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月刊厨房
今、ユーザーが求めるファーストフードの厨房設計

シリーズ第21回

組織-店舗運営


飲食業の組織とキッチンデザイン(その1)

多くの飲食チェーンは米国のチェーンの例に倣ったため、横文字の職種が多く外部の人間にわかりにくいので、ここで飲食チェーンの組織や店長の業務と、調理機器の関わりを見てみよう。飲食チェーンの組織は店舗中心に作成されている。組織は大きく分けると店舗の運営ラインと、それを支える本社のスタッフラインである。今回はまず店舗マネージャーの業務を見てみよう。

店舗の運営ライン

  1. 店舗組織

    社員

    各店舗は社員とアルバイトで構成される。店舗の責任者は店長である。チェーンにより、店長、ストアマネージャー、ジェネラルマネージャーなどと呼ばれる。店長の下には社員が数名いる。一般的には2名から最大でも8名の社員で構成される。最近では経費的な面から一店舗当たりの社員数を削減する傾向にある。書類作成の業務を減らすため店舗へのコンピューター(従来は特殊なコンピューターであったが最近ではMSウインドウズベースのパソコンが使用されるようになってきた),POS(コンピュータ化したレジスターで、データーの分析が容易で、売り上げや、料理構成、労働時間などのデーターを本社のコンピューターに自動送信できる)の導入が行われている。また、店舗の調理を従来は専門のシェフが行っていたが、セントラルキッチンなどの導入により店舗の調理を軽減し、アルバイトによる調理を可能にしている。アルバイトが調理するためには、調理機器の自動化が必要になり、コンベアー式のオーブンやフライヤーの導入を行っている。 店長の他の職位は、副店長などであるが、アシスタントマネージャー、単にマネージャーなどと呼ばれる。チェーンによっては店長代理、第一店長代理(ファーストアシスタントマネージャー)、第二店長代理(セカンドアシスタントマネージャー)などと呼ばれる。

    アルバイト

    パートタイマー、アルバイト、クルー、メイト、スタッフなどと呼ばれる。飲食チェーンの現場で働いているのは殆どアルバイトである。アルバイトというと普通、現場の作業のみ従事するように思われるが、最近では社員と同じ権限を与え、店長業務まで任せているチェーンもある。

  2. 社員マネージャーの業務

    社員マネージャーの業務は図1の様な3つのトライアングルになっている。社員の最大の責任は店舗のQSCを最大限に高めることだ。店舗のQSCを最大限に高めるには人物金を有効に管理する必要がある。その管理方法はPLAN,DO、SEE(計画、実行、評価)というマネージメント方法だ。では以下にその内容を具体的に見てみよう。

    QSCの管理

    Q

    Qとはクオリティの頭文字であり、品質管理という。飲食チェーンでは本部で品質基準をさだめ、本部指定業者が配送センターを通して配送したり、自社のセントラルキッチンで加工した食材を店舗に配送する。店舗における品質の管理とは本社で定めた料理の基準にあった調理方法で加工することにある。

    まず店舗搬入の食材の温度、量、状態をチェックする。飲食チェーンでは各食材がポーションコントロール(一食分毎に定量の状態になっている)されているので、その重量、サイズ、冷凍冷蔵温度をチェックする必要がある。基本的に店舗で味を変更することは許されていないが、基準の味で納入されているか等の品質を舌で確かめる必要がある。

    納入された食材は衛生管理の観点から、短時間で冷蔵冷凍庫に搬入する。

    食材を調理するのはアルバイトであるから、調理機器の温度と調理時間の管理が重要である。社員は、店舗の調理機械が正しい状態であるかということを常時チェックし、メインテナンスする。

    S

    Sとはサービスの頭文字であり、文字どおり、サービスをいう。飲食業では往々にして料理の品質が最優先されるが、客はサービス面から店舗評価を行う例が多くサービスは大変重要である。

    飲食業で言うサービスとは、料理提供時間が短いこと、つまりスピードが重視される。次に、笑顔、スマイルが大事だ。従来の飲食業はサービスというと挨拶の仕方、おじぎの角度、テーブルサービスの手順などと儀礼的なサービスを重視してきた。しかし、世の中のペースが早くなってくると、飲食業に望むのはそんな儀礼的なことではなく、頼んだ料理が早く出てきた、担当の社員がにこにこしている、等の具体的なサービスが重要になってきている。日本のサービスはホテルなど典型的なのだが、慇懃無礼に近いスマイルのない儀礼的なサービスが多いのが欠点であったが、米国式のファーストフードや、コーヒーショップの形態が導入されてから、実質的、具体的なサービスが出だしている。特にスマイルを観念的な物ではなく具体的にトレーニングするシステムを持ち込んだのである。

