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飲食業の技術革新


飲食店経営 2001年6月号

「チェーン化の技術」

<技術改革:マクドナルドの最先端の技術・メイド・フォー・ユー>

マクドナルド社はバーガーキングの先進の加湿保温システムを徹底的に研究し、保温庫の種類とその特性の分類を開始した。

1)マクドナルドがテストをした保温庫の種類

<1>熱風循環型+自然蒸発型加湿

食品を乾燥させないように、庫内に水の皿を置き、熱風がそこを通過する時に加湿するタイプである。加湿量は外への排気穴のサイズを変更し調節する。構造が簡単であり、価格も妥当で最も普及している機種である。

このタイプの加湿保管庫は、KFC社によって開発された。圧力釜で揚げるのには約15分間ほどの時間がかかるので、揚げたてのジューシーなフライドチキンを加湿保管庫に2時間ほど保管する事によりお客様を待たせずまた廃棄商品を出さないで済むのである。  

しかし、温風循環タイプの場合、温風が食品の表面に当たると調理が進み、揚げ色が濃くなり黒ずんで乾燥し、肉質が堅くなってしまうという問題を抱えている。また、扉の開閉時に内部の湿度が全部出てしまい、庫内の湿度を正確にコントロール出来ないと言う欠点もある。フライドチキンのように脂で揚げた衣がある食品の乾燥は遅いが、焼き上げた肉などは急速に乾燥するので向いていなかった。

Cres Cor's

http://www.crescor.com

<2>接触加熱型+無加湿

温風加熱タイプは温度ムラが無いという利点はあるが、扉の開閉による温度低下が激しいという問題点がある。その欠点を解決するのが、庫内の棚に加熱した液体を通し、そこに置いたトレイの食品を直接加熱するタイプである。

液体は車のラジエターの不凍液に使用されるプロピレングリコールと水を混合した物を使用し、上部のヒータータンクを通し加熱循環する。

このタイプの最大のメリットは、液体加熱であるので温度制御が正確に出来、棚による温度ムラが無い事と、棚内部の液体による熱容量が高いので、扉の開閉時の温度低下が少なく、温度回復が速い。また、単に調理済みの食品を保管するだけではなく、低温調理にも使用出来る。

マクドナルドではこの保温庫をフラッシュクッキングに採用テストを行った。フラッシュクッキングとは食品の内部温度を上げて置き、必要に応じて表面の色づけする調理法である。フライドチキンやピザは調理に時間がかかるが、速く調理しようとして温度を上げても、表面は焦げるが内部の温度は低いという問題がある。そこで事前に食品の内部温度を60〜70度Cに上げて置き、お客様に出す直前に、高温のフライヤーなりオーブンで1分で調理する。この方法をとると調理後の食品を保管するよりフレーバーが良いという利点があり開発が進められた。しかしながら、この保管庫は加湿していない為、乾燥してしまうという欠点がある。その欠点を補うため工場での特殊な加工が必要になっている。フライドチキンやピザなどには向いているがデリケートなミートは保管できなかった。

<3>正確な湿度コントロールをする加湿保温庫の開発。

そこで、より精度の高い湿度コントロールが可能な加湿保温庫を開発するために湿度コントロールの方式を徹底解明した。

2)湿度コントロール方法の解析

湿度には絶対湿度と、相対湿度がある。絶対湿度(AH)は1立方メートルの容積の中の水分の含有量のことであり、g/m3で表す。

相対湿度(RH)とはある温度での絶対湿度を飽和水蒸気量で割った物を意味する。一般的に湿度という時はこの相対湿度のことである。相対湿度が100%の状態を飽和という。

飽和蒸気量は温度により異なり以下の表のようになる。

 
温度 飽和蒸気量
0度C 5g / m3
10度C 9g / m3
20度C 17g / m3
30度C 30g / m3
40度C 52g / m3
50度C 80g / m3
60度C 130g / m3
70度C 190g / m3
80度C 250g / m3
90度C 380g / m3
100度C 550g / m3

