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外食産業の新局面

外食産業の技術革新


外食産業の新局面

厨房機器の開発、改良、と業界の変化

CK以来、外食産業の厨房はどう変わってきたか、新鋭機器の登場がもたらした物、今後の方向

外食産業の技術革新

第2次世界大戦終了後米国に発生したファーストフードによって外食産業の技術革新が開始されだした。ファーストフードで技術革新が必要だったのは以下の5つの理由からだ。

  1. 販売品目の絞り込みにより1時間当たりの調理数が増大

    従来のファミリーレストランなどの業種はあまり技術革新の必要性を感じていなかった。それは1時間当たりの客数が少なく従来の厨房設備で十分対応できるからであった。しかし、ファーストフードはファミリーレストランに比べメニューを極端に絞り込み、1種類の食事を大量に合理的に作ることにより低価格を実現した。それにより、時間当たりの客数、単品あたりの調理数が大幅に増大し能力の高い調理機器の必要性がでてきた。普通のファミリーレストランであると単品あたりの販売数は多い場合でも1日で100を越えることはないが、ハンバーガーチェーンでは1時間当たり1500人前のハンバーガーを販売するの。

  2. 他店との味覚上の差別化

    また、単品に絞り込むということは、その商品が他のチェーンより圧倒的に美味しくて特徴がなくてはいけない。独自の調理機器を開発する必要がある。たとえば、ケンタッキーフライドチキンの創始者カーネルサンダースは骨までしっかり揚がるが、肉は軟らかくジューシーなフライドチキンを作るために、圧力釜でフライする手法を考案した。調理方法上の特許を取得し、他のチェーンと差別化することに成功して世界最大のフランチャイズチェーンになることが出来た。

  3. 人件費の削減

    ファーストフードのチェーン展開に当たっては加盟店からロイヤリティを徴収しなければならない。ということはフランチャイズチェーンに加入した場合、その売上高に対して3―8%というロイヤリティを支払っても利益が十分にでる収益性の高いシステムでなければならない。そのためにメニューを絞り込み、単一の原材料を大量に購入することにより食材原価を低減させた。さらに、原材料の次に大きいコストである人件費のコストも削減をする必要もでてきた。しかし、低価格で売ると言うことは、かえって売上げあたりの人件費は上昇しやすい。そこで抜本的な人件費の削減のために、人件費の高いコックなしで調理できるような調理システムを開発した。調理機器の温度を一定に出来るサーモスタットと、調理時間の管理が出来るタイマーやクッキングコンピューターを備えた調理機器によりアルバイトでも調理できるようにしたわけだ。

  4. 火力の強い調理機器で冷凍食品を調理

    全国にチェーン展開するためには年間を通して安定した食材を購入しなければならないし、最も価格の安い業者や国から調達するためには日持ちをさせる必要がある。そのために冷凍食品を多用する必要がでてきた。冷凍食品は普通解凍してから調理するのだが、冷凍食品の状態から急速に調理した方が品質がよいし、ファーストフードのように忙しい店舗では、解凍しないでそのまま調理する方が便利だ。そこで調理機器は冷凍食品に対応した火力の強い物を独自で開発しなければならなかった。

  5. フランチャイズチェーン展開のためにノウハウを確保

    フランチャイズチェーンに加盟する人たちが加入する理由はそのチェーンが個人の飲食店では手に入れられないノウハウをもっていることであり、そのために特別な食材、調理機器、調理法、マニュアル、広告宣伝手法をもっている必要があった。特に調理機器は性能が優れているだけでなく、外観でも優れている必要があった。たとえばマクドナルドでは長らくステンレス材料をSUS304の使用を基本としていた。その理由は他のステンレスより色合いが良く、キッチンの外観デザイン上優れているからという性能以外の理由からでもあった。

ではファーストフードの技術革新により巨大になった幾つかのチェーンを具体的に見てみよう。

KFC:圧力フライによる技術革新

1950年代、K.F.Cの創始者であるカーネルサンダースがケンタッキー州カービンという町の州道沿いにモーテル、ガソリンスタンドを経営していた。立ち寄る旅行客のために、モーテルの横でサンダース.キャフェという食堂を開き、南部ではポピュラーなフライドチキンを提供した。しかし、州道の代わりにハイウエイが建設され、店舗前の通行量が減少し商売をやって行く事が出来なくなった。そこで、フライドチキンの調味料を売り出し、やがては調理方法や経営の方法の指導までするフランチャイズチェーンの経営に発展した。1号店のサンダース.キャフェは現在では博物館になっており、当時そのままの状態を再現してある。KFCは圧力釜を使用する調理方法特許を世界中で確立しており、FFの代表的な技術革新といえる。

