header Food104 Food104 FSPRO-ML 会社案内 コンサルタント実績 王の経歴 過去の仕事 著作一覧

米国FCビジネスに学ぶ
トラブル発生を抑えるために

尚、本ページは未校正原稿のため、誌面掲載分とは異なるところがございます。


「体験的フランチャイズ論」

(1)「あるフランチャイジーオーナー会議」

新製品発表のフランチャイジーオーナー会議でマーケッティング分析から話が始まった。顧客に対する、自社ブランドの認知度、商品、サービスなどに対する評価まで、数十項目の分析を元に、自社に必要な新メニューのカテゴリーを抽出する。それを元にどのように商品開発をしたのか、新商品に対するテストマーケットの客の評価と売上動向、利益率の動向を提示する。新商品をどうやって販売して行くかの広告宣伝戦略、テレビコマーシャル、店舗に来させる販売促進手段、看板、店舗内POPなど詳細な説明を行う。そこで幾つかの提案に対し、オーナーの採否を取って決定していく。最後に新規投資の内容、必要な調理機器、人員の増員、教育、そして損益計算書、等をプレゼンテーションし、オーナーからの質疑を受け付ける。

渡された資料を見ながらふと筆者は、疑問を抱いた。それは新商品の値段をいくらに設定しなければ行けないかの指示がなかったことだ。標準価格や推奨価格など、一切の価格の提示がなかったのだ。「まったく、肝心な内容が抜けて、原稿をちゃんとチェックしたのかな?」と思いつつ、「新商品の値段設定はいくらなんですか?」と当たり前すぎる質問をし。しかし「ここではそんな値段の論議はできない」と偉く怒られ、周囲のオーナーからはブーイングを浴びせられてしまった。フランチャイジーの会議で商品の値段を話し合うことは公正取引委員会による、価格の談合に当たり、不公正な取引と認定されるので、一切論議はしては行けないと言うことであった。これは日本のフランチャイズチェーンの常識からかけ離れた事であり、大きなカルチャーショックを受けた。

(2)「米国マクドナルドのフランチャイジーとして」

マクドナルド社は教育熱心な会社であり、日本マクドナルド発足以来、米国本社の負担で、毎年スーパーバイザー以上を米国のハンバーガー大学などへ短期派遣をしていた。5ー6年ほどたってから、短期派遣では、語学や米国の文化、カルチャーを身につけることができないと言うことで、長期の研修を行おうという検討が始まった。研修というと普通大学に留学させたり、本社への研修などであるが、超現実的な日本マクドナルドの藤田社長が米国の店舗をフランチャイジーとして購入して、そこに責任者を含めて数人の日本人を送り込むこと提案した。駐在員は米国マクドナルド社のフランチャイジーとして店舗を運営し、更に、地区本部の運営にも参加してフランチャイザーサイドの運営方法を学ぶという、両面の研修を受けることになったわけだ。店舗の駐在責任者はフランチャイジーとしてその会議に参加するわけだ。筆者はその第2代目の駐在責任者として赴任して間もない頃、上記のカルチャーショックを受けたわけだ。2年以上に渡りフランチャイジーとフランチャイザーの両方の経験を経験した体験的から、日本と米国の違いを見てみよう。

1号店はサンフランシスコ郊外のシリコンバレーのど真ん中に開店し、数年後2号店をカナダトロントに開店したが、市内立地であまり成功せず、後にシカゴ本社郊外に異動し現在でも店舗に6名、本社に10名近くの駐在員を送り込んでいる。本社に駐在する場合でもなるべく店舗の運営を経験させたのとに派遣している。

米国の1フランチャイジーとして店舗を運営する目的は、

  1. 本社に駐在するというきれい事では現場の状況が分からない。
  2. ジーとザーの両方の気持ちを理解すること
  3. ドライブスルーや、店舗デザイン、教育システムなどの最先端の技術の習得
などであった。活動は店舗の運営が半分、後は地区本部や本社の研修、各部門での研修など組織全体を理解するようにカリキュラムが組まれていた。地区本部や本社の研修ではまだ日本では開始して間もないフランチャイズシステムの研修を主に受けた。