相対湿度の計算方法

温度が70度Cの飽和蒸気量は190g / m3であるがその時、95gの水が蒸気になっていると95÷190×100=50%となる。

3)湿度コントロール方式の開発

相対湿度の原理を把握したマクドナルドは次に相対湿度をコントロールする方式の分析を開始した。

<1>乾湿球方式

乾湿球方式の原理を利用し、正確な温度計で庫内の温度と、蒸気発生器の水温を計測し、湿度をコントロールする。湿度のコントロールの際、温度を下げる時には蒸気発生器の水を排出し、冷たい水を注入しコントロールする。温度が60から90度Cの間で、40%から90%の湿度の幅で調節出来る。これがバーガーキングの高精度加湿保温庫の原理だ。しかし、この方式は大変優れているのだが、扉の開閉による湿度の損失を素早く補償することは出来なかった。そこでバーガーキング社ではミートの乾燥を防ぐためプラスチック容器に蓋をして保温をするなどの工夫を凝らした。

Winston Industries

http://www.winstonind.com

保温庫説明

http://www.cvap.com

<2>電子コントロール方式

マクドナルドはバーガーキングの開発した高精度加湿保温庫のドア開閉の欠点を改善するために以下の高精度な保温庫の分析を行った。

<サーミスター使用絶対湿度計>

乾湿計の原理を使用する。2つの高精度温度センサーを使用し乾燥した空気と、湿った空気の間の熱伝達の差を計測する。

一つのセンサーを乾燥した容器に密閉し、もう一つのセンサーに計測する空気が当たるように開放した容器に入れる。両方のセンサーを170〜180度Cに加熱する。湿った蒸気が触れる温度計の温度は下がるので、その差から絶対湿度を読みとり相対湿度に換算し湿度表示をする。大変正確で、センサーの耐久力があり広く使われている。

ただ、絶対湿度量が1m3当たり145g以上になると、センサーが冷却されず加熱されてしまう欠点がある。飽和蒸気量と温度の関係の表を見てみると、70度Cの温度でのコントロール出来る範囲は76%位の湿度にしかならない。温度が70度C以上、の場合はコントロール出来る湿度の%はもっと低下するのである。メーカーが保証する温度と湿度の関係は以下のようになる。

 

温度

相対湿度

60度C

47〜89%
70度C

33〜68%

80度C

23〜45%

このタイプは湿度を発生させるのに、ウオーターバスタイプの蒸気発生器を使用する。ヒーターで加熱した空気をファンで蒸気発生器に送り、そこで発生させた蒸気を庫内にいれ湿度コントロールするのである。上の表にあるように60度Cの場合最低の湿度は47%である。これは湿度を0%にしようとしても加熱された空気が蒸気発生器のところを通過する際に、湿度を含んでしまう。また、この方式の最大の問題点は、設定した相対湿度が正しいかどうか、計測する方法が無い。

<壁面加熱型+コンピューターコントロール加湿器>

そこで、コンピューターを利用し蒸気量を積極的にコントロールする方式をマクドナルドは考案した。

加湿保管庫で最大の問題は、ドアーの開閉である。ドアーが開くと蒸気は乾燥した所に逃げてしまい、それを補充するのに時間がかかる。センサー式を使用してもセンサーが関知するまでに時間がかかるのである。また70度C以上での湿度は70%以上にコントロール出来ず食品に広く対応できなかった。そこで温度と飽和蒸気量のグラフを使用し、庫内の容積に必要な蒸発水量を計算し蒸発させるようにしたのである。ウオーターバス方式を使うと湿度の調整の幅が狭くなるので、庫内の下にフラッシュヒターを置き、そこに水を点下し蒸発させる。これにより温度が60ー82度Cの間で、湿度を0ー90%の範囲でコントロールする事が可能になった。湿度の再調整はコンピューターにインプットした状態で、フラッシュヒーターに添加する水量を計測する事で簡単に出来、調整もすぐに出来るようになっている。ウオーターバス方式の加湿器を使わないので、スケール溜まりが少なくメインテナンスが容易である。ドアーの開閉による湿度の補償はドアーセンサーにより行うので安定して湿度を保つ事が可能である。

温風を使うと食品の表面の調理が進み、色がどす黒くなる。その為、温風ではなく庫内壁面に特殊な形状のヒーターを埋め込み、壁面加熱する。これにより商品の保管期間を大幅に延ばす事が可能になった。

