header Food104 Food104 FSPRO-ML 会社案内 コンサルタント実績 王の経歴 過去の仕事 著作一覧

オータパブリケーションズ

週刊ホテレス2000年6月9日号

特集『決め手はトップの姿勢』


衛生教育は必然

衛生管理と言うと、毎年梅雨時に迎える年中行事と思われマンネリに陥っている方が多いようだ。そこにつけ込んでいるのが、食中毒菌の技術革新(新型の食中毒菌の発生)なのだ。ではその現状を見てみよう。

1)食中毒の現状

表1 過去の食中毒発生状況(厚生省生活衛生局食品保健課発表データ)

年度  事件数 患者数 死者数
1983年 1,095 37,023 13
1984年 1,047 33,084 21
1985年 1,177 44,102 12
1986年 889 35,556 7
1987年 840 25,368 5
1988年 724 41,439 8
1989年 927 36,479 10
1990年 926 37,561 5
1991年 782 39,745 6
1992年 557 29,790 6
1993年 550 25,702 10
1994年 830 35,735 2
1995年 699 26,325 5
1996年 1,217 43,935 15
1997年 1,843 39,233 8
1988年 1,398 44,567 8
1999年 2,697 35,214 7

DATAは厚生省のホームページより 表1 を見てみると、食中毒自体はここ10年ほど減少していたが、96年を境に増加に転じたのがご理解いただけるだろう。

2)常識を破る新型食中毒

表2 細菌別の発生件数

細菌名 93年 96年 97年 98年 99年
サルモネラ 143 350 521 757 785
ブドウ球菌 61 44 51 85 64
ボツリヌス菌 2 1 2 1 3
腸炎ビブリオ 110 292 568 839 641
病原大腸菌     37 179 176
腸管出血性大腸菌       16 7
その他の病原性大腸菌       269 221
ウエルシュ菌 9 27 23 39 20
セレウス菌 6 5 10 20 11
エルシニア・エンテロコリチカ     3 1 3
カンピロバクター 14 65 257 553 464
ナグビブリオ 1 3 3 1 3
その他の細菌 1 3 16 39 17
小型球形ウイルス       123 77
その他のウイルス       - -

(注2) 1998年より分類中、大腸菌の分類が腸管出血性大腸菌とその他の病原性大腸菌に分かれた。 1998年より分類に生ガキなどで発生する小型球形ウイルスが記載された。1999年は1月から11までの速報 DATAは厚生省のホームページより         

表2を見ると従来は食中毒とは食中毒菌に起因する物を言ったが,最近はウイルス性の食中毒も仲間入りしたのがわかる。冬の間は生牡蠣は安全な食べ物の筈だったが、最近は小型球形ウイルスに汚染された牡蠣による食中毒が増加している。2000年の1,2月は例年に無く食中毒が多く発生し、特に腸管出血性大腸菌o-157と小型球形ウイルスによる食中毒の発生が目立ってきている。

表3 食中毒事件・患者・死者数,原因施設別 は施設別の食中毒発生状況だ。ホテル旅館の食中毒は全体の10−15%の発生状況だ。2000年の最新情報を見てみると1月から4月までで、ホテル旅館の食中毒の発生件数は14件、504名だ。そのうち7件が小型球形ウイルスによる食中毒で227名が罹患している。 

3)新型の食中毒菌は過去の安全神話を覆している。

2000年2月下旬に横浜のハンバーグレストランチェーンが腸管出血性大腸菌o-157による食中毒で5名が罹患、3店舗が営業停止処分となった。30年経営している老舗優良企業だが、米国から輸入した牛肉のハンバーグステーキパティが菌に汚染されていた。このレストランでは人間の拳骨大の大きな固まりの牛挽肉を、調理場のチャーブロイラー(炭焼きグリドル)で表面に焼き焦げをつけ、熱々に加熱した鉄板に乗せ、客のテーブルに持ってくる。ウエイトレスは、皿の上の拳骨ハンバーグをナイフとフォークで真っ二つに切り分ける。肉の中は真っ赤な状態だ。その肉の切れ目(赤身の方)を鉄板に向け、熱々の鉄板の余熱で焼き上げる。ハンバーグの肉は最後までピンク色が残っている。腸管出血性大腸菌o-157が死滅しない温度帯だ。

