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シリーズ第20回

機械の洗浄殺菌と洗剤その2


前回は洗浄殺菌剤を中心に説明した。洗剤は正しい知識を持って使用しないと効果がないことがおわかりいただけたろう。しかし、殺菌剤だけ注意して使用すればよい物ではない。現在の厨房は多くの専用機械があり、その汚れは機械により大きく異なる。同じ洗剤でも時間をかければ、汚れを落とすことは可能なのだが、時間がかかるし、機械を傷めることもある。そのため最近では機械に応じた適正な洗剤を使用するようになってきた。便利な反面、正しい洗剤の使用知識がないと、効果的でないし危険さえともなう。今回は各機械に合った専用洗剤の使用方法と、その注意点を説明をしよう。

  1. 強力油落とし洗剤

    厨房では多くの油を使用しているのでそれぞれの用途に応じた効果的な油落とし専用強力洗剤が必要だ。

    グリドルクリーナー

    従来はグリドルの表面のカーボン落としには金だわしなどを使用していたが、ステンレスの破片が客の喉に刺さり大騒ぎになった経験があり、グリドルクリーナーを開発した。グリドルクリーナーの条件はグリドルが高温のまま100℃前後で清掃できるように、耐熱の溶剤と、浸透性が必要になる。グリドルの汚れ自体はまだカーボン化していないので比較的簡単に汚れを落とすことは可能なのだが、問題はグリドルの鉄が錆びたり、高温でアルカリ反応を起こし変色してどす黒くなることであった。その色変化を押さえるのが最も苦労した点である。その結果、清掃後のグリドルの金属の色がきれいなステンレス色になるようになった。もう一つ注意しなければならないのは、洗浄作業が完璧に行われず、洗剤成分が残留する恐れがあるので、配合成分は食品添加を中心にする必要があることだ。

    一般的には苛性ソーダーが20%前後含まれるのが一般的であり、その他に、キレート剤、界面活性剤、金属腐食防止剤、粘度調整剤が配合される。

    フライヤーボイルアウト

    フライヤーの熱交換部分は高熱になり油分が焦げ付きカーボンとなる。カーボンは断熱材であり、熱伝達を妨げ、油の温度回復を遅くする。その為に3カ月に一度は洗浄しカーボンを落とす必要がある。堆積したカーボンはグリドルより堅いのでより浸透性の高い界面活性剤と、強いアルカリ成分が必要だ。油槽に水を張りそこに洗剤を入れ30分間ほど煮沸するのだが、フライヤー内の残存油分と、カセイソーダーが反応し石鹸になるので泡が多く立ち、ふきこぼれ、コントロールパネルを痛める危険性がある。消泡剤の配合と、金属腐食防止剤の配合が必要になる。温度は沸点100℃より低い95℃前後で煮沸する。その為にフライヤーが温度コントロールが出来る仕様が必要になる。さもないと油槽から泡が吹き出る危険がある。此のフライヤーボイルアウト洗剤もアルカリ度の弱い物が開発されている。しかし、完全に中性と言うわけではないので取り扱い、特にゴーグルの使用は必要だ。

    オーブンクリーナー

    コンベクションオーブンの汚れの清掃は大変であり、グリドルクリーナーのような強力なアルカリ洗剤をスプレーし、しばらくしてからふき取る。内部を洗うことが出来ないので、グリドルクリーナーのように食品添加物で作った安全な物が望ましい。

    最近では、スチームコンベクションオーブンが増加している。熱交換器の内部やファンの内側まで付着したカーボンを溶解する必要があり、グリドルクリーナーのタイプを使用する。吹きかける際に洗剤の濃度が高すぎるとうまく噴霧が出来ないので、水で薄め粘度を下げて使用する。スプレーには色々な種類があるが、粘度の高い溶液を噴霧出来る特殊なポンプ式のスプレーを使用するのが望ましい。ポンプ内部の部品は耐アルカリ性でなければならない。オーブンクリーナーの基本成分はグリドルクリーナーとほぼ同様であり、最近では低アルカリの安全性の高い物が出ている。

