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アウトバックステーキハウス


1)筆者の体験

筆者が初めてアウトバックステーキハウスを訪問したのは1995年の5月だった。

5月に開催されたNRA(米国レストラン協会主催のホテルレストランショー、毎年シカゴで開催される)の後、南部の田舎町で初めて訪問した。アウトバックステーキハウスは当時、南部の田舎町から店舗展開を開始しており、筆者の良く訪問するサンフランシスコ、シカゴ、ニューヨークなどの大都会にはまだ出店していなかった。そこで、南部の友人に依頼して店舗を探してもらったら、友人の住んでいる田舎町にあるとの返事をもらった。そこで、シカゴからニューオリンズ経由で15人乗りの小型機に乗り込み、わざわざその田舎町を訪問した。

到着したのは昼だったがすぐに店舗を訪問した。しかし、昼は営業をしていない。なぜ訪問したかというと、私が友人に「店舗内、特に厨房を見たいんだ」と頼んでいたので、友人が知り合いの店長に頼んで特別にセッティングしてくれたわけだ。

筆者はステーキが大好物で米国に行くと必ずステーキ屋を訪問する。筆者の大好物のステーキ屋はニューヨークではブルックリンにある107年の歴史を誇るピータールーガー、牛肉の集散地シカゴで肉屋御用達のステーキやモートンズだ。これらの高級ステーキ屋は他では食べられない美味しい肉とサービスを特徴としている。ステーキは米国では、美味しい肉の入手と美味しく食べさせる技術が必要な日本の高級和食のような存在だ。

そんなイメージがあるからチェーンレストランのアウトバックなどどうせ美味しいステーキを食べさせないだろうと言う先入観念を持っていた。 昼に訪問しキッチンを見学させてもらった。仕込みを行っている。驚いたのはサラダにつけるクルトンまでお店で作っていたと言うことだ。食パンをカットし、オーブンできつね色に焼け色を付ける。次にソースを塗って再び焼き上げる。ソースは店舗で生のガーリックをつぶし、バターと調味料を混ぜて作る。あの有名なブルーミングオニオンも大型のオニオンの皮を剥き、切れ目を入れて、一晩氷水につけておく。付け合わせのベイクドポテトも生のジャガイモを洗い、バターを塗り、塩をまぶし、一個一個丁寧にアルミホイルで包み、客に出すタイミングを見計らってオーブンで焼き上げる。デザート、スープに至るまで手作りだ。

手作りでないのは、アイスクリームとパン位の物で,ほとんどの料理を店で時間をかけて丁寧に仕込んでいる。チェーン経営の店でこんな手間のかかる作業を行うなんてと驚いていたら、店長はこれがアウトバックのこだわりなんだと胸を張っていた。

そして、夕方に食事に行ったのだが、私の友人の家族やその友人までついてきてしまって、10名以上の大パーティとなってしまった。聞いてみたらものすごく人気があるのだという。私の良く行くシリコンバレーのアップル本社の前にもやっと、アウトバックステーキハウスが3年ほど前にできた。それ以来、現地で一番人気のレストランはここ数年アウトバックだ。友人の子供にどこに行きたいというとアウトバックという。格好がよいし、子供にも楽しいのだ。米国のレストランは従来、子供(12歳以下)を連れて行かないのがマナーだったが、最近は大きく変わってきている。特にこのアウトバックは子供ウエルカムだ。子供が多少泣いても騒いでも、店内は居酒屋のようににぎわっているからだれも気にならない楽しさだ。4月上旬に訪問した際には10人以上のパーティが5カ所も進行中でどんちゃん騒ぎだった。今でも夕方4時半で2時間待ちは当たり前の超繁盛店だ。

2)一般の評価

米国での一般的な評判はどうか見てみよう。別表のRestaurants Institutionsと言う米国版飲食経営、200年3月1日号のChoice in Chains Winnersと言う消費者調査を見てみよう。調査会社のGreenwich社が全米の4000家庭に調査用紙を配布し、2819通の回答を元に作成した物である。内容は業態別にチェーンを分け、総合評価(総合)料理の品質(品質)、メニューの種類の多さ(種類)、価値(価値)、サービス(S)、雰囲気(雰囲気)、清潔さ(清潔さ)、便利さ(便利さ)で評価を5点満点でつける。高い点数が高い評価と言うことになる。全てのジャンルを網羅できないので総合評価5位までと、参考に日本にも進出している企業の評価を比較してみた。

