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チェーン本部サポート


第4回目 チェーン展開のポイント:マルチコンセプトは正しいか?

数多くの海外チェーンの日本での展開や、国内企業のチェーン展開から上場までを間近に拝見した経験から、チェーン展開を成功させている企業のポイントとチェーン展開の途中で挫折する原因を具体的に分析してみよう。

1)コンセプトが明確であること。

チェーン展開に成功している日本の外食企業を見てみると、コンセプトが明解であることが分かる。その場合のコンセプトとはQSCのどれか1つが優れていることを意味する。品質で言えば味、料理の種類、価格、独特の調理方法、有名シェフ、など特徴がはっきりしていなければならない。

チェーン展開に成功した企業の味は必ずしも美味しい必要はない。売上を上げる最大の秘訣は客の来店頻度を高めることであるから、サッパリとして週に何回も食べられるようにしなくてはいけない。高級フランス料理のように客を堪能させてはしばらく来店してくれないから駄目なのだ。

サービスの分野では、フルサービス、セルフサービス、カフェテリア、ビュフェ、テイクアウト,宅配、ドライブスルー、提供スピード、笑顔、てきぱき、気配りなど、何に特徴を持たせるか明確にしなくてはいけない。売上を伸ばすためにファミリーレストランでテイクアウトや宅配を訴求する場合があるが、ピーク時客席が忙しいときに宅配の注文が入ると、能力に限りのある厨房のキャパシティが低下し、宅配と店内の客両方を待たせることになってしまい逆効果だ。

雰囲気、クレンリネスは最近の外食トレンドとして重要な要素だ。それは、きれい、すかっとしている、清潔感、お洒落、雰囲気がよい、客に会わせた雰囲気(カップル向け、家族向け、宴会向け、大家族向け)、テーマ性が(プラネットハリウッド、ハードロックカフェ、等)あるかと言うことだ。この場合も味と一緒であまり個性があると飽きてしまうので、来店頻度を増すためには清潔であっても記憶に残るような派手な内装であってはならない。最近流行している若者向けのカフェが繁盛しているのは、まるで自分の家の居間をこのようにデザインしたいと思わせる内装にしているからであり、必ずしも素晴らしいデザインの良い内装だからではないのだ。

2)チェーン展開の過程で陥りがちな罠

チェーンを展開していくと10店、30店、100店で節目を迎える。多くの企業は30店を越えると急速に伸び率が低下すると言う問題を抱える。その節目を乗り越えるために、店名を変更したり、料理を変更したり、仕組みを代えたりすると、また少し展開が出来るようになる。しかし、会社の仕組みがきっちりと出来上がらずに、勢いで店舗展開をしていくと、収益力が急速に低下したり、従業員の不満がたまり、退職者が続出し、店舗のQSCが低下するなどの問題を抱えるようになる。

飲食業の創業経営者は、調理人出身者でなくてもクリエイティブなアイディアマンが多く、そのクリエイティブな輝きが繁盛店を生みだす。芸術家的なひらめきは1つ1つの店を繁盛店にすることは可能だが、利益を上げていくことは出来ない。利益を上げることよりも繁盛することを主眼に開発を行うからだ。勿論売上が上がれば利益は自然に出てくるのだが、それは創業経営者が目を光らせてお店の運営をきちんとさせている間だけだ。

店舗数が増えていくと、経営者はアイディアを出すクリエイターとしての仕事と、店舗の人物金を管理する経営者としての2面を持たなくてはいけなくなる。店舗数が7〜10店舗までは両方の仕事をこなしていくことが出来るが、それ以上になると幾ら優れた経営者であっても店舗を管理することが出来なくなる。親分肌の経営者を慕ってくる部下や友人がいる場合は、経営者の考え方を良く知り尽くしているのでその管理上の問題を阿吽の呼吸でクリアーしていくことが可能になるが、それも30店舗までだ。

この段階でチェーン企業を目指す経営者は幾つかの誤りを犯し出す。

3)高級化

成功する店が増え利益が出て、一財産を築き上げると、生活環境が代わり、より良いレストランや海外レストランを食べ歩きするようになり、芸術的な開発力が目覚めてくる。また、事業が成功すると業界に友人も増え、数多くの新ビジネス情報が入ってくるが、それらは他人の事業が如何に儲かるかという良い情報だけで、どれだけ苦労するかという話は入ってこない。

