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飲食業の技術革新


飲食店経営 2001年5月号

「チェーン化の技術」

<技術改革:バーガーキングの最先端の技術>

マクドナルドのメイドフォーユーシステム誕生に大きな影響を与えたバーガーキング社の最先端の調理システム。

1)マクドナルドの大型化

マクドナルドが日本に進出した1970年の後半は米国マクドナルドの黄金時代だった。1店舗あたりの売上はどんどん上がり、売上増加に対応するために、持ち帰り専門店であったマクドナルドは店内に客席を設けるようになった。その数も次第に増加し、70年代の後半には150席ほどの大型店となった。

ハンバーガーと言うサンドイッチは昼食用途であり、創業当初は朝10時開店、夜10時閉店と言う短時間の営業形態であった。そのために博物館になっている第1号店を見るとハンバーガー、チーズバーガー、フレンチフライ、ミルク、ルートビアー、オレンジエイド、コカコーラ、コーヒー、3種類のフレーバーミルクシェイクと、11種類と言う限定のメニューであった。しかし、大型になった店舗の利益を向上させるためには売上を増大する必要があり、サンドイッチはより大型のビックマックや通常は45g(10:1、テンツーワンという、1ポンドの肉から10枚のミートパティを造るという意味)の肉を2.5倍にしたクオーターパウンダー(1/4ポンドつまり、114gと言う意味)の大型のハンバーガーの開発を行った。また、肉を食べない人や、キリスト教徒のためにフィレオフィッシュという魚のサンドイッチ、を開発し、さらにフルメニューの要望に応え、デザートメニューのアップルパイやチェリーパイ、サンデーなどを付け加えていった。

営業時間を拡大し売上を上げるという意味では、朝食メニューの開発を行った。日本では朝からハンバーガーを平気で食べるが、米国人にとっての朝食というと、フレッシュオレンジジュース、甘いペイストリー、ドーナツ、スクランブルエッグ等の卵料理、イングリッシュマフィン、パンケーキ、ソーセージ(ウインナーのような腸詰め形式とポークを使ったパティ形式がある)、カリカリのベーコンなどだ。そこで、それらの朝食メニューを朝の6時から10時半まで提供するようにし、従来は2台のグリドルで充分であったのを3〜4台に増設を行った。

当初シンプルなマクドナルドの店舗はメニューの増大、店舗の大型化により、従来のままの調理機器やレイアウトを用いる厨房システムに破綻を来すようになった。例えば、メニューの増加により数多くの商品を保温する必要があるが、商品の保管時間を過ぎて破棄する必要が出たり、製造に時間がかかり、サービングタイムに問題が出るようになってきたのだ。

2)バーガーキングの台頭

http://www.burgerking.com

マクドナルドと同時期にチェーン展開したバーガーキングは伝統的な炭火焼きにこだわった。米国の外食チェーンを見てみると、成功したからと言って単純に競合の手法をコピーしたりしない。競合の経営のやり方や調理システム、サービスなどを徹底的に研究し、相手の出来ないこと探り出しそれを実現するクリエイティブな手法を取り入れる。

ハンバーガーの調理は本来、家庭料理だ。米国のどこの家庭にも庭に大型のバーベキューグリルをおいている。公園に行くとピクニックエリアにはバーベキュウグリルを設置し、家族や友人などが休みの日に集まりバーベキューパーティを楽しむ。炭に赤々と火をともしてハンバーガーパティやパンを焼き上げて、生のレタスやトマト、ケチャップマスタードを挟んでかぶりつく。メモリアルデー等の陽気の良くなる頃にはあちこちの公園で見られる風景だ。このようにハンバーガーの調理は炭火焼きで、余分な油は垂れてさっぱりとしたヘルシーな味でもある。それが本来のハンバーガーであり、マクドナルドのように鉄板で焼き上げるのは脂っこくて美味しくないのだ。その本格的な調理方法を研究したバーガーキング社は、難しい炭火焼きの味を、アルバイトでも出せるように自動化した。コンベアーに乗せたミートを上下からガスの直火で焼くコンベアーブロイラーだ。アルバイトがコンベアーベルトにミートとバンズを乗せるだけで、自動的に焼き上がったミートとバンズがでてくる。この自動化により商品の品質を大幅に向上する事に成功した。また、直火で焼くのでオリジナルの炭火焼き風の香ばしい味をだせるというメリットも見いだしたのだ。

