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飲食業の技術革新


飲食店経営 2001年11月号

「飲食業の技術革新」

「調理作業改善」

<売れて儲かるお店に改造する手法>

バブル時代に高級レストランに慣れ、海外旅行により本格的なレストランを体験した、贅沢な消費者が増えてきており、日本の子供だましのレストランに満足感を覚えていないのが、現在のチェーンレストランの大きな不振の理由だ。

現在の店舗の売り上げを上げるためには料理の味Q、サービスS、クレンリネスCを見直すことが重要だが、お店のコンセプトが消費者から見て色あせたり、時代遅れであってはいけない。常に消費者の立場で新鮮なお店かチェックが必要だ。

ある、ファミリーレストランチェーンのA社が生産性とサービススピードの向上を計った。ご存じのようにファミリーレストランチェーンはガストの出現以来、コンベアーオーブンなどを使用し、サービススピードと生産性の向上を図っている。

そのチェーンの主力商品はハンバーグステーキであるが、コンベアーオーブンを使用せず、グリドルで焼いている。ファーストフードと異なるから作り置きをしないで、注文後製造を開始する。作りたてで美味しいので人気のあるチェーンだ。しかし、最近のガストやサイゼリアなどの低価格チェーンの出現により価格やサービススピードの点で優位性がなくなり、改善をしようとしたのだ。

まず、店舗を見学することから始めた。多くのチェーンは標準化と言いながら、店舗展開の歴史の中で、店舗の大きさ、デザイン、レイアウトを徐々に変化させているのが普通だ。そこで異なるお店をいくつか分析しなければならないのだ。

店舗見学の際には、朝の準備から、昼のピーク、夕食のピーク、夜間の清掃片づけ、まで観察しなくてはいけない。勿論VTRで撮影しながら分析するわけだが、VTRは覗いてはいけない。VTRは後で分析に疑問を持った場合に見直すために撮るだけである。VTRやカメラの最大の欠点は画面角度が狭いので同時に全ての作業を見ることが出来ないと言うことだ。作業分析で重要なのは一点に注目するのではなく、全体の作業の流れがどうなっているか、360度の角度で観察することだ。

同時に使うのはデジタルカメラだ。これも気がついたことをメモする代わりに撮っておき、後でその時に感じたコメントを書き出すために使うだけだ。

店舗オペレーションの分析と同時に調理マニュアルの分析を開始しなくてはいけない。A社はフランチャイズチェーンであり、大変良く整備されたマニュアルを持っている。しかし、良く分析して見ると現場の調理作業と随分異なることが分かった。大手ファーストフードや大手ファミリーレストランのマニュアルを入手したり、経験者を雇ってマニュアルを完璧に仕上げるのは可能だが、理想的なマニュアルを作り、現場と乖離しがちな欠点がある。A社も大手チェーンの教育担当経験者を採用し、立派なマニュアルを作成したのだが、オペレーションの現場分析を詳細に行っていないため、現場と乖離していたのだ。

忙しいときに注文が殺到すると調理に時間がかかり、サービス提供時間が遅くなってしまう。人気メニューの肉厚のハンバーグは冷凍パティの状態から焼き上げるから時間がかかる。数店舗を観察すると、なんとマニュアルでは禁止している保温をしていることが判明した。焼き上げたハンバーグパティを鉄板の上に置いた容器の中に入れ蓋をして保温している。マニュアルでは注文後調理をしなくてはいけないと言っているのに店舗現場ではピーク時には間に合わないので昔からやっているという。

お店では以前は調理時間が早くて良かったが今は遅くなったという。創業時には得意なメニューに絞り込んだ限定メニューでサービススピードが速いのを売り物にしていたが、お客の要望や、競合店対策としていつの間にかメニューが増えていた。年月が経つと改装を行うが、一般的に売り上げに直結する客席や外観の改造が主だった。メニューが増えても調理機器を導入するくらいで、調理行程を分析し治してレイアウト改善をする事をしてこなかった。

新メニュー開発の際にテストキッチンなどで調理行程のチェックを行うのだが、単品のみの調理行程のチェックであり、実際の店舗の厨房で他のメニューを作りながら調理する検証をしていない。その結果、メニューが増えた分だけ作業が増加し、オペレーションを混乱に導いていたのだ。

オペレーションが混乱する場合、店舗の店長やオーナーが本社に文句を言えばよいのだが、A社のポリシーは額に汗をかいて働こうと言うことであり、メニューが追加されて忙しくなっても、額に汗をかいて働くことに満足感を持っているから何の疑問も持たなかったわけだ。

店舗の売り上げはアイドルタイムとピークタイムがある。アイドルタイムは売り上げが低いので、働く人間が少ないから厨房では一人で全ての作業をこなすので、導線が長くなる。しかし、ピークタイムには高い売り上げを確保するために十分な人間を厨房に入れ対処する。人が多ければ、作業を分担するのでピーク時には動かなくて良くなり、忙しくなればなるほど、人の動きが減るのが良いレイアウトと作業分担だ。ところがA社の厨房は忙しくなればなるほど人の動きが多くなり、作業導線がぶつかったり、摩擦を起こしている。

マクドナルドやKFCのような単品に絞り込んだFFであれば、調理機器の高い能力は必要であるが、FRのように単品当たりの出数が少ない場合には機械に問題は殆どないはずだ。確認のためには、全店のPOSの時間帯売り上げを収集し、単品毎の時間帯の出数を分析し、調理機器能力に問題がないことを確認する。

