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21世紀に向けた本部のあり方

第1回

「マルチコンセプトに対応した
フレキシブルなチェーン本部の構築」


1)現状を否定しよう

日本に外食産業という言葉が誕生してから30年経過しようとしている。小売業や外食産業はいわゆるチェーン理論に基づき,強大な権限をもつチェーン本部の指導のもとに急速展開を成し遂げてきた。従来の支店経営から、標準化をした効率の良いチェーン店舗造りが成功したのだ。  

しかし、この厳しいデフレ経済状況という逆風の中で、顧客は大きなチェーン企業に対するアレルギー感を抱くという難しい状況となっている。従来のような単一のチェーン形態やメニュー、業態では、多面化した顧客のニーズに対応できないのだ。  

さらに、競合の激化により既存店ベース売上の対前年比を確保するのが難しく、チェーン全体の売上の確保のために新店舗を開店しなくてはいけないという、自転車操業のような状態に陥りつつある。既存店の対前年の売上が減少するということは大幅な利益率の低下に見舞われることであり、より一層の経費削減が必要になっている。  

既存の大手チェーンは強大な本部のコントロールを武器に成長を遂げてきたが、この激変の時代に業態や、商品、サービスの変化に対応できない脳梗塞の状態に陥っている。最大の問題は、意思決定を本部が集中して行い、店舗での変更を一切許さないという本部集中主義だ。しかも本部肥大による人件費の負担に耐えなくてはいけない。  

これからチェーン展開を行う中小のチェーンがなさなければならないチェーン本部のあり方を考えていくにあたり、従来のチェーン理論、本部権限集中主義を改める必要があるだろう。まず言えることはチェーン本部は本来は無くても良い機能だと認識を新たにするべきだ。  

以下の現状を項目を否定することから新しい本部が誕生する。   

店舗を拡大し、店頭公開から上場という公開企業への道のりは、企業として一人前として認知され信用度が高まり資金調達や人材確保が可能になる。しかし公開に際しての会社の組織充実という錦の御旗の元に不要な組織肥大が起きている。その際たるものが外部からの人材登用だ。やる気のある人材登用であれば良いのだが、取引先の金融機関や証券会社などから管理部門の強化という大義名分で大会社の経験者を登用すると問題を生じる。金融機関や証券会社などには管轄官庁である大蔵省などの省庁からの天下りが在籍している。金融機関や証券会社は官庁の影響を良い面と悪い面で受け継いでいる。  

官庁の人事管理システムは国家公務員上級職試験という中国の科挙という人材登用試験から数千年連綿として継続している試験制度だ。試験により優秀な人材を採用した各官庁は人材育成制度として省庁の垣根を越える出向を各官庁や教育機関地方自治体、民間企業などに行い、交流と情報交換を行っている。公立大学などで教授には色々な官庁から出向している。彼らは長くその大学に在職しながらも意識は常に最初に採用された省庁に所属している。彼らが出身省庁に対する忠誠心を維持する源は、どこの部署に出向していても本省に居るのと同じ身分と職位の保証をすることだ。それが等級資格制度に連動した俸給システムだ。本来給与は職務に応じて発生するものであるが、出向が多い省庁では年功や年次に応じた給与を支給するために職務と関係なく給与を決められる等級資格制度を作り上げている。一定の等級資格をもっていればどの職場に出向していても同じ俸給を保証するという合理的なシステムだ。この官庁にとっては合理的な等級資格制度が官庁在籍者の天下りにより金融機関や証券会社などに採用されるようになった。団塊の世代を多く抱える企業では、職務の不足という問題を解決するために官庁で使われている等級資格制度を給与体系に取り入れ、職務に関係なく給与を支払えるようにした。バブルの際ににはそれでも良かったがバブルがはじけると、企業の業績にかかわらず、職務を果たさないのに(職務が存在しないのに)一定の昇給が行われるという問題が表面化しだした。  

もう一つの官僚制度の弊害は、業務を知らない天下り組が仕事の関与するために導入した稟議制度だ。稟議制度は業務改善のための提案を起案者が提出し、関係各部の承認を得て認証されるものだ。関係各部が決定に関与させるために、稟議書に各部署のサイン欄を設け、ここにサインをしたもの全員が責任を取るというシステムだ。しかし全員が責任を取るということは、逆に誰も責任を取らないで良いというという、優れた官僚の発想だ。責任は取らないが、自分の部署がサインをしない文書の決済は認めないという稟議システムにより業務の決定に大きな影響力を与えることが可能になる。稟議書システムを導入すると、どの順に持ち回りで決済が必要かという無駄なことを考えなくてはいけないし、気に入らないと印鑑を押さなければ何時までも進まないという業務妨害が可能になる。これが官僚制度で責任がはっきりせず、決定が遅くなる最大の原因だ。  

