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衛生管理の徹底した働きやすい厨房設備


 

筆者は4年ほど前より、最適厨房研究会という研究会を立ち上げ、会長として厨房の環境改善に取り組んできている。その研究過程において欧米先進国の衛生的で、働きやすい厨房環境造りの手法を学ぶことにした。昨年は北米厨房工業界展示会NAFEMを見学し、今年は、ドイツ,フランスの給食施設の見学をしてきた。
1)ドイツ
 ドイツはDINという規格で厨房の環境作りを行っている。厨房機器メーカーの一社で厨房向けの換気システムを製造している技術者の方にお話を伺い感心した。筆者は最適厨房研究会の活動の一つとして、厨房の温度環境に焦点をあて、働きやすい温度環境をどのように実現するかを追求している。ドイツでは既に温度環境に関しては25℃という目標を掲げそれを実現しており、現在は調理機器が食材を調理する際に発生する煙を如何に完全に排気するかに焦点を当てている。その理由は煙を調理人が吸い込むことでの健康障害が多いからだという。日本の厨房環境作りの一歩先を行っていることに感心した。
実際にフランクフルトで病院給食のセントラルキッチンと、老人ホームの調理施設を見学したが、その衛生的な調理施設と、空調環境の整備さに感心させられた。
2)フランス
 そして、フランスパリ市を訪問し中学高校一貫教育の厨房の見学と、今後のセントラルキッチンの設計過程のご説明を受けた。
 中学高校一貫教育の校舎は200年ほどの古い建造物でパリ市により歴史的建造物に指定されており、内外装の改装には厳しい規制が課せられている。厨房は地下に設置して隣接した場所に食堂を備えている。
学校給食というと働く調理人の労働環境改善のために電化厨房やドライシステムを導入する例が多い。フランスは原子力発電所が多く電気事情が大変よいので、当然この学校も電化厨房を採用していると思い質問した。回答は「ガスと電気の両方を使っており、メインの調理機器はガスを熱源に使用している。理由はエネルギーコストの点でガスの方が安価である」と言う意外なものであった。
さて、厨房環境という観点から考えると、地下の問題は日光が射さない薄暗さである。しかし、設備を一階に移すことは出来ない。その問題を解決するために一階にある窓を最大限に生かし、そこに射す太陽光を地下まで照らすように吹き抜けにすることにした。同様に食堂も一階の太陽光が照らすように吹き抜けを造り、古い建物であるが薄暗さを解消し、働く人が生き生きと働いたり、学生が楽しく食事をすることが出来るようにしている。
 次に周辺の学校数十校に供給するセントラルキッチンの設計手法の話を伺った。当然大型の施設となっており、衛生管理に注意しているだけではなく、従業員に働きやすい環境を作ることを重点的に設計している。セントラルキッチンのような大型の施設は中央部分に外光が入らないのが欠点だ。そこで、外光が入るように建物中央に吹き抜けを作り、そこから外光が建物中央に入るようにして、従業員が働きやすい環境を実現するという構造にしている。
 このようにドイツ、フランスの厨房は働きやすさのために、厨房の温度環境だけでなく、従業員の体に留意した空調設備の整備や、外光の取り入れに気を配っているということに大変感銘を受けた。
3)米国
2007年秋に開催された北米厨房工業展示では、外食チェーン向けの厨房機器メーカー持ち株会社に米国厨房業界の動向を以下のようにご説明いただいた。

<1>消費者の嗜好変化の早さに対応
消費者は変化を遂げており、それにどのように対応するのかが重要だ。顧客は味覚、行動、要求の面で常に進化をしている。その変化を遂げる顧客のトレンドを明らかにすることによって、対応を迫られる外食業界に解決策を提供する。
米国の外食産業は当初はファミリーレストランやファスト・フードが主体であったが、消費生活の成熟と供に、アルコールを提供するカジュアルレストランやステーキハウスが成長してきた。それらの贅沢な食生活に慣れた消費者は一人で食事をするときでも、ファストフードでは飽きたらず、高品質な料理を雰囲気の良い内外装の店舗で提供するファストカジュアル業態を求めるようになった。
また、健康的な食生活を求める消費者は従来は不健康というイメージを持っていたファストフード業界に健康的なメニューの開発を急がせるようになった。そして、ファスト・フード業界でも食事の代わりになるサラダメニューや健康的なイメージのある高級チキンサンドイッチを開発したり、スターバックスに対応できるグルメコーヒーの開発や店舗のイメージアップを開始し始めている。

