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21世紀に向けた本部のあり方

第9回

「総務部の危機管理」


1)最初に

飲食業に危機管理など必要でないという甘い考え方は終わった。2000年6、7月の牛乳食中毒事件を見てみればそれは明快だろう。単なる食中毒事故で終わらず、事件後のマスコミ対策の悪さから超有名企業のイメージが崩れ去り、全工場の閉鎖点検を迫られる異常事態となった。この事件以後、消費者は食品に対して敏感になり、欠陥商品が多数発見され報道されるようになった。

食中毒だけでなく、大手製薬会社の目薬に毒物脅迫事件も発生している。この件では製薬会社が迅速に商品を自主回収し、偶然の犯人逮捕と共に無事に事件終末を迎えた。ではその企業の対応が優れていたかというと、実は、事件の予測と対策という面で不備があったと言わざるを得ない。1982年に米国の大手製薬会社子会社の販売するのトップブランドの鎮痛剤に毒物混入をするという事件が発生した。同社は迅速な商品回収と包装の変更を行い、さらにマスコミに対して迅速な対応と的確な情報提供を行い、犯人の逮捕と共に事件は収まった。しかし、薬品や飲み物などの包装の欠陥が問題となり、それ以後タンパリング法と言う法律が制定され、包装をはがして細工をした形跡を発見できるような包装に変更された。この様な事件とその後の包装変更などの情報入手と具体的な対策を怠っていた事件と言えるだろう。

2)危機管理は総務部の重要な仕事だ

危機とは企業活動が円滑に進むことを妨げるものと言える。どんなに注意しても事故を防ぐことは不可能だ。日頃からどんな危機があるかを予測し、その危機を防ぐためにはどうするかの対策を講じ、生じた時は被害を最小限に食い止めると言う配慮が必要だ。危機管理の主たる担当者は総務部である。総務部は会社全体の内容、現状を把握して、日頃か起こりうる危機や危害を予測、分析していなくてはいけない。ではどんな危機があるのだろうか。

3) 最近の企業危機を見てみよう

食中毒、異物混入、毒物混入、毒物混入の脅迫

(1)横浜ハンバーグレストランの食中毒

2000年の2月に横浜のハンバーグレストランチェーンが腸管出血性大腸菌による食中毒を引き起こし3店舗が長期間の営業停止処分を受けた。

原因:腸管出血性大腸菌o-157は牛の腸管に多く存在するために、米国では挽肉製品は中心温度が最低68℃になるまで加熱する(厚生省の指導では75℃、1分間)。この調理上の基本を守らないミス。この企業はo-157が存在しない頃に確立した調理法を見直すこともなく営業をしていたため事故を起こしたと言える。その後、調理温度を上げるために特殊な調理機器を開発せざるを得なくなった。

(2)大手給食業の食中毒

大手銀行数社の社内食堂の経営受託をしていた大手給食会社が大規模な食中毒を発生した。

原因:使用した食材が原因であると言われている。食材コストの低減の為、品質よりも価格重視の購買姿勢が原因ではないかと思われる。その後も同様の事故を引き起こしており、同企業の体質的な問題ではないかと言われている。  

(3)異物混入と脅迫

大手牛丼チェーンのキムチ牛丼に青蛙の轢断死体が混入しており、それを食べた客がクレームを言った。その対応が悪いと言うことで怒った客はホームページにその顛末を掲示し、大きな話題を呼んだ。

原因:セントラルキッチンでの異物混入対策が不十分であり、クレームの際の対応もまずさも事件を大きくした。この件ではクレームを言った客が恐喝の疑いで調べを受け、事件は終わったが、クレームへの迅速な対応と、マスコミ以外のインターネット対応という新しい対応が迫られる事が明らかになった。

強盗

(1)ファミリーレストランで閉店後アルバイトが殺害される

大手ファミリーレストランで閉店後アルバイトが売上げ精算をしていた際にピストルを持った強盗が侵入し、一名を殺害した。

原因:売上金を深夜に勘定するという危険な行為と、不十分な戸締まりを放置した管理責任だ。日本では安全上の問題はないと錯覚した企業の体質上の問題だろう。同店は営業再開せず閉店となった。

(2)食品スーパーで閉店後3名殺害

八王子の食品スーパーで閉店後従業員3名は銃で射殺された、犯人は捕まっていない。

原因:深夜の戸締まりの不十分さ。

(3)ファミリーレストランで早朝強盗

大手ファミリーレストランで早朝出勤してきた主婦アルバイトを待ちかまえて強盗を働く、幸いなことに生命の危険はなく、犯人はすぐに逮捕された。

原因:1人で開店業務に当たるという危機管理のマニュアルの不整備。早朝や深夜の店舗の出入り時に強盗に襲われ危険が高い。その際には必ず2名で行動するなどの対応とマニュアル作りを行う必要があるだろう。米国NRAではセキュリティのトレーニングマニュアルとVTRテープを用意して教育に当たっている。

