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HACCPとは?第15回
「殺菌する その5 
加熱調理 ハンバーグなどのグリドル料理」


<殺す=殺菌=加熱殺菌>

さて、この特集の第一回目で食中毒の状況を見てみました。そのトレンドはどうなっているでしょうか?良くなっているのでしょうか、それとも悪化しているのでしょうか。

 
年度 事件数 患者数 死者
1995年 699 26,325 5
1996年 1,217 43,935 15
1997年 1,843 39,233 8
1998年 1,398 44,567 8
1999年 2,535 32,300 4

(注1 99年は1−11月の速報)

 
  93年 96年 97年 98年 99年
細菌別の発生件数          
サルモネラ 143 350  521 757 785
ブドウ球菌 61 44 51 85 64
ボツリヌス菌 2 1 2 1 3
腸炎ビブリオ 110 292 568 839 641
病原大腸菌 37 179 176    
腸管出血性大腸菌       16 7
その他の病原性大腸菌       269 221
ウエルシュ菌 9 27 23 39 20
セレウス菌 6 5 10 20 11
エルシニア・エンテロコリチカ     3 1 3
カンピロバクター 14 65 257 553 464
ナグビブリオ 1 3 3 1 3
その他の細菌 1 3 16 39 17
小型球形ウイルス       123 77
その他のウイルス         - -
           

(注2)

以上のように95年以来一貫して食中毒事件は増加しているのです。

サルモネラ、腸炎ビブリオ、カンピロパクター、病原性大腸菌、小型球形ウイルスの増加が目立っています。

さらに、今年になって大きな食中毒事故が発生し、大きな話題を呼んでいます。3月1日付けの朝日新聞の朝刊にでていたのでご存じと思いますが、2月下旬に横浜の老舗ハンバーグレストランチェーンで腸管出血性大腸菌o-157による食中毒で5名が罹患、3店舗が営業停止処分となりました。この企業は農林省管轄の外食企業団体の会長職を務める優良企業であり、30年来ハンバーグレストランチェーンとして営業を続けていました。それがなぜ食中毒を出したのでしょうか。その原因を考えてみましょう。

原因は保健所や同社の発表によると米国から輸入した牛肉のハンバーグステーキパティが菌に汚染されていたとのことです。と言うことはハンバーグレストランチェーンの責任でなくて、食材を供給した会社の責任なのでしょうか?いえ、このハンバーグレストランチェーンの責任なのです。

では、問題点を見てみましょう。このハンバーグレストランでは拳骨ハンバーグと言って人間の拳骨大の大きな固まりの牛挽肉を、調理場のチャーブロイラー(炭焼きグリドル)で表面に焼き焦げをつけた状態で、熱々に加熱した鉄板に乗せ、客のテーブルに持ってきます。テーブルには大きな紙を置き、その上に熱々の鉄板を乗せます。そして、ウエイトレスが、熱々の皿の上の拳骨ハンバーグをナイフとフォークで真っ二つに切り分けます。肉の中は真っ赤な状態です。その肉の切れ目(赤身の方)を鉄板に向け、熱々の鉄板の余熱で焼き上げるのです。お店では新鮮な肉ですから生でも安心ですと言っています。そしてその上からハンバーグソースをかけます。

そうすると熱々の鉄板からジューという煙と音が立ちこめ、シズル感あふれるプレゼンテーションとなります。客は自分の好みの焼き加減で食べるのです。

さて、その際に客の使うフォークとナイフは真っ赤な肉を切り分けるために使われていますが、そのナイフとフォークは加熱されません。もし、細菌の汚染があれば大変危険なわけですね。

同じようなやり方をして大繁盛なのが、この横浜のハンバーグチェーンと同様の調理方法で大人気の浜松を地盤とするSというチェーンです。このチェーンは少しは食中毒の心配をしているのでしょう。メニューには当店で使用している牛肉はHACCPで管理されている食肉加工会社から購入しているから安心ですと明記していました。

これらの企業は新しい衛生対策であるHACCPを全く理解していないようです。そうです、今回の事件は人災とでも言えるほど企業の責任が重いのではないでしょうか。

日本では今回の事件の原因となった腸管出血性大腸菌o-157による食中毒で2回も大きな教訓を得ているはずなのです。埼玉県の白鷺幼稚園、堺市の学校給食事件です。

この結果判明したのは従来はそんなに危険ではないとされた病原性大腸菌の中でも腸管出血性大腸菌o-157は大変危険な菌だということです。従来の食中毒菌は多少食品に存在しても、ある一定量まで増加しなければ大丈夫でした。ところがこの腸管出血性大腸菌o-157は少量の菌であっても食中毒を引き起こすことがわかりました。しかも、死亡率が高かったり、治療が大変難しいと言うことも判明しました。そのため厚生省はこの菌を食中毒菌からより危険な指定伝染病に分類しました。そのくらい危険な菌ですから、食材にほんの少しでも混入し、それをきちんと加熱処理しないと今回のような食中毒を引き起こすのです。つまり30年も事故がないと言って安心していると食中毒菌の新種に対抗できないのです。常に勉強や改善を怠ってはいけないようです。

従来は牛100%のハンバーグステーキの場合、多少生でも大丈夫と言われていました。その他の食肉、豚や羊や鳥はよく火を通さないといけないのになぜ牛は大丈夫と言われていたかというと、牛肉には寄生虫がいないので安全であるという意味でした。従来の食中毒菌ですとサルモネラやブドウ球菌などくらいですから多少混入していても問題はなかったわけです。しかし、この腸管出血性大腸菌o-157は牛の大腸菌に一般的に生息しており、屠殺の際に内臓の処理が悪いと肉を汚染してしまいます。その汚染率は年々上昇しているともいわれており、米国ではハンバーガーチェーンなどでの食中毒事故の大きな原因となっています。