    提供スピードという意味では、ファーストフードでは注文後料理の取りそろえは1分間以内、ファミリーレストランでは15分というのが基準になっている。そのためには、セントラルキッチンで一次加工した食材を店舗で最終調理するだけとか、火力の強い専用調理機器、やコンベアーオーブンや、クラムシェルグリドルなどの自動化機器を使用するようになっている。ファーストフードではメニューを絞り込み、事前に食材を調理包装紙、保温保管し提供時間を短縮するようにしている。ファミリーレストランではオーダーエントリーしてから調理完了、サービス終了までの時間を記録できるようにし、常にサービス時間の短縮に努力している。

    C

    Cとはクレンリネスの頭文字であり、清潔さと衛生であることをいう。多くの飲食チェーンはQSCと言うので、品質が最も大事でその次がサービス、最後がクレンリネスであると錯覚しやすい。しかし、初めて飲食店を選ぶときに試食をしてから選ぶことはできない。飲食店でQ(料理の品質)とは次にもう一度くるかどうかを決めるにすぎない。サービスも店舗に入って注文するまで基準はわからない。最初に飲食店を選ぶには店舗の外観、や雰囲気しかないのだ。家族でレストランを選ぶときには女性が決定権を持っている。その基準はまずクレンリネスである。初めての店舗を選ぶには店舗の外観、店内の清潔さで選定する。店舗を選ぶ基準はCSQの順番である。

    店長はクレンリネスの維持のため、毎日クレンリネスのチェックをし、清掃したかどうかをチェックする。クレンリネスの基準は簡単だ。店舗が新装開店したときと同じ状態であるということなのだ。そのために毎日具体的な清掃作業をスケジュール化し汚れをためないようにしている。店舗の構造も汚れにくい様に工夫を凝らしている。天井は簡単に汚れをふき取れるような材質にし、床も清掃が簡単で水が溜まったりしないように完全にフラットにする。当然のことながらドライキッチンが当たり前だ。清掃しやすいように専用の洗剤を用意し作業効率が上がるようにしている。

    クレンリネスの範囲は、従業員の身だしなみ、建物外装、店舗周辺、店舗内装、調理機器など幅広いので常に客の目で確認していく必要がある。

    人物金の管理

    飲食店の経営の基本は簡単だ。QSCがきちんとしていて、提供する料理の価値があれば売れるのだ。そのQSCをきちんとするために店長は人物金の管理をするのだ。

    人の管理

    飲食業はサービス業であり、人的なサービスが最も重要になる。人が不足すると素早いサービス、完璧なクレンリネス、おいしい料理を出すことはできないのだ。飲食店の店長にとって人の管理は最も重要な業務であり、十分な数のアルバイトを集められるかどうかで、店舗のQSCは大きく左右される。良く勘違いしやすいのだが、人がいなければロボットを使って調理すれば良いではないかということだ。ロボットというのは、定型的な単純作業を機械に置き換えることにメリットがある。調理作業というのは料理の種類が多く、一日の売り上げの繁忙の差が大きいので、人間より作業スピードは遅くなるのだ。また、全ての作業をロボット化することは難しいので、人間の作業と共生しなければならないが、ロボットの作業と共生するのは大変危険であり、十分な作業スペースが必要で、飲食店の調理場とは相いれない場合が多い。最大の問題は投資コストだ。飲食店の厨房の調理機械の投資はどんなに高くても普通のファミリーレストランやファーストフードでは2000万円前後だからだ。特に最近では低コスト店舗の開発から、ロボット化厨房という物はかえって時代遅れの物となっている。最近の飲食チェーンで要求している調理機器とは、アルバイトでも簡単に扱え、メインテナンスも最低限度でよく、かつ安い物なのだ。

    人の管理とはアルバイトの募集、面接、採用、オリエンテーション(初日に行う店舗業務の説明)、トレーニング、評価(仕事により時給を上げてやる気を出す)、給料支払い、等、正社員を採用する場合と殆ど変わらない業務だ。

