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日経レストラン2000年5月号
「飲食店のための衛生管理」


衛生管理というと飲食店を開店する際に保健所の営業許可をもらうための対策だとか、そのために衛生管理者の講習会を受ける物だと思っている方が多いようですね。簡単に言うと衛生管理というのは飲食店の経営には+にはならないと思っているのです。実際にある大手の居酒屋チェーンでも営業許可用に手洗いシンクを取り付け、営業許可を受けるとじゃまだからと言って取り去ってしまう例もありました。

特に古い飲食店経営者や調理人に多いのは美味しい店は汚い、きれいな店ははやらないと言う誤解を持っているようです。。また、当店は何十年の歴史を誇る店で今まで一回も食中毒を出したことはないから、問題ないと、現状の見直しを行わない方も多いのが現状です。本当にそれで大丈夫なのでしょうか?

1)衛生的な店造りで大繁盛の実例

<ケーススタディ その1ニューヨークのダニエル>

ニューヨークに1、2位を争うダニエルというフレンチのトップレストランがあります。2年ほど前にシカゴのNRAレストランショーに参加の後、訪問しました。今時ニューヨークなどはフレンチは時代遅れだと思っていたのですが、友人が是非行きなさいと力説するので訪問してみました。ちょうど夕食時で満席の状態でした。食事を楽しんで、美味しかったので、オーナーシェフのダニエルに会えないかと頼んだら、さっと客席に来て、料理の説明をしてくれました。余り親切だったので、ついでに厨房を今見せてくれないかと頼んでみた。ちょうどピーク時であり、断られるのは承知で頼んでみたのでした。ところがダニエルは躊躇せず、「どうぞ」と言って厨房に案内してくれました。夕食時のピーク時にも関わらず、驚いたことに厨房はぴかぴか、床にゴミ一つ落ちていませんでした。従業員も真っ白なユニフォームに身を包み、突然の乱入者の我々をにこやかに迎え入れてくれました。その後ダニエルは新店舗に移動しましたが、その素晴らしい厨房は厨房専門誌のカラーグラビアを飾ったのは言うまでもありませんでした。そのダニエルは毎年、遠い日本の私までダイレクトメールを送付してくれます。そのきれいな厨房とサービスに感激した筆者は今年の5月のNRNの後、訪問しようと予定を組んでいるくらいです。

米国も日本と同じく衛生に対する消費者の目は厳しくて、高級店であっても消費者がキッチンを見たいと言ったら断らず積極的に見学をさせるというのがトレンドのようです。何時キッチンを見に来るかわからないと言う緊張感が帰って素晴らしい料理を維持する秘訣のようですね。

<ケーススタディ その2 イタリアンのスパーゴ>

米国西海岸の超有名シェフのウオルフギャング・パック氏が経営しているイタリアンのスパーゴはロス名物です。ロスから近いギャンブルの町ラスベガスにフォーラムショッピングモールという、東京臨海副都心のビーナスフォーとがデッドコピーした有名なショッピングセンター内にお店を構えています。このショッピングモールはローマの古代遺跡をテーマにした物で、このスパーゴもコロシアム(円形球技場)をテーマにして、大型の円形のレストランです。料理の特徴はハースグリルという炭焼き料理です。アメリカの炭はどんな炭かと思ってウエイターに聞きました。しばらくするとウエイター蓋をかぶせた料理の皿を恭しく持ってきました。目の前でさっと蓋を開けるとそこには料理で使う炭が乗っていました。それだけではなく、我々を調理場まで連れて行き、調理長を呼んできて調理の方法を見せたり、キッチンを隅々まで見学させてくれました。よほどクレンリネスに自信がないと駄目でしょうね。それ以来このチェーンの(ピザとパスタのウオルフギャング・パックと言うカジュアルな店をロス空港、シカゴオヘア空港、サンフランシスコの百貨店内に展開しています)お店を必ず訪問するようになりました。ファン造りには最高の手法です。

<ケーススタディ その3 お総菜のイーチーズの成功の要因>

ダラスの天才イタリア人シェフのフィルロマーノ氏はイーチーズと言う超繁盛のお総菜屋を作り上げました。フィルロマーノ氏は外食の天才と言われ、グルメハンバーガーチェーンであるファドラカーズやマカロニグリルなどの数多くの繁盛チェーンを創業しています。

