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飲食業の技術革新


飲食店経営 2001年10月号

「飲食業の技術革新」

「調理機器改良に必要なオペレーション知識」

<調理技術革新とは調理人の経験を数値に置き換え、アルバイトにも調理できるように自動制御することだ。> 調理人が勘と経験で調理をする揚げ物から、アルバイトが調理をする自動化フライヤーへ

<フライヤー>

揚げ物の品質は投入時の油の温度に大きく左右される。揚げ油の温度は160ー180度Cと言うのが基本であり、食材によりその温度を設定しなくてはいけない。調理人は銅鍋をガスコンロの上に置いて火を最大限にして、泡と煙が軽く出る位になったら、衣(天ぷらバッターなど)を垂らし、その色具合で適正な温度かどうか判断する。次に鍋に衣をつけた海老や野菜を少しづつ入れはじめる。火力が強ければ焦げてしまうので、火を弱火にし、投入量が多ければ、火を強火にする。そして加熱された具が浮いてきたら、色具合を判断して上げる。忙しいからと一度に大量の食材を投入すると、油の温度が低下して油っこく上がるし、かき揚げのように衣が多く大きい天ぷらは、温度を下げてからじっくり揚げないと中まで火が通らない。それらを全て目で判断する経験と勘の世界だ。それでは人や、お店の時間帯により味が異なってしまう。チェーンレストランとしては誰がどの店でも、どんなに忙しくても同じ品質に揚げることが出来ないといけない。そこで調理の経験と勘の世界を数値化する必要性が出てきた。筆者が解析した調理人の仕事を元にどのように揚げ物を自動に揚げるフライヤーを開発してきたか見てみよう。

<1>設定温度の調節

調理人の経験と勘を数値化するために調理工程に必要な要素の分析を開始した。その1つが投入時の温度であった。揚げ物を観察すると大体160ー180度Cであることが分かった。 天ぷらやフライ物は衣(天ぷらバッターやブレディング)をつけた肉、魚、野菜などの食材を揚げる。衣は高温の油に入れられることにより、グルテン質が固まり食材の旨味や水分を閉じこめて美味しくする。同時に、高温の油できつね色に加熱された衣は芳ばしい香りを出し、食材をより美味しくする。衣をつけないフレンチフライでも、表面が狐色のかりかりの状態になることでポテト本来の美味しさを中に閉じこめて、外がカリカリ、中がほくほくの状態になる。

投入時の油の温度が高すぎれば真っ黒に焦げて美味しくないだけでなく、表面が焦げているのに中の温度が上がらない。温度が低ければ油が食材に染みこみ油っこく、芳ばしい香りもしなくなる。

そこで油の温度が一定になるサーモスタットを付けて難しい温度管理の自動化を出来るフライヤーが開発された。サーモスタットの重要な役割は、食材投入後速やかに点火する感度の良さ、つまり温度をなるべく安定させることだ。

サーモスタットを付けたフライヤーは、揚げ色が一定になるはずであったが、どうも一定にならない。よく観察してみたら、油槽の左右のどちらに入れるかで、揚げ色が異なることに気がついた。そこでサーモスタットの設置場所をチェックしてみたら、米国のフライヤーではサーモスタットは3本あるバーナーチューブの真ん中、つまりフライヤーの真ん中に設置してあり、左右どちらに食材を投入しても同じタイミングで温度を関知し、点火する。ところが日本のフライヤーはどういう訳か、左側についているので、食材を左右に投入すると点火するタイミングが数十秒ずれて、揚がったときの色合いが異なることが分かった。

また、サーモスタットはバーナーチューブの上に設置するのであるが、バーナーチューブから一定の距離がないと、油の温度ではなく、加熱されたバーナーチューブの温度を関知して、油温が低いうちにバーナーの火を止めてしまう。あまり離れていると油の温度上昇の関知が遅くなり、設定温度よりも油の温度が高く、食品が焦げてしまう。

ところが厨房業者の品質管理はその重要性を知らないので、フライヤー毎にその間隔が異なることが分かった。そこでサーモスタットの取り付け位置を左右等間隔、バーナーチューブからの間隔も一定にする事にしてそのばらつきを防ぐことにした。

