header Food104 Food104 FSPRO-ML 会社案内 コンサルタント実績 王の経歴 過去の仕事 著作一覧

2012年版増刊号『輝けシルバー施設給食〜病院・在宅にも対応〜』


 シルバー向けの給食では最近大手外食チェーンが弁当の宅配を開始し急成長している。全国各地に弁当工場を建設しているが、そこで使われだしているのが、料理を安全に美味しく調理できるコンベアー式のスーパー・スチーム調理機器だ。
 弁当給食のメリットは日替わりで副食、主食、味噌汁、などを宅配で届けるので、料理に変化があるし、外出しなくて済むのでシルバー向けの給食としては最適だ。ただし、シルバー向けの弁当給食には幾つかの課題がある。人によっては体の衰弱している方がいるし、普通の人が食べても問題のない場合でも食中毒を引き起こしやすい。また、食中毒にかかった際には症状も悪化しやすい。
その衛生的な観点から言うと食材を安全な温度まで十分に加熱処理をすることが望ましいが、あまり加熱しすぎると食材が硬くなると言う矛盾を抱えている。その矛盾を解決する調理方法がスーパー・スチーム調理機器(過熱蒸気調理とも言われる)だ。スチームで加熱調理する機器にはスチーム・コンベクション・オーブンがある。密閉型のコンベクション・オーブンとスチーム・ジェネレーターを組み合わせた調理機器で35年近く前にドイツで開発された調理機器で、現在では高級レストランやホテル、給食施設等の大規模な調理施設で使われている。最近は家庭向けにも過熱蒸気調理の小型の調理機器が人気だ。
スチーム・コンベクション・オーブンもスーパー・スチーム(過熱蒸気)で加熱すると言っているが、オーブンの構造上スーパー・スチームの最大温度は300°Cで通常は250°C程度までしか温度を上げられない。ところが最近、スーパー・スチームの温度を400°Cまであげられるコンベアータイプのスーパー・スチーム調理機器が開発された。
スーパー・スチームとは100℃ 以上に加熱された状態の蒸気だ。水1ccを加熱し1℃ 温度を上昇させるのに必要な熱エネルギーは1cal。1ccの水を氷にするには80cal,1ccの水を蒸気にし蒸発させるには539cal必要である。つまり蒸気発生には最も熱エネルギーが必要なのである。そして100℃ 以上の状態の蒸気がスーパー・スチーム(過熱蒸気とか乾燥蒸気ともよばれる)で、庫内に100℃ 以下の調理食品が入った時そこに露結し水になる、その時、蒸発潜熱の大きなエネルギーが食品に集中して伝わるので調理が早いのである。オーブン庫内のステンレス板は100℃ 以上に加熱されている為、蒸気は露結せずに食品のみに集中して熱が伝わるのである。しかも庫内に蒸気が満ちた状態、飽和蒸気の状態で加熱するので、食品の水分が蒸発しにくく歩留まりが良いというメリットがある。普通の焼き物の歩留まりは75%位であるが、スーパー・スチーム加熱をすると歩留まりは95%位に高まる場合もある。また、スーパー・スチームで調理をすると、違ったものを同時に調理しても臭いが移り難く、調理中の煙の発生が少ない。掃除もアルカリの洗剤を散布しスチームで蒸した後、水スプレーで簡単に洗い流せるので作業が楽であるというメリットもある。
筆者はマクドナルドに勤務時代に、マクドナルド創業メンバーである天才エンジニアのジム・シンドラー氏に師事した。マクドナルドの主力の調理機器であるクラムシェル・グリルはすでに40年ほど前にジム・シンドラー氏がその構想を作り上げていた。シンドラー氏はさらに蒸気を使った高速調理方法を研究しており、卵焼き瞬間調理機器と、バンズスチーマー、高温高湿保管庫等を開発研究していた。筆者は23年前に米国マクドナルド社のテストキッチンで世界中から蒸気加熱機器を集め比較検討して以来、スチーム・コンベクション・オーブンや工場での過熱蒸気加工の技術を研究してきている。マクドナルドではフィレオ・フィッシュに使うバンズを100℃の蒸気で加熱していたが、時間が60秒ほどかかる。そこで、スーパー・スチームを使い10秒弱で加熱する方法を考案し全店で導入した。その技術の応用が最近増えているようだ。
その例が餃子焼き機だ。大手チェーンの使う餃子は冷凍が多く、通常は注文してから最短でも7分ほどかかる。そこで、冷凍餃子を解凍保温し、注文後90秒で焼き上げるシステムが考案された。また、餃子焼き機に水の代わりにスーパー・スチームを組み合わせ調理時間を3分にしたこともある。水で茹でないので、餃子がふっくらして、肉汁たっぷりの美味しさだった。
また、駅の立ち食いそばなどで、短時間に麺を茹でる時にスーパー・スチームを使い出している。従来は100℃の蒸気で冷凍麺を解凍加熱するので時間が1分ほどかかっていたが、スーパー・スチームだと10数秒で解凍できる。
スーパー・スチームは実は180°C前後の温度で性格が全く変わる。180°C以下での調理は蒸し状態で温度は上がるが焦げ目はつきにくい。200°Cを超えると乾燥して焦げ目がつきやすくなる。350°C以上になると食品を乾燥させることができる。スーパー・スチームは温度が高いので食材を痛めるように思いがちだが、実はスーパー・スチームが満ちた状態では酸素が存在しないので、食品が酸化をしないというメリットがあるので、野菜などの鮮やかな色が変わらないで調理できる。
このスーパー・スチームの調理法をハンバーグ・パティの焼成方法で見てみよう。厚めのハンバーグ・パティを焼き上げるには、グリルで表裏に焦げ目を付けて、それからオーブンに入れてじっくりと焼き上げる。厚めのパティをグリルだけで焼き上げると硬くなりすぎるし歩留まりも悪いからだ。ただ、時間がかかるのが欠点だ。そこで、ある食品メーカーは6台のコンベアー式スーパー・スチーム調理機器を組み合わせて調理を始めた。最初に高温で表面に焦げ目を付けて肉汁を封じ込め、その後、4台でじっくり低温度で加熱し中心温度を安全な温度まで上げる。そうすると美味しさを封じ込め、歩留まりも良くなる。最後に高温のスーパー・スチーム(最高400℃)で表面をカリットさせる。その工場は従来よりも20%歩留まりを改善した。また、グリルで両側に焦げ目をつける作業は不要になるので人件費も節約できた。
 その工場は1日4トンの肉をハンバーグ・パティにして焼成していたので、20%の歩留まり向上は800kgの肉のロスを防いだことになる。肉のコストが1kg600円として、1日48万円、年間で1億7500万円の節約になる。ハンバーグの重量が200gとして、1人1時間に200個の処理が可能とすると、1日100時間の労働時間が必要だ。時給1000円として1日10万円、年間で3650万円の削減が可能となり、合計で、2億円の削減が可能だ。機械のコストは4000万円弱だから、3ヶ月でスーパー・スチームの投資が回収できたようだ。
 この原理はお魚の調理にも当てはまる。冒頭に紹介した大手外食企業の弁当給食担当者はその原理を応用して魚の調理を行い、高速に安全で調理ができ、歩留まりが良く、冷めても魚の肉が柔らかいのに驚愕し、即座に採用を決めたようだ。老人向けの弁当の加工調理には最適な機械だろう。