火災

(1)赤坂のホテルで深夜火災を発生し、多数の死者を出した。

原因:経営者が安全投資を無視したための死亡事故であり、刑事責任を問われた。

(2)旅館の火災

リゾート地の旅館で火災発生23名が死亡。

原因:非常ベルのスイッチをを従業員が切っており、避難が遅れた。また、日頃の消防署の安全指導を無視していた。後に経営者は刑事責任を問われた。

店内の人身事故

(1)ディスコの照明が落下、死亡事故を起こす

六本木の有名ディスコで営業中に大型の2トンもある照明装置が落下し、死亡事故をだした。

原因:消防署の指導を無視した経営者の姿勢である。

(2)居酒屋の新規開店の際に店内内装が落下、けが人をだす。

2000年4月29日正午すぎ、JR駅に隣接するショッピングセンター内の新装開店の居酒屋窓際の木製飾り屋根が突然落下し、屋根の下で食事中の子どもを含む客6人が頭や足に軽いけがをして病院に運ばれた。飾り屋根は窓際の客席の上に、幅50センチ、長さ約15メートルにわたって設置され、陶製のかわらが数十枚のっていた。屋根の下の席では19人の客が食事中で、落ちたかわらの破片や木材の一部が当たり、客6人が頭や足に打撲や切り傷を負った。

原因:店内の内装に外装用の重い瓦を使用し、その重みで落下したと思われる。店内内装は雰囲気も重要だが安全性の確認はより重要だと言うことだろう。

社員のモラルに関する事件(含む交通事故、自殺)

(1)大手ファーストフード社員の交通事故で死亡者

大手ファーストフード社員が居眠り運転で歩行者の行列に突っ込み死亡者をだす。通学途中の子供が死亡したことから新聞に大きく報道され、同社の名前が出た。

原因:運転者の寝不足による事故である。幸いなことに休日の事故であり、同社の責任を問われることはなかった。

(2)大手ファーストフード元社員の殺人事件

大手ファアーストフード元社員がスチュワーデスを殺害したという事件でマスコミに騒がれた。広報室が迅速に対応したためにそれ以上の騒ぎには発展しなかった。

顧客の犯罪

(1)大手ファーストフード社の飲料に毒物混入

顧客が同僚に嫌がらせをするためにファーストフードで購入した飲料に毒物を混入した。

マスコミに同社の名前が報道され、信用が下落した。同社では店内で使用される洗剤や器具などの詳細を明確に把握しており、すぐに同社の問題でないことが判明、外部の購入者が原因でないかと追及が迅速に行われた。

原因:大手になり有名になるとそのような犯罪に使われる。普段からそのような場合の広報体制、危機管理体制を整えていたために大事件にならずに済んだ。

天災(地震、水害など)

(1)神戸地震の際の炊き出し

大手外食チェーンやコンビニが神戸の大地震後の炊き出しを積極的に行い、新聞、テレビなどで報道され、企業のイメージを高めた。

原因:日頃から危機発生時の対応として、現地での炊き出しや救援活動などの権限委譲を行うことにより現地で的確に応対でき、それが企業イメージの向上につながる広報活動の典型的なよい例である。

経営上の不手際

(1)不法滞在者の採用

高級焼き肉チェーンが労働許可を持たずに入国した外人労働者を、事情を知りながら大量に採用していた。事件の悪質さから経営者が逮捕され、書類送検された。事件は大手新聞で報道され、同社の信用が低下してしまった。

原因:労働許可のない外人労働者を採用することは経営者も罰せられるという法律を熟知していないか、無視していたためである。

(2)ファミリーレストランチェーン系列会社社員の横領事件

大手ファミリーレストランチェーン系列のレストランで金銭の横領や業者よりの賄賂授受が表面化し、刑事事件として警察に届け出をした。

原因:会社の従業員規則に金銭横領や賄賂授受の禁止をうたっていなかったことが原因かと思われる。また、事実にせよ、告訴の事実が報道されたことは同社のイメージを大きく低下させた事件で、広報の体制の不備が伺われる。

(3)不当解雇

大手ファミリーレストランで昭和62年2月、店内でぬいぐるみ2個が消えたことを事実としてパートタイマーの主婦10人全員が解雇された。これに対し主婦らは「全くのぬれぎぬ、不当解雇だ」と主張。千葉地方法務局船橋支局千葉県労連、労働省が事態を重視、調査にあたった。

原因:店長への従業員の扱い方の教育が不足し、不当解雇になってしまった。店舗の対応が悪いだけでなく、会社の広報室の対応が悪く、テレビで大きく報道され、大問題となってしまった。テレビにこの様な事件が放映される場合は一般的に従業員側に有利に報道されやすく、企業側は一方的に悪者にされやすいので注意しなくてはいけない。従業員への教育、広報室のあり方も含めて大きな教訓となった。