次に温度の設定を決めなくてはいけない。一口に温度というが、例えば170度Cと言う温度にフライヤーを設定しても、温度は常に170度Cではない。温度管理をする役割のサーモスタットは設定温度170度Cから、2ー3度C下がると温度低下を関知し、ガスバルブを開け、口火にガスト空気の混合体が点火され燃焼を開始する。そうすると温度はそれからまた、1ー2度C低下し、徐々に上昇を始める。そして、170度Cの設定温度になったところで、ガスバルブを閉じてガス燃焼を止める。しかし、余熱で、更に1ー2度C油温は上昇する。と言うことは170度Cに設定しても実際の油の温度は170±7度Cになると言うことだ。この温度の幅を狭くするにはグリドルに使用していたより精度の高いサーモスタットを付ければ良いだろうと交換してテストしてみた。しかし、あまり精度が高いとガスバーナーが点火と消火を頻繁に繰り返すことになり、不完全燃焼の原因を引き起こしたり、電気フライヤーはマグネットスイッチの接点の不良を引き起こすことが判明した。また、温度が上昇を開始する際に、感度の高いサーモスタットはバーナーチューブの温度上昇を敏感に関知し、温度が設定温度に上昇する前にガスを止めてしまう。そこで、従来のサーモスタットを使用するが、バーナーチューブからある一定の距離を設定し、油温度が上がりすぎないように温度上昇を予測出来るようにした。(後に判明したのはバーナーチューブタイプでない場合にはより感度の良いサーモスタットを使用しても、バーナーチューブからの温度の影響がないので、より精度の高い温度制御が可能になると言うことだった。)

サーモスタットの精度の測定にはストップウオッチと精度の高いデジタル温度計、食材を計量する秤で行う。

<2>食材と油量との比率

幾らガスカロリーの高いフライヤーを使用しても、揚げる際に一度に大量の食材を投入すると温度が下がってしまう。その温度上昇を防ぐには一度に揚げる食材の量を決めなくてはいけない。それは油の比熱は水の半分であり。上昇スピードも早いが、温度低下も早いからだ。冷凍食品を揚げる場合には以下の表のように必要カロリー数が高いので、食材よりもより多い油が入るフライヤーを使用し、温度低下を防ぐようにする。フライヤーの設計の場合、投入する食材の調理に必要なカロリー数に重量をかけて、どのくらいの油量と、ガスカロリーが必要か計算する。

加熱調理の原理

1ccの水を1度C温度を上げるのに必要なカロリーは1cal。

1ccの水を0度Cの水の状態から凍結するのに必要なカロリーは80calだ。

1ccの水を100度Cの水(液体)の状態状態から100度Cの蒸気(気体)にするのに必要なカロリーは537カロリー

油の比熱は水の半分

多くの食材の成分は、固形物(20%)、水分(70%)油脂分(10%)

計算をしても実際は異なる場合が多い、そこで、実測をして量を設定する方法を教えよう。食材の投入量を決めるのは油温が下がりすぎないようにするためだ。油温が下がりすぎると食材に油が染みこんで油っこくなるからだ。油が染みこまない温度は食材により若干異なるが、基本的に135度C以上に保たなくてはいけない。フレンチフライのように表面をカリカリにするには145度C以下にならないようにする。その温度以下にならないように食材の量を設定すればよいのだ。後は皆さんがどんな仕上がりのフライ物にするかで投入量を決定すればよい。そしてフライヤーの油槽には最低と最大の油の量を刻印し、常に一定量の油量が入っているようにする。

<3>揚げ時間の管理

食材を揚げている総時間と、その間の温度変化は食材表面の色と内部温度を左右する。油温は一度に投入する食材の量によって異なるから、量により揚げる時間を変えなくてはいけない。タイマーで管理すればよいように思うが、何時も同じ量の食材を揚げるわけではない。時間帯により変化する繁忙時に対応しなければならないからだ。その揚げ時間をコントロールするベテランの調理人の経験と勘をフライコンピューターで補うという考え方が出てきた。フライコンピューターはマクドナルドやKFCのように揚げ物を大量に揚げるチェーンが誰でも同じ品質が出来るように、温度と、時々刻々と変化する油の温度により食材の投入量を関知し、最適な揚げ時間を知らせる仕組みになっている。大量の食材を投入し油温が下がると揚げ時間が長くなり、少量の食材だと油温が高いので短時間にして、何時も一定の揚げ色、中心温度になるようにする考え方だ。これは揚げ物を揚げている間のある一定以上の温度帯にどのくらい揚げていたかを判断するように設定している。当然のことながら食材によりその設定値は異なってくる。