その結果、より高級なお店や業種業態の異なる飲食店を開発しようという、高級嗜好が目覚める。調理人出身の経営者に共通するのはフレンチ、中華、懐石料理、などの高級業態を志向することだ。調理人出身の経営者は鉄人のような超一流の調理人を目指したが、挫折し、大衆的な飲食店を開店したと心の中では忸怩としている人が多い。現在は有名な調理人がそれに限界を感じ、より低価格のカジュアル業態を開発するのとは反対に高級業態を開発するようになる。当初は技術や資本力がないので自ら一所懸命に仕組みを築き上げ、そのコンセプトが良ければ成功する。しかし、より高級な業態にアップグレードすることにより失敗をしていく企業が多い。数多くのチェーンが新業態や新メニュー開発を行っているが、最初のコンセプトよりも優れた業態を開発した例は殆ど見たことがないはずだ。

ビジネスの構造はピラミッドのようになっている。低価格の大衆的な料理はピラミッドの底辺に当たり、一番広い客層を獲得できる、つまり最も店舗数を増やすことが可能だ。しかし、高級な業態はピラミッドの上部に当たり、その底辺の面積はより少ない、つまり、展開可能なチェーン店舗数は少なくなると言うことを認識しないといけないのだ。

4)FF化(自動調理を目指す)シンドローム

100店以上のチェーン展開に成功しているFFやFRは自動化の調理機器を使用して人件費の削減と調理速度のスピードアップに成功している。その現在の巨大なチェーンの自動調理に惚れ込んで、自社も自動調理を導入しようとして失敗している企業が多い。世界で最大規模のFFチェーンとなったマクドナルドやKFCは今でこそ自動化の調理機器を使用した生産性の高い厨房を備えているが、元々は普通の調理機器を使いやすいように並べていただけだ。

http://www.sayko.co.jp/article/res-news/usa8.html

巨大なチェーンとなって上場し財力のあるFFやFRの自動化調理システムが企業の利益とチェーン化を可能にすると錯覚し、無駄な投資をどぶに捨てせっかくのチェーン展開の機会を失ってしまう例を多く見る。飲食店では最終的に人間が調理に携わらなくてはいけない。全自動のロボットで調理することは不可能なのだ。現段階での自動調理機器はコンベアーグリドルやフライヤー、クラムシェルグリドルなどに過ぎない。しかし、メニューやコンセプトが決まっていない状態でそれらの自動調理システムを導入しても、メニューやコンセプトが変更になるとそれらの高価な自動調理システムが無駄な床の間のお飾りとなってしまう。

米国のFFでも全ての企業が自動調理システムを導入しているわけではない。ドーナツ、プリッツエル、シナモンロールのチェーンは、素人に短期間で調理技術を教えるマニュアル化と、トレーニングシステムを確立。そして、素材の粉類をプリミックスしてだれでも簡単に仕込みを出来るように仕上げたのがチェーン化の大きなポイントで、厨房を見ても簡単な調理機器しかないのがよく分かるはずだ。但し、それらの厨房は生産性が高く、作業をする人間が殆ど歩かないで全ての作業をすることが可能になっている。

厨房の生産性というと自動調理機器ばかりに目が向くが、作業の生産性を高めるためには作業の無理無駄をなくす調理機器と食材資材の配置、小道具の工夫、の改善をまず行う。そして、いちばん重要なのは調理人や作業をする従業員への作業マニュアルの精度を高め、トレーニングカリキュラムを整備して短時間に正確な仕事を教え込めるようにすることだ。

しかし、100店舗を越えるようになると、人手と熟練度の不足による品質のばらつきが出てくるので、そこで初めて必要な箇所の調理機器のレベルアップや必要最低限の自動調理化を計るという順番が望ましい。企業の体力がない規模のうちに多額の資金を投入して、せっかくの店舗投資に向けるお金を枯渇させるのは愚の骨頂なのだ。

5)マルチコンセプト化

最近はマルチコンセプトと言って複数の業態を同時に展開する手法がトレンドとなっている。米国でも同様にマルチコンセプトで成長している企業が多くこれからのトレンドと言える。但し、マルチコンセプト企業を分析すると2つのグループに分かれる。トライコン、ダーデン、コンパス、のように複数の上場企業を傘下に持ったり、カジュアルレストランの元祖ブリンカーインターナショナルのように複数のチェーン展開を行う大企業群と、1つ1つの店舗が異なるコンセプトを持つ中小のマルチコンセプト企業に分かれる。

大手の複数業態を展開する企業は企業としてのカルチャーを元に経営管理を厳しく行っているが、1つ1つの店舗が異なるマルチコンセプト企業の場合はどちらかというと経営者がカリスマシェフの芸術家的な感覚で展開しており、利益率や成長率は高いが、売上の規模は低い。マルチコンセプトでトップ企業のニューヨークのRestaurant Associates社で、36店舗425ミリオンドル(日本円135円換算573億円)の規模であり、米国外食ランキングで60〜80位の位置に過ぎない。