フィルロマーノは世界中のお総菜売り場を回り、従来の総菜売り場の欠点とその改善策を見いだしました。効率を重んじる食品スーパーの総菜売り場はきちんとした売り場ですが、客を興奮させないと言うことでした。しかもその場所で調理をしていないのではないか?セントラルキッチンで造り冷凍で運んでいるのではないか?アルバイトが調理をしているのではないか?という不信感を感じさせると言うことだったのです。

そこで客に興奮させる店造りとして、オープンキッチンでプロの調理人が調理するようにしました。

店の入り口を入ると左右に大型のベーカリーオーブンと、ホテルの調理場にあるような本格的なキッチンが広がっています。つまり、客は大型のホテルの厨房に迷い込んだような印象を受ける訳です。

入り口の大型キッチンにはホテルで使っているのと同様の大型のスチームケトルでソースやスープをすべて手作りで作っていますし、ボストンマーケットで大人気のローティサリ-チキンも生の鳥の段階から処理をしています。

圧巻がホットデリコーナーです。ここでは大型の薪釜と薪のローティサリーオーブンが赤々と燃えています。中央のショーケースにはステーキやローストなどの生の肉を置いてあり、このコーナーでお好みのステーキに焼き上げてもらえます。チキンの好きな客は一羽毎でも、1/2でも好きなだけカットしてくれ、マッシュポテトや温野菜を付け合わせてくれるのです。オープンキッチンだし、仕込みも全て客の目にさらされていますから、衛生的なことは言うまでもありませんし、客も安全性を確認しながら更にプロの調理の手さばきを楽しめるのです。

イーチーズはダラス、ヒューストン、アトランタ、などに3店舗開店し、1店舗8ー10億円と言う巨額な売り上げを誇って世界中の注目を浴びてます。

<ケーススタディ その4 キッチンツアーで子供時代から洗脳するマクドナルド>

米国では高級店だけでなく、ファーストフード店でもキッチンツアーを積極的に行っています。先日もサンフランシスコの郊外のプレイランドのあるお店で食事をしていたら、地元のボーイスカウトの人たちが子供に対する教育の一環でマクドナルドを訪問し、キッチンツアーをしていました。キッチンに入る前にまず手洗いの方法を説明するところからきちんと行っていました。子供の頃からこんな教育をするのですから、衛生管理については大きな信頼感が生まれることでしょうね。

<ケーススタディ その5 日本一のニューヨークグリル>

日本でも最近は衛生的なお店が大人気です。もう5年ほど経つのですが、新宿のパークハイアットホテルの最上階のレストランニューヨークグリルは今でも予約待ちの大繁盛店の一つです。ホテルの最上階のお店を訪問し、受付を済ませ、客席に案内する際にまず、厨房を見せるのです。ガラスで囲まれた大型厨房と夜景の見える窓の間の通路を通し、調理をしている光景を客に全て見せるのです。厨房の真ん中には真っ赤に燃えたローティサリーオーブンが鳥の丸焼きを焼いており、隣の煉瓦の釜では赤々と燃えた火でピザやパンを焼いています。その臨場感あふれた厨房を観て客席に着く頃にはお腹がぺこぺこになるという仕掛けです。そして好きな人は厨房の端のカウンターに座って調理を観ながら食べることもできるのです。厨房が丸見えですから、天井から床、ユニフォームもぴかぴかになっているのは言うまでもありません。ごまかしようがないわけです。

この臨場感あふれた店造りのせいか、いまだに東京で最も予約の難しい人気レストランの地位を占めていますし、あのアメリカのzagat紙の評価でもトップ評価をもらいました。

<ケーススタディ その6 キハチ、ツーランドット、ミクニ>

勿論、純日本のレストランも元気いっぱいです。東京のフレンチの超有名店ミクニでは客を厨房のど真ん中を通して客席に案内させます。厨房の中では真っ白なユニフォームに身を包んだオーナーシェフの三国さんが陣頭指揮を執っているのを見て客は安心して食事を楽しめるのです。

