとSVが店舗従業員のバックグラウンドを短時間で把握したかを聞いてみよう。なれないSVは店舗の現象面だけに気を取られ、その本質的な原因は人にあることを忘れがちであるからだ。現象面だけを発見しても、その原因を突き止めておかないと問題解決に時間がかかったり、誤った解決方法をとり勝ちであるからだ。

お断り

このシリーズで書いてある内容はあくまでも筆者の個人的な経験から書いたものであり、実際の各チェーン店の内容や、マニュアル、システムを正確に述べた物ではありません。また、筆者の個人的な記憶を元に書いておりますので事実とは異なる場合があることをご了承下さい。


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