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飲食業の技術革新


飲食店経営 2001年2月号

1)K社の問題点

K社の技術は簡単に言うと生の食材を使用するレストラン料理を単品に絞り込んだ原始的なファーストフード技術である。新鮮な生の雛鳥を独特の圧力釜で調理するというノウハウであり、ハンバーガーチェーンのように複数の商品を合理的に調理するという考え方とは水と油ほど異なっている。生の鳥はサルモネラ菌などが存在しており、調理済みの食材と同時に取り扱うことは危険きわまりない。また、K社はフライドチキン専門店であり、主力商品の調理機器に資金とスペースをふんだんに投入することが可能だが、ハンバーガーの場合追加メニューであり、スペース、投資金額、生産量力という意味での難しさがあった。能力という意味では店舗で生の状態から行う作業スペースと生産性を許容することができなかった。

2)問題点を解決するために

工場で集中加工して、店舗では再加熱をして提供することを考えた。ビーフパティなどは生の挽肉を整形後冷凍し、店舗で焼き上げるが、ポークパティやチキンナゲット等は工場で一次調理を行い、食中毒菌や一般性菌数をコントロールして安全性を増していた。そこで工場に大型の圧力釜を設置し、集中調理後冷凍し店舗へ配送し、店舗でその冷凍フライドチキンを再加熱する方式を考案することにした。

ここで必要だったのは工場での集中加工技術と店舗での再加熱調理技術の開発であった。

そこで過去の色々な調理加工技術を整理して分類することから開始した。基礎研究が大事だからだ。

工場の集中加工技術

工場でフライドチキンを揚げてから冷凍して店舗で再加熱する事により、品質のぶれ防止、コストダウン、店舗作業の簡略化が可能になる。と言うと簡単なようだが、店舗の圧力釜を大型調理機器に置き換えるという大変な作業が待っていた。そこで数店舗の実験店舗テスト販売では通常の店舗では8羽を揚げることのできる大型の圧力釜を米国から取り寄せ実験を開始した。

同時に圧力釜と同等の品質を実現できる超大型圧力釜の開発を開始した。2次テストでは100店舗を予定しており、それだけの店舗をまかなうには1日で約5000羽の調理を可能にしなければならない。そこで1時間に670羽の鳥を調理できる超大型圧力フライヤー2基を製造することにした。

大型の圧力フライヤーの製造に当たっては、機械の開発のほかに、油の処理など大変な作業が待っていた。大量に製造するので供給する油は大型タンク車で運び、油をためておくヒーター付きの大型タンクの設置が必要になった。また、圧力釜の最大の欠点はバッチ処理であり、連続して生産する事が不可能で、将来全店舗に導入の際にどう製造するかということが問題となった。

フライドチキンで圧力釜を使う理由は、柔らかく、かつ、骨から血が出ないようにしっかり温度をかけるという矛盾を解決するためである。そのためには圧力釜を使うしかないと思っていたが、後に、大型のラインでそれを実現する色々な方法を見つけだした。

<加熱ラインの開発>

<1>大型電子レンジ

骨の血止めをするために大型の電子レンジで加熱し、それからフライするという手法であった。米国のミサイルを打ち上げる軍需産業が大型レーダー技術を活用し、大型の業務用電子レンジを使い、チキンの調理加工で実用化が進んでいた。しかし、電子レンジは電磁波が漏れると危険であり、流れ作業ができず、バッチ作業となる点でまだ問題は残ってしまう。また、圧力釜よりも肉質がやや堅いという欠点も残っていた。

<2>大型蒸気加熱機器

当時米国本社ではノンフライの焼き上げたチキンの開発を行っていた。いわゆるバーベキューチキンとかローティサリーチキンといわれている物だ。世の中だんだん健康志向になり、衣がついて油で揚げたチキンはカロリーや脂肪が多すぎで体に悪いということで、油の少ない鳥の調理方法が望まれていた。日本のプロジェクトと同じく生の鳥を店舗で調理することは問題があり工場で調理を行うことにした。蒸気加熱で鳥の水分を失わないように加熱後冷凍し、店舗では大型のコンダクションヒーティング(接触加熱型方式)で低温で再加熱する。