鳥を180℃の油温でフライしても、常圧では水は100℃ で沸騰するので、水分がある限りは品温を70℃ 以上にすることは難しい。肉温が70℃以上になっても、骨の内部の髄温は60℃位であり、骨から血の色をした髄液が流れ出して食欲を減少させる。肉の温度を上げようとすると、肉は水分を失い固くなってしまう。

1.85気圧〜2.0気圧の圧力でフライすると、水の沸騰温度は116℃〜121℃ になり、肉の内部温度は90℃ に容易に達する。髄液の温度が80℃以上に上がり固まって、髄液が流れ出す事がなくなる。短時間で調理できるため、肉の旨味を含んだ水分を失う事がなく、柔らかなフライドチキンになる。

原材料の鳥の品質により味が大きく左右されるので、鳥の生産から処理まで一貫したインテグレーションシステムを構築し、他社では得られない最高の品質の若鳥を供給できるようにした。その45日前後の若鳥を独自のカットする方式をとり、食べやすくなるような工夫も凝らした

味付けの面でもカーネルサンダースは10数種類のスパイスのレシピーを独自に作り上げ、まるでコカコーラの様に秘密にし、誰にも真似が出来ないようにした。

ドミノピザ:コンベアーオーブンによる技術革新

米国ではピザはハンバーガーと同じくらいポピュラーな食べ物である。そのピザのマーケットを更に拡大したのが、宅配ピザである。米国での飲食業の成功のキーワードは、サービスが良い、速く待たせない、バリュー(量があり安い)がある、の3つである。この宅配ピザはその成功のすべての要因を満たしており、大成功した。

成功の鍵はエアーインピンジメントオーブンである。エアーインピンジメントオーブンの秘訣は調理時間を妨げる熱境界層を取り除くということである。熱い風呂に我慢してゆっくり入り、しばらく動かないでじっとしていると熱さを感じなくなる。しかしそこで体を動かすと急に熱さを感じるようになる。これは動かないでいると体の表面に熱境界層が出来、それが断熱材になり熱を伝えなくなるからである。体を動かして熱境界層を取り除くと熱が伝わって熱く感じるようになる。ジャクジやワールプール等の泡や水流を発生する風呂にはいると温度が低くても体が良く温まるのはこの原理だ。空気の泡が体にふれると熱境界層を弾けとばし、水流が熱を効果的に伝えるのである。水だけでなく空気も同じで、体を取り巻いている空気は熱境界層として断熱効果を持っている。さらに、空気は水より熱伝導率が低く断熱効果が高い。この原理を応用したのがダウンジャケットで鳥の羽に多くの空気を含ませ断熱効果をもたらしている。この空気の熱境界層を高温の空気を吹き付けることにより調理時間を短縮しようと言うのが、コンベクションオーブンやエアーインピンジメントオーブンの原理である。

コンベクションオーブンは熱風をオーブン庫内に循環させて焼き上げるもので、焼く時間は速くしようと風速を上げると、調理時間は短くなるが焼けムラが発生する。そこで、ピザレストランでは品質を重視して、焼成時間の長いデッキオーブンを使用していた。しかし、ピザを焼き上げるのに時間がかかるという問題があった。そこで普通のコンベクションオーブンの風速2〜4m/秒より強い6〜8m/秒の風速を上下から吹きかけることにより、食品の表面にできる熱境界層を吹き飛ばし、短時間に焼成ができるエアーインピンジメントオーブンが考案された。

しかし、高速の熱風により、ピザの表面にスポットの焼けムラができるので、それを防ぐために、コンベアーでピザを動かしながら焼く事を考えた。その結果、上下均等にすばやく焼けるようになり、従来10分間かかったのが5分間に短縮できた。これが30分間以内のピザの配達を可能にした技術革新である。

このコンベアー方式による調理法は調理時間が短くなるだけでなく調理の自動化が可能で、省力化にもなり調理に関わる人件費が低くなり、ドミノピザのような巨大な宅配チェーンを誕生させた。

工場の流れ作業の発想から生まれたマクドナルド:レイアウトと調理機器の技術革新

1995年にレイクロックがマクドナルド兄弟からマクドナルドの権利を買い取り、シカゴに1号店を開いた。現在は博物館として当時そのままの姿を保存してある。そのレイアウトを見ると現在のマクドナルド社の厨房と余り変わらないので驚く。それだけフォードの自動車工場のシステムにヒントを得て開発した厨房の設計は素晴らしかったのだ。