東京の中華料理に新風を巻き起こした、脇屋シェフのツーランドット(赤坂店)もそうです。普通中華料理は厨房を見せられないほど汚いのが通り相場ですが、この店は外部通路に面してお総菜や弁当のお店を開いています。厨房は共同で使用しているのですが、その総菜店の横にはガラス張りの厨房があり、通行人は脇屋シェフの調理を楽しむことができるのです。これも調理や衛生管理に自信がないとできないでしょうね。

フレンチの巨匠、熊谷キハチシェフも無国籍料理のキハチや、キハチチャイナを多店舗展開していますが、そのコンセプトもすべてオープンキッチンです。

プロのシェフは料理の腕だけでなく衛生的な店造りでも一流なのです。それがお客に伝わるので安心して食べに通ってくれるのでしょう。

2)衛生管理に失敗した例

<ケーススタディ1 知識不足 >

3月1日付けの朝日新聞の朝刊にでていたのでご存じと思いますが、2月下旬に横浜の老舗ハンバーグレストランチェーンで腸管出血性大腸菌o-157による食中毒で5名が罹患、3店舗が営業停止処分となりました。この企業は農林省管轄の外食企業団体の会長職を務める優良企業であり、30年来ハンバーグレストランチェーンとして営業を続けていました。それがなぜ食中毒を出したのでしょうか。その原因を考えてみましょう。

原因は保健所や同社の発表によると米国から輸入した牛肉のハンバーグステーキパティが菌に汚染されていたとのことです。

このハンバーグレストランでは拳骨ハンバーグと言って人間の拳骨大の大きな固まりの牛挽肉を、調理場のチャーブロイラー(炭焼きグリドル)で表面に焼き焦げをつけた状態で、熱々に加熱した鉄板に乗せ、客のテーブルに持ってきます。テーブルには大きな紙を置き、その上に熱々の鉄板を乗せます。そして、ウエイトレスが、熱々の皿の上の拳骨ハンバーグをナイフとフォークで真っ二つに切り分けます。肉の中は真っ赤な状態です。その肉の切れ目(赤身の方)を鉄板に向け、熱々の鉄板の余熱で焼き上げるのです。

さて、その際に客の使うフォークとナイフは真っ赤な肉を切り分けるために使われていますが、そのナイフとフォークは加熱されません。もし、細菌の汚染があれば大変危険なわけですね。また、肉も客の好みで焼き上げるわけで、十分な加熱をしないで食べる危険があったわけです。米国の基準ではハンバーグステーキは内部温度68度C以上15秒間加熱するとなっています。この基準で言えば内部の肉がピンクや赤では駄目なわけで、この店舗の焼き加減は全く不十分だったのです。

従来の食中毒の常識は食中毒菌が多少食品に存在しても、ある一定量まで増加しなければ大丈夫だと言う物でした。ところがこの腸管出血性大腸菌o-157は少量の菌であっても食中毒を引き起こすことがわかりました。しかも、死亡率が高かったり、治療が大変難しいと言うことも判明しました。そのため厚生省はこの菌を食中毒菌からより危険な指定伝染病に分類しました。そのくらい危険な菌ですから、食材にほんの少しでも混入し、それをきちんと加熱処理しないと今回のような食中毒を引き起こすのです。つまり30年も事故がないと言って安心していると食中毒菌の新種に対抗できないのです。常に勉強や改善を怠ってはいけないのです。

<ケーススタディ2 仕入れは安かろう悪かろうで儲ける>

生業店でチェーン企業に対抗できる数少ない業態が回転寿司で、鮮度の高い海産物を安価に提供することで大繁盛が可能なのです。その中でも急成長の**港は中央線沿線の一号店の大盛況の元に、2号店を横浜に開き飛ぶ鳥を落とす勢いでした。ところが北海道のN物産の引き起こした大腸菌o157に汚染されたイクラを提供し、店舗から食中毒患者を出してしまいました。この事件で、急速なチェーン展開をもくろんでいた同店は大きな打撃を受け、驀進的な勢いはなくなってしまいました。