(3)駐在中の体験

  1. フランチャイジーとフランチャイザーは対等である
  2. この点が日本と米国の考え方の大きな違いで、ザーはあたかも特別な権利をジーに与えているのだという尊大な意識の多い会社が多いが、米国ではジーとザーでは対等の関係であり、会議などでもジーが本社のスタッフにぺこぺこするわけではない。また、対等でありながらジーは弱者であり、保護されるべきであるという、保護規定が強いと言うことだ。米国のフランチャイズの歴史は古く、当初は悪徳フランチャイザーによる搾取があったようで、最近では米国公正取引委員会の厳しい監督下に置かれている。

  3. 金の切れ目が縁の切れ目
  4. ジーとザーの関係が旨く行かなくなったり、裁判沙汰になるのは日米同様で、金の切れ目が縁の切れ目であり、売上が上がらず、利益が出なくなるときだ。

    では、それぞれのジャンルでどんな問題があり、どんな対策を行ってきたか見てみよう。

    「売上が上がらない」

    [1]販売予測と異なる

    日米のジーとザーの係争で最も多いのが売り上げ予測の違いだ。日本マクドナルドが最近マックGISという、地図ソフトと売上の重回帰分析をドッキングさせた、精度の高いシステムを構築したが、これは米国の売上分析の手法を元に更に精度を向上させた物だ。係争をなくすためには正確な売上予測は必要不可欠だからだ。日本マクドナルドのフランチャイジー比率は30%位だが、米国は75%以上がジーだ。しかもジーにたいする保護が徹底しているから売上予測は正確でなくてはならない。しかし、どんなに精度を高くした予測でも色々な条件によりはずれることはある。そのためには売り上げ予測はあくまでも予測であり、保証できないことを契約書に明記している。 しかし、係争を起こさないためには、ジーに対する援助も必要になる。契約書には援助を明記していないし、口答でも約束をしないが、売上が予測通りに行かない場合には店舗を移設したり、別の店舗を与える等の援助を行っている。勿論ジーの店舗運営が悪くて売上が上がらない場合があるから、その内容はしっかり吟味するのは当たり前だ。そのためにジー専門のSVとしてFC(フィールドコンサルタント、現在は改名し、BCビジネスコンサルタント)がおり、店舗のQSCを定期的にチェックし、年に1回は3日ほどを費やし、徹底的なチェックを数十ページに及ぶチェックリストに基づいて厳格に行う。このQSCのチェックをクリアーしていれば援助するが、そうでない場合、契約解除もあり得るという飴と鞭の厳しい態度をとる。

    更に失敗を防ぐために、ジーに最初から営業権や、内装を負担させるという普通のジー契約でなく、契約フランチャイジーとする場合がある。これは、既存店舗をジー希望者を与えるシステムで、ジーに対しては売上の一定の%の金額を与える。そして、数年後に蓄えた一定の資金を元に、一般的なフランチャイズ契約を締結するという物だ。この良い点は、ザーとジーの双方が本当に長期間運営することが可能かどうかを見分けられるお見合いができると言うことだろう。

    勿論、こんな事ができるのはマクドナルド本社が財務的に安定して余裕があるからであり、最初からそんな余裕のあることができたわけではない。しかし、この手法を取り入れることにより本当にやる気のあるジーかどうかが良くわかり、失敗するジーが大幅に減少したことは事実である。ジーにとっても自分の資金を投入しないでも経験することができるリスクの少ないシステムだろう。勿論資金は投入しなくても良いが、キャリアを捨て、長期間の重労働という対価は必要なのだが。

    [2]広告宣伝や販売促進

    売上が上がらないと言うのは新商品の開発が遅いとか、テレビコマーシャルの内容が良くない、景品が良くないと言うことだ。ジーの文句を良く分析してみると、広告宣伝や販売促進を勝手に本部で決めているという不満だ。そこで、冒頭のようにオーナーによる広告宣伝会議を地区で開催し、オーナーの意見を聞きながら進めていく。地区によりその特性があるからだ。広告宣伝がよいかどうかは当然の事ながら広告代理店の選定が大きな要素だ。地区本部ではその選定はできない。そこで、全国レベルの広告宣伝コミッティを作り、オーナーの代表をそこに参加させ、代理店の選定から全国レベルの広告宣伝案まで参加させるようになっている。さらに、年度にかける広告宣伝予算もここで決済され、各ジーがいくら支払うかまで決定していく。こうして、ジーのオーナー自身が売り上げ促進に参加させれば文句が出なくなるわけだ。