日本でもダスキン提携してツチバヌーチというコンセプトを、展開している有名なLettuce Entertain You Enterprisesは3位、74店舗で220ミリオンドル(日本円換算300億円弱)の売上だ。

殆どが10から30の店舗数を運営しているのに過ぎず、米国の外食の中心企業としての存在ではないのが現状だ。

マルチコンセプトと言って次から次ぎに業態を開発すると、よほどの能力がない限り100店舗を越えるチェーンにはならないのが現状だろう。

最近流行のメガフランチャイズも同様の問題を抱えている。業態開発は大手フランチャイズチェーンに任せ、自社がドミナントを築き上げている地域で、成功率の高いチェーンに加入すれば成功率が高いと思いがちだ。飲食業のマネージメントは同じだから、育成した社員はどのチェーンでも成功させられると錯覚する。しかし、店舗として繁盛しているチェーンでも管理職である店長に課せられるマネージメント能力は大幅に異なる。例えば同じフランチャイズチェーンでも、チェーンでにより店長の仕事内容はだいぶ異なる。ラーメン店の店長は殆どワーカーとしての体力と気力を要求されるだけであり、店舗における現場研修が中心で経営に必要なマネージメント技術は殆ど教える必要がない。ドーナツチェーンの場合には店長はドーナツ職人としての腕が必要であり、ドーナツ大学ではマネージメントよりもドーナツ製造の知識を中心に教育を行うが、ラーメンチェーンよりは人材育成、販売促進などのマネージメント技術を教えている。ハンバーガーチェーンではハンバーガーの作り方は教えず、人物金のマネージメントを中心に教える。勿論、ファミリーレストラン、コンビニエンスストアーなどの業態での教育はもそれぞれ異なるのだ。

メガフランチャイズチェーンと言っても加盟先企業の業種業態によっては効率が低下するし、従業員の志気も向上しないと言う問題を抱えているのが現状だ。

マルチコンセプトというと格好がよいが、別の言い方をすると経営者が自分の業態に自信がないと言うことでもある。経営者のアイディアでどんどん店舗形態やメニューコンセプト、場合によっては店名を変更していてはキチンとしたチェーン展開はおぼつかない。まず自分が苦労して作り上げた業種業態料理に自信を持ち、とりあえずその状態で展開を開始することだ。よく見るのは10店舗前後であれこれ迷い、コンセプトを頻繁に見直すことだ。これではチェーン展開はおぼつかない。まず現状のコンセプトで店舗展開を開始し、料理の品質や提供時間の見直し、作業効率の改善を客からは見えない範囲でキチンと行うことが大事なのだ。

6)真似をするのは恥ずかしいことではない

クリエイティブな経営者は自分でコンセプトや業態を考えないと恥ずかしいと思いがちだ。しかし、成功しているチェーンや企業は他企業の物まねをしている場合が多い。例えば、居酒屋業態では先行居酒屋企業の、養老の滝、つぼ八、むらさき、等のフランチャイジーとなり、居酒屋ビジネスの経験を積み、ザーの開発した居酒屋業態にちょっと独自の風味をつけただけで、店名を変更し大成功し、上場公開企業や大チェーンになっている例が多い。

他社の作り上げたコンセプトの物まねであっても、それに独自の風味をつけるだけでチェーン展開が可能であるのだ。コンセプトに悩むのではなく、まず現状の業種業態を冷静に見て、可能であればまずその業態の店舗をチェーン展開するという積極性が重要なのだ。

米国カジュアルレストランの元祖ブリンカーインターナショナルのようなクリエイティブな大企業であっても、最近では、フィル・ロマーノ氏の助けを借り、超繁盛店のイーチーズやマカロニグリルを展開したり、Lettuce Entertain You Enterprises社からマジアーノやコーナーベーカリーのコンセプトを購入してチェーン展開をしているのだ。チェーン展開に本当に必要なのはクリエイティブな能力ではなくてマネージメント能力なのだ。

次回はチェーン展開に必要なマネージメント能力を見てみよう。

お断り

このシリーズで書いてある内容はあくまでも筆者の個人的な経験から書いたものであり、実際の各チェーン店の内容や、マニュアル、システムを正確に述べた物ではありません。また、筆者の個人的な記憶を元に書いておりますので事実とは異なる場合があることをご了承下さい。


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