このコンピューターの精度チェックには精度の高いデジタル温度計と、パソコン、表計算ソフトを使用し、時々刻々と変化する温度と時間を表に入力し、後でグラフ表示させ、ある温度以上の面積を計算する。

<4>火力の調節

調理人の作業を見てみると、投入する食材の量により、ガスコンロのバーナーのガス量つまり火の大きさ(火力を調整し)油の温度を最適に管理をしている。その調理人の経験と勘による作業をフライヤーで自動化するとどうなるのだろうか。

温度が170度Cの揚げ油に食材を投入すると、冷たい食材に熱を奪われ油の温度が下がる。その温度をサーモスタットが関知して、ガスのバブルを開きガス燃焼が開始する。そして、油の温度を設定温度まで回復する。では、ガス入力を同じにすれば油の温度の回復が同じかというとそうではない。燃焼したガスの熱量が油に効率よく伝わらないといけないのだ。 温度回復時間をリカバリータイムという。例えば135度Cから163度Cまで温度回復に必要な時間を2分30秒などと定めることだ。一定のガス入力に対して、一定の温度回復時間を達成するには、熱効率を一定にしないといけないのだ。

一般的に使用するガスフライヤーは中間加熱型と言って油槽に埋め込まれたバーナーチューブ内をガス燃焼した熱風が通りフライヤー後部から排気する。油槽にあるバーナーチューブは高温のガス燃焼空気の熱を油に伝達し加熱する熱交換機の役割を担う。

ガス燃焼にはガスと空気(正確には酸素が)必要であり、十分な酸素を供給するためにある速度でバーナーチューブ内で燃焼させる。あまり速度が速いと必要以上の空気を供給することになり熱効率が下がるし、遅いと不完全燃焼する。そのバーナーチューブを通る燃焼ガスのスピード制御が課題だった。ガス燃焼空気がスピードを上げてバーナーチューブを通過すると折角のエネルギーが油に十分伝わらずに高温の排気ガスとなって空気中にでてしまう。そこで、排気風速を落とし、熱交換を十分にさせることが重要だと言うことが判明した。

そのためには、バーナーチューブ内にラジアンツという障害物をおき、そのラジアンツに排気速度を落とさせ、熱交換の効率を上昇させる。更にフライヤー後部に排気調整弁を置き、それで排気スピードもコントロールするという2段構えの風速管理を行うと言うことだった。

しかし、フライヤーを長く使用すると金属製ラジアンツに高温の燃焼ガスが当たるので、あっという間に溶けてしまう。そこで耐熱性の高い金属やセラミックを使用するようにした。更にラジアンツの形状を工夫することによりより熱交換率を高めることが可能であった。

その際に設定した数値管理は、バーナーチューブ内を通過する排気速度と、一定の温度回復に要するリカバリータイムの設定であった。ガス入力だけでなく、それらの数値を設定することにより各店のフライヤーの能力が一定になることになった。排気速度の測定には風速計とバーナーチューブの面積を測る巻き尺を使用した。

<5>油の品質管理

フライ物の品質は食材そのものだけでなく、バッターやブレディングに吸収された油にも左右される。例えばマクドナルド社のフレンチフライは長年ファーストフードの中で最も高い評価を受けてきたがその最大の理由は最近まで牛脂を93%以上混入したスペックだ。牛脂により芳ばしい香りを醸し出していたのだ。(最近では健康問題から、植物性油脂に変更し、牛のフレーバーを添加するようになっているようだ)。天ぷらは揚げ油のリノール酸が加熱されることにより芳ばしい香りが発生する。そこでリノール酸を多く含んだ大豆油、菜種油、胡麻油などを使用する。つまり業種業態食材により最適な油を使用するわけだ。

良い油だけでなく、新鮮な油を使わなくてはいけない。油は使用しているうちに酸化し、食べると油っこいしつこい味になる。更に酸化が進むと有害物質を作り出し、食あたりを引き起こす場合もある。保健所ではそのために酸化度2.5ー3.0と言う世界で最も厳しい基準で管理をしている。