早速その工場を見学し、製造方法を確認したが、バッチ式の蒸気加熱機器で生産性が低く、また、外部の技術コンサルタントがどうも信用ならないという問題があった。そのため、日本での導入を行わなかった。後に米国本社はその開発者との特許紛争に巻き込まれ解決に数年かかったことを見ると、その判断は正しかったようだ。

<3>スパイラル式大型加熱機器

米国は鳥の消費量が多いので工場の調理方法の研究が進んでいた。最も優れている工場調理方法は、大型スパイラル式の蒸気加熱方式であった。まず、衣をつけた鳥を軽く一次揚げして衣を固着させ、コンベアーで大型スパイラル式の蒸気オーブンに入れ,じっくり火を通す。蒸気をかけながら低温で骨まで加熱するので、水分の蒸発が少ないというメリットがあった。このタイプのメーカーは米国とオランダに2社あり、世界中の大型食品工場で使用されていた。当時は残念ながらその開発方式を日本に導入するのが遅れ、品質面で苦労させられた。しかし、現在ではその合理的な調理方法が米国本社の東南アジアでのフライドチキンのメニュー開発に採用されている。

この方式で調理し、冷凍したフライドチキンを、店舗で時間をかけて、特殊は保温庫をかねた加熱オーブンで適温に再加熱し提供するという方式が東南アジア各国で標準採用されている。このメリットは米国の穀物飼育した美味しくて安価なフライドチキンを鮮度維持して東南アジアに輸入できると言うことであり、東南アジアではK社の売り上げに大きな影響を与えている。

<2度の加熱による乾燥を防ぐ>

工場と店舗で2回加熱することは、食中毒菌などへの安全対策としては完璧であるが、肉が堅くなったり、水分が蒸発しおいしくなくなるという問題が発生する。バーベキュウチキンの場合には、乾燥を防ぐためと味付けのために、生のチキンを塩やスパイスを入れた調味液に付け、減圧して回転するタンブラーという機械で味をしみこませるとともに水分を補給し、焼成時の乾燥を防ぐ方法をとる。当初はその機械をテストしたがバッチ処理のために大量に製造するには問題が生じた。そこでソフトサーモンの製造に使用される、インジェクションという肉質に注射針を刺し、そこから調味液を注入するという手法を採用することにした。

 

