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飲食業の技術革新


飲食店経営 2001年3月号

スチームコンベクションオーブン(以下SCOと省略)とは

SCOは22年ほど前にヨーロッパで考案された。コンベクションオーブン(以下COと省略。熱風を循環させ加熱するオーブン)にスチームジェネレーター(以下、蒸気発生器と省略)を付け加えたオーブンであり、3つの機能がある。1つは、COとして、2つ目はスチーマーとして蒸す機能、3つ目は、COとスチームの組み合わせのコンビネーション(高温蒸気)である。

SCOの最大のメリットはコンビネーションの状態での高温蒸気を利用した調理である。ここで言う蒸気とは100度C 以上に加熱された状態の蒸気である。水1ccを加熱し1度C 温度を上昇させるのに必要な熱エネルギーは1calである。1ccの水を氷にするには80cal、1ccの水を蒸気にし蒸発させるには539cal必要である。つまり蒸気発生には最も熱エネルギーが必要なのである。

そして100度C 以上の状態の蒸気を乾燥蒸気と呼ぶ。180度C の温度の状態でコンビネーション加熱をしているオーブンの内部を見ても蒸気は見えないのである。乾燥蒸気は、庫内に100度C 以下の調理食品が入った時そこに露結し水になる、その時蒸発潜熱の大きなエネルギーが食品に集中して伝わるので調理が早いのである。

オーブン庫内のステンレス板は100度C以上に加熱されている為、蒸気は露結せずに食品のみに集中して熱が伝わるのである。特に冷凍食品を調理する時にこの機能の効果が高く、電子レンジよりも大量に冷凍食品を加熱出来るのである。

また、高温の蒸気で加熱する為、調理食品が乾燥せず歩留がよい。COの場合歩留は75%位であるがSCOは95%位の歩留である。電子レンジで冷凍の状態から調理したり、再加熱する時に加熱しすぎると、食品が乾燥し固くなると言う欠点があるが、SCOは蒸気で加熱する為乾燥しにくくまた調理時間の許容範囲が広いというメリットを持っている。

スチームを使用する為に、違ったものを同時に調理しても臭いが移り難く、調理中の煙の発生が少なく、同時に複数の食材を調理することが可能だ。

普通のCOだと調理後の清掃が大変であるがSCOはアルカリの洗剤を散布しスチームで蒸した後、水スプレーで簡単に洗い流せるので作業が楽であるという利点もある。

SCOの基本構造

SCOは蒸気発生器と、オーブン庫内、コントロール装置で構成されている。一般的に蒸気発生器は独立したタイプであり、そこで100度C に加熱された蒸気を発生し、それをオーブン庫内に導入する。

100度C の蒸気で蒸す場合は連続での加熱のみとなり、コントロールは時間のみとなる。真空調理などで使用する場合は、40度C から95度C の範囲で任意に温度を設定し蒸気発生器のON,OFFで温度をコントロールする。100度C の蒸気と言ったが、機種により95〜103度C に加熱された蒸気になっている。

100度C以上の蒸気だと蒸す時間が早く且つ蒸気の回りが早いという利点がある。特に、中華饅頭などを蒸した時には表面のべたつきがなくきれいに蒸し上げる事が可能である。コンベクション加熱の場合はファンにより庫内の空気が吸い込まれそれが熱交換パイプの間を通り加熱され、庫内の食品に吹きつけ加熱する。高温の蒸気とコンベクションでのコンビネーション加熱は、100度C の温度に加熱された蒸気が、それ以上の温度のオーブン庫内に入り、熱交換パイプの間を通る事により加熱されることにより高温の乾燥蒸気となる。

飽和蒸気量は温度が高くなるに従いやや減少していく。その為、機種によっては庫内の温度が上昇すると、蒸気発生量を減少させていくタイプがある。一般的にスチームのみで加熱している時よりは、コンビネーションで加熱している時の発生蒸気量を減少させている機種が多い。これは、飽和蒸気量以上を投入しても庫内の排気筒から余分な蒸気が逃げていく無駄を防ぐ為でもある

