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最新の厨房機器 クックチルとは


皆さんはクックチルという言葉を聞いたことがありますか。クックチルというのは、最新の調理方法で、調理後の食品を急速に冷却し、細菌の増殖しやすい危険な温度帯を短時間に通過させ3℃以下の温度まで下げることによって、細菌の増殖を最低限度にしようというものです。そのクックチルが今話題になっています。

1)調理システムの種類とクックチル

調理とは食品の味をおいしくすることと、細菌を殺すことで安全に食べられるようにすることです。 一般的な飲食店では調理したらすぐテーブルに運ばれます。しかし郊外型の飲食店や、リゾート地のホテルなどのように、土日や季節により変動が大きい場合には調理した食材を保存して、ピークに対応することが必要になります。でも、調理をした食品を保存し、翌日に提供しようとするには、細菌の増殖による食中毒の危険が高まります。 菌は76〜82℃以上に加熱することでほとんど死滅しますが、加熱しても完全に死ぬわけではありません。正確に言えば菌が減少するだけなのです。なかには芽包菌のように100℃でも死滅しない菌もいます。いったん加熱調理した食品の温度が緩慢に下がる60℃〜5℃の間は、細菌にとって最も活動しやすい温度帯となり、残っていた細菌や、付着した空中の浮遊菌が増殖することになります。つまり、調理をしたものをすぐに食べれば食中毒の危険は少ないのですが、家庭で調理した弁当のように、調理後数時間たってから食べると食中毒が多いのはそのためなのです。

食品を常温で長期間保存する方法として、缶や、レトルトパウチにつめて100℃以上の高温で時間をかけて殺菌する方法があります。この方法は、密閉状態で空気に触れないため、食品中の油が酸化しないというメリットもありますが、食品を100℃以上の高温で加熱するため、スパイスの香が飛び、味が大きく変化するという問題があります。 また、調理後冷凍する場合も、細菌の増殖が押さえられ食品の長期保存が可能になりましたが、食肉や、魚、野菜などの細胞膜が破壊されることによって、おいしさの成分が流失し、味や触感が減退してしまうという問題がでてきています。 しかも、冷凍、それを解凍、加熱することは大きな熱エネルギーを必要とします。そこで、調理後の食品を急速に冷却するというエネルギー効率のよい調理保管方法のクックチルシステムが取り入れられるようになったわけです。

2)クックチルの基本コンセプト

食材供給業者が集中調理センターに食材を納入した後、食肉、魚、乳製品、野菜などの食材ごとに温度帯を分けて保管します。もちろん、原材料と調理後の食品は別の冷蔵冷凍庫に保存します。 次に準備(下ごしらえ)ですが、魚であればまず、頭と内臓を除去し洗浄し、3枚におろし再度洗浄してから、調理を始めます。 クックチルにとって最も注意が必要なのは野菜です。野菜についている土には嫌気菌である芽包菌がついています。クックチルは加熱温度が最高でも82℃なので細菌は完全に死滅しません。そのため、下準備の際にいかに細菌を持ち込まないかのコントロールが重要になってきます。 次に準備をした食材を加熱調理します。調理が終了した食材を短時間のうちに急速冷却し、3℃以下に冷却します。冷却した食品を0℃〜マイナス3℃の氷温帯で保管すると、5日〜45日間保管できるのです。保管した食品は必要により再加熱して提供します。

3)クックチルの歴史

クックチルは1960年代にスウェーデンのナッカ病院で開発された、食品を真空パックし加熱するという革新的な調理方法です。食品の劣化の1つである食品の酸化は、味が悪くなるだけでなく食あたりの原因にもなります。食品をプラスチックバックで真空包装することで、食品の酸化が防げるようになっただけでなく、加熱と冷却が効率よく行われるようになりました。このナッカ病院で開発されたクックチルシステムのポイントは、調理温度と、短時間冷却、真空包装、低温保存です。 しかも、調理後の冷却をマイナス2℃〜2℃までのより低い温度まで下げ、より低温で保管するAGS(米国サウスカロライナ州の3つの病院nderson,Greenville,Spartanburgの頭文字を取って名づけられた)システムは、保管可能期間を60日までにすることが可能になりました。 この技術を元に開発されたCAPKOLDシステムは、流動性のものはケトルで調理後、ポンプで真空包装し冷却するケトルクック方式と肉などの固まりを真空包装後加熱し、冷却するクックタンク方式のものがあります。 さらにプラスチックバックを使い、真空にすることによって肉などのジュースを損なうことなく、しかもやわらかく仕上げられ、食品中の油脂類の酸化やビタミンの減少も少ないことがわかりました。