    安全性の問題と取り扱いの注意

    上記の洗剤は基本的に強アルカリのカセイソーダーを20%〜40%含有しており取り扱いには十分な注意が必要である。目に入れば失明する危険があるので取り扱う際には必ずゴーグルを着用する。耐アルカリ性のネオプレーンゴム手袋を使用する必要がある。低アルカリであっても皮膚に直接触れたり、目に入ったりすると危険であるので注意が必要である。誤って飲み込んだ場合には、すぐに水やミルクをを大量に飲んで洗剤分を吐き出し、直ちに医者にいく必要がある。また、目にはいった場合には、直ちに水で洗浄し医者にいく必要がある。いずれにせよ洗剤の種類により、毒性と対応方法が異なるので、使用説明書を普段から良く読み適切な対処が可能にするべきだろう。

    筆者の20年間の経験で1件だけアルバイト従業員がグリドルクリーナーを目に入れ失明寸前になったことがある。マニュアル通りゴーグルを使用していなかったためであるが、それでも企業責任からより安全な洗剤に切り替えざるを得なかった。とりあえず苛性ソーダから苛性カリに切り替え、さらに、界面活性剤の浸透性を向上したアルカリ分の弱い中性に近いものに改善した。

    アルカリの弱い洗剤の必要性は、調理機器にステンレス以外のアルミを使用する傾向からも必要になっている。クラムシェルグリドルの上側のグリドルは重量の関係からアルミにメッキをしたものを使用しているが、アルカリの強い成分の洗剤であると腐食し、表面が凸凹になる危険性があるので、アルカリ分の弱い洗剤の必要性がある。また、スチームコンベクションオーブンの清掃の際、アルカリ系のクリーナーを噴霧すると発生する蒸気と臭いがきつく作業が危険でありアルカリ分の弱い洗剤の必要性が出てきている。

    各種金属にはアルカリに対するPH限界値がある。鉄鋼は無いがアルミ、亜鉛は10、黄銅は11.5、と金属により異なるので、洗剤使用時のPHを計測し、設定する。

    アルバイトの多い職場等や、ステンレス以外の金属を使用する場合にはできるだけアルカリ分の弱い洗剤の採用を是非検討すると良いだろう。ただし、強アルカリ洗剤より、溶解性が落ちるので、ブラシ掛けをするとか、清掃の頻度の向上や、洗剤の適正量など使用上の注意が必要である。また、安全性が高いといっても洗剤を直接皮膚に触れたり、目に入れることは危険なので、手袋とゴーグルは必ず着用が必要だ。

  2. 床用洗剤、コンクリートのコーティング

    厨房の床は油分が多く清掃するときに、アルカリ度の高い洗剤で清掃することがあるが、アルカリ分が多いと、コンクリートの目地や、タイルを痛めることがあるので、床専用の洗剤の仕様が望ましい。アルカリ度の強い調理機器用の洗剤で床を洗浄すると、油は落ちるが、リンス性が悪くかえって滑る恐れもある。油落としの能力だけでなく、滑りにくい成分でなくてはならない。また、床の清掃が不十分であると悪臭の元になるので、殺菌剤を含んだ床用洗剤を使用するとよい。

    上薬のかかったタイル、ガラス、アルミ材をアルカリ度の高い洗剤で洗浄すると、腐食し、ガラスなどは曇り、タイルは艶がなくなり、アルミはざらざらになってしまう。洗剤の特性に留意して使用する必要がある。

    厨房や倉庫に床をコンクリートむき出しで使用すると、強い洗剤で腐食されるし、ひび割れが出てくる。出来たら、コンクリート専用のコーティング剤を使用するべきだろう。

  3. 窓ガラスクリーナー

    窓ガラスクりーナーの主成分は、界面活性剤とつや出しのシリコンとグリコールなどだ。

    界面活性剤は汚れ落としをする。シリコンはつや出し剤だ。車の洗車機のワックスは油性のワックスではなく、シリコンを使用する。シリコンを使用すると艶が出て、水がかかっても水滴になり、きれいに流れ落ちる。ただし、日持ちがしないので毎日使用する必要がある。グリコールは車の不凍液と同じ成分だ。粘度があってガラスに付着し清掃性が向上し、寒冷地でも清掃中に凍ることがないからだ。