病原性大腸菌の中でも腸管出血性大腸菌o-157は大変危険な菌だ。従来の食中毒菌は多少食品に存在しても、ある一定量まで増加しなければ大丈夫だった。ところがこの腸管出血性大腸菌o-157は少量の菌であっても食中毒を引き起こすことがわかった。しかも、死亡率が高かったり、治療が大変難しいと言うことも判明し、厚生省はこの菌を食中毒菌からより危険な指定伝染病に分類した。そのくらい危険な菌だから、食材にほんの少しでも混入し、それをきちんと加熱処理しないと食中毒を引き起こす。つまり30年も事故がないと言って安心していると食中毒菌の新種に対抗できない。常に勉強や改善を怠ってはいけないと言う教訓だ。

日本では腸管出血性大腸菌o-157による大規模な食中毒を埼玉県の白鷺幼稚園、堺市の学校給食と2回も引き起こしながら具体的な対策に手をこまぬいている現状だ。この菌は牛の大腸に存在する菌で、米国の牛の40%以上が保菌していると言われている。日本でも牛舎や屠殺場近辺のハエが保菌している状態のデーターが公表されている。それによると調査したハエの7%が保菌していた事(平均値)が判明している。と言うことは日本においても牛の保菌率がかなり高いことが予測される。

<厚生省ホームページ参考 http://www.mhw.go.jp/houdou/1003/h0331-1.html >

<平成10年3月31日ハエ類の腸管出血性大腸菌保有状況に関する全国調査結果>

また、最近はサルモネラ菌による食中毒菌が増加している。従来は卵の殻の外にサルモネラ菌が存在していたが最近は卵内部にサルモネラ汚染が見られ、卵は冷蔵庫に保管しないとならなくなっている。場合によっては生食用の卵と加熱用の卵を分ける必要が出てきた。

このように小型球形ウイルスや腸管出血性大腸菌o-157と言う新型菌の他に続々と新しい食中毒菌の発生の傾向が見られるのが最近の特長だ。

4)ホテル旅館の問題点

ホテル、旅館の宿泊施設は施設が立派であるにも関わらず毎年食中毒を発生している。食中毒を発生するのは他の外食産業も同様であるが、ホテル旅館などの宿泊施設は独特の問題点を抱えている。ホテル旅館の衛生上の問題点とその対策を考えてみよう。

(1) 繁閑の差が大きい

ホテル旅館は立地によっても差があるが、客数の少ない日と多い日では5倍以上の差がある。宿泊客だけでなく、季節要因と婚礼、宴会などが重なるとその差はもっと多い。それだけの繁閑の差があると、従業員や設備をどの売上げを基準に立てればよいかと言う問題が生じる。

人については人材の派遣を受ければ何とかなるが、食事については加工食材を多用しても、最終的に盛りつけして顧客に提供するのはホテル旅館で行わなくてはいけない。大きな宴会に対応するためには事前に盛りつけをして保管しておくようになる。これが大きな食中毒を引き起こす原因となっている。

大手の都市ホテルチェーンであっても食中毒を引き起こした例は過去多くある。その原因を見ると宴会料理である。料理を盛りつけして冷蔵庫に保管すればよいのだが、冷蔵庫が不足して室温に放置して食中毒を引き起こす例が多い。

(2) 食に携わる部門が多い

外食レストランは調理部門とサービス部門に分かれているが、基本的に同じフロアーで顔をつきあわせて仕事をしているのでコミニュケーションを密にとることが可能だ。しかし、ホテル旅館は複数の部門間が別のフロアーに存在するのが現状だ。

食に関連する部署だけで以上の部門があるはずだ。それぞれの部門が独立しているので責任が明確になり経費管理がきめ細かくなると言うメリットがあるが、食品衛生に関する限り、コミュニケーションが不足する恐れがある。上記の全ての部門が食品衛生に重要な関わりを持っていると言う認識が薄いのが大きな事故を引き起こす原因だ。では各部門が衛生管理にどのような影響を持っているか考えてみよう。

