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シリーズ第24回

米国式人事訓練その1


米国式の科学的人事訓練の考え方(その1)

7月号の「外食産業本社組織」の「教育訓練部、トレーニング部」の項目で米国と日本の教育訓練の違いを簡単に説明したが、それをもう少し詳しく説明してみよう。

終身雇用とモラル

今日本の産業は大きな変換期に来ている。日本は輸出産業を育て世界で一番の国民所得を獲得するようになってきた。輸出産業の基幹となるのが製造業で、日本の製造業の隆盛とともに外食産業も育ってきたのだ。製造業の隆盛により経済的に成長しただけでなく、会社の仕組み、人事制度など大きな会社を見習って水商売から外食産業へ脱皮していくことが出来た。大会社の殆どは日本の優秀な官僚制度を見習って組織を作り、優秀な製品を生み出していったのである。日本の産業を支えていたのは優秀な品質管理である。何故品質管理が優れているかというと、従業員のモラルと教育水準が高いということが上げられる。その高い従業員のモラルを築きあげたのは、終身雇用制度である。会社が終身雇用で従業員を安心して働かせることにより、会社に対する帰属意識を高め、高いモラルを実現したのである。自分がつとめている会社を経営者でないのに「うちの会社」と言うのはその現れである。会社は従業員にとって家族と同じ存在になっていたのである。

しかし、会社が終身雇用を続けられていたのはバブルがはじける前までであった。現在の不況はその終身雇用制度を破壊しつつある。特に団塊の世代の状況は悲劇的であり、四五歳以上の社員の居場所は無い会社は数多くあるのが現実の姿だ。

年功序列給与の廃止と実力評価

官僚制度を参考に作成した給与体系は年功序列の給与体系であった。しかし団塊の世代が40台を越えるようになると給料はともかく、職位が不足するようになった。そこで職位とは別の、資格制度、号、級制度を導入し、序列を保つようにした。その為に給与体系が複雑になったが、世の中の景気に比例して右上がりの給与体系を保てるうちは良かったが、それもこの不況で旨く作動しなくなった。そこで年俸制を導入し、給与の年功序列制度を廃止しようとしている。つまり、運良く会社に残れても給料は増えませんよ、場合によっては下がりますよと言うものだ。年俸制の導入には従来の年功序列方式の評価方法ではなく、仕事の実績に応じた昇給評価が出来なくてはならない、従来の人事評価は人事部が主導を握って行っていた。人事部は仕事を具体的に見ているわけではないから、年功序列の評価や、資格試験による成績で評価をするようになっていた。つまり具体的な仕事の評価の手法など確立している会社は日本にはほとんどないといって良いような状態である。年功序列を廃止して年俸制を導入するには仕事の具体的な評価制度があることが前提条件であるが、具体的にそれを検討している会社はない状況だ。年俸制を導入しても具体的な評価制度がなければ、従業員に会社に対する不満足を持たせるような物である。これではどうやって高いモラルを保つことが出来るのだろうか。モラルが無くなったら日本の産業の強みであった製品の品質を維持できるのだろうか。今まさに終身雇用に変わるモラルを維持する制度を考え直さなければならない状況に至っているのだ。

日本の教育制度は優れているか

いや、終身雇用が無くなっても大丈夫だ、日本には世界でも最も優れた教育制度がある。と思われるだろう。では日本の教育制度はどうであろうか? 先回、日本の学校では躾をしていないと申し上げた。大学生にも躾と、社会的な常識の教育が必要だとも申し上げた。でも、まだ日本人の学力の方が上だと言われるだろう。確かにデーター上の計算能力などは上のようだ。では本当にそうなのか現地の学生に聞いてみた。