<2>長時間営業への対応
米国では共稼ぎが多く、一食に費やす調理時間は15分しかないと言われている。そのために中食や外食業界の利用が多い。しかも年々労働時間が変動し、早朝勤務、深夜勤務などが増えている。それに対応するためにファストフード業界は24時間営業を迫られている。そのためファストフード各社は可能な店では24時間営業を実施し、24時間営業でない店舗でも従来の開店時間午前7時を午前5時に早めるようになっている。閉店時間は24時となっている。そして、早朝営業に対応する朝食メニューを強化し、対前年の売上を大きく伸ばしている。また、従来は朝食、昼食、夕食の3時間帯であったが、長時間営業に対応するために軽食(スナック)の強化やコーヒーなどのカフェ機能を強化している。現在米国マクドナルド社の店舗の12%が24時間営業で、ソニックは全店24時間営業、ウエンディーズのドライブスルーは24時間営業となっている。
このように24時間何時でも顧客の要望に応えなければならない外食企業に、人件費を増大させないで料理を提供できるような手法を提供する。具体的には以下の3つとなる。
・24時間稼動と言う過酷な仕様に耐えられる調理機器の開発
・フレキシブルで、早く、そして簡単に使える調理機器の開発
・熟練した調理人を必要としないで、多くのメニューを調理できる賢い調理機器の開発

<3>便利さへの対応
消費者は場所を問わずより多くの種類の料理とより良いサービスを期待している。高速調理機器技術と調理の出来栄えの良い調理機器を、調理機器業界の中は最も種類をそろえている。それらの機器は以下の内容となる
・小型の調理機器を取り揃え、どのような場所にも出店を可能にする
・調理時間を短縮しながらすばやいサービスと多様なメニューの提供を可能にする
・新しい立地、調理能力の改善、顧客満足度を高める、コストを削減し高い利益を出せる
 便利さが要求されるコンビニエンスストアーのセブンイレブンで調理をするには小型の調理機器が必要となる。実際の例ではグルメピザチェーンのカリフォルニアピザキッチンのために10平方メートルの超小型のキッチンを設計した。小型でありながら年商1ミリオンドルの売上を上げる能力を備えている。そのために調理機器を小型化するだけでなくキッチン内に設置する保温機や冷蔵庫までモジュール化し全体の小型化を可能にした。
 また、高級業態のカジュアルレストランも顧客の要望で料理テイクアウトを可能にしている。場合によっては売上の10%にもなるので、顧客への早いサービスを実現するために車に乗ったまま注文をして配達したり、専用の入り口を設けてすばやく調理をしたり、持ち帰り専用の駐車場を用意するようにしている。アウトバックステーキハウスやチリーズなどのカジュアルレストラン大手がその対応を行っている。テイクアウト客を待たせないことが重要で、高速調理技術の開発を行い従来の10倍の速度で調理できるようにしている。 そのためにコンベクションオーブン、ラジアントヒーター(遠赤外線ヒーター)、電磁調理、コンベクションオーブン、接触式加熱、などを使う調理機器を開発している。
外食業界は既に過剰な店舗数と言う問題を抱えており、売上を伸ばすには従来の立地に加えて従来の外食が営業をしない立地の開発が必要になってきている。そのために空港、学校、病院、スーパーマーケット、百貨店、他企業の店舗の中に小型店舗を複合出店する、等を行うようになってきた。これらの立地は小型の面積でなくてはいけないし、建設時間も短時間であることが要求され、モジュール化の小型で高速のキッチンを総合的に開発することが必要になってきている。