<ケーススタディ>

予約部門は調理場の能力、人、調理設備などを知らずに能力以上の宴会の予約を受けてしまった。料理の打ち合わせでも食中毒の傾向を知ず、危険な生牡蠣などをメニューに入れてしまった。

調理部門は過去の知識で生牡蠣でもこの時期は安全だろうとメニューに加えてしまった。今年の予算でウオークイン冷蔵庫の増設を依頼したが、予算がおりずまだ完成していない。しかし、まだ寒い時期であり大丈夫だろうと思って準備に入った。

サービスも人員不足で宴会料理を時間に間に合わせるために早めに、料理を宴会場のそばに室温の状態で放置した。調理をしているわけではないと手を洗浄殺菌しないでお皿や食器にふれていた。 

ステュワードも大量の宴会料理の皿を洗浄する為に洗浄機の能力を高める必要があり、リンス後の熱い食器にすぐに手をふれられないと言って、リンス温度を規定の82度Cより低い60度Cで洗浄した。この部門の課題は食器の破損であり、食器自体の衛生状態を一回もチェックしたことがなかった。

仕入れ部門は大量の宴会に対応するために普段は取引がないが、安値を提示した業者から生牡蠣を仕入れてしまった。普段から予算管理室にFoodコストの高いのは仕入れ部門の責任だと言われ、品質よりも安価な食材を求めがちになっていた。

保守メインテナンスは調理場のエアコンや冷蔵庫のメインテナンス契約を変更し、自分たちで保守点検、清掃、メインテナンスを行うようになったが、効率を上げるためにその頻度を少なくしていた。そのため、寒い時期なのに調理場の室温が30度Cを越えるような状況であった。

予算管理室は調理場から上がっていた宴会用のウオークイン冷蔵庫の設置工事を経費コントロールの都合上延期にしていた。まだ寒い時期で夏場までに実施すればよいだろうと安易に考えていた。その他の修理予算などもなるべく削減するか、延期するように心がけていた。

マネージメントは売上げの低迷から各部門に優先順位をつけず、一律に予算管理を厳しくするように指示をしていた。また、各部門から申請のあった支出予算の中身を検討することも無く、前年の実績を元に割り振りをするだけであった。

上記は極端なケーススタディの用に思われるが、食中毒が発生した後で調査を行うと上記のような細かいミスが積み重なっている事がわかる。では、食中毒を防ぐためにはどのような衛生管理に取り組むべきであろうか。

<マネージメント>

過去の衛生管理は調理部門が管理する部門管理であったが、現在は会社全体が取り組むべき品質管理の一貫であることを認識して、ISO9000などの品質管理の導入時には必ず衛生管理のあり方も見直さなくてはいけない。そして、各部門が衛生管理にどのように取り組むかをチェックし、評価につなげる仕組みを確立しなくてはいけない。マネージメント部門が真剣に衛生管理に取り組んでいることが全社員にわかるようにする。

調理部門を職人集団として放任している場合に食中毒を引き起こしやすい。調理部門も他部門と同様にきちんとした評価制度、教育制度を導入し、近代的な部門に変身させなくてはいけない。

<予算管理部門>

各部門から上がってきた予算を一律に削減するのではなく、その中身を詳細に検討できるだけの現場の知識と、現場の確認を怠らないようにしなくてはならない。

<予約部門>

調理部門やサービス、施設の能力を普段から把握し、無理のない予約を取れるように、調理場、サービス部門との連絡を密にとる。

<保守メインテナンス>

単にメインテナンス費用の削減だけでなく、定期的なプリベンティブメインテナンスや清掃による、機械の寿命の延長や水道光熱費、修理代の削減を数値化し、総合的な対費用効果をマネージメントに提出しなくてはいけない。 