    こう言うと簡単なようだが、ジーは広告宣伝のプロではないから全面的に任せるのは不可能であり、本社サイドによるプレゼンテーションと教育が重要になる。また、地区本部のジーに対応する本部スタッフや、FCが広告宣伝の知識を持っていないとならない。そこでマクドナルドでは全世界のスタッフに対し、ハンバーガーマーケティングユニバーシティという教育コースを設けて、広告宣伝の原理、テレビなどの媒体の購入方法まで、広告代理店を経営できるような詳細な知識を教え込むようになっている。

    [3]テリトリー侵害、新店舗開店

    その他に売上が上がらない原因は同一チェーンの店舗を商圏内に出店する場合だ。チェーン本部としては競合に出店されるなら、自社店舗を出店した方が良いというのは資本の理論だからしょうがないわけだ。問題は、売上が下がるジーにたいする対応だろう。新しく出店する店舗が直営だったり、他のジーであればそれは頭にくるわけだ。そこで正確な売上予測において、既存店舗にどの位の売上のインパクトがあって、どの位の利益の損害を被るかを正確に予測するわけだ。そして、新規出店により損害を被るジー達の仲から、QSCが良く人材や資金を十分に蓄えているジーに対し、新店舗を経営する気持ちがあるか順番に打診していく。つまり、ここで新店舗にたいする選択権をジーに与えると言うことだ。この選択権を与えることがジーの不満をなくす秘訣であり、同時にその選択権ほしさにQSCを高く保ってもくれるわけだ。

    「利益が出ない」

    [1]原材料コストが高い

    これも日米の係争が多い事例だが、米国はこの分野では日本よりもジーの保護規定が進んでいる。日本では売上にたいするロイヤリティを低めにする傾向がありそれを補償するために原材料にマージンをかけている例が多いようだ。そのため、以前持ち帰りの寿司業界などで裁判が多かったようだ。米国では市場価格より高い原材料の購入を義務づけることは明確な法令違反となるようだ。そのため、食品製造メーカー、物流業者とザー本部との関係はあってはならない。株を持つとか、役員をするなどは明確は違反となる。だからといって、ジーが勝手に食材や調理機器を購入してはチェーンとしての品質を保証できないので、どんな物を何処から購入できるかの認定制度が必要で、そのためにはスペックという品質を定義する事が必要になる。そのスペックの基準を満たした業者を認定業者として、ジーはその中から自由に業者を選定できるようにした。

    また、このスペックを決定するコミッティーにもジーの代表者を参加させ、ジーの意向や意見をきちんと反映させるようになっている。

    米国駐在中に全ての食材メーカーと調理機器メーカーを訪問して話を聞いた。マクドナルドの実質的創業者である、レイ・クロック氏は元々、ミルクシェーキの機械や紙カップのセールスマンであり、それが縁で西海岸にあったマクドナルド兄弟の運営するマクドナルドを知ったというのは有名な話だ。その関係で当初クロック氏は、シカゴにある、厨房機器メーカーを所有していたことがあるが、マクドナルドをフランチャイズ会社として大きくする過程で全ての株を売却した。それは公正な取引の条件を満たすためであるという厳しき規制のためであったようだ。

    [2]店舗建設費や内装費が高い

    同様なことは店舗建設費や内装費の費用にもいえる。マクドナルド社の場合、不動産の購入、賃借はマクドナルド本社が行い、不動産を取得後、建物と設備を本社負担で備え付ける。ジーは内装と厨房機器のみの負担である。内装をする場合にはマクドナルドの建設部が指導をするが、業者を選定するのはジーが自ら行い、本社、本部は一切の選定にはタッチをしないようにしている。

    [3]利益管理の指導がない

    ジーの利益が出ないと言うのは、利益管理が悪くて利益が出ない場合と、資金を他に使用して利益が出ない場合がある。売上が損益分岐点を越えているのに利益がでないのは悪いのはジーの利益管理の手法上の問題だ。ジーが何かの商売を自分で経営していた場合は良いが、サラリーマンなど資金繰りをした経験がないと、支払いの際の資金繰りで躓いてしまう例が多い。場合によっては毎日の売上がまるで全部収入のように勘違いして、贅沢をして支払時期や納税時に大慌てするなどと言う例も多い。利益管理の指導には直営店舗の時の損益計算書だけの知識ではなく、財務諸表を読めかつ、キャッシュフローを理解する能力が必要だ。そのためにはSVとは異なるトレーニングコースと体系が必要になった。

    [4]FC:フィールドコンサルタント制度(ジー店舗のスーパーバイジング)