。ただし、これは室温や冷蔵状態の食品を調理する時に言える事であり冷凍状態の食品を直接加熱し調理する時には、大量のエネルギーが必要であり理論以上の蒸気が入った方が調理時間が短縮される。

各冷凍食品メーカーで、電子レンジに変わる冷凍食品の大量調理機器として研究されている。

スチームコンベクションオーブン仕様書

一般的なスチームコンベクションオーブンはレストラン仕様であり、ファーストフードなどのアルバイトが使用するようにできていない。そこでアルバイトでも簡単に、安全に使用できるように以下の改造を加え、仕様書とした。

<1>メニュー数 の決定

フライドチキンだけでなく、ピザ、グラタン、その他将来予測されるメニュー数に対応できるように設定する。メニュー数や次のモード数はメモリーの容量に影響するので慎重に設定しなくてはいけない。

<2>モード

調理モードのステップの決定。モード数があまり多すぎても現場の対応ができないが少ないと複雑な加工ができない。そこで最低限2ステージの加熱モードを組み合わせるようにした。

<3>時間表示、温度表示 のディスプレー

セット温度、調理温度の表示と切り替え方法を明確に定めないと調理中の温度確認ができなくなる。

<4>スチームジェネレーターの水の排出

水を排出する時間の管理。一般的なスチームコンベクションオーブンは一定時間蒸気を使用すると、自動的に排水してしまし、調理ができなくなるので、閉店時電源を切る時に排水するように変更。

<5>調理中の時間表示

各ステージの合計時間を表示し、カウントダウンで残り時間を表示する。その時間を見ながら次の用意や段取りができる。

<6>調理時間

標準は99時間までであったが、そんな長い時間は必要ない。レストランではなくファーストフードだから、秒単位の表示が必要だ。

<7>排気の蒸気コントロール

オーブンからでる蒸気がダクトに入ると水漏れの原因となるので、普通はウオーターミストを噴射するが、水を大量に消費するのダクトフィルターの精度を上げ、水の使用量を削減した。

<8>オーブン内部のガス配管

米国では全国天然ガスかプロパンガスで問題ないが日本の場合は地区によりカロリーの低くガス圧の低い地区があるので、正規の出力がでるようにスチームジェネレーターに行くパイプの径を変更する。メインのバーナーについても検討する。

<9>ファンの前のフィルターはつけない。

通常はファンの前にフィルターをつけるが空気抵抗が増えるので、清掃の頻度を頻繁に行うことによりフィルターを装着しない。

<10>オーブン下の足の高さは、10インチ、25.4mmとする。

清掃をし易くするために米国の衛生基準NSFよりも高くする。

<11>キャスターは取り付けない。

床が不安定であるのでキャスターをのぞく。

<12>スチームモードで温度コントロール出来るようにする。

従来の機種では60〜95度C までコントロール出来るようになっているが、今 後調理品目が増加することを考え、40〜95度C と105〜300度C までコントロール出来るようにする。

OVENモードでも現在は温度設定を90度C からしか出来ないが、それを40度C 〜300度C の範囲で出来るようにする。

<13>電圧対策。今回はトランスをつける。

米国の高い電圧に対応するモーターに変更するのは費用がかかるので、製造台数が十分な数になるまでは別途トランスを装着して対応する。

<14>サイクルの対策

関東50/関西60とサイクル数が異なるとモーターの回転数に影響する。そうするとファンの風量が異なり、調理時間が影響するので、ファンとファンシュラウドの径を変更を検討する。

<15>WAITライトの表示

温度が低い状態で調理をしないように設定温度よりある程度低いと点灯するようにする。熱すぎる場合にもHOTライトを点灯させる。このあたりの警告灯の仕様はアルバイトに調理させる場合に重要であり、すべての項目を詳細にチェックする。