<ステュワード>

単に食器類の管理や外観の維持だけでなく、衛生状態が最も大事であるという認識を持ち、洗浄機のメインテナンスや洗浄後の食器の菌数管理も行わなくてはいけない。

<サービス>

サービス部門に対しても調理部門と同じ食品衛生の教育を実施する。

<仕入れ>

食材の仕入れの際には産地、食材加工工場、流通経路、管理状態等、総合的に検討し、決して値段だけで仕入先を決定してはならない。

<調理>

衛生管理は調理能力の一部であるという認識を持ち、常に新しい情報を入手し、部下の教育に当たらなくてはいけない。

5)新しい衛生管理HACCP

ではどうやって具体的に食中毒を防ぐのか考えてみよう。

つけない、増やさない、殺す + 温度、時間、等の具体的な数値管理

経験と勘の世界からより科学的な管理をしなくてはいけない。

そのための手法がHACCPと言う手法なのだが、どうも難しすぎると思われるようだ。そこでそのポイントわかりやすく見てみよう。

HACCPは品質管理の中心に衛生や安全という概念を据えてあるというのが従来と大きな違いだ。衛生的であることを考えて美味しい物を提供するという基本的な姿勢が必要になってきているのです。そして、調理という作業は食中毒という危険が伴うという前提で,その危険を効率良く避けるのです。そのためにはHAつまり危害、危険を分析し、それ的確に対応するのです。具体的には従来の衛生管理である、「つけない、増やさない、殺す」と言う概念に、「調理作業中の温度管理や時間、殺菌の方法を、数値で具体的に管理をしていこう」という物だ。

(1)つけない

<1>手洗いがつけない基本

<手洗い> 従来は先ず手に着いた汚れや菌を落とし、次に殺菌剤塩化ベンザルコニウムなどの逆性石鹸で手を殺菌する。効果はあるのだが使い方が面倒だという欠点がある。その欠点を補う洗浄と殺菌を同時に行え、手荒れがし難いこと等の条件を満たした、化粧品などに使われるイルガサンDP300と言う薬品を使う優れた洗剤等の使用を検討すると良い。 また、手洗いの頻度も見直し、汚れた物に触った時にはもちろんのこと、30分に一回は洗浄殺菌するようにする。

<手拭き>

殺菌した手を手ぬぐいや前掛けで拭いては台無しだ。かえって細菌を付着させる。手拭きは厨房であれば使い捨てのペーパータオルを使用し、客席やトイレでは温風乾燥機を使用する。

<衛生手袋>

宴会料理、サラダや刺身など火を通さない食品や,お弁当等の喫食まで時間がかかる料理に手で直接触れるのは危険だ。必ず使い捨ての衛生手袋を使用する。

<2>食品の交差汚染を防ぐ

食肉のうち、牛はサルモネラ、病原性大腸菌、豚はサルモネラ、鳥はサルモネラ、カンピロバクター、などの食中毒菌を持っている。魚介類は、海水中に普通に存在する腸炎ビブリオに汚染され、人間は髪の毛,ふけ,傷口にブドウ球菌を持っている。野菜は,土中菌である、ボツリヌス、ウエルシュ、セレウスなどの菌に汚染されている。

交差汚染を防ぐにはそれらの食材別に下ごしらえ、保管庫、冷蔵庫を明確に分けるようにしなければならない。食材毎に作業場所を分けられない場合は、食材ごとに手,包丁,まな板,調理機器を洗浄殺菌してそれぞれの食材に固有の菌が他の食材に移らないようにする。

<3>信頼のおける仕入先

仕入れをする際には値段だけで決定するのではなく、衛生管理がしっかりしていることを確認し、配送業者の食品の取り扱いまで丁寧な業者を選定する。仕入れ担当部は食材加工所だけでなく産地まで行き、全体の材料の管理状態を総合的に判断しなくてはいけない。

<4>受け取りの確認と正しい保管

どんなに良い食材メーカーや問屋であっても資材を受け取る際には正しいチェックが必要となる。品物の破損や損傷のチェックだけでなく、冷凍品はマイナス18ー22度C,冷蔵はプラス1ー5度Cと言う温度で搬入されていなくては行けない。勿論、搬送中に扉の開け閉めで温度が上昇するので、それぞれ受け入れ可能な温度を細菌管理と品質維持の両方の観点から決めておき、搬入の際には検品を行い温度を記録しておく。

