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先端食トレンドを斬る

第6回

CSを実現するサービスこそレストランの生き残る道


<いい商品だけではお客は満足しない>

去る9月、私は関係者とともに渡米し、NAFEMという厨房機械鉱業展を見学、さらにサンフランシスコでクックチルの視察を行ってきた。これらについては、次の機会に触れることにして、今回は米国で視察してきたサービスを中心に報告しておきたい。

米国のザービスについては、以前にも触れており、くどいようであるが、次に述べる体験からどうしてももう一度触れておきたいということで、ご了承いただきたい。その体験とは、帰国した次の日に行った関西の中堅チェーンのある店での出来事だった。この店で、私はサービスのあまりの悲惨さに愕然としてしまった。まず、5人いたウエイトレスがずっと客席に背を向けておしゃべりを続けており、声をかけても振り向きもしなかったのである。また、マネージャーも放心状態で、客席を見ることも従業員に注意することもなく、ずっと地下道を行き来する人の流れを見続けていた。レジのところにいたそのマネージャーは、会計の時も店を出るときも、一言も口をきかなかった。

そのチェーンは、品質管理で知られているところで、その店も商品はさすがと思わせるところがあったが、サービスに関しては、完全に落第点だ。とくにマネージャーの表情のなさは、米国のサービスに触れてきたばかりの私にはものすごく落差を感じさせるものであった。

以前にもこの連載で述べたが、日本のレストランは、いい食材、あるいはいい商品さえ提供すればお客の満足する食事になるという考えにとらわれすぎているのではないだろうか。ガストも安くていい商品を出していたものの結局、お客はそのサービスを買うことはなかった。レストランは、そこそこの商品を出したなら後はサービスを良くしないと、コンビニエンスストアやスーパーと差がなくなってしまう。レストランが生き残る道はサービスなのである。そして、それは飲食業だけではなく、小売業についてもいえるのではないかと思う。

日本の場合、小売業のチェーン理論が飲食業に適用されているが、私は今日本の小売業で使われている理論もすでに古くさいものになってしまっていると思っている。というのは、本部集中の中央集権的で、店舗では考えるなという教育を受けているからだ。

では、アメリカではどうなっているのかというと、本部集中から離れて、権限をどんどん現場に委譲している。そして、お客を満足させること、つまりカスタマー・サティスファクション(CS)を現場で考えさせているのだ。逆に言えば、本当の意味でCSを実現させるためには、常にお客と接している現場こそが中心にならなければならない。だからこそ、権限が現場に委譲されているのである。

<米国でノードストロームが急成長した理由>

中央集権で失敗した典型的な例は、百貨店で見ることができる。かつて百貨店の頂点に君臨していたメーシーズは、いまやチャプターイレブンを申請しており、昔日の勢いはなくなっている。その原因といわれているのが、権限の本部集中、つまり中央集権化である。たとえば、トップがCSを導入しようとしても、権限が現場にないため、店が動かなくなってしまったということだ。

それと正反対なのが、ノードストローム。私が米国にいた12年前には、シアトルの田舎百貨店でしかなかったのが、現在ではCSの徹底で名門と呼ばれるようにまでなっている。その徹底したサービスぶりについては以前にも、シャツの試着ができるという事例で述べたとおりだ。しかし、そのサービスぶりはもしかしたらシカゴの店舗だけのことかもしれないということで、今回の視察時にも仲間の一人がサンフランシスコの店舗で実験を行った。

彼の注文は、30分程度の時間でズボンの裾上げをやってもらえるかというものであったが、店側がやると答え、実際に4本ものズボンの裾上げを行ったのである。しかも、その30分間にズボンに合わせてジャケット2枚やシャツ4枚、ネクタイ4本、下着3セットをコーディネートして彼に薦めているのだ。