    当時はまだ日本ではフランチャイズ店舗を開店したばかりで、その位置づけも我々は理解していなかった。でも店舗は開店したのだからその指導は必要だという事で、米国と同じく直営の指導とは異なるFC:フィールドコンサルタント制度をスタートしたが、どちらかというと直営部門のSVの方が脚光を浴びていた。駐在員の仕事は日本から来るSV達への研修も含まれていた。簡単に言うと英語のできないSVが店舗で研修する際や、他店の見学、ハンバーガー大学研修の引率だ。そういうわけでハンバーガー大学の全てのコースを何回も受講させられたので、暗記してしまったくらいだ。その研修を通じて痛感したのが、FC:フィールドコンサルタントの重要性だった。その仕事が会社に取って重要かどうかは待遇を見れば簡単に分かるからだ。

    受講中は食事につれていってくれたり、最後には晩餐会を開いてくれるのだが、その内容がSVクラスとFCクラスでは段違いだった。SVクラスでは皆毎晩勉強をして酒を飲みに行くどころではない。元気な人でも地味な居酒屋で割り勘で飲んでいた。ところがFCクラスになると毎晩飲めや歌えやの大騒ぎ、シカゴの郊外からダウンタウンにタクシーで行ってディスコで大騒ぎをして、明け方帰って、そのまま授業を受けるという毎日であった。支払いも割り勘ではなく我を争って支払っていた。FCになると接待交際費がきちんと出るのだ。

    当然、会社幹部も毎晩美味しいレストランにつれていってくれて、晩餐会も豪華な物だった。FCの会社における重要性、どの位大事に思っているかを遊びの面からも感じさせる物だった。

    勿論、遊びだけでなく授業中は会社の幹部連中が参加し、会社のフィロソフィーをしっかりたたき込み、同時にどのFCが将来の幹部になれるかを見定めてもいる厳しい授業でもあった。財務諸表などを読めるかどうかは、将来地区本部の運営を任せるかどうかを判断する重要な要素だからだ。また、プレゼンテーションで自分の意見をスマートに主張できるか説得力があるかは、数多くの部下を抱える上での必要な能力だ。

    FCになるためには当然の事ながらSVの経験が必要だ。SVのエリアをプロフィットセンターとよび、この単位で売り上げと利益を管理させる。全社で利益や売り上げが低いと言って騒いでも具体的なコントロールは不可能だ。このSVのエリアで目標売り上げと利益を確保するようにすれば、全社的な利益の確保が可能になるのだ。米国ではこの単位の管理を大変重視し、もし2カ月でも目標利益が達成できなければ、降格されてしまう。

    この直営店舗の管理能力があることが分かれば次の職種はトレーニングコンサルタントだ。店舗のマネージャー達へのトレーニングは、本社のハンバーガー大学と地区本部のトレーニング部とに分かれている。本社のハンバーガー大学はAOCという店長向けのトレーニングコースを担当している。入社後、BOC、IOC、AEC、と言うコースを受けた後AOCに参加できるようになっている。(詳細については月刊食堂1991年5月号、日本マクドナルド研究を参考にされたい)全員をシカゴのハンバーガー大学に送ることは、効率が良くないので地区本部にトレーニング部を置いてAOCまでのトレーニングを実施している。このトレーニングを担当するのがトレーニングコンサルタントだ。

    なぜ、FCになる前にこのトレーニングコンサルタントの仕事をさせるかというと、SVまではラインの仕事であり、部下を命令で動かせるという強引なマネージメントを経験する。正しさよりもリーダーシップの強さを要求される仕事だ。直営の社員であれば力でねじ伏せることができるが、フランチャイジーのオーナーを説得するには正しさや、論理性が必要になる。その正しさを学ぶのがトレーニングコンサルタントの経験なのだ。トレーニングコンサルタントはクラスルームで授業をするから、正しく授業ができるようにマニュアルやトレーニングVTRを何回も繰り返し見て暗記する。更に、マニュアル通りでないわかりやすい自分の言葉で話すことを要求される。クラスが終了した後は店舗を回り、自分が教えた生徒が目標通りに仕事をしているかフォローもしなくてはならない。また、担当のSVが正しく指導しているかどうかもチェックをする。

    トレーニングコンサルタントは店舗のマネージャー達の上司でないから、正しいことをわかりやすく言わないと聞き入れてくれない。上手に話しかけるとリラックスして仕事の不満や希望を述べてくれる。そのような聞き上手になるコツをつかむのがこのトレーニングコンサルタントの重要な仕事だ。