Carter-Hoffmann

http://www.carter-hoffmann.com

加湿保温庫 

http://www.carter-hoffmann.com/html/4_accufresh.htm

4)マクドナルドのステージングシステム

マクドナルドは「壁面加熱型+コンピューターコントロール加湿器」をカーターホフマン社に開発させステージングキャビネットと名付け全店に採用することにした。ステージングキャビネットで焼いたミートを20分間保温し、常温で保管した焼成済みバンズと組み合わせて電子レンジで加熱し熱々のハンガーガーを提供できるようにした。

このステージングシステムは厨房の合理化と小型化に大きく貢献し、サテライト店舗と言う小型店舗の展開を可能にした。その結果、空港、ショッピングセンターのフードコート、ガソリンスタンドなどとの複合店、大学、病院、など従来開店できなかったロケーションに進出する事を可能にして店舗の急速展開を可能にした。   

5)味の評価の低下

しかし、このステージングシステムの最大の欠点は電子レンジを使用することと、包装済みのハンバーガーを客から見えるホールディングキャビネットに保温したことだ。保温して10分間たったハンバーガーは廃棄処分にしなければいけないが、忙しいときや廃棄コストをおそれる従業員はホールディングタイムを守らないと言う問題があった。また客の目からも電子レンジの使用がわかり、冷凍食品をただ暖めているだけの印象で手作り感を失ってしまった。また、マクドナルド社はどうせマイクロウエーブで暖めるのだから、バンズを焼かなくても良いのではないかと考え品質を低下させてしまった。その結果、米国の外食専門の雑誌社R&I紙 http://www.rimag.com/ などの消費者アンケート等で、西海岸で急成長中のイン−N―アウト社とウエンディーズ社がトップの座を毎年交代で獲得しているが、マクドナルドは「便利さ」という点以外は評価されず、「品質」ではホワイトキャッスルと並んで低い評価となってしまった。

6)マクドナルド社の味の向上作戦、メード・フォー・ユー

消費者の悪評に対する回答が1999年から導入を開始した、メイド・フォー・ユーと言う熱々ハンバーガー提供システムだ。

従来のステージングシステムは焼成後常温保管のバンズ(当初は焼いていたが後に焼かなくなった)、焼成後高精度な加湿保管庫で保管したミート、調味料、野菜、を組み上げ、包装後電子レンジで加熱していた。その電子レンジの代わりに、バンズを15秒以下で焼き上げる超高速トースター(従来は30−60秒かかった)を開発し、注文後即座にバンズを焼き上げ熱々のハンバーガーを電子レンジなしで提供できるようにした。

A.J. Antunes & Co.

http://www.ajantunes.com

従来は焼き上げたミートを保管する高精度加湿保温庫と、フライしたチキンやフィッシュポーションを保管する乾燥保温庫の2種類が必要であったが、複雑な作業とスペースを削減するため、ミートとフライ物を同時に保温保管できる高精度のユニバーサルホールディングキャビネットを開発した。(高速トースターとホールディングキャビネットはマクドナルド社がパテントを保有している)

さらに、従来は包装したハンバーガーをウオーマーに10分間保管していたが、それを廃止し、客の注文後、調理組み立てを行うようにした。できあがったハンバーガーは客に提供するまでの数秒の間にも冷めないようにランチングパッドという小型の保温スペースに置き、客に熱々のハンバーガーを提供できるように工夫を凝らした。

注文後組み立てて熱々のハンバーガーを作るのは良いが、客を待たせては売り上げが低下してしまう。そこで、客の注文を素早く厨房に伝える工夫を行った。カウンターの販売員が客の注文をPOSに入力すると、その内容が厨房の各セクションに置かれたモニターに表示され、速やかに調理が開始される。このPOSシステムの導入により客の好みにあった熱々のハンバーガーを待たせないで提供できるようになったのだ。

お断り

このシリーズで書いてある内容はあくまでも筆者の個人的な経験から書いたものであり、実際の各チェーン店の内容や、マニュアル、システムを正確に述べた物ではありません。また、筆者の個人的な記憶を元に書いておりますので事実とは異なる場合があることをご了承下さい。


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