    人を採用したらそのトレーニングをするのは社員やベテランのアルバイトの仕事だ。大抵のチェーンにはVTR、トレーニングチェックリスト等のトレーニング教材が揃っているから、それを使用し短時間にトレーニングする。トレーニング教材の開発は大変重要で、毎年新しい手法のトレーニング方法を開発している。ファーストフードは最近では15時間でアルバイトを育成するようになっている。15時間というと短いようだが、大手ファーストフードでは年商2億円もいく場合があるから、アルバイト人数だけでも100人もなる。平均的なアルバイトの定着期間は6カ月であるから、年に200人のアルバイトの採用とトレーニングが必要だ。200人のトレーニングには3000時間、社員が担当していたら1.5名の社員が必要になるような負担なのだ。その為に如何にアルバイトの作業を簡単にするかということが重要になり、調理機器は全て時間と温度の自動管理となっていなければならない。

    次に採用しトレーニングしたアルバイトを売り上げと作業に応じて時間配分をする必要がある。以前であると、アルバイトであっても1日8時間労働させていたが、現在の様に時給が高くなって来て、原材料費よりも人件費コストの法が高くなると、必要な時間帯だけアルバイトを配置する必要がある。その為、アルバイトの労働可能時間と店舗の必要時間を売り上げと対応させ、週間、月間の労働スケジュールを作成する。この作業はかなり大変であり、熟練が必要だ。この作業のうまい下手により、人件比率を低く押さえながらQSCを最高に保つことができるので、店長の腕の見せ所である。最近では、POSと店舗のコンピューターを組み合わせて、スケジュール作成作業を自動化するようになってきている。

    物の管理

    物とは食材、調理機器、建物等のことを言う。

    食材

    食材は、Qのところでも述べたが、指定食材を指定業者から仕入れるので、大事なのは、売り上げに応じた数量を入れ、不足せず余らせないと言うことだ。店長の大事な業務は高いQSCを維持してお客を満足させることであるが、同時に利益を出さなければいけない。店舗の経費の中でも食材コストは最も大きい額の一つである。簡単なように思われるが、日曜祭日の売り上げは平日の2倍から、4倍にもなると言う難しさがあるということだ。特にこれからくるゴールデンウイークの売り上げ予測は大変難しい。まず、売り上げは天候に大きく左右されると言うことだ。当然のことながら雨が降ると売り上げは晴天の半分くらいになる。また、温度と湿度により売れる料理の種類が異なる。ゴールデンウイークの難しさは、温度と湿度と晴天の度合いが大きく変動するからだ。ちょっと温度が高くなると、飲み物やアイスクリームなどが多く出る。逆に麺類などのあつい物や、揚げ物などのしつこい物は出なくなる。しかし温度が低めでからっとした陽気だと揚げ物等の売れ行きがよい。この予測をうまくできる様になるには、2年間くらいの経験が必要になるのだ。最近ではPOSの自動発注システムがあるが、大抵は数週間前のデーターを参考にする程度であり、天候の変化や、季節性の変化、広告宣伝を考慮していないので、相変わらず、各店舗のマネージャーの勘ピューターが必要で、ここでベテランと新人の経験の差が出てくる。

    筆者がスーパーバイザーの時には土曜日が勝負であった。当時歩行者天国の真っ盛りであり、シェイク売り上げは天候に大きく左右されていた。土曜日午前中に天候と売り上げを見ながら、東京地区の各店舗の売り上げとシェイクミックスの在庫を調べる。(当時の技術ではシェイクミックスの賞味期間は7日間しかないので製造日と搬入日を考えると実質的な賞味期間は5日しか無く、日曜日に売れないと廃棄しなければならなかったからだ。)そこで、東京地区の売り上げ予測と現在の在庫を計算しながら、シェイクの製造メーカーに追加発注をする。これはギャンブルで失敗すれば在庫の山、足りなければ売り上げが取れない。1店舗の発注の単位はトンであった。ケース単位で発注する暇はないから、トン単位で大型店に配送し、そこから各店に配るというラフなやり方であった。本当に足りなくなると、夜中に工場に行き工場長をたたき起こして製造させるということもあったし、筆者がトラックを運転して配送したなどの時代であった。勿論現在では賞味期間が長くなったり、工場の稼働時間を長くしたりしているので改善されているが、それでも相変わらず店長のギャンブルが必要だ。最近のチェーン店で良く料理を切らしていることがあるが、原材料の発注を間違えて料理を切らすのはものすごく恥ずかしいことなのだ。もし飲食店で料理を切らしているところがあればその店長はまだ経験が浅いか、優秀でないということになる。