このクックチル方式をヒントにフランスでは真空調理が開発されました。真空調理はおいしさを追求するために、食品を真空パックし旨みを逃さず、食品に最適の加熱をする低温調理方式であることが特徴で、保存よりもおいしさを追求した調理法です。現在ではホテル、レストランなどで普及しています。一方、上記のクックチルや真空調理方式は従来の調理法とは異なるのでなかなか導入が難しいという問題がありました。そこで、水冷方式ではなく、普通の調理をした食材を空冷するブラストチラー方式が考案され、簡易的なクックチルとして主にヨーロッパで普及しだしました。現在では、航空機の機内食を作るエアーケータリング工場で、調理後急速冷却するために細菌の増殖が抑えるという食中毒を起こしにくい調理法として採用されています。

4)クックチルの品質

クックチルは製造後時間を経過してから食べるために、できたての料理に比べおいしくないのではないかという誤解がありますが、実はそうではありません。例えば牛は屠殺して10日以上熟成させたほうが食肉中の酵素の働きでおいしくなります。 また、鳥取県の氷温研究所(現社団法人氷温協会)社長の山根昭美氏(当時)は、氷温状態下では、野菜や果物はより甘くなり、肉や野菜はうまみが増すといっています。 煮物でも、鍋で、ひと煮立ちしたら下ろして保温する「保温料理法」と名づけられたこの調理法(別名「はかせ鍋」:早稲田大学理工学部応用物理学科の小林寛教授考案)は、あまり加熱せず、ゆっくり冷めるので、材料が硬く煮しまらず、香りも飛びません。塩分、糖分、アミノ酸といった調味料は、鍋の中がゆっくりと冷めていくときに味が最もよく染み込むため、調味料も少なくて済むし、ガス代も通常の3分の1で済むというメリットがあります。

似た方法として、豆を魔法瓶に入れておくと煮える、というおばあちゃんの知恵にヒントを得て開発された「真空断熱調理鍋」(日本酸素)があります。鍋は、直接火にかける内鍋と、魔法瓶の構造になっている外鍋とがセットになっており、内鍋の料理が煮立ったら鍋ごとそっくり外鍋に入れてやるだけ。おでんなら5分ぐらい煮立たせ、外鍋に30分以上入れておくとできあがります。 このように、調理方法によっては時間を経過したほうが味や香りなどが生かされることがおわかりいただけたでしょうか。この氷温保存、はかせ鍋、真空断熱調理鍋の原理は真空調理やクックチルの基本原理と全く同じなのです。低温で調理して氷温で保管するシステムは単なる保存方法だけでなく、味を合理的においしくするシステムなのです。

5)安全性とレシピ化

真空調理やクックチルは食品を大量調理し保管、消費するために、味もさることながら、安全性という観点から管理をしっかりすることが必要でHACCPの安全管理システムを導入をしなければなりません。  また大量調理の場合、調理の組み合わせだけでなく、量による調味料の変化まできちっと定めて、調理温度、時間まで指定しなければなりません。

6)必要な機器

クックチルに必要な機器はクックチルの種類により異なりますが、従来の調理機器を使用できるブラストチラータイプと大量の調理が計画的にできるタンブルチラータイプとがあります。
<1>ブラストチラータイプ
このタイプは一番簡単で従来の調理機器を使用できます。付け加えるのは冷却をするブラストチラーと保管するための氷温冷蔵庫です。
<2>タンブルチラータイプ
 水冷方式 米国タイプのものは大がかりで、1日5000食以上の場合に必要になります。一番重要なのはクックチル専門の設計家で、提供する顧客層、食数、食材、レシピ、配送形態などにより最適の設計をします。必要な機器はブラストチラーと似ていますが、専用のケトルや湯煎機器を使用するので通常の調理機器は不要になります。しかし、料理によってはできない場合もあるので大型の施設にはブラストチラー方式も併設する必要があります。

以上の設備を調理数と見合った能力で設置するわけですが、米国のタンブルチラーシステムとブラストチラーシステムを組み合わせたクックチルの場合、普通の調理方式に比べ10〜15%コストが上昇するといわれています。タンブルチラー方式は輸入の米国製が多く、コストが高い問題を抱えており、最小の設備で1億円以上の投資が必要のようです。主に病院や給食などの大型施設で導入されています。

