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月刊厨房
今、ユーザーが求めるファーストフードの厨房設計

シリーズ第15回

調理機器設計基準


調理機器の設計基準と注意点

調理機器の設計基準

米国のファーストフード、ファミリーレストランのチェーンとともに米国製の調理機器が日本に上陸してきて25年になる。当初は、米国製の調理機器は素晴らしかった。だが現在では、日本の調理機器メーカーの努力により、調理性能において米国の調理機器を抜いているようになってきた。

しかし、使いやすさという面で考えると、まだかなり改善の余地があるように思われる。コンピューターの世界もそうであるが、日本は良いハードウエアーを作るのだが、なぜそういうスペックになるのか、どうやってうまく使用するのかという思想がなく、それが使いやすさのソフトの面で問題を発生しているのだ。調理機器の設計者が店舗の作業、使用食材、清掃方法などを把握しきっていないという問題があるのではないだろうか。

ユーザーとして米国と日本の調理機器を長く使用してきた経験から、ユーザー側からの要求スペックの決定方法と、評価方法を述べるので参考にしていただきたい。ファーストフードやファミリーレストランで使われているグリドルを例に進める。

時間当たり販売数と調理機器の能力設定

調理機器の能力を決めるのは店舗の形態と売上、立地により変わってくるのだ。この部分をしっかり設定しないと、能力が不足したり、オーバースペックになり採算に問題がでるのだ。

1994年の5月号のメニュー別の売上数の算出と必要機器設定の記事を参照しながらグリドルの能力設定をしてみよう。

売上条件と販売商品の形状

まず業態を定め、最大可能売上を設定する。次にグリドルを使用する商品の売上比率を定め、1時間に必要な製造個数を算出する。そして、グリドルで製造するミートの個数と重量、サイズを決める。これにより必要なグリドルのサイズと、能力が決定する。

オペレーションに左右される機器能力

調理能力は単にグリドルの能力によってだけで決まるのではない。店舗でどの様なオペレーションで調理するのかでも能力が左右されるのだ。オーダー毎に作業するバッチ処理方式と、連続処理方式では以下のように能力が変わるのだ。

人間の作業に対する考察

人間的な作業ロスを考え、生産能力を計算上の70%とすると、1時間に420枚の生産枚数となる。

これでも1時間25万円の売上を達成することは可能であり、グリドルの能力も余裕がでる。実際の能力としては420枚とするが機械の製造能力としては1時間に600枚を焼成できる能力に設定する。

生産量に対応したグリドルサイズ

1時間に焼成する枚数が決定したので、次に必要なグリドルのサイズを決定する。 直径100mmの冷凍肉を一回に12枚づつ焼き、連続処理方式で焼成すると、1台のグリドルには最低6列のミートが並ばなければならない。また、グリドルの表面全体の温度は均一ではないわけで、グリドルの作業面の周囲100mmは使用しないようにする。必要なサイズは800mm四方のサイズになる。しかしながら、標準のグリドルサイズというのがあり、米国ではこの規格に近いサイズで3フィートの幅のグリドルがある。他の機械とのサイズのバランスから決める必要もあり、この場合3フィート(90cm)にする。

冷凍肉を置いたときグリドル表面の温度が余り低下しないようにするには。グリドルの鉄板を厚くしなければならない。鉄板の厚さを決めるには冷凍のミートパティを並べて、ひっくり返す時にグリドル表面の温度を計測し、必要な熱量を蓄積できるだけの厚さに設定する。安定した表面温度を保つ上でも最低20mmは必要になる。

また、冷凍肉を置いたらすぐにサーモスタットが感知し点火しなければならない。そのためには、サーモスタットの種類と、グリドル内部への埋め込み方法、位置が問題になってくる。また、サーモスタットの位置と、ミートを置く位置は同じでないと、温度を感知できず温度の回復が遅くなる。

ガス入力と熱効率

45gの冷凍肉を焼成するのに必要なエネルギーは、1枚あたり15kcalであるから、600枚の焼成には9000kcal必要になる。

次に熱効率を定めなければならない。熱効率は燃焼方式に左右されるのでここで明確に熱効率を定める。かりに50%の熱効率を定めるとすると、18000kcalのガス入力が必要になる。