バーガーキング社はさらにこのコンベアーブロイラーを使用し画期的な厨房レイアウトを完成させた。マクドナルドのキッチンレイアウトはフォードの自動車生産工程にヒントを得てその流れ作業方式を取り入れたと言われている。しかし、コーヒーショップからヒントを得た厨房レイアウトではメニューアイテムが増加してくると、流れ作業にならず、商品が複雑に異動するようになってしまった。

フォードの自動車工場にように流れ作業方式にするには従来のグリドルのようにバッチ作業ではなく、流れ作業方式でなくてはいけないのだ。マクドナルド社の調理方法はオーダーが入ってから1サイクルの調理個数を決め、それが出来てから次の調理サイクルに入る方式であり、バッチ調理方式(一括調理)だ。それに対して、バーガーキング社の調理方法はコンティニューアス(連続的調理)調理方式である。オーダーが入るとミートフリーザーからミートを取り出し、コンベアーの網に乗せる。同時に同じ数のバンズをコンベアーに乗せる。これにより、一人の人間がミートの数と、バンズの数をコントロールするわけであり、間違いがなくなる。

バーガーキング社の厨房のレイアウトとフローを見てみよう。裏の入り口から入った資材は、常温保管のものはすぐに棚に、冷蔵品、冷凍品はウオークインに保管する。資材は各作業スペースのそばにあり、必要なときに簡単に取り出せるようになっている。ミートハンバーガーの調理はコンベアーブロイラーから、スチーマー、ドレステーブル、オーブン、ディスプレーウオーマーと導線が重複することがなく、厨房のフローがスムーズになり、資材の供給と人の導線が重ならないようになり、生産性が向上した。

フレンチフライやフライ食品には、ディスプレーウオーマーの横にフライヤーとドレスステーションを設けて調理している。フレンチフライを調理する人間は、カウンターの方向を向いて売上を見ながら調理でき、売上の波に対応することができるので作業性がよい。

バーガーキングの開発したコンベアーブロイラーによる流れ作業調理システムは客の好みの味を待たせないで提供できるだけでなく、マクドナルドの厨房より30%程生産性が高いというメリットも生み出したのだ。

3)マクドナルドの厨房改革

<クラムシェルグリドル>

そのバーガーキング社の洗練された調理システムに注目していたのは、マクドナルドの天才エンジニアのジム・シンドラー氏であった。氏は創業者のレイ・クロック氏と同じ出身のボヘミアンであり、独創的な天才エンジニアであった。日本の初期の店舗は氏が直々設計を行っており、日本最初のドライブスルー店舗も氏の設計だ。シンドラー氏は筆者の技術的な師匠であり、当時技術を知らない筆者は氏の自動化機器の開発を目の当たりにして学んだのである。

シンドラー氏は流れ作業を実現するコンベアーブロイラーに注目し、コンベアーブロイラーメーカーのNIECO社にマクドナルド向けのコンベアーグリルの開発を依頼した。

http://www.nieco.com

マクドナルド社は伝統的に鉄板でミートを焼いており、そのシステムを変更することは望まなかった。そこで、上下から加熱した鉄板でミートをサンドイッチ式に調理する方式と、その鉄板にミートを自動的に供給するコンベアーを組み合わせた、全自動型のグリドルを試作した。この方式でマクドナルド社は特許を数多く取得した。しかしながらこのシステムは数店舗導入後消え去ってしまった。