グリドルを販売のカウンターに平行にしグリドルの作業者がフード越しにお客様の様子を見れるようにしたことと、商品を保温庫に保管することによりサービス時間を短くすることを可能にした。

後発のバーガーキング社は画期的な厨房を開発した。当時バーガーキング社は米国大手食品メーカーのピルズベリーという会社の子会社であった。当時のピルズベリー社の開発力は大変優れており、アポロ計画などの宇宙食の開発を依頼されていた。宇宙食は当初流動食などのチューブタイプの食事が中心であったが、密閉された宇宙船の中で長い期間滞在するにはストレスがたまり、それを解消する手段として1日1回は地上で食べるのと同じ食事を出す必要があった。そこで普通の食事を調理し、冷凍後機内に保存し、加熱解凍して食べるようにした。しかし、解凍加熱するにの電気ヒーターやガスなどの裸火を使用すると、100%酸素の機内では爆発燃焼する危険があった。そこで裸火を使用しない特殊な加熱方法を考案し、後のバーガーキング社の加湿保温庫の開発につながった。

また、宇宙食のもう一つの条件は食中毒などを絶対に起こさない安全な料理でなくてはならないということだ。宇宙で食中毒になれば命の危険があるからだ。そこで、絶対に食中毒を出さないというHACCP食中毒防止システムを考案し、それが現在の米国の食中毒防止プログラムの基準となっている。そのピルズベリーの優れた食品開発ノウハウをフルに生かしてハンバーガーの厨房のシステム開発を行ったわけだ。

まず、本格的なバーベキュウタイプの網をコンベアーにして循環させ、コンベアーの上のミートを上下から、赤外線ヒーターで焼くコンベアーブロイラー方式である。上下から同時に焼くことにより、ミートを途中でひっくり返すことがなく、どんどん連続に焼くことができるようになり、安定した品質と人件費の削減を実現した。

従来のマクドナルド社の調理方法はバッチ調理方式(一括調理)であり、バーガーキング社の調理方法はコンティニューアス(連続的調理)調理方式といわれる。厨房のフローがスムーズになり、資材の供給と人の導線が重ならないようになっており、生産性の高さはマクドナルド社に比べ30%以上高いといわれている。

保管方法でも技術革新が行われた。バーガーキング社は焼け上がったミートとバンズをすぐにドレスするのではなく、スチーマーという保温庫に10分間保管するようにした。そして、必要に応じてハンバーガーを組み立てて、完成したハンバーガーはお客様を待たせない程度にディスプレーウオーマーに10分間保管しておく。つまり、焼き上がったミートとバンズを20分間保管することを可能にした。これを、アッセンブルツーオーダーという。これにより、売上の波にも対応できるようになり、サービスのスピードを向上しながらも、廃棄処分の金額を少なくできた。

マクドナルド社も対抗上、コンベアーグリドルの開発を行った。バーガーキングと異なり、グリドルで肉を焼くことにこだわったマクドナルド社は二枚の鉄板に肉を自動で送り込み、短時間で焼き上げた肉を前方に送り出すという自動グリドルのシステムを開発した。だが、全自動化のグリドルのコストが高すぎたことと、当時人気のでてきた朝食メニューの卵を調理できないということで断念した。しかし、2枚の鉄板で肉を焼くことによる省力化にこだわったマクドナルド社はそのシステムだけを活用しようと、クラムシェルグルドルを考案し特許を取得した。2枚貝のような形状をしているので、クラムシェルグリドルと名付けられた。ミートを焼かないときは、上の鉄板の電源を切り、下部の鉄板で調理し、昼時にミートを調理するときに通電するようにした。つまり、一つのグリドルで、朝食メニューとハンバーガーを調理できるようにしたのである。

次にバーガーキング社の開発したアッセンブルツーオーダー方式を採用することにした。最初は、朝食メニューの卵料理を特許を取得した加湿保温庫で保管をしていたが、それによりサービングタイムを大幅に短縮し、かつ品質も向上したことに気がつき、ついにはミートやバンズも保管するようになったのである。この導入によりマクドナルド社の厨房は大幅な変化をとげ、それが新たなビジネスチャンスを生みだした。

タコベルのゼロキッチン

米国大手の飲料メーカーのペプシコーラは傘下に3つの大型ファーストフードチェーンをもっている。KFCとピザハット、そして、メキシカンファーストフードのタコベルである。タコベル社は当初店舗でレタスを刻んだり、タコスの材料である挽肉などを加熱調理していた。それでは厨房の面積が必要だし、人件費もかかると言うことで、セントラルキッチンで集中調理することを考案した。店舗ではセントラルキッチンで調理された食材を加熱し、組み合わせるだけで良くなった。この技術により厨房の面積を小さくすることが出来、今までと同じ建物面積で客席を増設することが可能になった。同時に食材コストと、人件費の削減が可能になり販売価格を下げる低価格商法が可能になり、米国ファーストフード業界における低価格路線の口火を切った。