<工場における調理行程マニュアル>

工場における調理行程マニュアルを作成し、品質管理を決めることにした。店舗で調理する場合と同等の品質を実現するために作成を行った。

<1>原材料受け入れ

  • 受け入れ時品質基準
  • 解凍方法
  • 解凍後肉温度
<2>原材料水洗い
  • 洗浄水温度
  • 洗浄時間

<3>インジェクション

  • ピックル液成分
  • 注入量
  • 液温度
  • 交換基準

<4>バッター液 

  • 希釈率
  • 付着率
  • 液温
  • 粘度
  • 液補充間隔

<5>一次ブレッダー

  • ブレッダー粉成分
  • 付着率
  • だまチェック

<6>二次ブレッダー

  • ブレッダー粉成分
  • 付着率
  • だまチェック

<7>調理トレイ並べ方

<8>フライ

  • ロット当たりの処理量
  • フライ時間
  • フライ後製品温度と計測部位
  • フライオイル交換基準

<9>急速凍結

  • 凍結温度
  • 凍結後製品中心温度

<10>ミスト

  • ミスト量

<11>包装

  • 入り数
  • 包装形態

<12>異物混入チェック

  • 金属探知器基準

<13>箱詰め

  • 段ボール種類
  • 段ボール強度、構造
  • 製品名記載内容
  • 入り数

<14>凍結保管

  • 基準温度
  • 箱積み基準

<15>輸送保管

  • 保管温度
  • 保管期限

3)店舗での調理技術

工場での加工技術の開発と同時に店舗の調理技術の開発も行った。以下はその検討内容のリストアップだ

<1>フライヤー

工場で一次加工したフライドチキンを店舗で再加熱する手法を解決する必要があった。一番簡単なのはフライヤーで再度揚げる事であるが、せっかく圧力釜で揚げた柔らかい衣が硬くなってしまうし、冷凍からでは時間もかかり、油っぽくなってしまうという問題があり断念した。東南アジアでは比較的クリスピーなフライドチキンが好まれており、工場でスパイラル蒸気加熱をしたフライドチキンを冷凍後、店舗で適温まで再加熱し、提供するときに短時間フライするという方式を導入している。

<2>電子レンジ

次にひらめいたのが家庭で解凍調理に使われている電子レンジだ。家庭用よりも大型のマグネトロンを採用した業務用でテストをしたが、数が少ないと早いのだが、大量に加熱しようとすると時間がかかるという問題が発生した。さらに、フライドチキンは部位により肉厚が異なるので、同じ時間で加熱すると薄い部分の肉に火が入りすぎ堅くなってしまうという品質上の問題点もでてきた。また、加熱に使うマグネトロンは電球のように消耗しだんだん加熱時間が長くなると言う欠点もあり、断念することにした。

<3>電子レンジと熱風加熱

電子レンジだけだと加熱時間と量の問題があるので、熱風加熱を検討した。このプロジェクトに取りかかる前にピザの販売計画を検討し、色々なオーブンを検討しており、ピザ用のインピンジメントオーブンと電子レンジを組み合わせることを検討しており、早速それで調理を行ったが、ピザでは絶大な調理能力を誇るインピンジメント加熱も骨付きの冷凍フライドチキンを加熱することはできなかった。

<4>電子レンジと熱風加熱と蒸気

そこで上記の組み合わせに蒸気を組み合わせた物を計画したが、あまりに複雑すぎるので開発に大幅な時間がかかるし、開発費の点からも断念をせざるを得なかった。

<5>エアーインピンジメントコンベアーオーブン

ピザの宅配チェーンを成功させたエアーインピジメントオーブンを検討することにした。当時K社はバーベキーウチキンのテスト店で使用しており、それをヒントに実験を開始した。

同時に米国ではピザの販売を行っており、エアーインピンジメントオーブンの開発も行っていた。米国では床面積の制約の問題とコンベアー方式を嫌い、多段式バッチエアーインピンジメントタイプを、世界最大フライヤーメーカーの兄弟会社のガーランド社に開発をさせていた。当初はピザの開発でそのオーブンを見ていたので早速テストすることにした。両社の親会社であるウエルビルト社は研究所をフロリダのタンパに持っており、急遽タンパまで飛んでテストを開始した。研究所を訪問して驚いた。プロのシェフを雇っており、数人で当方の注文するピザからフライドチキンまでその場で製造し、急速冷凍する。そして、あらゆるオーブンを設置しそれらの比較テストをしてくれる。このテストキッチンで世界中のオーブンをテストしヒントを得ることができた。ウエルビルト社は世界中の調理技術をモニターリングしており、日本の調理機器も並んでいたし、後に日本の調理機器メーカーが面白い自動調理機器を開発したと情報を流したら担当役員がすぐに飛行機に飛び乗って日本を訪問したほど新型の調理機器の開発に熱心である。日本の調理機器メーカーとは桁の異なる開発経費と努力に驚かされた物だ。

結果的にはエアーインピジンメントオーブンはガス燃焼を直接庫内に入れるので、せっかく固まり色が赤くなくなった鳥の髄液が燃焼ガス中の一酸化炭素により還元され、まるで生の肉のような鮮やかな血の色がでてしまうということで採用できなかった。また、温風だけで調理するので表面が堅くなるという品質上の問題点も持っていた。