    トレーニングコンサルタントと同様の仕事内容はNRA(米国レストラン協会の教材に詳しく述べてあるので、内容の要約を資料として添付するので参考にしていただきたい。

    場合によってはSVの次の職種でオペレーションマネージャー(統括SV)を経験させる場合がある。統括スーパーバイザーは6ー7人のSVと30ー40店舗の売り上げと利益の管理をする。数多くの人間を管理するという経験はジーの集団をコントロールする上で重要なので、段々、この職種を経験させるようになってきた。

    日本の飲食チェーンの多くは、直営店舗とフランチャイズ店舗を展開している。直営店舗とフランチャイズ店舗では管理手法が異なる。直営の場合のSVは監督と同時に直接の上司であり、きめの細かい管理と教育を行う。直営の場合には店舗数の増加とともに常に新入社員が増加するので、きめの細かい管理が必要になる。しかし、フランチャイズ店舗の場合にはフランチャイズオーナーが直接の運営に当たり、長い経験を持つようになる。その為、直営店舗のようにきめの細かい教育が必要がない。しかしながら、フランチャイズ店舗は独立法人であり、売上や利益の管理が悪いと倒産したりする。その為、直営店舗とは異なる財務上のコンサルティングが必要になる。直営のSVは損益計算書までの知識でよいが、フランチャイジーの管理には財務諸表、特にBSや資金繰りのチェックが必要であり、経営者としての高度な知識が必要になる。フランチャイズオーナーは独立した経営者であり、直営の社員のように命令することはできない。理詰めの説得が必要であり、洗練されたコミュニケーション技術が要求される。そこで直営の管理とは別に、フランチャイズ店舗の管理の責任者を設ける必要が出てくる。その職種がフィールドコンサルタントだ。SVの担当店舗は7店舗までだが、FCの場合、ジーの社員の教育の必要がないために20店舗以上の店舗を担当する。

    この熟練したフィールドコンサルタントの存在が、本部とジーのトラブルを最小限度の押さえる秘訣だという事をじっくりと勉強させられたわけだ。

    [5]継続したサービス

    フランチャイジーの不満はロイヤリティを支払っているのにそれに見合う指導を受けていないと言う事が多いようだ。そのためには上記のFCによる指導だけでなく、オペレーションマニュアルや、VTR教材、マネージャー教育システム、アルバイトトレーニングシステムなどを2年に1回は改訂し、全面的に配布し直ししている。内容が陳腐化しただけでなく、ちょっとした改訂だけであっても作成し直し、常に、最新の情報をサービスしているという事を積極的にアッピールするエネルギーには圧倒させられた。

    日本ではマニュアルは一度出来上がるとまるで聖書のように神棚に飾られて一度も改訂しない例が多いが、フランチャイズチェーンとしてのサービスを考えるなら常に見直しを行うという姿勢が必要になるのだ。

    [6]フランチャイジーの選別

    以上のように優秀なFC制度を設けても加盟するジーの品質か悪くては教育は不可能だ。日本では金を持っている人なら無差別に採用する傾向があるが、米国マクドナルド社のジーの選別は大変厳しい物であった。まず、日本とは異なり、兼業を認めないと言う厳しさだ。自分で事業を営んでいたらそれを売却して加盟しなくてはならないし、自ら店舗運営の先頭に立たなくては行けない。そのためのテストは店舗で数年間働いてどの位やる気があるか判断するほど厳しい物であった。当時の日本では不動産を持っている金持ちをジーにさせたが、金のある人は他の仕事をしたり、ハンバーガーの販売でもうけた金を本業以外の仕事に流用し、店舗への再投資をしなかったり、変な投資で資金繰りがつかなかったりという状態になり、米国のような厳しい選別の手法を取り入れるようになってきた。

  5. コミュニケーション
  6. ジーに対しては以上のような手厚い保護と同時に厳しい管理を行うのだが、あまり厳しすぎると不満をためて、場合によっては裁判沙汰になったり、公正取引委員会に訴えられたりする。会社には数十人の弁護士が在籍しているから裁判になっても慌てることはないが、やはり、問題を事前に対処した方が効率がよい、そこで、不満を事前に察知し、話し合いで解決できるようにコミュニケーションを綿密にとるようにしていた。