    発注後店舗に納入された食材を記録し、定期的に在庫管理をする。週末毎、月末毎に在庫を棚卸しして、週間、月間の使用量を計算し、原材料費を計算する。現在ではPOSが導入されているので、販売数量はわかるからそれに、理論原価率(本社で理論使用量と想定される食材ロスを計算に入れた原材料コスト)をかければ原材料コストは算出できる。しかし、理論原価率では、賞味期限を過ぎて廃棄した食材コストや、理論値以上に使用した原材料、盗難等は算出できないので、棚卸しして実際の原材料を計算する必要がある。チェーンの計算方法により異なるが、理論原価率と実原価率では最低でも0.5%から2%の差異が出る。この差異をどのくらいで納めるかが店長の腕の見せ所である。年商2億円で1%の原価が異なれば年間で200万円もの金額になるのである。棚卸しは閉店後に行う必要があり、その後の計算と合わせて、2時間ほど必要である。

    調理機器

    チェーンレストランではベテランのシェフの代わりにアルバイトが調理するので、自動化の調理機器をマニュアル通りに使用する必要がある。自動化の調理機器は温度が設定通りか、設定時間が正しいかを定期的にチェックし、調整する必要がある。毎日1時間くらいは調整と整備に費やす必要がある。アルバイトでもトレーニングすれば調整ができるが最初は店長がしっかりとトレーニングする。大手チェーンでは、プリベンティブメインテナンス(故障を未然に防ぐメインテナンス)として、カレンダー、マニュアル、手引き書を作成してアルバイトでも簡単に調整、整備をできるようにしている。

    建物

    建物も清掃と簡単な修理が必要である。特に建物の空調設備の清掃は、店内の汚れと、環境を大きく左右するので、定期的に行う必要がある。これもプリベンティブメインテナンスカレンダー等を使用して実施する。その他に建物が壊れたり、配管などの詰まりがあったときには修理が必要だが、近隣の修理業者を捜したり、見積を取ったりする作業が必要だ。緊急に備え普段から業者を捜しておくのは店長の重要な作業の一つだ。

    金の管理

    金の管理とは、売り上げ金の管理、売り上げ向上、経費等の利益管理、予算作成と投資計画管理、等が必要だ。ビジネスであるから売り上げだけでなく、利益を一店舗単位でキチンと出すことがチェーン全体の利益管理として必要なのだ。

    売上管理

    売り上げ金は1日に一回計算し、売り上げ日報を作成し、現金残高、現金過不足、打ち間違い、クーポン券回収、クレジットカード売り上げ、割引、小口現金使用明細、等を記入し、本社に報告する。売り上げ金は銀行に納金し、本社に送付する。基本的に閉店後の業務で売り上げが多い場合には勘定するだけで1時間もかかることがある。最近では、POSとコンピュータが導入されているので、キーボードを使用して現金日報を作成し、本社に電話回線を経由して報告される。チェーンによってはFAX経由で売り上げ報告をする場合もある。

    売り上げ向上

    利益を出すためには経費管理も重要だが、まず損益分岐点まで売り上げを持っていく対策が必要だ。その為には、宣伝活動が必要だ。宣伝活動とは、店舗の所在や、季節の特別料理などを知らせるためにチラシを宅配したり、新聞に折り込みをする。また、近隣の商店とタイアップし、商店街の景品として店舗の無料招待券を配布したりの販売促進活動が必要なのだ。店長は常に近隣の競合店舗の販売促進を把握し、負けないようにアイディアを使う必要がある。

    経費などの利益管理

    いくら売り上げを上げても経費を管理しないと利益は出ない。利益管理の大きなポイントは、人件費、食材ロス、水道光熱費、消耗品管理である。店長の能力により最終利益は1%から場合によっては5%も異なる。

    予算作成管理と投資計画

    年度末には来年度の売り上げ予想と、経費管理を予測し、それにより、必要な投資金額を算定していく。予算は各店舗の積み上げであり、本社で利益を最優先して店舗の実状を無視した予算を作成すると、かえって経費の増大、利益の減少、店舗QSCの大幅低下、を招くことになる。

最後に

店長の仕事の内1/3は店舗の忙しいときのQSCのコントロール、1/3は社員やアルバイトのトレーニング、1/3は書類管理やミーティングへの参加などであり、これらの多くの業務をこなすスーパーマンの様な仕事だ。調理機器に注意を払う時間は全体の5%以下なのである。つまりそれだけの短時間でも問題なく動く完璧な調理機器でないと、店舗のマネージャーにいやがられることになるのだ。現在のような低価格の時代になると、1店舗当たりのマネージャーの人数はますます削減され、各マネージャーの負担は増加するのであり、調理機器メーカーとしても店舗に負担のない調理機器を開発する必要があるのではないだろうか。


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