日本では、これらの売場はそれぞれ異なっており、スムーズな連携ができない場合が多い。なぜ、ノードストロームはそれができるのか、日本のように派遣社員で構成されているのではないなど、いくつかの理由があるのだが、ひとつには従業員の一人ひとりがCSとはどうあるべきかを考えている点が挙げられる。彼にとってわれわれは明らかにツーリストであり、時間が何よりも優先されるということがわかっているから、30分というわずかな時間で裾上げはもちろん、コーディネートまで行ってしまうのだ。

しかし、われわれもしつこかった。ここまでできるのはサンフランシスコの店舗での話で、別の店では無理だろうと、サンディエゴの店舗でもやはり同じようにズボンの裾上げを頼んだのである。この店では「仕立て直しは3日かかります」と壁に貼ってある

にもかかわらず、閉店までの20分の間に裾上げをしてくれたのである。さらに、手間のかかるシャツの裾直しを頼んだところ、さすがに当日は無理だったのだが、翌日には仕上げてくれた。

どれだけ離れた店舗であっても、きちんと同じサービスが受けられる。しかもそれは、徹底的にCSを追求したサービスなのである。ノードストロームが急成長した理由はまさにこの点にあるのだ。それが可能なのは、従業員のインセンティブだという言い方もされるが、インセンティブだけではあのサービスは出来ないと思う。何が彼らを動かしているのか、この点をこれから研究していく必要があるだろう。

日本の小売業はウォールマート詣でを続けているようだが、ウォールマートもCSを追求している。いかにして安くするためのシステム化を追求するかということだ。みんなそのシステムを見ているけれども、ウォールマートのような巨大システムは、日本で何社もできるわけではない。それよりも、ノードストロームのように、どうやってお客を満足させるのかというシステムこそ学ぶべきなのではないかと思う。

<プラネットハリウッドのすばらしいサービスぶり>

レストランで感心したのは、プラネットハリウッド。アーノルドシュワルツェネッガーをはじめとした俳優が出資したレストランであり、俳優の着た衣装や小道具を飾るなど、映画をモチーフにしている。ハードロックカフェの映画版と言っていいテーマレストランだ。だから、私は最初、そのアイデアが優れていて、映画の好きな人がノスタルジックに浸って喜んでいる店だとばかり思っていた。確かに、店に入った瞬間はそうなのだが、そこですべてを判断してしまっては本質を見逃すことになる。本当に見るべきなのは、やはりサービスなのである。

この店はカジュアルなサービスが徹底されていて、ウエイトレスは全員ニコニコしていて、お客とフランクな会話をすることを心がけている。たとえば、トイレである。米国の気のきいたレストランやバーではトイレのところでタオルを渡してくれる。それで手を拭いたりすると、いくらかのチップを渡さなければならないのだが、日本人の私はこのサービスに価値を見いだせず、これまでチップを払ったことがなかった。しかし、プラネットハリウッドでは初めてチップを払った。なぜなら、ビシッとした格好の若い従業員が手を洗っている最中も、常に話しかけてきて、それがまた面白かったからだ。そう感じたのは私だけでなく、同行者の一人もニコニコしながらトイレから帰ってきて、同様な報告をしてくれたのである。もちろん、トイレもピカピカであった。

サンフランシスコのプラネットハリウッドでサービスの良さを実感した私達は、他の店ではどうなのだろうかと、サンディエゴとラスヴェガスの店舗も訪れてみたが、やはり同様な気持ちのいいサービスを体験した。たぶんこれは全国を通じて徹底されているのだろう。ということは、トレーニングやモチベーションがしっかりとした仕組みになっていると考えることができる。俳優のお遊びだろうと高をくくっていたのだが、その背後には運営のプロがいることを実感したのである。

この3店で、私はウエイトレスの女の子に同じ質問をした。「日本へはいつ、どこに出るのか」と尋ねたのである。すると、3店ともきちんと応えてくれた。もちろん知らない従業員もいたが、すぐに聞きに行って答えてくれたのだ。