学校教育の質は産業の強さにダイレクトに反映する。米国における重要な産業は情報つまりコンピュータ産業だ。この場合コンピュータ産業といってもコンピューターのハードを作っている製造会社ではない。ソフトウエアーを作っている、ソフト会社だ。米国で言えばマイクロソフト等の会社だ。マイクロソフトの日本だけの95年6月期売り上げは既に420億円と前期比44%アップの成長だ。日本の殆どのパソコンメーカがライセンス使用している基本ソフトのオペレーションシステム(以下OS)は米国本社の直接契約であり、130億円の売り上げだ。合計の総売り上げで550億円にもなり、来年新ソフトの発売に伴い40%以上の伸びを示すだろう。同じコンピューター産業でもハードウエアーを作っている会社はどんどん売り上げを落としている。汎用コンピュータの旗手であったIBMの惨状はお聞きの通りだ。マイクロソフトと力関係が全く逆転している。コンピュータはダウンサイズと分散化が進み、そのうちワークステーションとパーソナルコンピューターでネットワークを作るシステムがメインになるだろう。これからのコンピュータ産業の中心はネットワークと、通信システムだ。通信システムといえばパソコン通信がある。現在日本の最大手のパソコン通信会社はPC-VANとNIFTYSERVEだ。どちらも100万人の加盟者がいる。米国ではアメリカオンラインが約300万人、コンピュサーブが約200万人、プロディジーが約130万人だ。この大手は過去数年間をかけてその地位を築き上げてきた。ここにそれらの会社を1年以内に一気に抜き去る可能性のあるパソコン通信会社が誕生しようとしている。それはマイクロソフトネットワークだ。マイクロソフトはパソコンの新OSーWINDOWS95を本年秋に発売するが、そのソフト内部にマイクロソフトが開始するパソコン通信会社の通信ソフトを内蔵させる。そうすることにより、一気に数百万人が加盟する巨大な通信会社が誕生する。それは米国だけでなく、日本でも世界でも同時に開始する予定だ。つまり世界でも最大級の通信会社になるだろう。通信というと何だ、単なる手紙を送るだけだろうと思われる方もいるだろう。最近社内メールなどが発達しているからそう思われるが、パソコン通信はそれ以上の可能性を秘めている。パソコン通信で通信販売のものを購入できるのはご存じと思うが、それを更に展開すると通貨に匹敵する巨大産業になる。場合によっては銀行の決済と同様の機能を持つことも可能なのだ。ネットワークで発達したインターネットとの相互乗り入れをやることにより、国別の貨幣制度などあっと言う間にくづれ去る可能性がある。

日本の税関の厳しい審査により海外のポルノ雑誌などの輸入は出来ない状態であった。しかし、もう税関のポルノ雑誌のチェックなど何の役にも立たない状態だ。インターネットであらゆる情報、雑誌、写真は、国境を簡単に越えて進入してきているのだ。誰もそれをチェックすることはできない。ポルノの世界では既に税関は全く機能しない状態だ。 現在はまだ趣味の段階だがこの情報流通システムを握ることがこれからの会社の生死を左右するだろう。

この米国の情報産業の中心となっているのが米国サンフランシスコ近郊のシリコンバレーだ。シリコンバレーとはサンフランシスコ郊外のスタンフォードからサンノゼにいたる数10kmにわたる地域のことを言う。ここにはパソコンの心臓部であるマイクロプロセッサーの雄インテル、IBM互換機に戦いを挑むアップル、ワークステーションソフトのサンマイクロシステム、ヒューレットパッカードなど情報産業の中心会社が集まっている。

このシリコンバレーの優れた会社群を支えるエンジニアーを供給する教育をになっているのが、パーソナルコンピューターの生みの親といわれているゼロックスパロアルト研究所 の側にある、スタンフォード大学と、サンフランシスコの対岸にあるUCバークレー校だ。

私がシリコンバレーに住んでいたときの友人の娘がUCバークレーに入学し、昨年から一年間日本の学校に留学している。日本の6大学クラスの有名校だ。彼女に日本の教育の印象を聞いてみた。彼女の日本の印象は「日本の学生は子供だ、学校に何しに来ているかわからない。何時も化粧ばかりして、学校にファッションショーに来ているみたいだ。」と辛辣であった。さらに「日本の学生は勉強の方法が違う。ただ暗記するだけだ。例えば歴史でも年号を言えといえば、アメリカの学生は殆ど答えられない。しかし、アメリカの学生はその事件がその後の歴史にどのような影響を与えたか応えることが出来る。応えるだけでなく、自分の考えを明確に述べなくてはならない。日本の学生は年号など完璧な答えが出る。しかし、その事件がその後の歴史にどんな影響を与えたか、自分の考えを言えと言われたら、全く答えられない。教科書の内容を答えることは出来るが、自分の考えを言うことは出来ない。これは先生でも同じで、自分のノートの内容通り話すが、それ以外の質問をしても答えは返ってこない、まるでパートタイマー教授のようだ。」とのことだ。