7) 削減できるコスト

<1> 人件費の削減
 ベテランのコックがセントラルキッチンで集中して味付け、調理を行うので各サテライトでの調理人が不要になります。また、集中調理するため生産性が高くなり人件費が減少します。米国の例では人件費で15%〜40%の削減ができるといわれています。 自動調理するタンブルチラー方式クックチルの場合は、調理中に作業につきっきりになる必要がないので人件費の削減率が高くなるのです。また、購入も1か所で行うため、事務手続きや検品を頻繁にやる必要もなくなり、全体的に効率が向上するといわれています。 大きなメリットは作業環境の向上による定着性の向上で、リクルートとトレーニングに必要なコストが削減できます。タンブルチラー方式の加熱は蒸気加熱でスチームジェネレーターを厨房外に設置しスチームを断熱したパイプ配管で供給します。そのため厨房での裸火が少なく温度環境が大幅に改善され、汗をかくことなく作業できるのです。また、セントラルキッチンでの調理を計画的にできるので、時間に追われることがなくマイペースで仕事ができ、精神的に安定するといわれています。サテライトキッチンでも同様で、急に客が増えてもストックしてある料理を加熱するだけで、あわてて調理する必要がありません。また、保存期間が長いので週休2日をしっかりとることが可能で、残業代が節約でき、従業員の疲れもとれるというメリットがあります。

<2> 食材コストの削減
1回の調理当たりの量が多く調理後保存期間が長いので旬の安い材料を大量に購入しておくことが可能です。また、セントラルキッチンでまとめて購入するため、食材納入業者としても1回の量が多く、運送費も安くなり低価格で納入できるのです。 大量にケトルなどで調理することにより調味料の使用量は少なくなるし、基本的に低温調理なので調味料が揮発することが少なくその結果調味料の使用量が減少します。また、1回当たりの調理量が多いと、鍋釜に付着するロスも少なくなるという副次的なメリットもあります。 低温調理のもう1つのメリットは肉などの重量ロスがなくなるので、原価が下がります。プラスチック真空包装して低温調理することにより、フランス料理の真空調理と同様に肉類の調理の歩留まりが大きく向上します。ローストビーフなどオーブンで焼くと歩留まりは70%位ですが、クックタンクでの調理は90%以上だと言われています。 サテライトでも食材コストが減少します。従来の調理はオーダーを受けてから作り、調理後保温しておくわけですが、日によって来客数が増加する場合があります。そうするとあわてて追加調理する際に、つい作りすぎてしまい廃棄処分をしなければならないことが多いのですが、クックチルの場合は、客が多くなれば在庫の調理済みのパッケージを暖めるだけでよいので、作りすぎがなくロスが減少します。 セントラルキッチンで集中加工すると、今まではほんのロスであってもここでは大きなロスとなって見えるので原材料コストへの意識が向上するという精神的な節約もあります。総合的に食材コストは20〜30%減少することが可能だといわれています。

<3> 水道光熱費
集中加工するために水道光熱費の削減が可能になります。特にスチーム加熱という加熱方法を使用するために効率も向上します。サテライトキッチンでは暖め直すだけで良くなるので総合的に熱効率も向上するのです。また、タンブルチラーは冷水で冷却しますが、氷蓄熱層を使用し安価な深夜電力を使用することでも費用を減少することが可能です。保存温度が冷凍でなく冷蔵なので温度を下げるに必要な電気エレルギーが少なくてすむメリットもあります。再加熱する場合も、冷蔵の食品を暖める方が冷凍食品を暖めるより、必要加熱エネルギーは少なくてすみます。 セントラルキッチンで集中調理することにより、使用する調理機器の数が少なくなるために洗浄用の水と加熱するエネルギーも減少します。

8) 導入に当たっての手順

導入に当たっては調査をし、クックチルの規模、調理機器の種類などを決定します。調査項目は現状の各施設の数、地理的な条件、設備状況、使用調理機器、提供食数、提供メニュー数(年間を通して)、食材コスト、企業からの要望、調理レシピ、購入業者の能力と価格競争力、配送システムなどで、導入後に問題がないように綿密におこないます。と言ってもなれないとうまくいかないので、クックチル専門の設計家に依頼したほうがよいでしょう。

クックチルや真空調理は日本では新調理と言われ、2つほどの団体が普及活動を行っています。
<団体>
新調理技術協議会 http://www.shinchori.com/top.html
新調理システム推進協会 http://www.new-cook.org/
<クックチルの製造メーカーサイト、使用する機器の写真説明>
タンブルチラー方式のメーカー Groen 社 http://difc.difoodservice.com/capkold_photolibrary.html
Chester Jensen社 http://www.chester-jensen.com/
  Cleveland社  http://www.clevelandrange.com/
ブラストチラー方式のメーカー・代理店  Victory社 http://www.refrigerators-freezers.com/pdf/cook-chill.pdf
 F.M.I社 http://www.fmi.co.jp/contents/cookroom/freez/syouhin.html  
服部工業 http://www.hattorikogyo.com/kiki.html
Electrolux社 http://www.foodservice.electrolux.com/
病院などで使用する再加熱機器メーカー  
Aladdin社 http://www.aladdintemprite.com/cook_chill.cfm


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