さて、常温保管の穀物や缶詰であるからと言って,炎天下のプレハブ倉庫の30度C以上もあるような場所においては、味が劣化したり、場合によっては腐敗する場合がないとも限らない。常温というのは少なくても20度C前後だ。なお,倉庫内の場合、ネズミやゴキブリが進入しやすい場合があるので、定期的な殺虫殺鼠を行う。

(2)増やさない。

細菌が繁殖する温度は5度Cから60度Cの間だ。この温度帯に食品を4時間以上おかないと言うのがHACCPの基本原則だ。

生ものは冷凍庫、または、冷蔵庫にしまう。材料の下拵えは手早く行い、下拵えの終わった生食材は,また、冷蔵庫などにしまう。

調理後の食材は60度C以上で2時間以内の保管が可能。冷却して翌日使用する場合には2時間以内に5度C以下に下げる。そして翌日再加熱して使う場合には75度Cまできちんと再加熱する。

<1>冷蔵庫冷凍庫の温度管理をしっかり行う。

冷蔵庫の温度は1―5度C、冷凍庫はマイナス18度C―マイナス22度Cの温度帯だ。

温度計はついているか? 温度計は正しく作動するか?

定期的に正確なデジタル温度計で冷蔵冷凍庫の温度計が正しく作動するか確認をする。

<2>庫内に余裕があり冷気が循環するか

保管中の食品の中心温度が冷凍や冷蔵の温度帯になっていなければ細菌の繁殖を防ぐことはできない。最近の冷蔵冷凍庫は庫内を冷風が循環して食品を冷却するようになっているので、庫内スペースの50%くらいの余裕を持って食材を保管するようにする。

<3>冷蔵冷凍庫の環境と手入れ

蔵庫は風通しが良く、室温が高過ぎない場所に設置する。コンデンサーを冷却する空気の温度が高ければ十分に冷媒を冷却できないので,庫内の冷却を十分に行えない。冷蔵冷凍庫の能力の基本設計は30度C以下がほとんどなので,それ以上高い場合には冷却が不充分な場合が出る。庫内が冷えないだけでなく、オーバーヒートしてコンプレッサーが止まったり、焼ききれたりする危険がある。営業中だけでなく,夜間に排気ダクトやエアコンの作動を止めた際に室温が上がり過ぎないかどうかもチェックする。

コンデンサーに油分やごみが詰まると、風通しが悪くなり冷却能力が落ちる。フィルターがついている場合は定期的にフィルターを清掃するか、コンデンサーを直接洗浄して汚れを落とす。厨房内に設置してある場合には油汚れが付着し,その油に埃がついてつまり易いので清掃の頻度を多くする。 冷凍庫の庫内温度は非常に低いので、冷風を発生するエバポレーターに霜が付着しやすい。付着した霜が厚くなり氷のようになると熱の伝達が不充分になり、冷風の風量も減り、冷却能力が落ちる。エバポレーターでの温度交換が十分出ないと,フレオンガスが液体のままコンプレッサーに戻り,コンプレッサーを破損する。

自動的に霜取りをするタイマー形式の場合には開け閉めをしない夜間や暇な時間帯に設定する。霜取り装置停電で設定時間が狂ったり、壊れることもあるので定期的にエバポレーターの状態を目で確認する。

<4>保温管理

調理後の保温は60度C以上で2時間までが安全な保温時間だ。中途半端な温度で保管しないで60度C以上か、冷却して5度C以下で保管するようにする。保温する温度は食材の中心温度のことであり、時々温度計で計測して確認し、記録に残す。

<5>調理後冷却してから冷蔵保管

調理済みのシチュウやソースなどを翌日に使うので、大量に造り、すぐに冷蔵庫に保管し、翌日食中毒を発生させる例を多く見る。シチュウなどはぐらぐら煮て完全に殺菌し直ちに冷蔵庫に保管しているのに食中毒が発生する場合が多い。