また、大規模な調理設備が必要でないので、学校や、ショッピングセンターに小型の店舗を簡単に作ることが可能になり、低価格路線との相乗効果により売り上げを大幅にのばすことに成功した。このシステムはゼロキッチンと呼ばれペプシコグループの各社の厨房だけでなく他のファーストフードに大きな影響を与えるようになった。

ハンバーガーチェーンの小型店舗

タコベルのゼロキッチンの成功を見たハンバーガーチェーンはハンバーガーのアッセンブルツーオーダーシステムを活用した新しいビジネスを考案した。それがキオスクやPODなどの小型店舗だ。ファーストフードの小型店舗の厨房は、従来の方法では機器を小型化しなければならず調理能力が落ちることになる。しかし、ピーク前に調理しておき、ピークには通常の調理だけではなく保温庫に保管していたものを使うと、瞬間的に通常の2倍の能力が出ることが分かった。そうすることによって、全体の機械の投資額を押さえることができ、しかも店舗を小型化できる。この小型店舗の開発により従来展開の出来なかった、ガソリンスタンドやスーパー店内、空港内部のフードコート、学校、病院などへの出店が可能になったのである。

油を使用しないフライドチキンの開発

KFCが開発したフライドチキンは大変おいしい調理方法であるが、圧力釜などの設備が必要であり、他のファーストフードでは販売することが出来なかった。そこで工場で大型の圧力釜やそのほかの特殊な設備で、KFCと同様なフライドチキンを作り、冷凍してから店舗に運び、そこで解凍加熱するシステムが考案された。

ピザの宅配チェーンで販売されているフライドチキンはこのシステムで製造され、店舗では冷凍のフライドチキンを解凍し、ピザを焼くエアーインピンジメントオーブンでピザと同時に加熱することが出来るようになった。このシステムによりピザチェーンは店舗に於ける新規投資なしに新しいフライドチキンメニューを加えることに成功した。

ミスタードーナツの飲茶

ミスタードーナツは過酷な深夜労働のドーナツマンの業務をドーナツを工場で作る冷凍ドーナツの開発で解決しようとしている。そのため、正確な湿度センサーと、タイマーを組み合わせた、簡易型のドウコンディショナーを開発した。

更に中華点心等の飲茶の導入のために、冷凍食品を短時間で解凍加熱する機器を開発した。他に、冷凍麺の開発も積極的に行われている。スパゲティやうどんは冷凍の方が品質が良いといわれている。麺のコシというのは、中心部と外側の水分率の差が大きければシコシコ感が出るため、茹でてすぐが一番いいが、茹で置きをするとどんどんアルデンテの状態が失われてゆく。うどんやスパゲティは茹でる時間が長いため、回転率を上げようと茹で置きをする場合が多く見られるが、こうすると麺の水分率が均等になってしまいグニャグニャ感がでてしまうのである。

そういう意味からすると、冷凍麺はアルデンテという状態のまま冷凍できるため、最良の方法であるといえる。しかし、茹麺機を麺が冷凍の状態で使用すると、負荷が大きく温度が下がってしまうという問題がある。そこで蒸気で解凍するスチームクッカーが考案された。加圧した160〜180℃の蒸気を吹きかけ37秒とで調理する物だ。しかし、蒸気を吹きかけると食品の表面で露結して水っぽくなるため、その水をとらなければならないし、速く水をとることで熱負荷も減る。そのため、下にバキューム装置を付けて脱水し尚且つ蒸気をかける構造にした。

この原理を見てみよう。蒸気というのは、1気圧の大気中で1グラムの水を1℃上げるのに1カロリー必要であるが、それを100℃で気体にさせると537カロリーが必要になる。その蒸気の中に100℃以下の食品を入れると、表面が露結する。温度の低い食品の表面と触れた水蒸気によって、食品に537カロリーという大きな熱エネルギーが伝わり冷凍食品を短時間で解凍加熱することが出来るのであり、熱伝達が最も速い厨房機器といえる。

以上のようにファーストフードは独自の調理機器を開発し巨大な世界チェーンになっていった。米国の売り上げトップ100のうち10位以内では8つがファーストフードが占めているのでもそれが分かるだろう。 参考

ファーストフードの技術革新の応用

ファーストフードで開発された調理の技術革新はその後色々な分野で応用されている。


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