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厨 KURIYA (大阪ガス広報誌)
2000年秋号


ハンバーガー調理技術の変遷

「マクドナルドのメード・フォー・ユー」

米国人にとってのハンバーガー、フレンチフライ、コーラは、日本人にとってのご飯、お新香、味噌汁、という国民食だ。この巨大な国民食を巡る大手チェーンの競争は熾烈であり、業界最大手のマクドナルド社も安閑とはしておれず、常に最新の調理技術を開発している。そのマクドナルド社が米国において急速に導入を実施し、日本でも導入の計画のある、「メード・フォー・ユー」誕生の背景を見てみよう。

1)ハンバーガーの歴史

ハンバーガーの語源はドイツのハンブルグという地名からきていると言われている。ドイツ料理に牛の生肉を細かくチョップして生のまま食べる、韓国料理のユッケと似たタルタルステーキと言う料理がある。このタルタルステーキを焼いたのがハンバーグである。このハンバーグが移民により米国へもたらされ、万国博覧会でそのハンバーグをパンにはさんでサンドイッチにしたのを売出し、ハンバーガーと名付けたというのが、ハンバーガー誕生の通説である。

第2次世界大戦前後、車社会となった米国では住宅が郊外へ展開するドーナツ化現象が起こり、郊外型のドライブインレストランが増加した。特に気候の温暖なカリフォルニアでは郊外型のドライブインが急速に発展を遂げた。

そのカリフォルニアのサンバルディーノで、ディックとマックという、マクドナルド兄弟が1950年にまったく新しいファーストフードレストランを考案した。今までのドライブインレストランと異なり、ウエイトレスや陶器の皿を使わない、セルフサービス方式のドライブインレストランである。そこでは、2種類のハンバーガーとフレンチフライ、シェイク、コーラという限定メニューを提供していた。シェイクを作るマルチミキサーのセールスマンをしていた、マクドナルド社創業者の故レイ・クロック氏がマクドナルド兄弟の店と出合い一目惚れし、兄弟からマクドナルドの権利を買い取り、シカゴのディスプレインというオヘア空港からすぐ近くの町に1号店を開いたのである。現在は博物館として当時そのままの姿を保存してある。(写真1)そのレイアウトを見ると現在のマクドナルド社の厨房と余り変わらないので驚く。それだけ、マクドナルド兄弟の考案した厨房の設計は素晴らしかったのである。マクドナルド兄弟は、テニスコートに原寸大のレイアウトを描き作業性を検討したといわれている。そのマクドナルド社の成功に続きバーガーシェフ、バーガーキング、ハーディーズ、ウエンディーズ、カールスジュニアー等のチェーン店が誕生した。

http://www.mcdonalds.com/

2)ハンバーガーの調理と提供方法

伝統的なハンバーガーは屋外で炭火を使った網焼きだが、炭火では火加減が難しいのでガスの炎を熱源にするチャーブロイラーが作られた。チャーブロイラーは肉の香りが出て大変美味しい焼き方だが、それでも熟練したコックが必要であった。そこでマクドナルドはサーモスタットで一定の温度に保たれるガス加熱のグリドルを開発し、アルバイトでも美味しいハンバーガーを焼けるようにした。(後に焼き上げる時間をタイマー管理し品質を向上させた)因みに米国ファーストフードで使用するグリドルやフライヤーは基本的にガスを使用する。ファーストフードの店舗では大量の冷凍食品調理に対応するために安価で高カロリーのエネルギーが必要であり、主に高精度のガス調理機器を使用している

マクドナルド兄弟が工夫を凝らしたのが、サービスのスピードを上げることだった。普通は注文を受けてから調理を開始するので、できあがるまでに客は5−6分間待たされる。コーヒーショップであれば客は座って飲み物を飲みながら待っているから問題ないが、マクドナルド兄弟は客席がない持ち帰り専門の店を作ろうと考えたので、注文をしたらすぐに商品を提供できるように考えた。