カレーやシチュー、煮物で使う野菜には泥がついており、セレウス菌やウエルシュ菌という芽胞菌が存在し、ジャガイモや人参、米,食肉類,などに泥と一緒に混入する。100度Cに加熱しても芽胞という固い鎧に包まれており死せず、温度が下がり60度C以下5度C以上になると芽を出して、積極的に繁殖を始める。そして、翌日のお昼頃には食中毒を起こすのに十分な量に増殖してしまう。

これを防ぐには調理温度を82度Cまで十分に加熱し、味がしみこんだ状態から、寸胴をシンクなどに冷水を張り,その中に寸胴をつけ攪拌しながら流水で急速に温度を10度C以下まで冷却し、それから冷蔵庫に入れる。夏場などはアラ熱をとった寸胴をさらに氷を入れたシンクで十分冷却をする。つまり、クックチルのシステムを食品衛生の観点から導入するべきなのだ。

翌日再加熱をして提供する場合には寸胴を攪拌しながら全体の温度が75度Cになるまできちんと再加熱をし、冷蔵庫の中で繁殖した菌を死滅し安全に食べれるようにする。

(3)殺す

<1>加熱調理

堺市の学校給食を原因とした大規模な食中毒事故を契機に厚生省は「集団給食施設等においては、衛生管理体制を確立し、これらの重要管理事項について、点検・記録を行うとともに、必要な改善措置を講じる必要がある。また、これを遵守するため、更なる衛生知識の普及啓発に努める必要がある。なお、本マニュアルは同一メニューを1回300食以上又は1日750食以上を提供する調理施設に適用する。」と定めた。

特に調理温度を

「加熱調理食品の加熱温度管理  

加熱調理食品は、別添2に従い、中心部温度計を用いるなどにより、中心部が75度Cで1分間以上又はこれと同等以上まで加熱されていることを確認するとともに、温度と時間の記録を行うこと。」としている。

食品を加熱調理する目的は、肉などの蛋白質を凝固させ食べやすくするわけだが、蛋白質の凝固点は肉の種類や魚により異なるし、野菜のセルロースを柔らかくする温度は肉よりも高いというように、食材により適正な加熱温度が異なる。一律に75度Cまで加熱調理する事は安全だが、食材により美味しくなくなると言う、安全と美味しさの矛盾を生じる。

そこで米国のレストラン協会はより現実的な調理温度を定めている。最低限、それと同等の温度管理は必要だろう。

その中心温度の状態で15秒間を保つ。

ローストビーフの場合は
中心温度 62.8度Cで 3分間
  60.0度Cで 12分間
  54.4度Cで 121分間  

加熱すれば良いと決めている。                       

<2>メインテナンス担当者は調理機器を定期的に調整する

(a)温度を一定に保つサーモスタット付きの調理機器  

サーモスタットの温度計の設定が正しいと言って安心してはいけない。機械は使っているうちに狂いがでるので、毎日、正確なデジタル温度計でサーモスタットの設定温度と実際の温度が合っているか確認をする。

(b)温度の安定性

温度を自動調整するサーモスタットの温度関知センサーの位置、感度により温度のばらつきがあるし、応答性が悪い場合は一定の時間がたっても食材の温度が上がらず、食中毒の危険がある。各調理機器の特性を理解し使うように教育する。

(c)調理機器能力と食材量のバランス

いくら性能の良い調理機器を購入しても、調理能力以上の食材を投入したら温度が下がりすぎて、一定の時間内に規定の温度まで上がらないと言う事を認識しておく。

(d)温度の回復力

生食用と冷凍食用では調理機器に要求される火力が異なる。元々の火力が弱い生食用の調理機器で大量調理を連続したり、冷凍食品を調理すると温度が下がる。売り上げや食材に適した調理機器を使いようにする。

調理機器の性能を左右するのは温度の安定性の他に温度の温度回復力が大事だ。これは調理機器の火力の大きさと、熱交換機の効率、手入れにより左右される。調理機器は電気でもガスでも長く使っていくうちに熱交換機にカーボンが付着し、熱を伝達しなくなる。定期的にそのカーボンを洗い落とす等の手入れが必要だ。