    つや出しが必要なかったり、寒冷地でければ普通の中性洗剤でも汚れが落ちるので、十分だろう。特にガラスに輝きがほしい場合にはガラスクリーナーを使用するなど使い分けると経済的だ。ガラスの清掃の秘訣はダスターなどで拭かずにゴムのスクイジーを使用することだ。やや慣れが必要だが、スピードが速くなるし仕上がりがきれいなので検討する価値があるだろう。スクイジーの使用方法は、パチンコ屋などのガラスを多く使用するビルの清掃業者のやり方を見ると良い。秘訣は、一回ごとにスクイジーの汚れをダスターでふき取り、直線ではなく∞字型にスクイジーを動かすことだ。また、スクイジーのゴムのエッジがきちんとしていないと汚れが落ちないから日頃の交換頻度をきちんと守ることがこつだ。

  4. 研磨剤

    長く清掃していない、鍋などのカーボンがぎっしりついたりした物は、強アルカリ洗剤を使用しても落ちる物ではない。金ダワシなどでこする必要がある。そんなときにはクレンザーなどの研磨剤が必要になる。研磨剤の主成分は、ガラスの原材料になる珪砂と界面活性剤、アルカリ剤等が主である。研磨自体の能力は珪砂の粒子の大きさに左右される。

    フライヤーなどの油槽についた汚れを毎日清掃する際に、研磨剤を使用するが、油に混入するので、珪砂などの食品に混じっても良い物だけを使用する場合がある。

    金属を研磨する際には珪砂の粒子の大きさにより、傷つき方が異なるので、清掃対象の金属にあった大きさの粒子を選定すると良い。厨房では他の洗剤と混ぜて使用されることが多いのでなるべく、珪砂だけの方が汎用性があって良いようだ。

  5. 真鍮磨き

    ピカールなどを使用する。この場合も清掃頻度をきちんと守らないと汚れが落ちなくなるので、日頃の注意がいる。最近では真鍮色のメッキがある。メッキは真鍮の様に色が変色しなくて便利だが、間違ってピカールなどをかけてこするとメッキが剥げてしまうので、金属の素材に注意すると良い。

  6. 家具クリーナー

    日本の清掃方法は何でも水拭きするという基本的な欠陥がある。テーブルとか椅子などの家具を水拭きするのは最も良くないのだ。木で出来た家具はニス塗りしてあるが、ニスが水溶性であり、水で剥離し、汚れが染み込んでしまうのだ。なるべくカラ拭きが望ましいのだ。しかし手指で触れることが多く、手垢が付いて汚くなる。ニスを落とさないで手垢を落とすには専用の家具クリーナーが必要だ。ワックスをかけても良いのだが、客席では臭いが出てあまり向いていないし、作業性が良くない。水溶性のスプレータイプの家具クリーナーが作業性がよい。ただし、一般に市販している物は香料が入っているので、営業時間外のみに使用する注意が必要だ。

    木の家具を使用するにはかなりの手入れが必要だが、どうしても水拭きで済ませたい場合には、家具の塗装をしっかりした物にする。ニスではなくウレタン塗装などをすると耐水性があり良いだろう。市販の家具はウレタン塗装が多いが厚めにかけた方が持ちがよい。

    いくら持ちがよいウレタン塗装でも2年位すると部分的に剥がれれてきて、そこから汚れが染み込むので、定期的な塗装をすると長持ちするようになる。

    木部だけでなく、レザーや、プラスチックも家具クリーナーで清掃すると艶が出て汚れがつきにくくなる。一度きれいに清掃した後は、家具クリーナーを含ませた、ダスターで軽く空拭きすれば簡単にきれいになる。

  7. ステンレスクリーナー

    厨房で使うステンレスは汚れが目立たないようにヘアーライン加工してある。ステンレスを水拭きで使用すると、水分のカルシウム、マグネシウムがステンレス表面に付着して白っぽくなり輝きが出ない。ステンレスの汚れは、油性のステンレスクリーナーで落とし、同時につや出しをする。ステンレスクリーナーの油性の成分がヘアーラインの細かいところに入り、それが艶を出すのだ。油の付いた指などで触っても跡がつきにくいのはそのためだ。ステンレスクリーナーの欠点は油性の成分のため食品にかかってはいけないと言う点であり、厨房で使用するには注意が必要だ。また、同じつや出しでも家具用とは使い分けするという手間がかかるので、筆者は水溶性の家具用クリーナーの溶剤を工夫し、ステンレスには原液、家具には水で薄めた物を使用するようにしたことがある。いずれにせよ、日本的な水で拭き掃除をするという習慣は止めるべきだろう。