<6>コンベアーオーブンと蒸気の組み合わせ

コンベアーオーブンで加熱調理する際に蒸気を加えれば、表面の仕上がりは柔らかくなるし、調理時間も短くなるのではないかと、エアーインピンジメントオーブンに蒸気発生器を取り付けてテストした。確かに仕上がりは柔らかくはなるが、オープンな構造のため蒸気は逃げしまい、調理時間としては短縮できないのであきらめた。

しかし、その際の技術開発はエアーインピンジメントオーブンの商品開発に生かされ、最近ではほとんどのメーカーがオプションとして発売をしている。

<7>スチームコンベクションオーブン

というような苦労の連続でぶつかったのが、当時フランス料理店などで使用されていたスチームコンベクションオーブンだ。以下にその原理を紹介するので参考にしていただきたいが、蒸気潜熱の持つ大量の熱量を使用し冷凍食材を乾燥させることなく、急速に加熱させると言うことに気がついた。その際に運がよいことには零戦のように耐久力はないが性能の良いイタリアのスチームコンベクションオーブンにぶち当たったと言うことだ。

そして、その性能チェックを行うために米国本社のテストキッチンにそれらのオーブンを並べ検証実験を開始した。その結果一定の可能性を見いだし、日本で開発を急ぐことにした。当初はイタリア製のレストラン仕様のスチームコンベクションオーブンを採用したが、性能はよいのだが、コントロールボードがすぐ壊れたり、ドアーのラッチがファーストの頻度に耐えかねてがたがたになるなどの問題を生じた。そこでやむなく、耐久力の高い米国製のスチームコンベクションオーブンを採用することにした。丁度カナダの大型ドーム球場の店舗でホットドッグとピザを焼いているのを発見したのだ。この偶然見つけたスチームコンベクションオーブンだが、2段重ねができるなど狭い日本の店舗にも向いていることを発見した。

米国機器メーカーでも実験し成績が良かったので採用を決定し発注をしたが、それからが地獄であった。日本で設置し実験室でテストを開始したのだが、採用決定時には少量の冷凍フライドチキンしかテストしなかったが、店舗の最大売り上げを想定したフルロードをかけると、内部温度にばらつきがでるのを発見した。従来のイタリア製のSCOは問題ないのにこの米国製は温度が上がらないのだ。既に発注をした後であり、キャンセルはできない。それから毎晩夜中になると米国メーカーの技術者と電話でうち合わせ、昼はその検証に当たった。そして、やっとわかったのは蒸気量が不足していると言うことだった。

通常スチームコンベクションオーブンは高温で蒸気を入れて調理するコンビネーションモードの状態では蒸気量を通常の1/5ほどに低下させる。元々SCOはフランス料理などの生の食材を美味しく食べるために開発された物であり、蒸気を沢山入れて高速に調理を仕様という考え方はなかった。そのためスチームモードで蒸し物を調理する場合にはフル蒸気量になるが、高温の温風と蒸気を併用するコンビネーションモードでは1/5ほどの蒸気しか入れていない。それは調理法の問題でもあるが、温風と蒸気を同時に大量に発生させると、当初の電気式のSCOでは大容量の電気を必要とし、限られた電力の厨房では対応できなかったという理由もある。

しかし、今回は冷凍食品を使うために大量の蒸気が必要であり、ガスオーブンであるので電気容量を無視してフルスチームがでるように改良する必要があった。そこで蒸気量をコントロールするROMのプログラムを書き換えることにしてその仕様を急遽作成した。

もちろん、蒸気が大量にでると無駄なエネルギーを消耗するので、特殊なソフトを考案し、蒸気が無駄にならないようにしなくてはならず、数週間寝ないでその論理を組み立てた。その結果は下記の <スチームコンベクションオーブン仕様書>に凝縮されている。

お断り

このシリーズで書いてある内容はあくまでも筆者の個人的な経験から書いたものであり、実際の各チェーン店の内容や、マニュアル、システムを正確に述べた物ではありません。また、筆者の個人的な記憶を元に書いておりますので事実とは異なる場合があることをご了承下さい。


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