日本の油の酸化に対する基準が厳しいのは保存する加工食品に揚げ物が多いからだ。最も油を使用する業界のインスタントラーメン製造では麺を油で揚げアルファー化している。油で揚げた麺をすぐに食べるのなら問題はないが、揚げた麺を袋詰めし、小売り店の店頭に何ヵ月も並べて常温で販売すると、店頭で太陽の直射日光を浴び、あっという間に酸化し、食べるとお腹をこわすなどの食中毒が発生する。そこで日本独自の厳しい油の酸化基準が定められたのである。現在では使用する油の酸化度は2.5以下と定められている。これは店舗で油を毎日加熱すると、たいして量を揚げていなくても、3日位でその数値に達してしまうほど厳しい水準である。この基準を越えた油は廃棄処分にするほかはない。

食品を調理する際に食材から出る滓のカーボン化、水分、高温で加熱する、使用する金属が酸化触媒となる、等により酸化が進む。その酸化を遅くするためには、一日数回油を濾過したり、フライヤー内部を清掃する、等の作業を行う。濾過には油分に含まれた細かい滓を取り除けるようにペーパーフィルターや珪藻土を使用し綺麗な油にする。

油が酸化しているかどうかは目視では判断できない。市販の酸化をチェックする試験紙を使用する。(元々は米国のメーカーが作成し、米国マクドナルド社で採用していたが、それをテストしてびっくりした。米国の交換基準をは酸化度5ー7だったからだ。日本は上記のように加工食品の保存性の問題から必要以上に酸化度の基準を高くしているのであり、その数値基準を守っているのは日本とドイツだけのようだ。そこで日本の企画に合わせた試験紙を作成した。)

<6>機械の清掃とメインテナンス

全店のフライヤーの能力が一定になったはずなのに、1年ほど経過するとお店毎の能力が異なることが判明してきた。マクドナルドではコンサルテーションリポートという店舗QSCの詳細な自己診断を行うので、全店舗のオペレーションや調理機器等の問題点が浮き彫りになる。コンサルテーションリポートにより判明したのが、熱交換機能を司るバーナーチューブに長年の加熱により油槽側に油分が焦げ付いてカーボンとなって付着することだった。固く焦げ付いたカーボンは軽石のような断熱材であり、熱伝達を大幅に妨げる。

そこでカーボン落としをするために、食品添加物で出来た安全な研磨剤と、清掃用のフライヤークロスを開発したがそれでもカーボンの付着を防げない。そこで、特殊なアルカリ洗剤を使用し、数ヶ月に一回ボイルアウトという洗浄作業をすることにした。アルカリ洗剤と簡単に言うが、フライヤーをぐつぐつ煮るうちに泡が吹き出るという問題があるので、汚れをよく落とすのだが泡が出ない洗剤を作らなくてはいけなかった。更に泡が吹きこぼれない温度に自動的に温度調整できるサーモスタットの設定も行った。

つまり、調理機器は当初の性能だけでなくその性能が維持できる、メインテナンスプログラムと、清掃用の道具や洗剤、その使用方法を明確にしたマニュアルも必要だと言うことである。

<7>火災防止

アルバイトなどの未熟練労働者が使用する機械には安全性は必要不可欠な条件だ。温度管理はサーモスタットで行うが、サーモスタットの設定が高すぎたり、壊れたりして加熱すれば、油に火が入り火災となってしまう。そのためにはサーモスタットの他に温度を高く設定したハイリミットコントロール(サーモスタット)を置き、ガスや電気を遮断するようにする。場合によってはハイリミットコントロールを2つ設置し、万全を期するようにする。また、ガス漏れの危険もあるのでガス漏れ警報機とガス自動遮断弁を設置する。 排気ファンを作動させないでガスフライヤーなどを動かすと排気ダクト内が高温になり、火災発生の危険がある。そこで、排気ファンが作動していないとガス点火や通電しないようなインターロック装置を装着する。

このようにアルバイトでも作業できるようにするには調理能力だけでなく安全性も忘れてはいけないのだ。

<参考文献>

フライヤーの専門的な説明は

http://www.sayko.co.jp/article/shibata/93/93-02.html

天ぷらの原理原則、調理方法は

http://www.sayko.co.jp/article/syogyo/insyoku/94/94-06-2.html

お断り

このシリーズで書いてある内容はあくまでも筆者の個人的な経験から書いたものであり、実際の各チェーン店の内容や、マニュアル、システムを正確に述べた物ではありません。また、筆者の個人的な記憶を元に書いておりますので事実とは異なる場合があることをご了承下さい。


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