仕入れ値の安さに目がくらんで品質管理のおろそかな製品を使ったと言う安易な仕入れ政策が大失敗の元です。

<ケーススタディ3 テレビ番組の愛の貧乏救出大作戦>

月曜日のテレビ番組でみのもんたが司会をする愛の貧乏救出大作戦と言うテレビ番組があります。不振の飲食店を助けるという番組ですが、でてくる不振の飲食店の共通の問題は店が汚い、乱雑、ユニフォームが汚い、身だしなみがひどい(ひげ面、髪の毛がぼさぼさ)などです。そして、店をきれいにしてメニューを特徴のある物にして売上げを挽回するという物ですが、これを見ても経営不振店の共通項目は汚い、と言うことがわかりますね。

3)食中毒の現状

お店が汚いと言うことは売上げが伸びないと言うことだけではありません。場合によっては食中毒をおこして、経営が成り立たなくなるかもしれません。

でも、長年同じやり方でやっていて今まで問題ないのだから、これからも大丈夫なんだと言う声を聞きますが、本当に大丈夫でしょうか?従来のインフレ経済が、デフレ経済になり、料理の値段を下げなくてはいけない時代が来ているのと同じく、衛生管理の世界でも大きな変化を迎えているのです。

食中毒菌も新型の菌が続々と誕生して、思いがけない新たな事故が発生しています。その一つが、堺市の病原性大腸菌O157による食中毒事件です。しかし、O157だけでなく、実はその他の食中毒菌による事故が増加しています。

その数字をみてみましょう

表1 過去の食中毒発生状況(厚生省生活衛生局食品保健課発表データ)

年度  事件数 患者数 死者数
1983年 1,095 37,023 13
1984年 1,047 33,084 21
1985年 1,177 44,102 12
1986年 889 35,556 7
1987年 840 25,368 5
1988年 724 41,439 8
1989年 927 36,479 10
1990年 926 37,561 5
1991年 782 39,745 6
1992年 557 29,790 6
1993年 550 25,702 10
1994年 830 35,735 2
1995年 699 26,325 5
1996年 1,217 43,935 15
1997年 1,843 39,233 8
1988年 1,398 44,567 8
1999年 2,535 32,300 4

(注1 99年は1月−11月の速報)

細菌別の発生件数

細菌名 93年 96年 97年 98年 99年
サルモネラ 143 350 521 757 785
ブドウ球菌 61 44 51 85 64
ボツリヌス菌 2 1 2 1 3
腸炎ビブリオ 110 292 568 839 641
病原大腸菌     37 179 176
腸管出血性大腸菌       16 7
その他の病原性大腸菌       269 221
ウエルシュ菌 9 27 23 39 20
セレウス菌 6 5 10 20 11
エルシニア・エンテロコリチカ     3 1 3
カンピロバクター 14 65 257 553 464
ナグビブリオ 1 3 3 1 3
その他の細菌 1 3 16 39 17
小型球形ウイルス       123 77
その他のウイルス       - -

(注2) 1998年より分類中、大腸菌の分類が腸管出血性大腸菌とその他の病原性大腸菌に分かれた。 1998年より分類に生ガキなどで発生する小型球形ウイルスが記載された。1999年は1月から11までの速報 DATAは厚生省のホームページより 

食中毒自体はここ10年ほど減少していましたが、96年を境に増加に転じました。食中毒の原因菌のトップは、相変わらず海産物を原因とする腸炎ビブリオ菌ですが、93年はサルモネラ菌がトップになり、それ以来増加をつづけているのが注目されます。

サルモネラは鶏卵や鶏肉に多くみられ、卵を生で食べる習慣のある日本で、食中毒事故が増加しています。以前は卵の殻にサルモネラ菌がついていましたが、サルモネラエンテリテュディスは鳥の卵巣に存在し、卵内部を汚染するようになりました。そのため、従来は常温流通や常温保管でも問題はありませんでしたが、今後は冷蔵流通、冷蔵保管が必要になってきます。

