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ガスエネルギー新聞7月号



ガスエネルギー新聞2002年7月
       
電化対策1

 外食産業における電化厨房の割合が伸びている。日本厨房工業会の調べでは、96年には熱調理機器の年間生産台数の6.7%に過ぎなかった電気機器が00年には11・2%、01年は13・1%に急伸。ガスは2年連続で90%を割る結果となっている。電力会社は「3C=クリーン、クール、コントロール」をうたい文句に電化厨房をアピール。さまざまなメリットを強調して拡販に力を入れている。果たして電化厨房は本当にガス厨房より優れているのか。厨房設計に詳しいフードコンサルタントの王利彰さんに話を聞いた。

「電化厨房はコストが安い」?

電化厨房の急伸理由の一つに、深夜料金や電化厨房料金など割安メニューの設置が上げられる。競合の激しい外食産業では、コストダウン狙いで電化厨房を採用する例が増えているのだ。
 しかしフードサービスコンサルタントの王利彰さんは「必ずしも電化厨房はコストダウンにつながらない」と言う。「電気を使うか、ガスを使うかというのは、単純な話、エネルギーコストがどちらが安いかという問題。フランスのように電気が安ければ電気を使うが、日本のようにもともと電気料金が高く設定されているところでは疑問が多い」。

50kW以下の低電圧から中・高電圧に変更するにはキュービクル変電機が必要というインフラ自体は変わっていないし、電気保安協会の検査費などのコストも掛かる。

「日本には安価なエネルギーとしてガスがある。エネルギー効率も考えると、電気がガスよりも安くなるということは難しい」

さらに「電化厨房といっても湯沸器まで全部電気でやったらかえって高くつく。私もファーストフード店などの設計で電化厨房をやりましたが、採算が全然合わなかった」と話す。

外食産業における厨房設計に多く携わり、海外事情にも詳しい王さんは、過去の経験から「エネルギーとして考えると電気は決して安くないし、電化機器も今慌ててつくっているところだから性能的にも十分ではない」という。海外製品を持ってきてテストもしたが、高コストでギブアップしたこともあるそうだ。

普及している電気スチームコンベクションオーブンも「電気向きの部分もありますが、電気容量が多いので、現実にはなかなか入れにくい」。

牛丼などの外食チェーンが電化厨房を選択している例もあるが、「電化厨房にした場合と、ガスのいいものを使った場合を正確に計算していないからではないか」と疑問視している。

「電化厨房は衛生的」?

さらに、「電化厨房=HACCPに最適」という言い方は不適切で問題があると指摘する。

96年、全国でO―157が原因とされる集団食中毒が多く発生したことから、厚生労働省は衛生管理手法として「HACCP」の概念を導入した。HACCPはHazard Analysis Critical Control Point(危害分析重要管理点方式)の略で、食材の育成から人の口に入るまでの全工程において、微生物による危害が加わらないように重点的に監視と記録を行う衛生管理の概念。調理では食材の中心温度を75℃以上で1分間過熱することなど、徹底した温度と時間の管理が必要とされる。

「HACCPとは調理上の温度と時間の管理です。厨房を電気にするか、ガスにするかという設備の問題とは全く関係ない。それが間違って喧伝されているのは嫌になるくらい」とこぼす。

「電化厨房は涼しい」?

HACCPは微生物の繁殖を断つことが目的。日本で食中毒が多いのは、高温多湿の厨房環境も理由の一つとされる。しかしこの問題は、給排気と空調をきちんとコントロールすれば解決する。

電気厨房の主張は、ガス厨房は水蒸気や二酸化炭素(CO2)といった燃焼排気、熱があるので大量の給排気が必要だが、電化厨房はCO2の発生がなく余分な熱の発生もないので換気量は半分ですみ、空調負荷を抑えることができるというもの。