<3>水質の安全性と野菜の殺菌

普通の水道水は浄水場でろ過殺菌をされているから安全だが、それでも年に1回の水質検査が必要になる。安全なはずの水道水でも、屋上の高架水槽や受水槽に水を貯めてから配水する場合は、タンクにひび割れが入っていたり、動物が侵入したり、点検口が開いていたりすると食中毒菌が混入する。

基本的に井戸水は使用しないほうが安全だ。どうしても井戸水を使用しなければならない場合には、殺菌剤を一定量混入できる装置を使用し、毎日、殺菌剤の混入状況をチェックするという注意を怠ってはいけない。井戸水の水源を確認し、水源の経路の汚染を引き起こす施設ができていないかどうか常に確認をする。

野菜には土壌中の嫌気性の食中毒菌が付着したり、魚や生肉を触った手や包丁でそのまま触る事による食中毒事故が多い。保健所では大規模の給食施設において野菜の水洗いをする場合には、殺菌剤を使用することを推奨している。殺菌剤は、次亜塩素酸ナトリウム溶液を使用するが、正しい濃度で使用することが重要だ。一般的に100PPMから200PPMという濃度だ。またこの濃度で殺菌した野菜はそのあと、清潔な流水で殺菌剤を洗い流すことも忘れてはいけない。

<4>殺菌剤

包丁、まな板、調理機器、テーブルなどの機器類は食缶洗浄機などで(鍋釜等の調理機器の専用の自動洗浄機、鍋釜に合わせて内部の高さが高い)洗浄し、高温でリンスすることにより殺菌ができるが、そのような自動洗浄機が無い場合には温度をかけて殺菌することができない。中性洗剤などで汚れを洗い流し、その後に次亜塩素酸ナトリウム溶液を使用して殺菌をする。市販されている次亜塩素酸ナトリウム溶液は濃度が5〜6%のものが多いが、それを水で希釈し、塩素濃度が100-200PPMになるようにして使用する。濃度が6%のものは、300倍の水で希釈して200PPM、600倍の水で希釈して100PPMとなる。試用する際には濃度をキチンと守らなくてはいけない。あまり高い濃度の希釈倍率にすると手荒れなどを引き起こすので規定の濃度を守って使用する。使用する際には容器についている使用説明書をよく読むこと。

次亜塩素酸ナトリウム溶液は水で希釈してバケツやシンクなどに貯めておくことがあるが、希釈してから2時間以上経過すると効力が低下する。また、次亜塩素酸ナトリウム溶液は購入後時間が経過したり、高温で保管したり、容器のふたを開けっ放しにすると殺菌効果が低下するので、取り扱いには注意をしなくてはいけない。

 調理台や冷蔵庫の棚、など浸漬できないものは、規定の倍率で希釈した殺菌溶液に浸したタオルやダスターなどでふきあげる。

6)レシピーは味だけでなく衛生管理を加味する

表1−10,図1−2,を参照されたい。

(1)食中毒の危険性を分析し、メニューアイテム別のフローチャート(レシピー)を作成する。

それぞれのメニューのフローチャートにはすべての原材料と調理加工工程を記入しなければならない。

次に、調理現場の調理能力、つまり規模、トレーニング能力、従業員の熟練度などを考慮し、選んだメニューを安全に提供できるか判断する。

フローチャート(レシピー)においては原材料の受け取り、保管、準備、調理、保温保管、冷却、再加熱などの工程を明確にする。今までのレシピーは味を美味しくするという観点で作っていたが、HACCPの場合は味だけでなく温度と時間を明確に示すのが従来のレシピーと大きく違う点だ。

(2)重要点管理項目を明確にする。

重要点管理項目とはフローチャート(レシピー)の調理加工工程の中で、食中毒などの危険を防いだり、リスクを減少させたり、除去できるポイントのことを意味する。

ハンバーグの調理温度であれば中心温度が15秒間以上68度C以上に保てば、仮に有害な腸管出血性大腸菌o-157が混入していても安全になる。主に調理温度と時間を意味する。