その他

4)危機発生時の連絡体制

危機発生時の連絡体制
緊急連絡先 TEL 担当者名
担当店長   (会社)    
         (自宅)    
管理者     (会社)    
         (自宅)    
部長    
その他担当者    
社長      (会社)    
         (自宅)    

5) 危機発生時の行動指針

危機発生時の報告と対外発言の原則

(1) 発生危機の内容を上司に迅速に、正確に報告する。

危機発生時には自己判断せず、その事実を5W1Hに基づき、速やかにまとめ

上司に正確、詳細に報告する。口頭で報告後、記憶が曖昧にならないように直ちに文書に記録し保存する。後に裁判や刑事事件、民事事件に発生した際に必要になるからだ。

(2) マスコミ対応は、基本的には総務部の責任者か経営者が担当する。

危機発生時のマスコミ対策は、現場からの報告に基づき総務部責任者または経営者が行う。 場合によっては、危機発生現場の店長や責任者が当面の一時的対応を行わなくてはいけない場合がある。

(3) 全員が統一した見解、発言、行動をとる。

危機が発生すると様々な情報がとびかい、混乱、誤報を招き、2次的な危機を発生させる。マスコミの取材に対しては、会社として統一した内容を発表しなくてはいけない。統一見解は総務部責任者、経営者が論議決定し、即座に社内、店舗現場に流さなくてはいけない。社員全員は個々の意見を述べるのではなく、この統一した内容の範囲で発言を行うように注意を払う。それ以上の情報を求められた場合は総務部責任者または経営者に連絡を取るように依頼する。

 

緊急時の関係連絡先

危機発生時に関係部署に迅速に連絡できるようにしておく。
機関名 住 所 TEL
警察署    
消防署    
保健所    
救急病院    
県庁    
市役所    
記者クラブ(県庁・市役所内)    
     
     

危機発生時における行動原則

(1) まず、落ち着いて初期行動を起こす。

(2) 状況を把握と事故発生内容の報告

(3) 事故後の対応

会社上司の指示に基づき、その範囲内で行動する。統一見解が出されたらそれに従う。

危機発生時のマスコミへの対応原則

  1. 必ず統一見解に基づき回答する。
  2. 権限外の回答を求められた場合は、総務部、経営者を紹介する。
  3. 未確認、不確実な点については絶対に自己判断で回答しないこと。必要があれば正確にメモし、必ず総務部、経営者からの指示に従って回答する。
  4. 取材のあったマスコミからは名刺をもらい、マスコミ名と担当記者名を総務部、経営者に報告する。
  5. 取材内容を総務部、経営者に報告し、直ちにその内容を文書に残す。

取材マスコミ一覧表

月/日/時 マスコミ名 記者名 連絡先 総務部への連絡
         
         
         
         

被害者の連絡先

氏  名   性別男・女 年令
自宅住所   TEL  
収容先住所   TEL  
       

被害者状況

危機対策マスコミ応対手順

食中毒の場合
保健所の発表によりマスコミの取材活動が開始される。記者は第一報の確認作業のため店舗または現場へ駆けつける。総務部または経営者の統一見解に基づき説明する。総務部、経営者へ以下の内容の現状報告を迅速に行う。
報告項目 報告内容

チェック

1.店舗名・報告者名・連絡先

   
2.保健所立ち入り調査の日付               月  日  時  
3.理由    
4.保健所の見解    
5.原因    
6. 一店舗にとどまるか(工場からの素材が原因か)    
7.病状    
8.発病人数    
9.保健所の命令    
10.内容はどの程度外部に知られているか    
11. マスコミの取材有無 
・会社名・担当記者名・TEL
   
12.マスコミへ取材への対処内容    
13.被害者の連絡先    
     

6)総務部の役割

なお、乳業メーカーの食中毒事件では、事件後の社長の対応が悪かったと言うことでマスコミを敵に回し事件がより大きくなってしまった。危機発生時のマスコミへの対応の訓練を総務部は普段から実施しなくてはいけない。会社が大きくなれば総務部だけで対応できないので、PR会社を使うがその場合の選定方法は緊急事態発生時の能力だ。PR会社によっては緊急事態発生後の記者会見のシュミレーションを行う施設を備え、日頃からクライアントの訓練を行っている。そのような緊急事態に対応できるPR会社を選定するのは総務部の重要な役割だ。

http://www.prap.co.jp/media.html

また、日頃から新聞、マスコミの情報を整理し、どんな危機が発生しどのような対応をとっているのかをまとめておき、自社の対応を常に検討しておくべきだろう。事故があっても日頃の訓練で冷静的確に対応できるようにならなくてはいけない。

以上

お断り

このシリーズで書いてある内容はあくまでも筆者の個人的な経験から書いたものであり、実際の各チェーン店の内容や、マニュアル、システムを正確に述べた物ではありません。また、筆者の個人的な記憶を元に書いておりますので事実とは異なる場合があることをご了承下さい。


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