    [1]地区本部長との懇談、評価

    殆ど毎月ジーと地区本部長はオーナー会議で顔をあわせているのだが、やはり年に1回はフォーマルに顔を合わせてお互い本音の話をする必要がある。本音を話すという事は社員に行う人事評価と同じ事をジーに対して行うのだ。ここではFCのつけたジーの店舗に対する、QSC、財務諸表、人材育成の評価などを本音で話し合う。どちらかというとジーに対する本社からの評価を明確に伝えるわけだ。言葉だけでなく、話し合ったことは文章にきっちり残すようになっている。問題のあるジーに対しては、指摘した事項に対して改善しなければ契約解除もあり得るからだ。

    厳しい評価であるが、ジーによっては心待ちにしている人もいる。QSCや財務、人材の評価ポイントが高ければ、次期の新店舗を開店する優先権利を与えられるからだ。そのために普段からQSCの向上を心がけ、次期店長を教育し(本部や本社のハンバーガー大学のBOC、AOCなどの研修に参加させる)、財務諸表の整備をしている。この厳しいシステムが、やる気のないジーを排除し、やる気のあるジーのやる気を出すという原動力となっている。 オーナー会議では和気あいあいとした会話であるが、ここではお互い真剣勝負で緊張感の溢れる会議だった。筆者の担当した店舗は売上は高いし、QSCも良かったので(自分で思っていただけだが)会議で、再三、新店舗をくれるように交渉したのだが、QSCでかなり厳しい評価を浴びた。特に店長の評価は従業員全員にインタビューをするほど厳しいチェックを受け、なかなかOKをもらえなかった経験がある。

    [2]全社一体のコンベンション

    上記の会議は厳しい評価だから、当然、ガス抜きも必要だ。個々のジーにたいする要求でなく、会社全体の方向付けをわかりやすく明確に伝えなくてはならない。そのために年に1回のコンベンションを開催する。コンベンションは店長対象の物とフランチャイジー対象の物がある。店長対象の場合は大変実務的な内容だが、ジー向けのコンベンションは豪華絢爛だ。本年度の方針をミュージカル仕立てのショーでわかりやすく説明し、会場には、店舗の厨房を設置し、新商品の調理と新規の調理機器を見せる。このコンベンションは単なる遊びでなく、ジーに新規の方針をわかりやすく伝え、投資を促す物でもあるのだ。

    98年のコンベンションは米国オーランドのディズニーワールドで行われた。同時期にディズニーとの共同マーケティングの一環である、マクドナルド店舗のディズニーワールド内オープンを祝いながら行われたようだ。

    当然、社長の話があるのだが、それを聞いて驚いた。社長は演壇で原稿無しで話をするのは当たり前だが、周囲のフランチャイジーの顔を見ながらファーストネームで呼びかけ、家族はどうですかと、名前をいいながら一人一人に話しかけるではないか。その記憶力のすごさに驚かされ、社長になるのは大変な仕事だなと思い知られれた。この全員の顔と名前、家族構成を覚えるというのは大変な作業だが、ジーの気持ちを把握するという意味では大変重要な作業なのだ。

    [3]オーナー会議

    地区のオーナー会議は会長をジーの中から選び、自主的に参加させる。販売促進などの方針を決めるときにも、直営店とジーの店舗の比率で議決権があり、決して直営店の方針だけで物事を決めることはできない。勿論、事前のガイダンス、相談をしてのことだろうが、あくまでも民主的な決定方法を守っている。

    [4]本社スタッフの訪問、電話

    ジーの指導は地区本部長やFCの仕事だけではない。本部のスタッフから直接電話をすることがある。筆者の店舗であるとき前年度の利益を下回ったときがある。直ちに本社の財務副社長から電話があったのは驚いた。副社長という重責ながら、全店舗の損益計算書に目を通し、異常があったら部下に指示するだけでなく自分でジーと直接会話をするのだ。理由を聞くだけでなく、資金繰りは大丈夫かとか、困ったことがあればすぐ言ってくれと懇切丁寧な話をしてくれたのは感激させられた。普通はジーの管理は地区本部長の直轄なのだが、困ったときにこの財務の副社長が援助の手をさしのべることにより会社に対する感謝の気持ちと忠誠心がつくようだ。コンベンションではこの財務副社長の廻りは何時も人だかりで、それぞれのジーとはファーストネームで楽しそうに歓談をしており、ジーからはまるで父親のように慕われていたのが印象的であった。