ここでアウトバックステーキハウスは総合で3位になっている。1位はファドラッカーズやイーチーズと言う超人気レストランと総菜屋を作り上げた、フィル・ロマーノ氏のコンセプト、イタリアンのMacaroni Grillだ。2位もイタリアンのThe Olive Gardenだ。

では各ジャンルの評価を見てみよう。アウトバックは品質は2位、メニュー種類では12位、価値感は19位、サービスは2位、雰囲気は5位、清潔さは4位、便利さでは21位、 と言う評価だ。注目しなくては行けないのは商品の品質とサービスでマカロニグリル(この企業は化け物企業で、フィルロマーノの良さを最大限出している店だ。ここに勝のは至難の業だろう)に注いで第2位の座を確保したことだろう。ちなみに最近ワタミフードサービスと合弁で日本進出を果たしたTGIフライデーズは総合評価で22だ。比較すると品質とサービスだかなりの差があることがおわかりになるだろう。

ジャンルではステーキハウスに入っているが、テーマレストランやエンターテイメントレストランの範疇に入れたいくらいの業態だ。

3)アウトバックの日本での課題

1.食のトレンドとフレーバーの違い

米国人にとってのステーキはご馳走であり、日本人にとっての鮮魚と野菜をたっぷり使った和食になるだろう。米国人はステーキでもポーターハウスのようにやや歯ごたえのある肉を好むが日本人は柔らかい肉を好む。果たして商品が受け入れられるのだろうか?と言う懸念が残る。

また、基本的な味付けは人口の南への移動を背景に、ニューオリンズ地区ケイジャン風のスパイスの効いた味であるが、馴染みがない日本ではどのように受け入れられるだろうか。しかも昼の営業をしないで仕込む形態では人件費の高い日本で採算面で難しいかもしれない。

実際、過去日本に進出した肉関連の外食、ビクトリアステーション、ウエスタンシズリング、等も撤退をしたし、日本のステーキ業態である、草分けのあさくま、スエヒロなどが元気がないのも事実だ。

2.サービスに対する基本的な違い

アウトバック一番の強みのサービスが日本で受け入れられるかどうかが成功の鍵だろう。日本と米国のサービスという物は基本的に異なるからだ。

サービス=もてなしと英語を日本語に翻訳すると大間違いとなる。肝心の「もてなし」の歴史と文化的な背景が異なるからだ。

日本のサービス(もてなし)の原点は茶の湯、千利休の茶の湯から始まる。千利休が重んじたのは一期一会と言う気持ちをこめたもてなしだ。戦国時代は明日はどうなるかわから無いから、(戦争で死んで会えないかもしれない)本日のを一期一会として、精一杯務めさせていただきます。と言う緊張感あふれるのが日本のサービスの原点になる。本来は茶の湯はこの様に一期一会の気持ちのもてなしであったが、だんだん文化が成熟すると(平和にもなり)茶の湯の進化(退化?)と共に道具を自慢するようになった。掛け軸、茶碗、その他の道具、茶亭の造りに凝る、等装置に目がいくようになった。この茶の湯の文化を連綿として受け継いでいる日本人にとってのサービスとは、一期一会の緊張感のあふれる所作と、客をあっと言わせる道具や店の造りが重要となってくる。

米国のサービスの基本は友人を家に招くことにある。家に招待し、くつろいだサービスを提供する事が一番のもてなしとなる。筆者が米国に滞在時代に色々家に招待された。ある時に金持ちからお前の為に最高のご馳走をしてやると、10部屋もある豪華な家に招待されたことがある。期待していると、最初にメキシカン料理のタコスが山盛りにでてきた。 トウモロコシの粉を焼いた皮に野菜や挽肉を挟んで食べるもので、筆者はアペタイザーだから余り食べないでおこうと、次のメインディッシュに期待した。そうしたら何と次の料理は大きなケーキ、デザートだった。あの前菜かと思っていたタコスが唯一の料理だったのだ。また、ある時には200年以上も経つ古い家に住むインテリに招待された。彼は家族全員が集まってお前の歓迎パーティをやると言ってくれた。何を食べさせてくれるのかなと期待していたら、何と庭のバーベキューでハンバーガーだ。

その他色々経験したが、家に招待したときのポイントは食事そのものではなく、家族全体でわいわいがやがや会話を楽しもうと言う物だ。日本では家の主婦が台所に閉じこもって一所懸命に食事の用意をして、会話には参加しないのが当たり前だ。しかし米国式もてなしは家族全体、主婦も含めて、客と会話を楽しむと言うスタイルだ。だからアウトバックステーキハウスではウエイトレスが隣に座ってオーダーをとったり、カジュアルな服装で客をリラックスさせるようにしているわけだ。しかもアウトバックは「ノールール・ジャスト・ライト」と言う「お客様は神様です」と言うサービスを行っている。メニューになくても客の要望があれば(勿論食材の制限はあるが)味付けや盛りつけを変更したりする。例えばメニューにない、サーモンサラダを注文すると、嫌な顔一つ見せないでハイと言って、サーモンを焼いてサラダにのせて出してくれる。勿論、値段はしっかり取るのは言うまでもないことだが。この臨機応変のサービスの教育をどのように行えるのだろうか?