しかし外から入ってくる風と排気の風の流れをきちんと管理し、流れるようにしてやれば問題はないと王さんは言う。

日本の厨房が暑いのは、空調設計が海外に比べて数段遅れており、給排気が不十分だったから。厨房で発生する熱には排気熱だけでなく、蒸気、輻射熱、伝導熱などがあり、排気熱が与える影響はそれほど大きくない。

「全体の排気から考えると、ガスの燃焼空気は40分の1に過ぎない。空調で一番エネルギー効率を悪くするのは、エアコンを通ってきた空気をそのまま排気してしまうこと。厨房内の空気を温めないように、給気では外気の空気を直接入れるとか、断熱をちゃんとして機器からの輻射熱をなくすといった方が大事で、電気とかガスといった熱源には関係ないですね」

「電化厨房は安全」?

電化厨房もガス厨房と同じくらい火事が起こると王さんは言う。某大手コンビニでは電化フライヤーから火災が発生した。フライヤーには電気を遮断して温度調整をするコンタクターという部品がついているが、サーモスタットで開閉する際に火花が出る。この火花にコンタクター周りのオイルミストがつくとカーボン化し、融着して離れなくなる。そこへ電気が通り、発火したのだ。

「火災の原因には、漏電や電気系統からの発火もある。燃焼は炎が見えるからまだいいんです。電気は見えませんから、事故を起こした時、すごく怖い」

器具にしても「電気はまだまだ問題が多い」という。フライヤーなどは温度の安定が大事な要素。ガスの場合はサーモスタットのオンオフで一定温度が保たれるが、電気は熱容量が多いので温度の上昇が大きく、より特殊がコントロールが必要になる。

実際に使ってみると、前述のコンタクターのトラブルに加え、電気を遮断する際に発生するノイズの問題も大きい。厨房は意外にコンピューターを多く使う。エアコンなど電気容量の大きい機器から出るノイズがコンピューターの誤作動を引き起こすこともある。

掃除しやすいという点では「確かにIH、電磁プレートはその通りですが、フライヤーやグリドル、スチコンなどはガス器具と手間は全く同じ。掃除しやすいとはいえません。それにIHは鍋物にはいいが、調理でがんがんやるには向いていない。セラミックの台にコイルを貼り付けてあるだけだから割れやすい」

こうしてみると、安全性、性能ともに一長一短で、電気が有利ということは言えないようだ。
「ですから、適材適所なんです。HACCPでいえば、冷蔵庫はもっと冷やさないといけないし、保温器は温めなければならず、電気はより多く使う方向にある。病院などで使われる配膳台にもカート保温のニーズがある。そういうところに電気を使っていけばいいのであって、厨房すべてを電気にするというのは乱暴な考え方です」

「これから厨房も提案型になっていく」と王さん。「今、電力会社は業務用厨房の知識が全くない状態でスタートしている。今まで厨房をやってきたのはガス会社です。その先行の利を生かし、厨房や空調の設計、適切な厨房調理器の選び方などのコンサルティングをするとか、エネルギー調査をして節約できる部分をアドバイスするとかしていけば、ガスはこれからも選ばれるでしょう」

従来の厨房に欠けていたのは給排気や空調の合理化、バランスの問題。その点、電力会社はいいところをついている。「部屋の中が暑いのはガスだから」。実は、前述のような空調バランスの問題なのだが、お客さんにとっては納得しやすい。

「厨房を変えると当然、空調も変わるので、まるで涼しくなったような気がします。給排気の状態が良くなっただけで電化が理由ではないんですが」。だから「ガス会社としては、例えば暑いと言われた時にどうすれば涼しくなるのか、空調面からの提案をするべきです」とアドバイスする。

「GHPを売るときに給排気もちゃんと考えた設計にするとか、お客さんの立場に立った支援をする。電気屋さんにはまだ空調を勉強している人は少ないので、そこを攻めていけばいい」

「ガス機器の中には燃焼効率が悪いものもあるから、効率を上げるように開発を進めてほしい燃焼技術にもまだまだ向上の余地があるし、やることはいっぱいあると思います」


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