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先端食トレンドを斬る
第15回
[O157事件]が提起する衛生管理の重要性


<米レストランショーで見た食品衛生管理の手法>

今年のNRAのレストランショーでは、食品衛生が一大テーマとなっており、食品衛生に関する新しい機器、洗剤、システムが多数展示されていた。もちろん、これらは全てHACCPの基準に則ったものだ。

HACCP関連で特に大きな変化として上げられるのは、クックチルが保存法から衛生管理の一環としてとらえられるようになってきたという点であろう。以前にも紹介したように、HACCPとは食品の製造工程に焦点を当て、発生する可能性のある危害を分析、予測して起こりうる危害の優先順位をつけて、ポイントごとに管理していく手法である。

食品の加工とは、温度と時間のコントロールである。つまり、HACCPでは温度と時間をいかに徹底的に管理するかが問題になってくる。その点、クックチルは、まさに温度と時間のコントロールで食品を安全に保存しようという技術である。例えば米国では60℃のものを5℃に冷却するまでに2時間以上をかけなくてはならないという基準がある。といっても、すぐに冷蔵庫に入れればいいというわけではない。冷蔵庫はあくまでも冷蔵温度帯にあるものを管理する機器であり、冷却能力は備えていない。したがって冷蔵庫に入れる前の段階で調理した食品を一気に冷やして冷蔵温度まで下げなければならない。ということは、ブラストチラーが非常に有効な手段ということになる(96年2月号本連載参照)。

かつてはブラストチラーとタンブルチラーのどちらが優れているのかという議論があったが、衛生対策上どちらも有効な方法だということが分かった現在では、そうした議論はすでになくなっており、メーカー各社も両方ともに開発するようになっている。

まさに食品衛生がトレンドになった今回のレストランショーだが、主催者であるNRAのブースでも、3つのフォーカスのうちのひとつは食品衛生についてであった。食品衛生に関する教材作りは昨年からはじめられていたが、今年はHACCPを前面に出して積極的に教材のプロモーションを行っていた。

もう一つのフォーカスは教育の問題。食品衛生もつまるところは教育問題に関わっていくわけだから、教育をどのように合理的に、誰でもわかりやすいものにするのかも重要なテーマになっている。NRAでは、これまでも熱心に教材を作成していたが、本を読まないといのはいずこの国でも同じ傾向のようで、現在CD−RONを使った教材を開発、画像と文章を組み合わせることでよりわかりやすい教材作りを目指している。

そして、3つ目のフォーカスがインターネット。今回のレストランショーは、現地に行けなかった人も実はインターネットを通じて日本から見ることができた。NRAのホームページを見れば、どのような展示が行われているのか、どのような教材があるのかはすぐに分かるのだ。教材は閲覧もできるし、発注先も掲示されているから、すぐに取り寄せることができる。

さらに,NRAではこうした情報発信の他に、インターネットを通じて傘下のレストランにビジネスチャンスを提供するようにもなっている。消費者向けの「ダインファインド」というページがそれにあたり、ここには会員レストランのリストを無料で掲載している。内容は各店舗の住所、電話番号、使用できるクレジットカード、どのような商品があるのか、そしてアメリカの3つのレストランガイドにおけるグレードなどだ。

ダインファインドにはいくつかの段階があり、店舗の情報をより詳しく掲載しようとなると、今度は有料になってくる。これにはA、B、Cという3つの段階があり、写真点数を増やすなど情報の内容が細かくなればなるほど料金もアップしていく。

つまり、NRAは会員向けの情報発信だけだなく、消費者向けのメニューを設けることで、レストランの総需要の拡大を図ろうとしているのだ。それだけインターネットに本腰を入れているのである。

食品衛生がトレンドとなった今回のレストランショーの視察を終えて日本に戻ってくると、食中毒で大騒ぎしている最中であった。

かつては魚介類から感染する腸炎ビブリオが中心であった食中毒だが、現在その中心は大きく分けて2つの食中毒菌に変わりつつある。ひとつはサルモネラ菌であり、もう一つは問題になっている病原性大腸菌O157である。

サルモネラ菌は、一般的に存在する細菌で、卵、食鳥、食肉の30%はサルモネラ菌に感染しているといわれる。食中毒になると最悪の場合死亡することもあるサルモネラ菌が、卵や肉についているというと驚かれるかもしれないが、たいていの病原菌と同様に、少々のサルモネラ菌ならば胃酸が殺してしまうし、抵抗力もあるから別に問題はない。ただし、一定量を超えると胃酸では殺菌できなくなり、食中毒症状を引き起こす。

つまり、普通に管理していれば何の問題もないのだ。しかし、何らかの加減でちょっと多めにサルモネラ菌がついていた肉や卵の温度管理を間違えて、増殖させてしまうと事故が起こってしまう。とくに卵焼きなどが入る弁当類は、よほど管理に気をつけなければならない。

<食中毒菌はどこにでもいる、だから教育が大切になる>

さらに気をつけなければならないのは、感染経路が人を経由する点だ。サルモネラ菌の場合は、人口の0.03〜0.05%の割合で健康保菌者がいるといわれる。健康保菌者というだけに本人には全く影響はないものの、他の人に感染すると突然変化して食中毒の原因になる場合もあるのだ。

健康保菌者がいるという話を、実は私も最初は疑っていた。しかし、ある時アルバイトまで含めて大々的な検便を行ったところ、実際に数字のような割合で保菌者がいたのである。したがって、レストランチェーンならば、アルバイトまで含めて従業員は全員月1回は必ず検便を行う必要がある。そして、下痢をしている時は絶対にキッチンに入らないという決めごとを必ず守らなければならない。もちろん食品衛生に関する教育は徹底的に行われていなければならない。私が不安なのは、本連載で何度も指摘しているように、リストラにより教育がおろそかになっている点だ。

