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外食産業の技術革新


「外食産業の技術革新」

15年前、コーヒーショップチェーンのサンボスは全米で1100店以上のチェーン店舗を構える大チェーンであった。しかしあっと言う間に倒産してしまった。失敗の直接の理由は従業員のインセンティブを変更したために、店長がやる気を失い大量に退職したことである。本質はコーヒーショップや、ファミリーレストラン(以下FR)という形態は技術革新ができず、売上の規模の拡大と標準化を両立できない業種ではないかと思われる。現在最大手のデニーズはやはり、1000店舗を越えた時点で苦戦している。

図1のNATION'S RESURAURANT'S NEWS が発表した飲食チェーンのトップ10を見てみよう。10位の中にはコーヒーショップチェーンの名前はなく、ほとんどファーストフード(以下FF)である。25年前のランキングでは10位までにコーヒーショップは2社も入っていたが、現在ではその面影はない。

1000店舗を越えるチェーン店を運営するにはFFでなくてはならない。販売商品、販売方法、調理方法、経営方法などで常に技術革新を図っており、全世界に1万店以上のチェーンを作っても標準化を達成できるからである。まず米国FFチェーンを中心に調理面の技術革新を見てみよう。

  1. 米国におけるFFの分類とその技術革新

    1. ベーカリー部門から発生したチェーン

      ダンキンドーナツ:調理トレーニング方法の技術革新

      ドーナツのチェーンは、ドウの仕込から発酵、フライまで店舗で実施する。ドーナツはパンと同様に発酵をしなければならないので、ドーナツマンという専門職の養成が必要になってくる。まず粉を事前にプリミックスし、温度調節をした一定量の水を合わせれば自動的にドウができるようした。次にドーナツ大学というトレーニングセンターを作り、30日で養成できるようにした。

      ドーナツ大学というと、何か学問を教えるように思うが製造の実務が中心であり、ただひたすらにドーナツを作るのである。従来のパン職人の養成と異なるのは、原材料がもったいないからと言って店舗で作り方を教えるのと違い、トレーニング中の完成したドーナツは惜しげもなく捨ててしまう事である。これにより、普通3ー4年かかる発酵技術の難しいイースト菌のドーナツの製造を、1カ月で教えてしまうのである。卒業試験は8時間以内に2、000個のドーナツを完成しなければならない。どんなに良い形のドーナツを作っても、数が2、000個に満たないと卒業出来ない。この職人を短期間で養成するというシステムがドーナツの技術革新である。

    2. レストランから発生したチェーン

      KFC:圧力フライによる技術革新

      1950年代、K.F.Cの創始者であるカーネルサンダースがケンタッキー州カービンという町の州道沿いにモーテル、ガソリンスタンドを経営していた。立ち寄る旅行客のために、モーテルの横でサンダース.キャフェという食堂を開き、南部ではポピュラーなフライドチキンを提供した。しかし、州道の代わりにハイウエイが建設され、店舗前の通行量が減少し商売をやって行く事が出来なくなった。そこで、フライドチキンの調味料を売り出し、やがては調理方法や経営の方法の指導までするフランチャイズチェーンの経営に発展した。1号店のサンダース.キャフェは現在では博物館になっており、当時そのままの状態を再現してある。KFCは圧力釜を使用する調理方法特許を世界中で確立しており、FFの代表的な技術革新といえる。

      鳥を180℃の油温でフライしても、常圧では水は100℃ で沸騰するので、水分がある限りは品温を70℃ 以上にすることは難しい。肉温が70℃以上になっても、骨の内部の髄温は60℃位であり、骨から血の色をした髄液が流れ出して食欲を減少させる。肉の温度を上げようとすると、肉は水分を失い固くなってしまう。

      1.85気圧‾2.0気圧の圧力でフライすると、水の沸騰温度は116℃‾121℃ になり、肉の内部温度は90℃ に容易に達する。髄液の温度が80℃以上に上がり固まって、髄液が流れ出す事がなくなる。短時間で調理できるため、肉の旨味を含んだ水分を失う事がなく、柔らかなフライドチキンになる。

      更に、45日前後の若鳥を独自のカットする方式をとり、原材料の面からも品質を最高に高めることに成功した。味付けの面でもカーネルサンダースは独自のスパイスのレシピーをまるでコカコーラの様に秘密にし、誰にも真似が出来ないようにした。

      ドミノピザ:コンベアーオーブンによる技術革新

      米国ではピザはハンバーガーと同じくらいポピュラーな食べ物である。そのピザのマーケットを更に拡大したのが、宅配ピザである。米国での飲食業の成功のキーワードは、サービスが良い、速く待たせない、バリュー(量があり安い)がある、の3つである。この宅配ピザはその成功のすべての要因を満たしており、大成功した。成功の鍵はエアーインピンジメントオーブンである。