    厳しい管理を行う一方でこの人間的なきめの細かい配慮を怠らないのが1万店を超える店舗数の中で実現するというのが世界最大のフランチャイズチェーンになった秘訣なのだと思わされた良い経験であった。

    [5]アンビッツマン

    以上のようなきめの細かいコミュニケーションをとっても、まだ文句を言う人もいる。人によっては気が小さかったり、虐めにあって文句を言えないと言う場合があるからだ。それを制度的に解決するのが、アンビッツマンだ。日本でも自治体などが苦情の申し立てをするのに使用している制度だ。

    このシステムの特徴はアンビッツマンは社内の独立した組織であり、そこにクレームが着た場合、誰が、どんなクレームを申し立てたかは社内では公表せず、その原因、何が問題かを探り、クレームを申し立てた人の立場に立って解決するという第3者的な公平な解決方法だ。

    このような複数に渡るコミュニケーションによる解決を目指しているからこそ、争いは最小限度に押さえられわけで、大変なようだが、裁判になる労力を考えたら簡単な物だそうだ。

    米国では裁判をいとわないように思われるが、裁判を起こさないように2重3重の配慮をしているというのは大変参考になった。

(4)米国のフランチャイジー保護の方向

フランチャイジー保護を徹底しているマクドナルドでも、ジーとの裁判や紛争を防げないようだ。それは基本的にジーとザーの利益は対立しやすいと言うことだからだ。

米国ではジーは弱者の立場から公正取引委員会の保護にあり、業界団体であるインターナショナルフランチャイズアソシエーション(米国フランチャイズ協会http://www.franchise.org/)では、ザーを加入させ、きちんとした契約書や指導方法を指導しており、倫理規定まで設けている。しかし、この協会はあくまでもザーの代表の集まりであり、単なる倫理規定で法的にジーを保護する物ではない。

ジーの保護に厳しい米国でも最近のフランチャイズチェーンの増加にともなうジーの権利の侵害が相次ぎ1992年頃よりジーによる新たな組織の作成が始まりだした。筆者が米国に駐在していた頃、地区本部のフランチャイズ部長(新規フランチャイジーの開発と選別の担当者)である、DickAdams氏が後に社員フランチャイジーとなるが、フランチャイジーとしての権利とザーであるマクドナルド社との矛盾を感じ、後にジーの組織化を開始し、最近AmericanAssociationofFranchisees&Dealersという組織を作り上げた。フランチャイズ制度の法規制に向け法案を作成する活動を続けている。ホームページを持っているので興味のある方はその提案内容を見ると日本の将来の参考になるだろう。

(5)最後に

マクドナルド社のジーにたいする対応はきちんとしているが決して甘い物ではない、やる気のないジーにたいしては裁判もいとわず排除する厳しさを持ち合わせている。しかし、今年の初頭にあったような同社の経営トップの交代劇は、決して株式市場による圧力だけでなく、ジーの売上が上がらないと言う不満も影響しているという事を忘れては行けないと言うことだ。

フランチャイズチェーンの運営は双方に取って決して甘い物ではなく、双方の誠意と、努力が必要だという決意を持って参加する必要があるという事だろう。フランチャイズシステムが日本に上陸して依頼、ザーとジーの紛争が耐えない。ザーが金儲けを考えて、売上を偽り勧誘している例が多いし、ジーは楽をして金をもうけるという甘い考えで加入するからだ。

本来はジーは弱者として保護されるべきだが、日本の判例はフランチャイズシステムは商行為であり、両者とも責任があるという、どちらかというとザーに有利な物が多いのが現状だ。しかしながら、最近のコンビニの紛争の多発を見ていると米国のように、より厳しい法規制が被されることも考えられる。ザーとしては責任のあるチェーンシステムの構築が必要だし、ジーとしても自分の目でしっかりチェーンを判断するという自己責任も大事だという自覚が必要である。

ザーとしては店舗展開をする際の売上調査の制度をあげ、既存のジーにたいする影響を考慮し、優秀なジーには優先的に新店舗を開店する権利を与えたり、ジーを指導する能力のあるFCの育成が必要になるだろう。そして何より必要なのは売上を継続して上げていく新商品開発や広告宣伝の努力を怠らないと言うことだ。そして、フォーマルかつ親しみやすいコミニュケーションを密に保つのが、ザーとジーの関係を継続して良好に保つ最大の秘訣だろう。