売上を延ばすための朝食メニューの開発がその大きな原因である。米国の伝統的な朝食はスクランブルエッグや、目玉焼き、ハム、ベーコン、ソーセージ、ホットケーキなどであり、グリドルで調理するものであった。全自動のグリドルを採用しても、朝食用のグリドルを置くか、それ専用の自動調理機器を導入する必要がでてしまったのだ。

そこで、全自動コンベアーグリドルをあきらめ、数多くのメニューに対応できるグリドルの改良を考えた。それが、クラムシェルグルドルである。2枚貝のような形状をしているので、クラムシェルグリドルと名付けられた。ミートを焼かないときは、上の鉄板の電源を切り、下部の鉄板で調理し、昼時にミートを調理するときに通電するようにした。つまり、一つのグリドルで、朝食メニューとミートサンドイッチを調理できるようにしたのである。現在のマクドナルド社のクラムシェルグリドルはシンドラー氏の発案だったのである。

<厨房レイアウト>

バーガーキングの流れ作業方式を取り入れるために厨房レイアウトの変更も行った。オリジナルの厨房はデニーズなどのコーヒーショップを手本としたバックキッチンスタイルであったが、メニューの多品種化によるグリドルなどの調理機器の増加に対応するために、カウンターに対してT字型に調理機器を配置するTスタイルの厨房レイアウトに変更した。

この厨房レイアウトとクラムシェルグリドルにより、やっとバーガーキング方式の流れ作業を実現することが可能になった。

4)画期的な販売方式のアッセンブル・ツー・オーダー

マクドナルド社では焼け上がったバンズにすぐにケチャップなどのコンディメント(調味料)をドレスする。そして、焼け上がった肉をのせ、紙容器に包み、ウオーマーディスプレーに入れるストック・ツー・オーダー方式であった。保管時間は10分間だ。10分間というのはケチャップなどが染み込まない時間であり、それ以上長くするのは難しいものであった。そして、10分間を越えると廃棄処分しなければならず、保管するハンバーガーの個数は、お客様が待たないですみ、かつ、廃棄をしないで済むように、常に売上を予測しなければならない、大変熟練の必要な作業であった。

また、米国ではグリルオーダーと言う、ケチャップや、マスタード、ピクルスなどを除いてくれという特別注文が多く、保管してあるハンバーガーとは別に新たに調理する必要があり、オペレーションに混乱をきたしていた。

そこで、バーガーキング社は焼け上がったミートとバンズをすぐにドレスするのではなくコンベアーブロイラーとドレステーブルの間にスチーマーを起き、その中に10分間保管するようにした。そして、お客の注文により好みのハンバーガーを組み立てて、ラップし、やや下がった温度を補うために短時間電子レンジで加熱する方式を考案した。これをアッセンブル・ツー・オーダーという。この方式により、売上の波にも対応出来るようになり、サービスのスピードが向上し、かつ、廃棄処分の金額も少なくて済むようになった。

この方式のメリットを最大限に生かすために、カウンターにマイクロフオンを置いて、注文を直接調理担当者に伝えるようにしたので、特別注文のスピードが早くなり、特にドライブスルーのスピードが大きく向上した。同時にお客の好みのサンドイッチを製造する顧客サービスを実現したのだ。

その合理的な販売方式に注目したマクドナルド社は、当初卵料理を特別開発の加湿保温庫で保管をするようになった。このシステムの採用により、サービングタイムを大幅に短縮し、かつ品質も向上したことに気がつき、ついにはミートやバンズも保管するようになったのである。マクドナルド社ではこの方式をステージング方式と読んでいるが、バーガーキング社の方式のデッドコピーである。調理技術に関してはバーガーキングの技術は大変優れておりマクドナルドはそれを必死の追いつこうとしているのである。

そして、このステージング方式をさらに進化させたのが、現在マクドナルド社が導入中のメイドフォーユー方式である。

お断り

このシリーズで書いてある内容はあくまでも筆者の個人的な経験から書いたものであり、実際の各チェーン店の内容や、マニュアル、システムを正確に述べた物ではありません。また、筆者の個人的な記憶を元に書いておりますので事実とは異なる場合があることをご了承下さい。


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