  8. 外部の金属、プラスチックの汚れ落とし

    外部の金属、塗装部分、プラスチック部分は、車の排気ガスや、雨水のカルシウムマグネシウムの水垢がついている。普通の洗剤では落ちにくいのだ。この場合には車用の水垢クリーナーが有効だ。水垢クリーナーで汚れを落とした後ワックスを掛けると効果的だ。最近ではワックスに水垢を落とす成分を混合してあるのが一般的なのでそれを使用すると良いだろう。ただし、ワックス成分中に研磨剤が入っているとプラスチックや塗装部分にダメージを与えるので注意が必要だ。

  9. トイレクリーナー

    便器に溜まった、尿石を落とすには酸性洗剤を使用するものが多い。あまり溜まりすぎると落ちなくなるので定期的に洗浄するか、クレンザーなどの研磨剤を使用する必要がある。ただし、研磨剤などには次亜塩素酸ナトリウム等が入っている場合があるので、酸性のトイレクリーナーと混ぜて使うと塩素ガスが発生し危険なので注意しなければならない。

    安全性のために中性タイプのトイレクリーナーが出ているので洗浄性に問題がなければ使用しても良いだろう。アルカリ系の洗剤のところでも述べたが、安全な洗剤は洗浄能力は決して高くないので、清掃の頻度はきちんと守る必要があるという事を理解して使用しなければならない。

    洗剤の安全性

    食品を調理する機械を洗浄するのであるから、洗剤の安全性は最も重要である。飲食業は安全性が大事であり、使用する機械を洗浄する際に、洗剤が残留したり、それが危険であっってはいけないのである。使用する洗剤の安全性を確認してから使用する義務がある。安全性といってもただ一つだけではなくいくつかの要素に分かれているので、それを見てみよう。

    1. 環境問題

      洗剤の主成分は界面活性剤である。界面活性剤といっても種類があり、多少の知識が必要だ。10年以上前に合成洗剤の安全性を騒がれたことがある。安全性の中でも特に生分解性の問題だった。使用する界面活性剤が分解されないで残ってしまい、動植物に残留する危険性があるというものであった。現在では、生分解性の高い物を使用するのが当たり前になり、問題は少なくなっている。初期の界面活性剤はABS(分岐鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩)であり、生分解性が悪く問題があったが、現在はLAS(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)などの生分解性の良い物を使用するのが当たり前になり問題は少なくなっている。

      もう一つの問題はトリポリ燐酸ナトリウムなどの燐酸塩をカルシウム、マグネシウムへのキレート剤として使用することにより、排水が河川などに流れ込んだ際に、栄養素が高すぎ、藻などが発生するという問題である。現在では燐酸塩に変わるキレート剤が使用される用になった。この燐酸塩に関しては日本では厳しい基準があるが、海外の洗剤は水が日本とは比較にならないくらい硬度の高い水のために、まだ、燐酸塩類を使用している場合があるので、使用の際には注意されたい。キレート剤の配合が多い場合は、金属腐食や手荒れが多いので併せて注意が必要だ。

    2. 毒性

      毒性には、急性毒性と、慢性毒性、重金属類の含有、の3つが考えられる。

      急性毒性とはLD50で判断する。どんな物でも一度に大量に摂取すると死亡する危険がある。例えば少量の塩とか、醤油は無害なのは当然だが、それを大量に摂取すると、死亡することがある。そういう意味ではどんな物も安全と言うことはあり得なず、どのくらい摂取したら危険かと言う危険度のバロメーターとして使用される。LD50とは半数致死量という。Limit Death Fiftyの略で、急性毒性を表す数値だ。ある物質を動物に経口投与した場合、それにより50%の動物が死亡する量を動物の体重1kgに換算した数値である。ある洗剤のLD50が4.5g/kgであったとすると、体重50kgに換算すると900gになる。つまりこれだけの量を摂取すると大人でも死亡することになる。ちなみに食塩のLD50は3.7g/kg、つまり、体重50kgの大人が185gの塩を摂取すれば死亡するのだ。つまり此の洗剤は塩より急性毒性という意味で安全と言うことになる。勿論だからといって食品に混入して良いと言うことではない。食品に混入して良いのは食品添加物でないといけないのだ。