<16>表の表示盤にはメーカー名の表示をしない。

すべての調理機器の表示は自社の会社名のみである。

<17>トレイサイズ

標準より大型のメーカー開発の特殊サイズを利用する。テフロンはより耐久力の高い、シルバーストーン加工する。ラックの足を10mmカットする。(トレイとトレイの間隔を狭くしてより多くのトレイを入れられるようにするため。)トレイとラックはコストの安い米国で試作し日本に送りチェックする。

<18>清掃用の水スプレーを取り付けられるようにする。

閉店時に清掃を容易にするように水スプレーを標準で取り付ける。

<19>バーナーの改造

日本のガスに適合するように独自に改良を加える。

<20>スタートボタンを押した時に音が出るようにする。

デジタル式の操作盤はタッチが良くないので、音を出して、確認できるようにする。

<21>米国メーカーのサービスマニュアルの翻訳

店舗で簡単なメインテナンスや整備ができるように翻訳を急ぐ。

<22>コンビネーションモードの状態でフルスチームが出るようにする。

通常スチームコンベクションオーブンは高温で蒸気を入れて調理するコンビネーションモードの状態では蒸気量を通常の1/5ほどに低下させるが、今回は冷凍食品を使うために大量の蒸気が必要であり、フルスチームがでるように改良する。しかし、蒸気が大量にでると無駄なエネルギーを消耗するので、特殊なソフトを考案し、蒸気が無駄にならないようにした。

<23>デミネライザーの取付について

スチームコンベクションオーブンの一番のメインテナンス上の問題点は、水を沸騰させる時に発生する水分中のカルシウム分の堆積である。あまりたまりすぎると蒸気発生量が落ち最悪の場合、蒸気発生機であるスチームジェネレーターを交換しなくてはならない。そのため、普通、カルシウム分を除去するデミネライザーフィルターを取り付けるが、高価であるし、水圧が落ちて十分な水を供給できない場合がある。この機種ではクリーンサイクルという酸性洗剤の自動注入装置を取り付け、フィルターを不要にした。

<24>安全装置インターロックの取付

熱調理機器を使用する際には排気ダクトで燃焼空気と周囲の熱を排気するが、ダクトを作動しないで加熱調理機器を点火し作動させると高温の燃焼空気がダクト内に入り、内部に堆積した油分に着火する危険がある。そのため、排気ダクトのスイッチを入れないと調理機器に電流が流れないようにする。ガス調理機器も電気がないとコントロールボードが作動せず点火ができないので安全だ。

<25>クリーンサイクルに対する水圧の影響とその対策。

酸性の洗剤を自動的にジェネレーターに注入する機能がついているが、水圧が低 いと作動しない。現在のポンプはベンチュリータイプで負圧で吸い込むタイプで あるが、これを小型の電動ポンプに変更する。

安全対策については以下の内容をチェックした。

<1>過熱防止安全装置ハイリミットコントロール

オーブンの本体に1つ、機械式のサーモスタットをオーブン庫内に取り付け。600°F で作動し自動復帰する。庫内温度の温度調節用のサーモスタットはハイリミットも兼ねており、600°F 以上で作動するので2重の安全性がある。作動時にはブザーが鳴りサービスライトが点灯し気がつくようにする。

<2>スチームジェネレーターのハイリミットコントロール

電気タイプの温度センサーを取り付け、温度が水の沸点以上の250°F にあがるとガスを消すようにする。

<3>スチームジェネレーターの空炊き防止

ローレベルとハイレベルの水位センサーを取り付ける。1つのプローブが壊れるともう1つのプローブに自動的に切り替わり、ローとハイレベルのコントロールを1つのプローブでコントロールする、同時にサービスライトを点灯しトラブルを知らせる。2つ壊れるとオーブンの作動を止める。

<4>蒸気爆発の防止

スチームジェネレーターから水が溢れオーブン庫内に入ると熱交換機に大量の水が 当たり、蒸気が瞬間に大量に発生し爆発する事があるがその対策として、蒸気の出口を熱交換機の下にして、水が直接当たらないようにした。