昔の米国人は確かにハンバーガーなど生焼きで食べるのを好んでいたのですが、最近はよく焼いてくれと言って焦げるまで焼いて食べるようになりました。日本人の方が血の滴るようなハンバーグステーキを食べるようになっているのです。こんな無知で無防備な、状態では食中毒はさけられなかったのです。

さて、ハンバーグを出す場合の注意点を見てみましょう

食品を安全に食べるのに必要な中心温度は従来は60度C以上であると言われていましたが、厚生省は堺市の事件以来、大規模給食では75度Cを1分間保ちなさいと指導しています。米国でも大手ハンバーガーチェーンの食中毒事件以来、温度基準を変更し以下のようにしました。

その中心温度の状態で15秒間を保つという物です。

では牛の固まりのローストビーフの場合はそんな温度では焼けすぎで商品価値が無くなりますね。それに汚染されているのは肉の表面だけのはずですから、基準を

 
中心温度 62.8度Cで 3分間
  60.0度Cで 12分間
  54.4度Cで 121分間

加熱すれば良いと決めています。                       

さて、いずれにせよ挽肉を使うハンバーグステーキの場合、中心温度が68度C以上でないといけないわけです。つまりハンバーグを切ったときに肉の色がピンクではだめなのですよ。ではどんな注意が必要か見てみましょう。

1)性能の良いグリドルを使いましょう

ハンバーグステーキを焼くのにフライパンを使用している場合が多いのですが内部の温度を規定の68度C以上に安定して焼くためにはより高度なグリドルが必要です。

<1>鉄板の温度を一定に保つサーモスタット付きのグリドルを使おう  

ハンバーグを焼くのに適したグリドルの温度は165−180度Cです。余り温度が高いと表面は焦げるのですが中に火が入りません。また、何時も同じに焼けるようにサーモスタットが付いていて温度を設定できるようになっている物を使いましょう。勿論、温度計の精度は時々確認するのはフライヤーの時と同じです。

<2>グリドルの特性を確認しよう

サーモスタットが付いているからと言って安心してはいけません。サーモスタットは針のようなセンサーをグリドルに埋め込んだり下部につけていますから、その部分に肉がくれば温度を関知して、火を点火させます。サーモスタットの無い場所に肉をおいても鉄板の温度が下がったことを関知せず、火がつきませんから、鉄板の温度が下がり肉の中心温度が規定の温度にならない場合がありますからグリドルの特性をよく把握しましょう。。 また、冷凍のハンバーグパティを焼く場合には冷凍ハンバーグパティの熱量に耐えるような火力の強いグリドルを使いましょう。

<3>温度の回復とタイマー

いくら性能の良いグリドルをを使っていても焼く時間がいい加減ではだめです。一定の温度で一定の時間で焼くといういわゆるTT管理(タイム時間、テンパラチャー温度)が必要です。また、同じ場所で連ぞっくして焼いていると温度が下がってきますから、温度の回復を待つか、焼く場所のローテーションが必要です。

グリドルの温度の回復を確認するには鉄板にハンバーガーパティをおいて、ひっくり返すときにグリドルの表面の温度を計測し、その温度の低下具合を見ます。余り温度が低下するようであれば、鉄板が薄すぎる、サーモスタットの感度が悪い、火力が弱すぎるなどの問題があります。そして焼き終わってから設定の温度に回復するまでどの位の時間がかかるかを計測しておきます。そうすれば何時も最適の状態で焼くことができるはずです。

<4>内部温度を時々確認しよう

そして時々ハンバーグパティの中心温度を正確なデジタル温度計で計測するという注意深さが必要です。温度計は正確なデジタル温度計を購入し(価格は5万円ほど、油用の細長いセンサー、グリドル表面を計測する表面温度センサーを使います)ましょう。

2)グリドルの清掃

ハンバーグパティを焼くと肉の滓や肉汁がグリドルの表面に付着し、カーボンがたまります。カーボンが残っていると断熱材になってハンバーグに熱が十分に伝わりません。一回ごとによく研いだスクレーパーでグリドル表面のカーボンを取り去りましょう。余り使っていないときにはグリドル表面に残っていた油分がカーボン化しますので、ダスター(できればグリドル用の粗い布地)に水を少々付けグリドルの表面の油分を取り去ります。 閉店後は残ったカーボンを落とすために研磨剤で研磨したり、特殊なグリドルクリーナーでカーボンを科学的に洗い流しましょう。清掃した後は錆が出るので油を薄く塗布しておきます。

3)良い食材を使用しましょう

焼き上がったハンバーグパティの中心温度を68度C以上にするには良いグリドルを使うだけではだめです。火通りの良い原材料を使う必要があります。最近は健康志向から、脂肪分の少ないハンバーグパティを使う傾向がありますが、脂肪分の少ないハンバーグパティは温度むらが多いので注意が必要です。脂肪分は18−22%位ないと内部の温度むらを生じます。また、混ぜ物をするハンバーグパティの場合も十分に温度を確認しないと火通りが悪い場合があります。脂肪分や混ぜ物が均一になるようによく混合するべきでしょう。

いずれにせよ、一日何回か焼き上がったハンバーグパティの中心温度を正確なデジタル温度計で計測して、食材のむらに対応するようにしてください。

また、信用のおける肉屋や食品メーカーの製品を使用し、温度管理のしっかりした冷蔵庫、冷凍庫に保管しましょう。当たり前のことですが賞味期限をきっちり管理してください。

以上


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