      コンベクションオーブンは焼く時間が速いが、焼けムラが発生するので、焼成時間の長いデッキオーブンを使用していたが時間がかかるという問題があった。普通のコンベクションオーブンの風速2‾4m/秒より強い6‾8m/秒の風速を上下から吹きかけることにより、食品の表面にできる熱境界層を吹き飛ばし、短時間に焼成ができるのがインピンジメントオーブンである。高速の熱風により、ピザの表面にスポットの焼けムラができるのを防ぐために、コンベアーでピザを動かしながら焼く事により、上下均等にすばやく焼ける。従来10分間かかったのを5分間に短縮できた。これが30分間以内の配達を可能にした技術革新である。

    3. 工場の流れ作業の発想から生まれたチェーン

      マクドナルド:レイアウトと調理機器の技術革新

      1995年にレイクロックがマクドナルド兄弟からマクドナルドの権利を買い取り、シカゴに1号店を開いた。現在は博物館として当時そのままの姿を保存してある。そのレイアウトを見ると現在のマクドナルド社の厨房と余り変わらないので驚く。それだけフォードの自動車工場のシステムにヒントを得て開発した厨房の設計は素晴らしかったのだ。

      ハンバーガーの調理システムと競合の戦略

      グリドルを販売のカウンターに平行にしグリドルの作業者がフード越しにお客様の様子を見れるようにしたことと、商品を保温庫に保管することによりサービス時間を短くすることを可能にした。

      後発のバーガーキング社は画期的な厨房を開発した。本格的なバーベキュウタイプの網をコンベアーにして循環させ、コンベアーの上のミートを上下から、赤外線ヒーターで焼くコンベアーブロイラー方式である。上下から同時に焼くことにより、ミートを途中でひっくり返すことがなく、どんどん連続に焼くことができるようになり、安定した品質と人件費の削減を実現した。

      従来のマクドナルド社の調理方法はバッチ調理方式(一括調理)であり、バーガーキング社の調理方法はコンティニューアス(連続的調理)調理方式といわれる。厨房のフローがスムーズになり、資材の供給と人の導線が重ならないようになっており、生産性の高さはマクドナルド社に比べ30%以上高いといわれている。

      保管方法でも技術革新が行われた。バーガーキング社は焼け上がったミートとバンズをすぐにドレスするのではなく、スチーマーという保温庫に10分間保管するようにした。そして、必要に応じてハンバーガーを組み立てて、完成したハンバーガーはお客様を待たせない程度にディスプレーウオーマーに10分間保管しておく。つまり、焼き上がったミートとバンズを20分間保管することを可能にした。これを、アッセンブルツーオーダーという。これにより、売上の波にも対応できるようになり、サービスのスピードを向上しながらも、廃棄処分の金額を少なくできた。

      マクドナルド社も対抗上、クラムシェルグルドルを考案し特許を取得した。2枚貝のような形状をしているので、クラムシェルグリドルと名付けられた。ミートを焼かないときは、上の鉄板の電源を切り、下部の鉄板で調理し、昼時にミートを調理するときに通電するようにした。つまり、一つのグリドルで、朝食メニューとミートサンドイッチを調理できるようにしたのである。 次にアッセンブルツーオーダー方式を採用することにした。最初は、朝食メニューの卵料理を特許を取得した加湿保温庫で保管をしていた。それによりサービングタイムを大幅に短縮し、かつ品質も向上したことに気がつき、ついにはミートやバンズも保管するようになったのである。この導入によりマクドナルド社の厨房は大幅な変化をとげ、それが新たなビジネスチャンスを生みだした。図2。

      7ー8年前より米国のFFチェーンは景気の悪化と競合店の数(自社の店舗の競合も含んで)のため売上の減少に悩みだした。従来の大型店舗では損益分岐点が高く利益がでないので、新店舗を出せない、そうするとチェーン全体の売上が延びないという悪循環に陥ったのである。

      その中で、ペプシコーラグループのタコベルがリエンジニアリング革命で大成功を納めた。店舗での調理を合理化し厨房を小型にすることにより、同じ大きさの建物で客席を倍増したのだ。さらに、店舗での調理を簡単にし(ゼロキッチンと呼ばれている)、学校給食や、スーパーマーケット、ガソリンスタンド、エアーポートなどの、従来出店することができなかった、人の集まる場所に出店することが可能になり、売上を急成長させたのだ。

      そのタコベルの成功でマクドナルドはアッセンブルツーオーダー方式を使えば、厨房を小型にできることに気がつき、タコベルと同様にあらゆる人の集まる場所に出店を開始し出したのである。それがキオスクタイプの小型店舗であり、本年度は世界中で多店舗展開すると言われている。

  2. 日本におけるFFの展開と技術革新

    KFCは1号店を名古屋の郊外に開き大失敗した。マクドナルドも銀座が1号店であるといわれているが、実は郊外の茅ヶ崎に開く予定で建物も完成させていた。しかしながら種々の事情により1号店は銀座になった。これがマクドナルドの将来を大きく左右したのだ。マクドナルドより1年ほど先に、米国の大手ハンバーガーチェーンのバーガーシェフが1号店を茅ヶ崎に開き大失敗し、日本から撤退し米国のチェーンも消滅してしまった。