      重金属とは、砒素、カドミウム、有機水銀などの毒物だ。これはJISで検査項目が指定されているので、公的機関での調査のレポートがあるはずだから、メーカーに確認すると良い。砒素重金属は基準以下でなければならない。

    3. 手あれ、

      次に安全性で問題になるのは、手荒れだ。手荒れを引き起こすとそこにブドウ球菌が発生して不衛生であるばかりか、皮膚障害を起こし、危険なのだ。できるだけ皮膚に優しい洗剤が必要だ。これは配合成分などを見て判断するしかないし、使用して手荒れを判断する必要がある。家庭用の洗濯石鹸などは、皮膚にサンプルをつけ手荒れの問題をチェックするが、業務用ではそこまでは実施していないのが現状だ。業務用の洗剤は洗剤の濃度を守り、使用時には保護手袋を使用したり、使用後は保護クリームを使用して手の脱脂を防ぐのが基本だ。

    4. 洗剤の選定と開発

      洗剤の選定は単に安いからと言うことだけでなく、洗剤を使用することにより、人件費、水道代、光熱費がどうなるかで判断するべきだ。また、洗剤の有効性、安全性を良く確認し購入しないと安物買いの銭失いになるだけでなく、食中毒などの危険もあるので十分な知識と確認が必要だろう。

      新型の調理機器を開発するに当たってどんな方法で、洗浄殺菌するかは重要な問題だ。機械の性能だけでなく、効率が良く短時間で簡単に洗浄殺菌ができるようにすることは大切だ。

      筆者が機械の開発をするときには、まず洗浄殺菌から考える。それには筆者のつらい思い出がある。マクドナルドの入社したとき当然のことながら、見習い社員からスタートした。グリドルの磨き方、シェイクマシンの洗浄殺菌、フライヤーの洗浄、シンクでの器具洗浄など全て手作業なのだ。マクドナルドを外から見たときには全て全自動の機械を使用している様に見えたが、中の作業は相変わらず前近代的なのにはがっかりした。グリドルをピカピカに磨いたり、器具洗浄を真夏にやらされたら、パンツまで汗びっしょりになる。新人アルバイトにやらせたら次に日にはこないのは請け合いだった。

      その新人の時のつらさと、客のハンバーガーに鉄屑が混入したクレーム事故が筆者を洗剤の開発に追い立てたのだ。しかしながら洗剤の開発ほど難しい物はなかった。洗浄度のテストなど自動でできないのだ。現場と同じ汚れを再生することは不可能なのだ。そこで当時スパーバイザーだった担当店舗を毎晩3店舗回り、グリドル、フライヤー、シェイクマシン、床、ステンレス板、を洗浄して回ったのだ。開発には4年はたっぷりかかっただろう。お陰で洗浄作業は会社で一番うまくなってしまった。今でも目隠しをしても掃除ができるくらいだ。開発する洗剤業者もかわいそうだった。テストとミーティングは当然真夜中だから、開発の技術力より、体力と忍耐が無くてはつとまらなかったわけで、数多くの洗剤業者が脱落していった。洗剤の開発はあくまでも実践であり、それが数多くの実用的な洗剤の開発の秘訣だし、その開発の中で良い機械と悪い機械を見分けることもできるようになった。

      米国のマクドナルドの天才(気違いと紙一重の差だが)技術者から全自動のグリドルの開発を頼まれたことがある。あまり複雑なので、日本側の専門技術者は逃げだし何も知らない筆者がやらされたのだが。何がつらいといって、機械を清掃するのに2時間もかかると言うことだった。それはなんと36本ものヒートパイプを加熱して、そのあいだを冷凍ハンバーグパティを通して焼くという、気違いじみた物だった。その汚れたパイプを、工具で分解して、1本1本丁寧に洗浄するのだ。開発工場は寒風吹きすさぶ群馬の田舎にあって、そのつらさといったら無かった。しかし筆者の監視役の上司が一緒にしこしこ洗っているから、逃げだそうにもできるわけはなかった。まるでたこ部屋だった。組み上げた後、機械の温度調整に更に2時間かかるという気の遠くなる機械だった。そんな誰も開発を考えない機械だったから特許をとることはできたが、当然のことながらまともに動くわけはなかった。それ以来、機械を作るときには、最初から清掃方法と洗剤を考えるようになったのだ。どうせ最初に清掃させられるのは筆者だからだ。


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