その答えは3店とも同様で、「六本木に2カ月後に出店し、2号店はディズニーランド周辺に開く」というものであった。つまり、情報が全店にきちんと行き渡っているのだ。それだけではない。現在全米に26店舗あって、来年中に50店舗にするということまで、どの店の従業員も答えることができたのである。

正直に言ってしまえば、商品はたいしたことはない。スパゲティとピザ、それにメキシカンフードという、要するにアメリカ人が好きなものを集めたカジュアルダイニングだ。間違ってはいけないのは、同じような内装と商品を持ってくれば成功すると考えてしまうことだ。プラネットハリウッドは、サービスやクレンリネスを含めたトータルな雰囲気が支持されているのであり、それを支えているトレーニングやモチベーションアップの方法などに注目しなければならない。

<お客を楽しませるサービスが鍵>

プラネットハリウッドの対極にあったのが、スティーヴン・スピルバーグが企画したテーマレストラン、ダイヴ!である。ラスヴェガスの店舗しか見ることができなかったのだが、トイレは汚かったし、店にも活気はなかった。確かに潜水艦の中にいるという雰囲気はあるのだが、それだけなのだ。従業員がそれにふさわしいサービスをするわけではないし、楽しさというものが感じられなかった。ウエイティングバーにしてもダイブ!は少しも楽しくない。プラネットハリウッドで感じた、待っていることを苦にさせない楽しさがなく、退屈なだけなのだ。

プラネットハリウッドとダイヴ!を見てわかったのは、テーマレストランが一過性のもので終わるか、そのまま残るかは、内装と商品ではなくサービスによって決定されるのだろうということであった。

日本でもこれまでいくつかのテーマレストランがオープンしていたが、はっきり言って成功している店舗は少ない。とくに輸入コンセプトはことごとく失敗している。ステュードベイカーズやエドデベヴィクスがそうであったし、ジョニーロケッツもまたしかりである。これらの店は、ロックンロールのノリで以前からの友人であるかのように親しげなサービス、カジュアルな雰囲気こそが米国で人気を呼んでいるのだが、それがうまく表現できなかったので、一過性で終わってしまったと考えられる。

日本人には、エンタテイメント性のあるサービスが苦手なのだという部分は確かにあるだろう。しかし、東京ディズニーランド(TDL)はそれができている。よく言われているように、TDLでは、ゴミひとつ拾うのもパフォーマンスだというふうに指導されている。そして、誰に聞いてもTDLの細かい部分まできちんと答えてくれるし、常にお客に楽しんでもらおうと全員が考えている。その点で、プラネットハリウッドと共通する部分を見つけることができる。しかも、TDLはサービスの部分で本場を超えていると言われている。ということは、日本人にもエンタテイメント性のあるサービスは可能なのである。TDLのようなトレーニング体型、モチベーションの与え方を仕組みとして確立すれば、テーマレストランにふさわしいサービスは出来るのだ。

テーマレストランあるいはカジュアルレストランの成功の鍵は、楽しさをいかに演出できるかという点にある。そのためには、まず従業員が楽しんで働いているということが大切になってくる。日本のレストランで従業員が生き生きと働いているところは少ない。その典型が冒頭で触れた関西の店舗である。死んだような顔をしている従業員のいる店で、お客は楽しく食事ができるのか、その点でよく考えていただきたい。

これからもいくつかのテーマレストランがオープンするはずだ。たとえば10月10日にオープンした松竹シネマワールドにも、テーマレストランがオープンすると聞いている。現段階(9月末)ではまだ見ることは不可能なのだが、私が興味を持っているのは、そこでお客を楽しませるサービスをどこまで徹底できるかという点に尽きる。いつもはファーストフードやステーキチェーンなどを中心に視察しているわれわれが、今回、米国でテーマレストランを意識的に回ってきたのはそのためであったのだ。


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