食鳥を汚染している菌としてサルモネラ菌の他にカンピロバクターがあり、それによる食中毒も急増しています。

また、従来は食中毒は食中毒菌に起因する物を言いましたが、最近はウイルス性の食中毒も仲間入りしました。冬の間は生牡蠣は安全な食べ物の筈でしたが、最近は小球形ウイルスに汚染された牡蠣による食中毒が増加しています。これも従来の常識を打ち破る物ではないでしょうか。

4)衛生的な店を実現する従業員教育

衛生的できれいな店を実現する最大の秘訣は従業員教育です。教育というといやがる従業員に教えなくては行けないから大変だと思われる方が多いようですが、実は従業員は衛生的な店を望んでいるのです。特にアルバイトやパートタイマーの方が働き初めて最初の驚きは衛生面でひどいと言うことのようです。

彼らは実は衛生的な教育とその実践を望んでいるのです。教育というと難しいようですが、簡単です。保健所で実施している衛生管理者教育を受講し、その教科書と、以下に掲げるクレンリネスのチェックリストを使い、皆さんの従業員とお店の問題は何かを考えてみましょう。アルバイトや従業員の方は素晴らしいアイディアと解決策を持っているはずです。一番わかりやすいクレンリネス、衛生管理から教育を始めましょう。

<ケーススタディ1 読者からの相談:事故予備軍>

ある読者の方から以下の相談を受けたことがあります。この方はパートタイマーで飲食店に働きだしたのですが、あまりの衛生管理のひどさに驚いて相談をしてきました。

「調理長に衛生管理のことを少し話題にすると、「そんなことみんな全然やってないよ。友人の店なんか、夜、仕込みしてたら30センチほどもあるねずみが目の前を猛スピードで走ったりよくあることだ」と平気でそのようなことを言います。

手洗いの設備はなく、適当にあいてるシンクで、市販のハンドソープで洗い、タオルは1枚ハンガーにかけているものでみんなが拭く。アルコールは買い置きがあるもののスプレーに入っていないので使えない。調理場用の靴ははいているが、一旦更衣室でその靴にはきかえたら、どこにいくにしてもはきかえない。もちろんトイレもその靴でいく。

オムライスのソース味見は、指を突っ込んで口に入れる。ポテトサラダの味見もボールに入ったポテトサラダを直接指でつまみ食べる。この飲食店はランチのみの営業なのですが、昨日魚やさんで焼いてもらったさばの塩焼きを朝受け取りにいき、8:30に入店するが、その塩焼きは厨房の調理台の隅っこにラップがかけられた状態でランチまで放置。

その後、ランチの皿に直接手でつかんでのせられ、お客に出される。私は夕方4:00にはあがるのでその後の最終の片付けは経験していないが、水拭きだけのようなことを言っていた。「殺菌する」ということが全く見受けられないのです。」

<ケーススタディ2 生徒からの報告 キッチンは見えないから何をしても良い>

筆者は立教大学社会学部と女子栄養大学で非常勤講師をしていますが、生徒には外食現場のレポートを提出されています。年間300通ほどのレポートになるのですが、その中で一番驚くのは、衛生管理を無視した飲食店が多いと言うことです。これは企業の大小、チェーン企業のあるなしに関わらない問題で、どうも従業員の意識や企業の教育の問題のようです。以下にいくつかエピソードを紹介しましょう。

あるハンバーガーチェーンである時大騒ぎになりました。フライヤーの油にゴキブリが落ちて唐揚げになってしまったのです。それを見ていた店長はあわてず騒がず、ゴキブリを拾い上げ「油は高温だから大丈夫だよ」と言って調理を継続したのです。その話は学校中で有名になったのは言うまでもありません。

あるドーナツチェーンでは調理後、床に落ちたドーナツを客に見えないからと言ってそのまま出していたそうです。アルバイト1人だけが知っているからと思ったのでしょう。でも、そのアルバイトは10人にそのエピソードを話し、あっという間に数千人の人に口コミで尾鰭がついて広がるのです。

また居酒屋の例ですが食器を洗う際に強力な洗剤を使用しているのにすすぎが雑だし、果物の皮は洗わず、落としてスプーンも平気で客に出したりすると言っていました。

この様にアルバイトの飲食店の衛生管理に対する目は大変厳しい物があります。反対にアルバイトが安心して食べられるようなお店にすれば逆に口コミで売上げが上がるのです。では次にどのように教育をしていくか考えてみましょう。