もうひとつの官僚制度の問題点は会議や諮問委員会で決定するという手法だ。自分たちが会議で発言し勝手に決定したといって批判されることを恐れ、諮問委員会で学識経験者による意見を拝聴し決定していくという優れた責任回避の意思決定システムだ。  

そして官僚的な発想は本部に専門職を充実させようとあらゆる部署を作り出すのだ。色々な専門職は店舗などの店舗営業部門をサポートする上で有効ではあるが、本来は店舗運営部門をサポートする目的で誕生したスタッフ部署が、自分の組織維持のために不要な仕組みや文書を生み出していくようになり本部組織はより複雑に肥大していく。

2)軽量な本部  

本部に必要なものは商品業態の開発部、店舗開発部、店舗社員の教育部、財務部、店舗運営部(SVやSVを管理する運営陣)、監査部(本部、店舗がキチンと運営されているかの実態監査をする)などの攻撃を主体とする部署だ。それ以外の従来の総務、経理、人事、購買、情報システム、機器開発、メインテナンス、など守りの部署は全てアウトソーシングでできる時代となっている。   

SVは店舗の指導にあたるわけだから本部にくる必要はない。本部にくるのは会社の方針を伝えたり、提案したりする会議を開催するときだけだ。1ヶ月に2回も本部に出社すれば十分だ。SVの一番大事な業務は店舗巡回だから持ち時間を最大限店舗活動に振り向けるべきだ。  

各SVに机を与えると、一人当たり最低でも3坪ほどのスペースが必要になる。どんなに安い事務所でも坪1万5千円の家賃や光熱費を考えると、一人あたり5万円ほどの経費を必要とする。年間に直せば60万円にも上るのだ。それだけの経費を考えれば、パソコンと携帯電話、ポケットベル、自宅にFAXを置いてもお釣りが十分出る。本部は必要最小限のスペースで済むのだ。

3)軽量な本部を実現する情報装備  

外食チェーンの経費管理で一番必要なのは原材料費と人件費のコントロールだ。特に人件費の管理が店長の一番大きな仕事だ。人件費というと削減すればよいと考えがちだが、売上が高い時間帯に必要な人員が居ないと売上を低下させるという原因となる。数字だけを見ていると人件費が予算をオーバーしているから削減しろということになる。店舗では数字合わせのために削減するには人の多い時間帯(つまり売上が高い時間帯)に人を削減するほうが容易である。そうするとサービスが低下しお客は不満を抱き、だんだんと店から足が遠のくようになる。SVは数字だけでなく、実際の店舗の状態を見る必要がある。従来は店舗に居ないとその状態を分析できなかったが、最近はパソコンを通じてその店舗の人員配置と売上の状況をビジュアルに遠隔地からチェックでき、問題点を発見したら、電話などで店長や社員に指示することが可能になっている。

<1>アルバイトのスケジュール管理ソフト

従来はそのようなソフトウエアーは数百万円もする高価なものであったが、最近では高度なスケジュール作成能力とリモートコントロールが可能なソフトが数十万円前後で購入できるようになった。(通信機能を持たないアルバイトのスケジュール作成ソフトは何と8万円という低価格である)そのソフトを共同開発したのは洋風ファーストフードチェーンをフランチャイジーとして運営している北奥氏だ。氏は米国研修の際にもパソコンを電話回線経由で接続し、店舗の状況をビジュアルに管理する。大手のファーストフードの管理システムでもできないことを実現しているのだ。氏のモットーは「趣味や人生の楽しみまで犠牲にして働くのはいやだ」という現代的な考え方だ。しかしどこにいようと店舗管理をきちんとするためにこのシステムを共同開発したわけだ。このような武器と携帯電話、パソコンを備えればSVや経営者は世界中のどこに居ても緻密な店舗管理を安価に行うことが可能になっているのだ。

(京王デジタル株式会社 http://member.nifty.ne.jp/KDS/)  

このソフトでは店舗の売上実績に基づき労働生産性を基準に各時間帯別に必要人員を入れ込む基本スケジュールを自動作成する。次にアルバイトは希望労働時間をパソコンに直接入力し、それを基本スケジュールとビジュアルに照らし合わせながら実際のスケジュールを作成していく。この結果をリモートコントロールで本部やSV経営者がビジュアルに閲覧できるから、どこで人が不足しどこで無駄を出しているか一目瞭然だ。