    25年前の日本はまだ、自動車社会ではなく郊外型の生活様式にはなっていなかった。かえって、歩行者天国が開始され、都会に出てくるような状況であった。そのため、FFのチェーンは都心の繁華街に出店をする必要が出てきた。米国の店舗展開のノウハウは使えないし、郊外型に出来た大型の厨房を使う事はできない状況になった。

    KFCは従来の圧力鍋を使用する調理方法では小型店舗を作るのは難しく、日本独自で米国製小型自動圧力釜を使用するシステムを組み上げた。米国の1/3以下の大きさの厨房を作ることができ、1000店舗以上の多店舗展開に成功したのだ。KFCの他にも米国には多くのフライドチキンチェーンがありその殆どが来日しすぐに撤退していった。日本化という技術革新を達成できなかった事が大きな理由の一つである。

    マクドナルドも都心の小型店舗を作るためには米国流の大型調理機器を使用することができず、独自に小型の組立式フレキシブル厨房を開発せざるを得なかった。全ての調理機器を、米国より1mmでも小型にする工夫を積み重ねることにより1000店舗以上の展開を達成できたのだ。

    ダンキンドーナツ、デアリークイーン、ピザハット等は同時期に進出しながら、日本での技術革新を達成できず苦戦している。日本での肌理の細かい技術革新が必要であることを物語っているのではないだろうか。

  3. 日本の技術革新

    日本の外食で技術革新と思われる物をいくつか紹介しよう。

    まず、図2を見ていただきたい。技術革新の度合いを座標にしたものだ。縦軸が機械化の度合い、横軸がそれによるサービス時間の早さだ。ハンバーガーが右の一番上になり最も技術革新のレベルが高い。ガストとバーミヤンは同じ低価格路線であるが、機械化のレベルが異なり上下に分かれる。ガストが右側のFFの部門に入れないのはテーブルサービスでまだ時間がかかるからだ。

    日本の技術革新の中で

    • 最も有名なのはインピンジャーというコンベアーオーブンを使用して成功した、ガストだろう。ガストによりインピンジャーが採用され急成長したことは米国で逆に注目され、製造メーカーは米国第二の厨房機器メーカーに買収された。つい先日買収担当の技術副社長が、あるメーカーの全自動調理器の開発状況を見るために来日した。彼によると今後の自動化の機械の本命は人件費の削減という観点からコンベアー調理機器であり、米国でも自動化の調理機器の将来性はまだまだあるとのことだった。

    • てんやは、職人芸の世界であったてんぷらの作業を分析し、機械化することを考案した。それがコンベアータイプのフライヤーで品質を高めながら作業を自動化する方式である。

    • ミスタードーナツは過酷な深夜労働のドーナツマンの業務をドーナツを工場で作る冷凍ドーナツの開発で解決しようとしている。そのため、正確な湿度センサーと、タイマーを組み合わせた、簡易型のドウコンディショナーを開発した。

      更に中華点心等の飲茶の導入のために、冷凍食品を短時間で解凍加熱する機器を開発した。

    • 元禄寿司は現在は切れたが回転機能で特許をとり人件費削減、職人不要で大成功した。

    • ワタミフードサービスはインピンジャーによるお好み焼きの調理システムで特許をとっている。日本で特許を持っている数少ない外食産業である。

    • 森永LOVEはタッチパネルタイプのPOSを開発し、客に注文を入力させ人件費の削減とサービスのスピードアップを図っている。

  4. 開発中の技術と今後の方向

    現在、全自動のハンバーガー製造機器、全自動フライヤー、全自動自動ドリンクマシン、全自動コーヒーメーカー、超高速ピザオーブン、クックチル等が開発されている。

    今後の技術革新のポイントは人件費削減、スピード向上、小型化によるスペース削減、ロス削減によるコストダウン(原材料費、水道光熱費、人件費、)が中心になってくるだろう。

    バブルの時代は人件費の高騰から、全自動の調理機器の開発が優先され、全自動のロボット機器が注目された。しかし、外食産業は時間、曜日、季節による売上変動があり、ロボットでは対応しきれない。また、ロボットは人間と同一の場所で働くことは危険であり、外食での実用化が難しいと言うことも分かってきた。

    今後の方向は、コンベアーオーブンのような連続調理方式による作業の軽減化と、アルバイトでも調理が可能な機械が中心になるであろう。店舗ばかりでなくセントラルキッチンの合理化をするクックチルも考える必要だ。

    開発の基本は、人件費の削減、アルバイトでもできる調理の簡素化、調理時間とサービス時間の短縮、経費の削減などが可能なことだ。開発した技術の特許を確立し、KFCのように優位性を長く維持するべきであろう。

    大手企業は常に技術革新に遅れないように研究を継続しなければならない。それが結実しなくても、現実の調理技術の改善に役に立つ。限界の技術に挑戦することで日常の技術が向上する。米国NASAのアポロ計画は高性能の恒湿保温庫、クックチル(食品の保存方法)、HACCP(食品衛生対策)、食事の心理学等、飲食業に与えた影響は今だに大きなものがあるのだ。


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