そこで、料理の種類をハンバーガーとチーズバーガーの2種類に絞り込み、ハンバーガーを売上げ予測に基づいて事前に調理後、包装しウオーマーに保管して置く。できあがって10分間経過したハンバーガーは廃棄処分することにより何時でも最高の品質のハンバーガーを提供できるようにした。カウンターマン(客の注文受けをする係で、当初は男子であった)は客の注文を受けたら、ウオーマーから包装されたハンバーガーを取り出し、注文後1分以内に提供できるようにした。これをストック・ツー・オーダー・システムという。このシステムによりテイクアウト中心の効率の高いハンバーガービジネスを成功させることが出来たわけだ。

3)自動調理器とアッセンブル・ツー・オーダー

マクドナルドと同時期にチェーン展開したバーガーキングは伝統的な炭火焼きにこだわり、難しい炭火焼きの味を、アルバイトでも出せるように自動化した。コンベアーに乗せたミートを上下からガスの直火で焼く。バンズもミートを焼くコンベアーの下部の鉄板に接触しながら自動的に焼き上がる。アルバイトがコンベアーベルトにミートとバンズを乗せるだけで、自動的に焼き上がったミートとバンズがでてくる。この自動化により商品の品質を大幅に向上する事に成功した。また、直火で焼くのでオリジナルの炭火焼き風の香ばしい味をだせるというメリットもある。さらにバーガーキングは提供方法の改善も行った。

マクドナルドのようにケチャップやマスタード、ピクルスなどをのせたバンズに焼いた肉を挟み包装してウオーマーに置くシステムは、客への提供時間を短縮することが可能であるが、保温しておくとケチャップや肉汁がバンズに染み込んでしまうという欠点がある。もちろん保管後10分経過したハンバーガーを廃棄処分にすることで品質の劣化を防ぐことは可能だが、商品のロスと言う無駄なコストを発生することになる。また、マスタードやピクルスが嫌いな人は別に注文しなければならず、その場合には待たされることになる。その欠点を改善するべくバーガーキングは、調理に時間がかかるミートとバンズを事前に焼きあげ、加湿保管庫に10分間保管し、客の注文後、ミート、バンズ、ケチャップ、マスタード、野菜を注文通りに組み立て包装し、包装後のハンバーガーを電子レンジで数秒加熱し熱々のハンバーガーを提供できるようにした。待たないで自分好みの熱々のハンバーガーを買えるこのシステムは大人気を呼び、バーガーキングは米国第2位のハンバーガーチェーンとしてマクドナルドを追撃し始めた。

バーガーキングの開発したコンベアーグリルによる調理システムは客の好みの味を待たせないで提供できるだけでなく、マクドナルドの厨房より30%程生産性が高いというメリットも生み出した。

http://www.burgerking.com/

4)マクドナルドのステージングシステム

マクドナルドはコンベアーグリルに対抗してクラムシェルグリル(サンドイッチグリル)と言う上下の鉄板で同時に肉を焼き上げる自動調理機器を開発し、従来よりも半分の時間で調理ができるようにした。

アッセンブル・ツー・オーダーのシステムではより高精度なコンピューター制御による加湿保管庫(ステージングキャビネット)を開発し、焼いたミートを20分間保温するシステムを作り上げ、ステージングシステムと呼んだ。マクドナルドのシステムは焼き上げたバンズを常温で保管し、保温したミートと組み合わせて電子レンジで加熱する物であった。

このステージングシステムは厨房の合理化と小型化に大きく貢献し、サテライト店舗と言う小型店舗の展開を可能にした。その結果、空港、ショッピングセンターのフードコート、ガソリンスタンドなどとの複合店、大学、病院、など従来開店できなかったロケーションに進出する事を可能にして店舗の急速展開を可能にした。   