<2>スーパーバイザーと本部の意思決定システム  

店舗の数値管理とコミュニケーションはPOSとパソコンソフトを購入すれば構築できるが、さらにスーパーバイザシステムを構築して、本部とSVとのコミュニケーションをスムーズに生かせるためには、従来は高価なグループウエアーの導入が必要であった。しかしこの分野でも最近はより安価に容易に構築できるようになった。

(サイボウズ株式会社 http://cybozu.co.jp)  

サーバーを使ったグループウエアーだ。ホームページからグループウエアーのソフトをダウンロード(自分のパソコンに取り入れて)2ヶ月間試用できる。そして気に入ったら振込みなどで購入すればよいのだ。  

内容はスケジュール管理、掲示板、施設予約(会議室など)、Webメール、アドレス帳、ToDoリスト、プロジェクト管理、電子会議室、文書管理、ワークフロー(稟議書などの決済システム)など盛りだくさんで、これだけで通常のSV業務を行うことが可能だ。 10人が(本部とSVを含めて)使うとして金額はたった79800円だ。50人のシステムは198000円で、グレードアップするには差額だけ支払えばよい。  

このシステムを使えば本部からの指示を各SVに明確に伝えられ、SVが家から店舗へ直行直帰しても毎日に業務をどのように行っているかが明確に把握することができる。店舗の改造、社員の採用調理機器の購入など決済が必要な稟議書もこのグループウエアーで提出し決済を仰ぐことが可能だ。  

このグループウエアーを導入することにより、従来の組織の抱えている情報処理の遅さという問題が一挙に解決でき本当に軽量の本部が実現する。身動きのできない本部を抱えている方はぜひ導入するべきだ。

<3>本部情報システムのハードウエアー  

本部に必要な情報システムのハードウエアーは、パソコンサーバーの値下がりにより実に安価になっている。図のように社内ネットワークを構築する。本部にはサーバーを2台置けば十分だ。店舗の経営管理の情報はPOSから売上、人件費材料費、発注のデーターを吸い上げる。店舗に情報を発信する場合には店舗がパソコンを操る能力があればPOSに連動してパソコンにバックオフィス(店舗経営管理システムのソフト)を組み込めば良い。店舗でパソコンの操作ができないようであれば本部で必要な情報をまとめFAXで店舗に配信すればよい。売上予測に基づく基本アルバイトのスケジュール表などを送ることが可能になる。  この図の社内ネットワークシステムだけで100万円前後あれば構築できる。これで100店舗くらいの管理は可能になる。SVは携帯電話を使い、パソコンを携帯電話経由で本部のサーバーにつなぎ、グループウエアーを使って報告をしたり、店舗情報を入手できる。  

セキュリティの心配をする場合には社内ネットワークを外部のインターネットと接続しなければ良いが、社外の情報をホームページ経由で入手したり外部の人と電子メールでコミュニケーションをするには社外のインターネットに接続すればよい。危険を怖がっていると有益な情報も入ってこないのだ。

<4>SVの業務のあり方  

SVが本部に来なければいけないのは必要な情報の入手や、書類の提出、小口現金の清算等の業務のためだから、図のように会社とSVの間で情報通信をネット化すれば問題は無くなる。経費などはE-maileで本部に送信し、本部はその情報に基づき採算し、SVの口座に振り込めばよい。クレジット会社と提携し、SVの出張費用や必要経費をクレジットカード清算し明細をクレジット会社が作成し本部に提出することも可能になっている。社員のための経理作業は不要の時代となっているのだ。SVとの情報のやり取りは携帯電話ノートブックパソコン、モデム、があれば十分だ。本部には図のようにサーバーを設置し、店舗からの売上データーはPOS経由で本部に自動送信する。データーは売上だけでなく、従業員の勤怠管理、受発注業務まで自動送信できる。さらに店舗にパソコンを設置すれば、売上日報作成週報作成、損益計算書作成、予算作成、小口現金清算、アルバイトのスケジュール作成が可能になりそのデーターを本部やSVにネット経由で報告できる。  SVは店舗や自宅、出先に居ながらにして店舗の状態を把握することができるわけだ。  

このように情報システムを構築すれば軽量で変化に対応できるスピーディーな本部を構築できる時代にきているのだ。  

次回から軽量本部システムの詳細を考えて見よう。

以上

お断り

このシリーズで書いてある内容はあくまでも筆者の個人的な経験から書いたものであり、実際の各チェーン店の内容や、マニュアル、システムを正確に述べた物ではありません。また、筆者の個人的な記憶を元に書いておりますので事実とは異なる場合があることをご了承下さい。


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