 その他、幾つかの応用を見てみよう。
1)お菓子の製造
 ある大手菓子メーカーがクッキー状のお菓子の製造に使っている。鉄板の上に生地を載せ、スーパー・スチームで短時間に焼き上げる。まだ、柔らかいうちにその生地をへらで掬い取り、くるくると丸めます。表面はカリットしているのだが、生地の中はふっくらしている。その丸めた生地の隙間にチョコレートなどを流し込んで、独特の風味のあるお菓子を作り上げている。
2)食肉工場の殺菌工程
 ハンバーグ・パティなどを製造するには腸管出血性大腸菌o-157などの問題がある。通常の食中毒菌は多少存在しても問題ないのだが、o-157などは少量でも食中毒を発生し場合によっては死亡する危険がある。
 そのため、食品工場では肉の塊の安全性を確保するためにいろいろな工夫を凝らしている。熱風で殺菌する方法もあるが、肉の表面は平らでないので、殺菌しきれない場合がある。スーパー・スチームの蒸気はものすごく細かいので、肉の表面の隙間まで殺菌できる。この原理は実は、美容院の髪毛の処理に使われている。パーマ液を浸透させるために通常は蒸気を使う。その際にスーパー・スチームで発生する細かい蒸気(ナノスチームともよばれる)の働きを使うと髪の毛のキューティクル(魚の鱗のような形状)が開き、中までパーマ液が浸透しやすくなる。同じ原理はやはり美容院で顔の皮膚に美容液を浸透させるために使われている。
 今年焼肉屋のユッケで腸管出血性大腸菌o-111の集団食中毒が発生し5名の方が亡くなると言う大規模な食中毒事故があった。その後、厚生労働省などで対策として、生肉の塊の表面を加熱処理する方針を打ち出したが、その加熱方法が強すぎて歩留まりが悪く、経済的にユッケを製造販売できない状態になっている。このスーパー・スチーム加熱を使えばもう少し歩留まりよく殺菌ができるのではないかと思われる。

3)野菜を混ぜた小麦粉生地の焼成
鉄板で焼き上げていた小麦粉生地(トルティアなど)をスーパー・スチームで調理したら全く異なる食感になった。鉄板で加工すると美味しいのだが、その食材を店舗で再加熱すると硬くなりすぎる。スーパー・スチームで加工するとその仕上がり、簡単に言えば水分保有率が簡単に調整できるので、店舗での最加熱した時にふんわりと柔らかい。
 また、生地に海老やフルーツ、野菜を練りこんで焼くと、鉄板の場合色がくすんでしまうが、スーパー・スチームで焼き上げると、海老のピンク色が鮮やかになるし、フルーツの緑の色も鮮やかだ。とても美味しそうに仕上がるし、独特のもっちりした食感が素晴らしい。この色が変わらない、鮮やかに出るという秘密はスーパー・スチームで満たされた庫内には酸素が存在しないと言うことだ。そのため、酸化せず鮮やかな色が出るのだ。スーパー・スチームを使って、ほうれん草などの葉野菜を調理するとぱりぱりに乾燥する。それをつかむとばらばらになり、まるでフリーズドライのような商品になった。フリーズドライの場合には若干色褪せがするが、スーパー・スチームの場合、色が褪せない。スーパー・スチームのナノサイズの蒸気が野菜の隅々までいきわたり乾燥殺菌し、色褪せがしないので食品加工の分野で面白いだろう。



Index Home
           
会社案内
コンサルタント
王の経歴
著作
セミナー
通信教育
           

王利彰への、ご意見ご要望、お問い合わせはこちらへご連絡下さい。
Copyright(C) Sayko Corporation. All Right Reserved.