<クレンリネス、衛生管理、チェックリストの使い方>

店舗の清掃箇所は大きく分けると、お客様に目が触れる箇所と、従業員が目に触れる箇所、どちらからも見えない機械の内部などと3カ所に分かれます。まず、お客様から見える部分を清潔にすると言うのが売上げにつながるポイントです。お店にいると感覚が麻痺して汚れを感じなくなります。このチェックリストでは客が店に入ってからクレンリネスを判断するポイントを上げてみました。従業員と一緒にこのチェックリストに基づいてお店のクレンリネスを再確認するトレーニング教材として使用してください。

また、見た目のクレンリネスだけでなく、必要な衛生上の管理や、調理機器の調整のポイントも簡単にふれてみましょう

1)お客様の目が容易に行き届く箇所の清掃

お客様になったつもりで見ていきます。店舗前を通りかかってから(当然、カンバン、店舗外観、ガラス窓、入り口暖簾、ショーケース、)店舗に入り通路、天井、ガラス窓、桟の上、客席から見える厨房や裏の倉庫、客席テーブル上、下のゴミ、灰皿、椅子の汚れ、メニューの汚れ、従業員の制服の汚れ、持っているダスターや清掃用具のよごれ、出された水のグラスの汚れ、料理の皿の汚れ、フォーク、ナイフの汚れ、曇り、トイレ、等の細かい点を特に神経質な女性の立場で毎日チェックするわけです。

2)お客様が気になる箇所の清掃

主として、厨房や倉庫の清掃です。細菌の食中毒の増加からお客様は見えない部分がどうなっているか気にしています。単に綺麗にするだけではなく、洗浄殺菌などの衛生対策がもっと重要になってきています。特に食品が直接触れる調理機器や作業台は汚れたら直ちに清掃殺菌する。開店前と閉店後も洗浄殺菌をして、乾燥させる。

冷蔵冷凍庫などの内部や製氷器内部も温度が低いから放置するのではなく、定期的に(1ヶ月に1回)洗浄殺菌する、等です。

当然の事ながら身だしなみとしてユニフォームの定期的な交換や最低30分間に一回の手の洗浄殺菌は欠かしてはいけません。

3)衛生管理に必要な機械の清掃

エアコンや冷凍冷蔵庫の室外機、冷却機器のコンデンサー、その他機械の内部の定期的な清掃は機械の取扱説明書を元に後は定期的に汚れの度合いを見て決めます。いくら機械の外観がピカピカでも内部が綺麗でないと正しく作動せず、顧客の居心地を悪くしたり、機械が壊れ、最悪の場合食品が腐敗したり、食中毒の原因となるからです。

<クレンリネス、衛生管理、チェックリスト>

1)外部

□看 板
□外部看板の補修と照明交換
□外灯の清掃、交換、柱部分の錆止めペイント
□外部の錆のチェックとペイント
□近 隣
□駐車場
□駐車場線引き
□駐車場のガム取り
□外部金属部分の錆取り、曇り取り
□ペイント
□駐車場境界フェンスの補修
□舗道
□駐車場の線引き塗装
□どぶの清掃
□建物の外壁
□外部照明(汚れ、球切れ、暗さ)
□壁の清掃
□ドアの鍵の作動確認(防犯のため)
□屋根の埃清掃と雨樋の補修、ペイント
□のれん(汚れ、色あせ、破損)
□サンプルケース(汚れ、色あせ)
□ポスター
□犬走り
□窓のガラス、桟
□雑草の処理
□植栽の刈込み
□吸排気の外部出
口周辺
□グリース排気ダクトからのグリース
□ゴミ置き場の清掃と塗装

2)客席

□椅子、テーブル
□通路の汚れ、込み
□床
□窓と桟
□ドアの枠と取っ手
□ゴミ箱
□照明の明るさ、埃、ちらつき
□生花、造花、装飾品
□照 明
□内 装
□案内板など
□壁
□通気口
□天井、照明
□天井の汚れや壁紙の補修
□床壁の状態はよいか
□椅子に破れはないか
□椅子の木部などのウレタン塗装仕上げ