なお、フランチャイズチェーンに強い法律家は少ないのだが最近インターネットで

フランテック法律事務所 http://www02.so-net.ne.jp/‾tktakasi/fcindex.htm

と言うサイトがあり、フランチャイジー向けの法律相談の参考になるだろう。

尚、筆者のホームページでもフランチャイズチェーンの項目があるのでご覧いただければ幸いだ。

参考資料「NRA米国レストラン協会教材内容要約」

(1)集合トレーニングの準備

  1. まず、店内会議でトレーニングが必要だという事を全員認識する。
  2. マネージャーたちはコストを下げながら売り上げを上げる方法を議論する中で、従業員を効率の良い集合トレーニングで完全にトレーニングすることが大事だと言う結論に達した。

  3. 計画性
  4. 集合トレーニングを成功させるには良く計画を練る事が大事だ。

  5. 参加者のバックグラウンドの把握
  6. 集合トレーニングを開始する前に参加者が何を考えているか、どんなレベルなのかを調べておく。何人が参加するか?どんな経歴の持ち主か?どんな職種を経験しているか?どんな能力があるか?どんな悩みとか希望を持っているか?等を事前に調べておき、トレーニング内容を彼らのレベルにあわせておく。

  7. 台本の準備
  8. トレーニングの台本を準備しておく。内容と主題、ディスカッションのポイントをまとめておく

  9. トレーニングの手法の選択
  10. トレーニング方法を決めておく。講義方式、ディスカッション方式、ロールプレイ方式、ビデオの上映等、トレーニングのテーマにふさわしい方式を選定し、その方式をどのように進めるか決めておく。

  11. トレーニングを開始する前の準備
  12. [7]練習
  13. トレーニングの前にプレゼンテーションの練習をしておく。プレゼンテーションのうまさを見てどれくらい教育に熱心なのかがわかってしまうからだ。

(2)トレーニングの開始に当たって。

  1. ルールを明確にする
  2. トレーニング中のルールを決めておく。トレーニング中にタバコを吸って良いのか、コーヒーなどの飲料を飲みながら聞いて良いのか、トイレに行きたいときにはどうするか、質問は何時するのか、等を最初に説明しておく。

  3. リラックスさせる
  4. 最初に講師の自己紹介をしたり、ジョークを言ったりして参加者の気持ちをリラックスさせる。例えば、最初はジャケットを着て話だすが、すぐにジャケットを脱ぎながら、参加者にもジャケットなどを脱いでリラックスして聞いて下さいと話しかける。

  5. 主題を明確に伝える
  6. 今日のトレーニングの主題を情熱を込めてわかりやすく説明する。何を教わるのかがわからないと不安になり、習ったことが記憶に残らないからだ。

(3)参加者のやる気を引き出す

  1. 質問の手法
  2. 質問は、誘導的、一般的、関連的、連続的な質問の手法を取り、積極的なディスカッションに導き、ディスカッションを活発にさせる。

  3. ディスカッションのコントロール
  4. 積極的なディスカッションは、往々にして主題をそれることがあるので、そのときには主題に戻るように促し、テーマを忘れないように導く。

  5. ビデオの使い方
  6. ビデオを見せたり、ロールプレイで演じることにより、参加者がトレーニングの内容を良く理解できるようになる。 参加者にビデオを見せる場合は、見せる前にビデオの内容を簡単に紹介する

    ビデオは一回で通して見せても良いが、各ポイントを決め、そこで止めて説明しても良い・ビデオガイドで止める場所を指定しているので確認しておく。

(4)評価とフォローアップ

  1. 評価
  2. トレーニングを終了する前に、トレーニング内容ややり方の評価を参加者にしてもらい、次回の参考にする。

  3. 終了
  4. 参加者が長時間積極的にトレーニングに参加してくれたことを感謝し、トレーニングの終了する。

  5. アクションプラン
  6. トレーニング終了に当たっては、トレーニング参加後に参加者が何をこれからするのかのアクションプラン(行動計画)を作成させ、参加者がトレーニングで得た知識を積極的に実際に使用出来るように手助けをする。トレーニング終了後も参加者の各人のアクションプランを把握しておき、そのフォローアップを行う。


Home Index
           
会社案内
コンサルタント
王の経歴
著作
セミナー
通信教育
           
王利彰への、ご意見ご要望はこちらへご連絡下さい。
その他ご質問・お問い合わせはこちらからお願いします。
Copyright(C) Sayko Corporation. All Right Reserved.