彼女に言わせると日本の学生は暗記という作業に優れているが、物事を論理的に考えるという訓練を受けていないし、それを指導する教授もいないと言うことだ。 現在の日本の教育制度は効率を考え○×式の出題方式を長年続けた咎めが出ているようだ。例えば日本の学校では日本語を英語に訳す場合でも、答えはいくつもあるのに授業で教えた答えが正解でその他の表現を認めない状況だ。語学なんて答えはいくつもあるのであり、それが表現能力だ。英語で文章を書く場合、同じ内容を異なる表現で書けることが出来るのが、文章能力なのだ。

米国の産業

米国の産業は一時の不振を脱出しようとしている。しかし、全部の会社の業績が回復しているわけではない、世の中の流れに機敏に乗り、一生懸命に努力している会社だけが残っているのだ。先ほどコンピューター業界がよいといったがその反面、タイプライターの 世界最大手のスミス・コロナ社は会社更生法を申請した。世の中がどんどんパソコンのワードプロセッサーに移行しているのに対処できなかったためだ。

成功した会社を見ると、時流に乗っているということと同時に品質管理に優れていることだ。これは単なる工場での生産上の品質管理ではなく、顧客満足度が優れていることだ。

顧客満足度とはお客様が単なる商品以上に何を望んでいるかを調べ上げ、その期待感に応えることにある。この前提は同時に従業員が楽しく満足して働ける職場であること。米国の職場は能率主義で、能力のない社員には厳しいが、同時に成果を上げる社員には徹底して応える能力主義だ。給与は年功序列ではなく成果主義だ。会社の成績が向上すれば比例してもらえるストックオプション制度など徹底した成果主義だ。また、昇進も年功序列ではなく、成果主義だ。

勿論単なるきびしさばかりでなく仕事に必要なトレーニングも具体的にわかりやすく行うことも怠ってはいない。精神分析から編み出した効率の良い人間関係の手法やトレーニング方法をどんどん導入している。

ここ数年米国から学ぶことがないという風潮が強いようだが、他国民族を使いこなす従業員教育訓練制度はここで再度見直す必要があるようだ。

日本の外食産業の現状

日本の外食産業でも、上場で得た泡銭を海外投資や、土地、株式、ゴルフ場への投資を行っていた。バブルがはじけて投資の失敗が明るみに出て、この不況で売上が向上しない中、従業員の削減、店舗の閉店などのリストラを押し進め、低価格レストランへ進出している。低価格レストランの現状はひどい物がある。リストラを押し進め従業員のモラルをなくしながら、更に極端な経費削減により従業員の働く意欲をそいでいる感じがする。海外の外食産業から表面上のオペレーションしか学びとっていない咎めが出ている気がする。ここでもう一度従業員のトレーニングとモラルを高める手法を確立しなくてはならないだろう。

米国の教育訓練制度

米国ではレストランの教育制度に対する研究が盛んで、人間関係を精神分析的な観点からとらえた研究など幅広く行われており、マクドナルドやバーガーキングなどのファーストフードやコーヒーショップのチェーンなどでもその研究が取り入れられている。大手チェーンだけではなく中小のレストランチェーンでも利用できるように、NRA(全米レストラン協会)が作成した教育訓練制度があるのでその一部を紹介しよう。

各レストランチェーンの為に教育訓練制度や衛生管理制度(HACCP)安全管理(強盗対策)、サービスプログラム、広告宣伝プログラム、計数管理プログラムなど共同で開発されているが、今回はその内の従業員訓練プログラムを紹介しよう。 このプログラムは5つのセッションから構成されており、それぞれVTRテープとテープ用ガイダンス、テキストブックから構成されている。

構成要素は

VTRテープは以下の5種類

  1. 面接と採用
  2. 効果的な集合トレーニング
  3. 従業員へのモチベーションの与え方
  4. 問題のある従業員への対処の方法と解雇の手続き
  5. 従業員の正しい評価方法

テキストブックは

  1. 人員採用計画とリクルート
  2. 履歴書による選別方法と良い従業員を採用する面接方法
  3. 新人のオリエンテーション
  4. 成功する教育計画
  5. 効果的な集合トレーニング
  6. オンザジョブトレーニングの手法
  7. 新人ヘのモチベーションの与え方
  8. モチベーションと定着の手法
  9. 問題のある従業員への対処の方法
  10. 従業員の解雇
  11. 継続した仕事の評価
  12. 正しい面接評価方法