3)メニューブック

□汚れはないか
□破損はないか
□最新のメニューか
□販売中止のメニューが多すぎないか
□写真は色あせていないか
□写真と現物は同じか

4)トイレ

□床
□手洗器
□便 器
□鏡
□ハンドドライヤーまたはペーパー容器
□洗剤の補充(殺菌剤入りの洗剤か、説明はあるか?)
□トイレットペーパー、タウパーディスペンサーのチェツク
□においのチェツク
□ゴミ箱
□壁
□換気扇
□床タイル
□水漏れ
□化粧室の木製品のペイント
□壊れたタイルの交換(壁、天井)
□壁、天井の塗装

5)厨房と倉庫

□調理人は衛生責任者の資格を持っているか
□従業員に衛生講習会を定期的に行っているか
□3年に一回は衛生講習会を受講しているか(最新の情報入手)
□調理人のユニフォームはきれいか
□調理人は帽子をきちんとかぶっているか
□調理場に入る際に手をきちんと洗っているか
□調理場で飲み食いや煙草を吸っていないか
□味見はお猪口やスプーンで衛生的に行っているか
□床
□ゴミ箱
□ダスター
□モップとモップシンク
□整理状況
□ダンボール類の片付け
□掃 除
□排気フード、グリドル、フライヤ一、オーブン、冷蔵冷凍庫
□グリルと冷凍冷蔵エリアの資材舗充
□フライヤー全体の清掃
□冷凍庫冷蔵庫のコンデンサーフイルター清掃
□グリル全体の清掃
□オーブン全体の清掃
□調理機器の排気フード
□エアコン類のフイルター
□外気取り入れ口
□コンデンサーの汚れ
□排気ファン
□排気フード内部
□換気口
□照 明
□冷凍・冷蔵庫内外の清掃
□換気扇
□壁
□倉庫内部の棚、床、休憩室
□湯沸器
□調理機器の下部
□床排水管
□天井
□棚
□冷却ユニットのコンデンサー
□ビールディスペンサーシステム
□製氷器
□床
□外部業者による排気ダクト清掃
□排気ファンの清掃、補修、ファンベルトのチェック(外部業者により)
□調理機器、照明、配電盤、等が加熱していないか、漏電していないか
□製氷器の水漏れ
□冷却ユニットのエバポレーターとコンデンサーの作動状態
□グリドル、フライヤー、オーブン、等の定期点検

6)調理温度

□正確な温度計はあるか(デジタル温度計が望ましい)
□温度計の調整をしているか
□調理機器の定期的な温度チェックをしているか
□調理機器の定期的な温度回復時間のチェックをしているか
□冷凍庫、冷蔵庫の温度をチェックしているか

7)洗剤の選定

□必要な洗剤はそろっているか
□洗剤の使い方は知っているか
□洗剤のマニュアルは見えるところにあるか
□洗剤は食品とは別に管理しているか(誤飲などの恐れがないか)
□中性洗剤
□殺菌剤
□手洗い洗浄殺菌剤
□食器洗浄用洗剤
□アルコール消毒液
□グリドルクリーナー
□フライヤークリーナー
□床用クリーナー
□トイレ用洗剤

8)外部業者の選定

□殺虫、殺鼠
□グリーストラップの定期清掃
□ダクトの定期清掃
□エアコン関連の定期清掃
□レンタルユニフォームの使用
□食器洗浄機のメインテンスを定期的に行っているか
□ユニフォームは十分にあるか
□清掃業者はきちんと清掃を定期的におこなっているか

9)衛生面の注意と注意

□食材別に調理温度を定めているか
□牛肉(挽肉)の調理温度は 68度C以上15秒間加熱
□豚肉 の調理温度は 74度C以上15秒間加熱
□鶏肉 の調理温度は 74度C以上15秒間加熱
□魚  の調理温度は 74度C以上15秒間加熱
□再加熱温度 は74度C以上 15秒間加熱
□保温温度  は60度C以上 2時間まで
□危険温度帯とは 5度Cから60度C
□危険温度帯の保管可能期間 合計4時間

以上


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