<4>五感に訴える
消費者は彼らの五感に強く訴える料理や体験を求めるようになっている。料理の色彩、香り、食感、等の全てが消費者に提供する料理に求められるようになっている。高速調理も重要であるが、調理技術で最も大事なのは料理の品質だ。どんなに健康的な料理でも味や品質が悪ければ消費者の受け入れらない。消費者を総合的に満足させるためには調理機器の外観(調理機器の色、形、デザイン)調理機器が発生する匂い、音(静かでなければならない)も重要になってくる。
例を挙げると、マクドナルド社はヨーロッパのドイツで米国とは全く異なるヨーロッパスタイルのマックカフェを開発している。マックカフェは従来のマクドナルドとは使用する調理機器や調理機器が発生する音、提供する料理、調理機器やキッチンのデザインが全く異なっている。現在のファスト・フード業態は従来のように無機質なデザインでなく、スターバックスのようにゆったりとした客席や、全体を見渡せるキッチンにして、顧客が調理工程を楽しめるようにしている。スターバックスの飲料などの値段が高く設定できるのは、店舗やキッチンの雰囲気が良いからだ。

<5>先進の技術を使ったレストラン
消費者は先進の技術を手に入れることにより、新しい選択権を得て食生活を快適にするようになっている。
効率的な外食企業は顧客満足と利益の確保を実現するために、店頭のシステムと顧客に見えない位置で貢献するシステムの両方を厳密に構築している。そのために、自動故障診断装置を備えた調理機器と、オンラインでコントロールが可能な調理機器を使い365日24時間稼動を可能にしている。
たとえばマクドナルドのドライブスルーの売上比率は全世界で70%、米国では80%と高くなっており、ドライブスルーにおける提供時間を6秒の短縮することはマクドナルド社の売上を1%押し上げることになる。そのためにコンピューターによる注文自動受付や、厳格な衛生管理(HACCP)を可能にする温度管理とメインテナンスシステム、等を開発している。

<6>海外への進出にはメニューなどの現地化が必要
消費者は地元にあったメニューを持った国際ブランドを求めており、どの国に行こうとも地元に適合した国際企業の存在を可能にさせる。
グローバル企業は進出先の土地にあったメニューの開発が出来なくてはいけない。ブラジルでは肉よりも魚の需要が高いのでそれに対応できる調理機器が必要になるなどのメニューの現地化に対応する。そのため、マクドナルド、YUM(KFC、タコベル、ピザハットの持ち株会社)、ウオールマートなどの国際企業の海外進出に対応するべく、世界への販売拠点と工場を進出しなければならない。


<7>環境への対応
消費者は省エネルギーの環境にやさしい調理機器を求めており、エネルギーとコストを節約できる高効率の調理機器の開発が必要だ。
ウオールマートは環境対策として使用している冷蔵冷凍機器をフレオンガスからCo2に変更するなど、新しい調理機器は環境規格に適合するようにしている。

<8>活動的な消費者
 NRA(米国レストラン協会)はレストラン業界を守る法律を通過させるべくロビー活動を行っている。最適時給、医療保険、移民労働者問題、労働時間(残業や有給休暇)レストランのメニューに栄養表示、禁煙対策、等がレストランに大きな影響を与えないように法律制定の際に関係省庁や各議員に働きかけている。
 また、活動的な消費者は各国の政府に環境への規制の法制化を要求するようになり、外食企業大手は活動的な消費者たちのグループのターゲットにされるようになった。それらに対応して以下の対策を実施している。

・エネルギーと環境。各国のエネルギーと環境規制に対応する。
・健康問題。揚げ物に適した4つの対応を実施する。
・従業員が快適に働ける厨房環境の実現。厨房の環境が快適になるように 給排気システム専門の企業と提携し、音、排気、の品質向上を行っている。

4)まとめ
 米国とドイツとフランスの厨房業界の対応はそれぞれ異なるのであるが、いずれも顧客のニーズを正確に把握し、従業員が働きやすい厨房環境作りを考えている。今後の日本でも、従業員の働きやすさと顧客の要望を組み入れた厨房設計を行う必要があるであろう。


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