<5>ガスの立ち消え防止

自動復帰する。もし90秒間消えたままだと、オーブンは消えたままになり、サー ビスライトが点灯する。

<6>電圧の変動時

電圧が25%下がると電源を切り正常になると自動復帰する。

雷などの事故によるコントロールボードの破損を防ぐために、2000Vの瞬間電流に耐えられるようにし、時期モデルでは4000Vに対応する。

<7>ノイズ対策について

周囲の電気機器の作動時のノイズがコントロールボードに影響しないように、米国陸軍規格のMILスペックに準拠させる。

小道具の開発

オーブンの開発では誰でも調理できるように色々な小道具の開発が必要であった。

<1>トレーとラックの開発

チキンを再加熱するには、トレーにラックを乗せその上に並べなくてはいけない。

トレーの上に直接並べて加熱すると鉄板に接したチキンの部分が、堅くなってしまう。そこでラックを使う。ラックの下部とトレーの間に適当な隙間がないと加熱した空気が行き渡らないので、中心温度が上がらず、あまり離れるとオーブンの調理能力が低下する。そこで最適の間隔を見つける作業を行った。また、トレイには加熱調理後大量の油や滓がたまる。そのまま加熱を何回か繰り返すとトレイに付着した油分が固形化しとれなくなるという清掃上の問題も生じる。また、再加熱した鳥をラックから取り出す際に、ラックの網の部分に衣が付着しはがれてしまう。丁寧にやろうとすると時間がかかってしまう。油で揚げる際には油がくっつくのを防ぐわけだが、焼く場合にはそうも行かない。そこでトレイとラックにテフロンコーティングをすることにしたが、ラックの網に部分へのテフロンコーティングが長持ちしないと言う問題を抱えた、劣化したら再度コーティングをすればよいのだが、コスト的に見合わない。そこで、苦労してテフロン素材を取り付ける手法を開発し、耐久力を持たせることにした。

次に問題になったのは鳥の部位の大きさが異なり、オーブンの風が均等に当たらないので、温度ムラがでるという問題点であった。そこで試行錯誤しながら部位による並べ方を作り上げた。

オーブンで加熱したトレイを取り出す際には熱いので、断熱のグローブをはめるが、家庭用などの布製では、油や水で濡れると、断熱効果がなくなり火傷をしてしまう。そこで、溶鉱炉などで使われる工業用の300度Cまで耐えられるシリコンゴムの高価なグローブを探し出した。

<2>清掃

新型の調理機械を導入するに当たっては内部の清掃も簡単にできないといけない。従来のオーブンクリーナーでは十分でないので、独自に安全性の高いクリーナーと仕組みを考案した。スチームジェネレーターのカルシウムスケールの除去には独自に酸性の洗剤を開発した。

<3>マニュアル

新メニューであるので社員用とアルバイト用の詳細なマニュアルと、店舗導入に当たってのチェックリストも作成した。

<4>メインテナンス

調理機器は必ず壊れる物であり、店舗の社員が簡単に修理できるようにメンテナンスマニュアルを作成すると同時に、全国での業者によるメンテナンス体制とパーツの供給システムの構築を行った。

結果

SCOを使ったフライドチキンプロジェクトの完成と実験には2年間を費やした。結果はK社の新鮮な雛鳥を入手できず、また、美味しい米国の鳥を使う時間も無いという品質上の問題と、さらにはマーケティング上の混乱と言う、2つの問題から販売実績としては失敗に終わってしまった。

しかし、工場におけるフライドチキンのライン化とSCOを使う調理方法は色々な分野で新商品を生み出すことに成功している。来年にはこの原理を活用した、あっと言わせる調理機器が世の中にデビューさせる予定だ。

基礎研究から真剣に行うと色々幅広いデーターを蓄積でき、それを他の食材に応用することにより調理技術の合理化に役立つのだという貴重な原理原則を学べたのは幸いであった。

お断り

このシリーズで書いてある内容はあくまでも筆者の個人的な経験から書いたものであり、実際の各チェーン店の内容や、マニュアル、システムを正確に述べた物ではありません。また、筆者の個人的な記憶を元に書いておりますので事実とは異なる場合があることをご了承下さい。


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