さらにマクドナルドはグロウンアップテイストと言うキャッチフレーズで大人のハンバーガーを打ち出した。これはバーガーキングのワッパーやウエンディーズのハンバーガーに対抗するトマトと野菜の豊富なハンバーガーだ。同時にステージングシステムの効率を上げるために従来店舗でバンズの切り口をトーストしてた作業を変更し、ポテトバンズと言うトーストしなくても良いバンズに変更した。 

5)消費者の厳しい評価

米国の外食専門の雑誌社R&I紙 http://www.rimag.com/ は毎年消費者へのアンケート調査を行っている。2000年3月1日号のChoice in Chains Winnersと言う消費者調査では、調査会社のGreenwich社が全米の4000家庭に調査用紙を配布し、2819通の回答を元に作成している。(別表参考

ハンバーガー、チキン、ピザ、サンドイッチ、ドーナツクッキーコーヒー、のファーストフード部門での比較を見てみよう。最初の総合は総合評価、次に品質の良さ、種類の多さ、価値観、サービスの良さ、雰囲気の良さ、清潔さ、便利さ(近所にあるか、店数が多いか、全国展開か)、等の個別の評価を行っている。点数は多いほど評価が高いという事になる。

この評価では西海岸で急成長中のイン−N―アウト社がトップ座を獲得した。同社はハンバーガーの種類は3種類と少ないが、生のオニオンスライスなどを入れ、注文生産でハンバーガーを作ることで大人気を読んでいる。店舗は赤と白の清潔な作りで初期のファーストフードの雰囲気を醸し出している。店内に入ってきた客はまずオーダー窓口に一列に並ぶ。注文をしたら、受け取りの窓口のカウンター前に並んで待つ。カウンターからは厨房内が丸見えで、大勢のクルーがハンバーガーを一所懸命に焼いたり、フレンチフライを揚げているのを見ながら待っている。全ての商品が客のオーダーを受けてから作るオーダーメイドであり、新鮮なクリスピーな野菜が入っているのが評判の人気の一つだ。(写真参考)

米国(世界でも)最大のレストランチェーンであるマクドナルドは全国展開し店舗数が多いので「便利さ」という点で最高得点を得ているが、それ以外の分野ではおしなべて低く、特に味の評価と言える「品質」ではホワイトキャッスルと並んで29点の最下位となっている。また、低価格と言う同社最大の戦略面でも「価値観」のポイント34点と余り高くない。客は単に安い商品に目を奪われるのではなく、総合的な価値観を求めているのではないだろうか。

6)マクドナルド社の味の向上作戦、メード・フォー・ユー

そこで、店舗数だけでなく味でも良い評判を獲得できるように、1999年からメイド・フォー・ユーと言う熱々ハンバーガー提供システムを全店舗へ導入開始をした。

従来のステージングシステムは焼成後常温保管のバンズ(当初は焼いていたが後に焼かなくなった)、焼成後高精度な加湿保管庫で保管したミート、調味料、野菜、を組み上げ、包装後電子レンジで加熱していたが、電子レンジ調理は味の劣化を招き、客のイメージも良くないと言うことで廃止した。その代わりバンズを15秒以下で焼き上げる超高速トースター(従来は30−60秒かかった)を開発し、注文後即座にバンズを焼き上げ熱々のハンバーガーを電子レンジなしで提供できるようにした。

焼き上げたミートを保管する高精度加湿保温庫と、フライしたチキンやフィッシュポーションを保管する乾燥保温庫の2種類が必要であったが、複雑な作業とスペースを削減するため、ミートとフライ物を同時に保温保管できる高精度のマルチホールディングキャビネットを開発した。(高速トースターとマルチホールディングキャビネットはマクドナルド社がパテントを保有している)

さらに、従来は包装したハンバーガーをウオーマーに10分間保管していたが、それを廃止し、客の注文後、調理組み立てを行うようにした。できあがったハンバーガーは客に提供するまでの数秒の間にも冷めないようにランチングパッドという小型の保温スペースに置き、客に熱々のハンバーガーを提供できるように工夫を凝らした。