(3)基準を明確にたてる。

基準はフローチャートに於けるそれぞれのポイントで定める。その基準とは研究データー、食材を扱う上での経験、法的な規制(食品衛生法など)、原材料供給業者の取扱説明などを元にして決める。

基準は調理現場で使用する、原材料、調理機器、従業員に適している、現実的な物でなくては行けない。

(4)決定した重要点管理項目を監視する。

決めたフローチャート(レシピー)を従業員がその通り守っているか、を観察したり質問をしたりして、決めたとおりに仕事をしているかチェックする。

衛生管理には温度と賞味期限が重要だが、その確認も具体的に行う。冷蔵庫などに保管されている食材の温度は基準以内か、ラベルが貼ってあり食材賞味期限を守れるか、先入れ先出しのローテーションを守っているかをチェックする。

(5)改善行動を起す。

基準や規格が守られていない時に、改善行動を起こさなければいけない。忙しいからしょうがない、従業員がなれていないからしょうがないと温度が不十分なまま料理を出しては食中毒をおこしてしまう。確認して問題があれば調理し直すなどの具体的な行動が必要になる。

そしてその改善行動をだれでもわかるように具体的にしておく。フローチャートに起こさなければいけない改善行動を「調理中に食材の中心温度がもし規定の温度68度Cまで上がっていなければ、食材の中心温度が規定の68度Cに15秒間維持されるまで調理を継続する」、などと明確に書いておく。

(6)記録を残す。

調理時間、食材の調理後温度を毎日明確に記録する。記録内容は、明確で、わかりやすく、最新のものでなくてはいけない。事故を起こしたとき何が原因なのかを明確にし、問題を再発させないようにするためにも記録することが重要だ。

(7)一度決定したHACCPシステムの再評価

現場で行われているHACCPシステムを再評する。食材供給業者、顧客層、メニューアイテム、調理機器、設備などが変更になったときには必ずHACCPシステムの見直しを行う。また、厚生省は保健所やインターネットを通じて定期的に食中毒情報を発表している。特に今年は通常は食中毒の発生しにくい1−2月に腸管出血性大腸菌o-157の食中毒が日本各地で発生しているし、生牡蠣から小型球形ウイルスによる食中毒が全国で発生している。それらの情報を迅速に入手しレシピーを改善する。

<厚生省ホームページ参考 http://www.mhw.go.jp/houdou/1003/h0331-1.html >

平成10年3月31日

ハエ類の腸管出血性大腸菌保有状況に関する全国調査結果について

1.概要

国立感染症研究所では、地方衛生研究所や大学等の研究者の協力を得て、ハエ類の腸管出血性大腸菌(O157等)保有状況について調査を実施し、その結果が次のとおり取りまとめられた。

(1)研究者代表

国立感染症研究所昆虫医科学部長 安居院宣昭

(2)調査時期

平成9年5月〜11月

(3)調査方法

全国15道府県において、ハエ類の発生源となりうる牛舎、豚舎、養鶏場、と畜場、堆肥置き場、ごみ置き場、公園等延べ217地点において、1地点当たり20個体を目安にハエ類を採集し、O157等の保菌の有無等を調査した。

(4)調査結果

全国各地において、以下のとおり、O157等を保有するハエ類が確認された。 なお、ハエ類によるO157等の感染・伝播の可能性については、引き続き検討が必要である。

      ・O157等保有バエ確認地点数 延べ217地点中、15地点( 6.9%)

      <確認地点の内訳> 
        牛 舎
        と畜場
                  延べ140地点中、11地点( 7.9%)
                  延べ 19地点中、 4地点(21.0%)


      ・O157等保有バエ確認個体数 5,128個体中、26個体( 0.5%)

      ・O157等保有バエを確認した各地点における採集ハエ数に対しての保有バエ数の割合
      平均:7.2%(最低2.5%?最高20.0%)

Home Index
           
会社案内
コンサルタント
王の経歴
著作
セミナー
通信教育
           
王利彰への、ご意見ご要望はこちらへご連絡下さい。
その他ご質問・お問い合わせはこちらからお願いします。
Copyright(C) Sayko Corporation. All Right Reserved.