もちろんそれが今回の食中毒の広がりの直接の原因というわけではないだろう。しかし、その危険性をはらんでいるということを、常に気にかけていただきたい。また、保健所の衛生講習会には、最低でも5年に一度は足を運ぶべきだろう。先程述べたように、食中毒菌にはトレンドがあり、それまでは発見されなかったカンビロバクターやO157のように、新しい情報が入っている場合があるからだ。

さて、O157である。これは比較的新しく発見された病原性大腸菌だ。これまで大腸菌は無害だと言われていた。一般細菌は空気中にいるが、大腸菌は腸内細菌だから、食品から大腸菌が検出された場合は、便からの感染、つまり手を洗わなかったことなどが原因となり、何か他の菌、たとえば赤痢菌やコレラ菌、あるいはガンビロバクターなどが原因なのではないかと思われていたのである。

ところが、82年に初めて病原性大腸菌が発見された。毒素を出す大腸菌があることが分かったのである。しかも、病原性大腸菌はO157だけでなく、他にもいろいろ発見され、中には赤痢菌と同じような病原性を持つような菌もあるのである。

O157は、腸管出血性大腸菌と言われるもので、82年にアメリカ・オレゴン州とミシガン州のあるレストランチェーンのハンバーガーが原因で食中毒が発生したことで発見された。牛の腸内の大腸菌が挽肉に入っていて、それを加熱が十分でない状態で提供したことで食中毒になってしまったのだ。

症状は下痢を伴う血便と腹痛で、水分と血液が失われることから、体力のない子供や老人は死に至る場合もある。最初の発生時には死亡者はいなかったが、93年にアメリカのジャックインザボックスで起こった食中毒事件では2歳の子供が死亡している。NRAが真剣にHACCPを取り入れる契機になった事件である。

日本では、90年に埼玉県浦和市の幼稚園で死者2人を含む被害者251人に及ぶ集団発生が最初の大きな事故となった。原因ははっきりしていないが、水ではないかと言われている。

O157による感染を防止するために、一番注意しなければならないのは、2次感染をいかに食い止めるかということである。もちろん、これは全ての菌についても同様だ。大腸菌は、人間だけでなく牛や豚にもいるから屠殺し、解体するときに内蔵物が飛散したりして、食肉が汚染されることもある。したがって、マスコミで報じられているように食肉を十分に加熱する必要がある。しかし、肉は加熱すればいいのだろうが、問題は加熱する前に使ったまな板である。もしO157に感染している肉を処理したあと、そのまま別の食品を処理すると、まな板を媒介に感染する怖れがある。実際、アメリカではサラダバーからO157が検出されている。2次感染の典型だ。その意味では食肉だけにいるものという誤解はくれぐれも持たないでいただきたい。繰り返しになるが、これはO157だけではなくサルモネラ、腸炎ビブリオなど全ての菌について言えることである。

<食肉だけでは片手落ち、2次感染を徹底排除せよ>

食中毒の傾向でいうと、発生件数は昔に比べて減っている。しかし、1件数中の発生人数は増えている。ということは大量給食で発生する可能性が高まっているということだ。大量給食で発生しやすいのは、ピークに備えて作りおきしているケースが多いからだ。昼時などのピークに対応できるだけの調理能力や保管能力がない場合は、作りおきさざるを得なくなる。そして常温にさらしてしまい、結果として食中毒菌が増殖しやすい環境となってしまうのだ。旅館の夕食なども同じことが言える。

したがって、大量給食の施設では、これからは温度管理がきちんとできる機能を厨房に備えておかなければならない。汚染されないようにすることだでなく、菌を増やさないようにする設備も必要になってくる。要するにHACCPの考え方に真剣に取り組むべきなのだ。

もちろん、小さなレストランであってもそれは必要になってくる。大手は体力があるから、一度食中毒を出しても耐えられるかもしれないが、小さな店は一巻の終わりである。新たな設備投資が必要で苦しいところもあるだろうが、食中毒を発生させたときのダメージを考えれば、決して無駄な投資ではないと思っていただきたい。

心配なのは、最近は教育と同様にリストラで十分な設備投資が行われていないんではないかという点だ。冷蔵庫だって、メンテナンスを怠れば冷却能力は落ちてくる。ただ冷蔵庫の容量を増やせばいいというわけではないのである。さらに言えば、店舗に温度計があるかどうかだ。ないところは論外だと言えよう。少なくとも冷蔵庫、保温庫には温度計がついていて、その温度計が正常に機能しているかを調べるためのマスターの温度計が必要だ。

本来あるべき姿は、アメリカのように保健所までが一体となって具体的な指導を行っていく体制である。温度の見直し、作業の見直しを行い、何回チェックすべきかまで、はっきりした基準を設けるべきなのだ。商品については、ひとつひとつにレシピが必要である。レシピとはある食品は何℃で搬入し、何℃で管理し、何℃で何分間加熱するかなどを細かく具体的に記述したものだ。それがHACCPのルールである。

厚生省は、すでに院外調理におけるガイドラインでHACCPなどに基づく衛生管理を実施するよう求めている。これはセントラルキッチンなどにも広がっていくはずだ。外食企業はいまからそれに備えておくべきである。

最後につけ加えておくと、厚生省の発表は現在全てパソコン通信で読むことができる。また、インターネットを介すればCDC、FDA、USDAといったアメリカの食品関係のデータベースにアクセスできる。その中にはO157をはじめとする食中毒に関するデータも揃っている。ちなみに私のところでは5月からSAYKONETという名称で外食専門のホームページをインターネット上に公開しているが、ここからCDCなどのデータベース、またNRAのホームページにもアクセスできるようになっているので、ぜひご利用いただきたい。


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