これらのカジュアルなもてなし(サービス)は日本とは基本的に異なる物であり、日本で米国式の楽しませるカジュアルなサービスが受け入れられるかどうかが大きなポイントとなるだろう。最近元気なグロバルダイニングは米国のアウトバックのように女子従業員のサービスが良いのが特徴だが、それだけでなく、仕掛けの店舗デザインも独特の個性と豪華さを誇っている。最近、元気な、際コーポレーション、ちゃんとフードサービス、ラムラ(土風炉など)、月川産業(ロイズ、ノブ、青龍門)はサービスだけでなく、独特の店舗デザイン、仕掛けに凝っているのが受けているのは事実だからだ。

アウトバック風のサービスを過去に導入した事例を見てみよう。ダスキンが米国と提携して出した、ハンバーガーのエド・デビッックスやステュードベーカーズはアウトバックのようにカジュアルな接客サービスが特徴だったが、大阪人に受けず撤退した。また、石庭が提携したジョニーロケッツも六本木で営業しているが初期のような人気がないようだ。 今までのところ米国風のカジュアルなサービスで成功している例はほとんどないというのが事実だ。

4)最後に

上記のようにアウトバックの問題点を色々と見てみたが、この業態が成功するかしないかは、日本のジョイントベンチャーパートナーのWDI次第だろう。WDIは日本企業としては数少ない海外との提携を成功させている企業だ。初期はケンタッキーフライドチキンのフランチャイジーとしてチェーン経営を学び、現在では超繁盛のイタリアン カプリチョーザをフランチャイズ展開している。チェーンだけでなく、トニーローマ、スパーゴ、等の有名店を導入したり、エンターテイメントの世界ではプレイボーイクラブ(現在は無い)を導入したり、ハードロックカフェを大ヒットさせている。日本では珍しい、マルチコンセプトの企業であり、特に客を楽しませるエンターテイメントの経験を積んでいるというのが大きな強みだろう。

そして、最大のポイントはアウトバック流カジュアルサービスを客がどのように評価するかだろう。日本人のサービスに対する感覚も海外旅行を経験し、変化を遂げつつある。海外の文化に触れた若い客層はアウトバックを支持するのは間違いないだろう。また、米国経済の盛況をバックに米国企業の日本進出が多くなり在日米国人が多い。実際にTGIフライデーズも彼らの圧倒的な支持により大盛況なのは事実だ。この時代背景もあり、初期の段階での成功は間違いないだろう。そして、アウトバックのチエーン化の成功は日本の閉塞状態に陥っている外食産業に対して、色々な面での刺激になることだろう。 筆者は一ファンとしてエールを贈りたい。

R&I誌2000年3月1日号Choice in Chains Winners 記事より引用 http://www.rimag.com/005/sr.htm

チェーン店名 総合 品質 種類 価値 雰囲気 清潔さ 便利さ
Macaroni Grill (ディナーハウス) 63 82 65 49 68 68 68 41
The Olive Garden (ディナーハウス) 58 72 65 49 57 60 60 42
Outback (ステーキハウス) 57 77 63 41 59 61 58 39
Cracker Barrel(ファミリー) 55 70 69 51 57 62 59 40
Red Lobster (シーフード) 53 68 65 39 51 55 53 40
                 
以上は総合評価5位まで、以下は参考
                 
Rainforest Cafe (テーマレストラン) 50 60 55 26 49 80 55 25
T.G.I. Friday(ディナーハウス) 46 57 62 34 42 49 46 35
Starbucks (コーヒー) 41 60 40 19 41 42 50 38
In-N-Out Burger (ハンバーガー) 44 69 16 44 48 36 49 42
McDonald (ハンバーガー) 31 29 31 34 27 21 29 50
Papa John's (ピザ) 36 56 30 38 37 21 33 39
Pizza Hut (ピザ) 35 54 37 29 31 26 29 36
Chick-fil-A (チキン) 36 58 31 30 38 25 38 35
KFC (チキン) 31 47 33 28 28 19 27 38
Denny's (ファミリー) 34 37 51 40 27 22 28 33

以上


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