があり、VTRテープと組み合わせて使用する。

これらの教材の内容

集合教育に際しての注意

  1. 集合教育をする前に

    • トレーナーはビデオテープを見て内容を把握しておく
    • ビデオのガイドをみてトレーニングのポイントとテスト内容を理解する
    • ディスカッションの際に生徒にする質問を書き出しておく
    • ビデオの内容と自店舗の作業内容が異なっている場合それをメモしておく
    • テスト内容に目を通し、自店舗に即した質疑の内容を考えておく
    • テスト用紙をコピーして用意しておく
    • 黒板とチョークを用意する
    • 参加者ために筆記用具を用意する
    • 会場の席をVTRが見やすいように、かつ、居心地良く配置する
    • VTRテープをセットし、直ぐに開始できるように頭出しをする

  2. 参加者にビデオを見せる前にビデオの内容を簡単に紹介する

    • ビデオを見せる前に各人良く見える位置にいるか確認する

  3. 見た後ディスカッションをする

    • 用意した質問を各人にする
    • ビデオの内容で重要な点を復習する質問をする
    • ビデオの俳優の行動を論議するのであり、しゃべり方や服装などの論議をしない
    • もし、ビデオの内容と自店舗の内容が異なる場合には説明する

  4. テストをする

    • テスト後内容を発表させ、内容が正しいかチェックし必要ならディスカッションする

  5. 参加者が感じることは状況により異なる

    • 再度テープを見直し、大事なポイントで止めディスカッションをする

  6. ビデオは一回で通して見せても良いが、各ポイントを決め、そこで止めて説明しても良い。ビデオガイドで止める場所を指定しているので確認しておく。

ビデオの内容

面接と採用

人員計画とリクルート、書類選考

  1. 人員採用計画とリクルート

    マネージメントチームは年間の売上予測をし、売上を増進しながらコストを下げる方法を考える。その結果良い人材を効果的に書類選考、面接、選別採用することが最も効果があることを認識する。

  2. 職務基準

    必要なポジションの職務基準が明確でわかりやすくなっていることが人員の採用に先立ち必要だ。

  3. 履歴書

    履歴書を読めばその応募者の過去の学歴、職歴、資格が解るようでなければならない。必要であれば自店舗の独自の履歴書に記入してもらう。

  4. 書類選別

    応募者の履歴書を3つに分類する。面接する。しない。検討する。の3つである。そのようにして、面接する人を絞っていく。面接するのは時間がかかるのであり、効率を考えて面接する。

面接時の法律的な注意点

  1. 面接時に応募者にする質問は仕事に関係するものでなくてはならない。親の職業や、過去の犯罪歴などのしてはいけない質問に注意する。
  2. 面接担当者は法的に違法な質問の種類を知り、注意して面接に当たらなくてはならない。面接時の態度、応対にも注意すること。

面接の準備

  1. 事前に履歴書に眼を通しておき、各人に対する明確な質問を用意しておく
  2. 質問の順番を用意しておき、効率よく面接を進め、時間を有効に使用する
  3. 面接に専念できる場所を用意し、電話や面会などの他の邪魔が入らないようにする

面接の手法

  1. 面接の開始に当たって応募者をリラックスさせ話しやすくする
  2. 応募者の氏名、住所など履歴書の内容を確認する
  3. 質問はポイントがはっきりし、直接的で、答えがはい、いいえ等で終わらないものであること
  4. 面接時間の80%は応募者に話させるような質問をする
  5. たまにはしばらく沈黙し、応募者が話し出すようにする手法も使う
  6. 応募者の話を注意深く真剣に聞いている態度を見せ、なるべく多くの話を聞き取る。
  7. 応募者に店舗での仕事内容をわかりやすく説明する
  8. 採用不採用であっても面接に来て貰った事を感謝し、面接を終了する。不採用であっても店の顧客になる可能性があることを忘れてはならない。
  9. 面接途中で応募者が身体的や時間的な理由であなたの店舗で勤務できないことが明らかであれば、時間の無駄を防ぐために面接を途中で丁寧に中止する。

採用者の決定

  1. 採用を決定するまえに最低2つの過去の職場に問い合わせること
  2. 面接の結果、公平に目的を持ってシステマチックに選別する。不公平な比較や感情で選別しないこと
  3. 採用を決定したら、結果を直ぐに連絡する。優秀な人材は直ぐに他社に決定してしまう可能性があるからだ。不採用の場合にも必ず連絡する。

以上のように米国の面接の手法は明確でわかりやすく、このVTRテープを見るとより具体的に理解できる。日本でもこのようなわかりやすい教材が必要だろう。次回も残りの4つの内容を紹介する。


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