A社は創業時には主力メニューを基に作業分析をキチンと行っているので、売り上げが上がっても問題がなかったが、後から追加したメニューが作業を大幅に乱していた。調理機器の能力問題ではなく、調理機器や補助調理機器のレイアウトが問題だった。メニューが増えると原材料の食材が増えるが、保管する冷凍庫や冷蔵庫を新しい調理機器のそばに適正に設置することを忘れていたのだ。そのために新メニューの注文が入ると、慌てて奥の冷蔵庫や冷凍庫に走る。その長い導線が全ての作業者とぶつかるという問題をひこ起こしていたのだ。そこで小型の冷凍庫や冷蔵庫を配置し、全体のレイアウトを変更することにした。

ピーク時にハンバーグを保温する問題では、現実にサービススピードを上げるために殆どの店でやっているのであればマニュアル化し、適切な保温機を使用するようにした。上記の変更はほんの些細な変更であるが確認するためには調理機器を並べ替え、生産性が上がるかチェックしなくてはいけない。

そこで、テストキッチンに調理機器を全て並べ、店舗のPOSから取ったデーターに基づき店舗のベテラン作業者に作業をしてもらい、作業分析を行った。この作業を行わないで、新店舗で実験すると後でレイアウトを変更することは殆ど不可能であるから、店舗毎にレイアウトが変わるという弊害を引き起こす。

さて、ここまで作業が進んでいざ新店舗に導入しようとしたら、A社は「生産性が上がる厨房レイアウトで売り上げが上がるのだろうか?」と言う疑問をいだいた。厨房レイアウトだけでなく客を引き寄せる店舗デザインも必要なことに気がついたのだ。店舗デザインの見直しは個店レベルであれば簡単であるが、チェーンレストランの場合はチェーン展開を考えた専門知識が必要になる。そこで、A社では米国の専門家を使うことにした。

米国のFFやFRのチェーンは小型店や、テイクアウト専門店、お総菜店、新業態などを常に開発し、客の消費動向をチェックする等の実験を行っている。コンセプトなど自社で全て開発することは可能であるが、社内スタッフは自社の商品ややり方に対し先入観念があり、大胆なイメージやコンセプトの導入が難しい。そこで、プロトタイプ店舗を作る専門家が誕生したのだった。

以前、米国でボストンマーケットという丸鶏をローティサリオーブンで炙り焼きするチェーンが大人気を呼び、マクドナルドやKFCなどのファーストフードチェーンがそのコンセプトの新店舗をテストしたことがある。KFCの場合は既存店舗を改造して、機械を置いてフライドチキンと併売をしたのだが、マクドナルドは慣れない鶏丸焼きを自社で開発することが難しかったのと、時間がないと言うことで、コンセプトメーカーのB社に依頼し、ハースエキスプレスというボストンマーケットそっくりな店舗をシカゴ郊外に開店した。その後、マクドナルド社は経営不振に至った、ボストンマーケット社を買収するに至った。

B社は殆どのFFチェーンの小型店舗、新コンセプトや、FRの新業態のお総菜や、ガソリンスタンドのお総菜コンビニ、その他の分野では百貨店のイメージチェンジ、カーディーラーの店舗デザインなどの実績がある。

そこで、同社の担当者を日本に呼び、店舗を見学させ、店舗コンセプトの設計に入った。米国から日本に何回も来ると交通費などのコストがかかるので、連絡はインターネットをフルに活用することにした。厨房設計やレイアウトはCADのデーターをインターネット経由でやりとりすることになった。

最初の彼らの仕事は日本のマーケットの分析と競合店の視察であった。その結果、日本のFRの欠陥は店舗デザインが単調で暖かみがなく、FFのようにプラスチック看板等を多用しているので安っぽく感じると言うことであった。米国のトレンドは店舗がよりナチュラルで自然にとけ込んだウッディなデザインである。特に、メニューやPOPが写真入りでFFを連想させるので、なるべく写真を使わない、洗練されたデザインにしようと言うことになった。また、A社の特徴は安全な野菜を多用することであり、野菜や自然のイメージを感じさせる内装とした。

厨房は出来るだけ小さく合理的にして、客席を増加するのが望ましいのだが、フルオープンキッチンにして調理行程をお客様に見せようと言うことになった。昔のFFやFRは調理行程を見せていたので手作り感やシズル感を感じさせたが、今はメニューの増加により厨房を見せることがなくなってしまい、冷凍食品を電子レンジでチンとしているのではないかと消費者は感じているのだ。そこで全てのキッチンを見せるようにするために、保温機なども囲いをなくしたり、無駄な柱を撤去し、格好の良い厨房設計を心がけた。

その結果、生産性は20%の向上という結果を生みだしたが、残念なことに、デザイン中心の設計としたため、客席の大幅増加が不可能であり、売り上げの増加までには至らなかった。イメージの向上も大事だが、それにより客数の増加を裁けるような客席などのハードも必要だという教訓であった。

しかし、そのデザイン変更で学んだことは、海外のチェーンと提携して契約金や高いロイヤルティを払うよりも、設計会社を活用すれば海外の斬新なイメージの店舗をより低コストで実現できると言うことだった。しかも、フランチャイズチェーン展開を前提として開発することが可能だと言うことだ。

従来は自社でコンセプトを時間をかけて開発するか、高い契約金とロイヤルティを払って海外チェーンと提携するかの二者択一であったが、このやり方を取り入れることによりより自由度の高いチェーン展開が可能になるだろう。

お断り

このシリーズで書いてある内容はあくまでも筆者の個人的な経験から書いたものであり、実際の各チェーン店の内容や、マニュアル、システムを正確に述べた物ではありません。また、筆者の個人的な記憶を元に書いておりますので事実とは異なる場合があることをご了承下さい。


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