このシステムの最大のポイントは客の注文を厨房に伝えることであり、カウンターの販売員が客の注文をPOSに入力すると、その内容が厨房の各セクションに置かれたモニターに表示され、速やかに調理が開始される。このPOSシステムの導入により客の好みにあった熱々のハンバーガーを待たせないで提供できるようになったのだ。

7)味のさらなる向上

調理システムの改善だけでなく、1999年にはレタスエンターテインユー社とのコンサルティング契約をおこなった。

同社はシカゴでもトップクラスの超高級なフレンチのAMBRIAから、フードコートのfoodlifeまで数多くのコンセプトを開発している。それらの店舗をシカゴ中心に出店し、成功したコンセプトはシカゴの店舗だけを維持して,他の地域での展開権を売却する。日本でもダスキン社がツチバヌーチと言うイタリアンのコンセプトを購入して店舗展開している。

マクドナルド社では以前から同社のトップフレンチのシェフを商品開発担当者に招いたりしていたが、今回はレストランのコンセプトも含めて本格的なコンサルティング契約を締結し、味や雰囲気の面で本格的なてこ入れを考えているようだ。

8)最後に

バーガーキング社もマクドナルドのメード・フォー・ユーを黙認しているわけではなく、バンズを加熱蒸気で焼き上げる超高速調理器を開発するなど、常に最新の調理技術の開発に鎬を削っている。外食業界関係者にとって目の離せない熾烈な競争を繰り広げる米国ハンバーガー業界であると言える。

別表 Restaurants Institutions の消費者調査

2000 R&I CHOICE IN CHAINS ジャンル別

 
  総合 品質 種類 価値 サービス 雰囲気 清潔さ 便利さ
BURGERS
In-N-Out Burger 44 69 16 44 48 36 49 42
Sonic Drive-In 41 50 46 36 43 31 34 37
Wendy's 39 53 48 41 33 26 34 42
Steak'n Shake 36 53 45 30 31 30 36 28
Rally's 31 45 25 42 29 17 24 34
Burger King 31 37 29 34 25 19 27 45
McDonald's 31 29 31 34 27 21 29 50
Checkers Drive-In 29 46 25 40 30 16 22 28
Carl's Jr. 29 42 32 26 24 18 31 33
Jack In The Box 29 34 37 31 24 18 25 33
Whataburger 29 41 31 26 26 20 25 32
White Castle 26 29 17 41 26 17 27 28
Hardee's 26 31 29 25 19 18 25 33
CHICKEN
Chick-fil-A 36 58 31 30 38 25 38 35
KFC 31 47 33 28 28 19 27 38
Popeyes 30 48 33 29 26 18 23 30
Church's Chicken 27 37 27 34 22 14 23 29
PIZZA
Papa Johan's 36 56 30 38 37 21 33 39
Pizza Hut 35 54 37 29 31 26 29 36
Domino's Pizza 32 42 29 33 33 19 27 42
Sbarro 32 39 29 19 20 14 36 34
Little Caesars 29 37 25 38 29 17 25 31
Chuck E.Cheese 28 31 20 18 24 49 29 23
Godfather's Pizza 28 44 29 26 24 22 23 27
SANDWICHES
Subway 39 54 43 38 37 22 37 41
Arby's 33 47 34 31 30 22 30 34
Blimpie 32 45 31 30 32 22 32 33
Schlotzsky's Deli 32 51 40 22 29 24 33 25
A&W 30 40 27 30 32 23 30 29
DOUGHNUTS/COOKIES/COFFEE
Starbucks 41 60 40 19 41 42 50 38
Krispy Kreme Doughnuts 39 66 42 36 37 26 37 29
Dunkin' Donuts 35 49 43 34 32 19 27 42
Cinnabon 29 63 19 19 32 15 31 25
Mrs.Fields 29 56 32 17 28 18 30 24
Orange Julius 27 46 23 22 27 15 28 31


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