グリドルの表面の放射熱損失は約2500kcal必要であり、合計で約20000〜25000kcalは必要になる。

上記の売上設定と、商品の出数、調理オペレーションを基に、調理機器メーカーはグリドルを設計し、試作する。できた試作のグリドルの評価を以下のように実施する。

グリドルの性能測定方法

  1. 熱効率の測定方法

    日本の場合エネルギーコストが高価なので、熱効率は重視しなければならない。ブンゼン式のバーナーの場合には30〜40%の熱効率であるが、高性能のグリドルは赤外線式バーナーを使用し、熱効率は50〜65%になっている。熱効率がよいのは、遠赤外線効果により、熱効率が3%位向上する。しかし、最も効果が大きいのは、一次空気が100%であり、余分な2次空気を必要としないからだ。2次空気はガス燃焼に必要であるが、同時にグリドルを冷やす元凶でもあるので、それを減らすことが出来れば熱効率は大幅に向上する。

    測定方法

    1. 水平に置いたグリドル全面に鉄板で囲いを作り水を20cm程入れられるようにする。そして水を10cm程入れる。
    2. 次に、バーナーに点火し水が沸騰するまで加熱する。グリドル表面全体が安定して沸騰し始めたら、水の深さを計測しストップウオッチにより時間を計測し始める。
    3. 一定時間計測し、その間のガスの使用量、水の蒸発量を計測する。 水の蒸発量に水1ccの蒸発潜熱539kcalをかけ、それをガスの使用量と発熱量をかけたもので割ると、熱効率が算出できる。

  2. 鉄板表面の温度分布テスト

    グリドルは温度の回復が早いだけではなく、焼けムラを生じない様に、表面温度が均一でなくてはならない。

    温度ムラの原因はバーナーの配置、バーナーの設計、排気流量とグリドル表面の風量、鉄板の材質などである。

    鉄板表面の肉を焼く場所に計測点をマークし、室温からスタートして、調理温度になるまで、一定時間ごとに各計測点の温度を計測していく。次に、1時間ほど放置しグリドルの温度の変化をチェックする。

    問題があればまず排気風量を正しく設定する。次にガス入力を各バーナー均一になっているかチェックする。空調の冷却風が直接グリドルの表面に当たらないようにする。 左右の温度ムラについては、はじの方が温度が低めにでるので、バーナーの入力を大きくするか、バーナーの配置を変更して対処する。

    前後の温度ムラは排気風量をチェックする。それでも駄目な場合はバーナーチューブの奥と手前の火力をバッフルなどで調整する。 なお、燃焼状態が良くないとカーボンがたまり性能が低下しやすいので燃焼状態が見れるようにしなければならない。

    グリドルが設定温度に達してから、ミートを焼かないで放置しておくと、温度ムラが出ることがある。これは口火を常時点火している、ブンゼンバーナー式のグリドルで顕著である。口火がグリドル前面を加熱することと、2次空気が多いためグリドル後部を冷却するためである。口火の大きさは立ち消えがない範囲で小さくする方が良い。また、空調機の冷却空気が直接当たる場合は大きく温度差が出るので注意が必要だ。

    ミートを焼き始めてから温度差が出ることがある。これは、サーモスタットの配置とミートの置き方により影響されるのだ。

  3. 温度の安定性、温度回復時間及び、応答時間の測定

    グリドルの表面温度が設定温度に対し一定の温度で保たれていないと、ミートの焦げ目が微妙に変わり風味が安定しない原因となる。低すぎると色が薄く、高すぎると焦げすぎるし、グリドル表面にカーボンが付着し焼けがかえって悪くなる。

    • 温度安定性と静特性の負荷のチェック
      調理温度に設定し1時間にバーナーが点火している合計時間を測定する。これは静特性といい、何も調理をしない状態で調理温度を保つにはどのくらいのエネルギーを消費するかを測定するものである。また、温度の回復時間の測定にもなる。
    • 温度が下がってバーナーに点火する最低の温度とバーナーが消える最高温度をチェックする。さらにバーナーが消えてから、どのくらい温度が上昇するかチェックする。これは温度計のセンサーの感度をチェックするものである。
    • 鉄板の各箇所の温度分布を計測する。温度のムラは5℃以下でなければならない。

  4. 調理能力テスト

    グリドル上に冷凍ミートを12枚並べて調理する。並べてからサーモスタットランプの点灯する時間と、バーナーに点火するまでの時間、焼き終わった時の温度と、温度が回復し、サーモスタットが消えるまでの時間を計測し、サーモスタットが消えてから温度がどの位上昇するかチェックする。 これは、連続調理の為に大変重要である。

    次に、冷凍ミートを12枚並べミートをひっくり返す際のグリドルの最低温度を計測する。余り温度が低いとミートの焼成はうまく行かない、この能力を左右するのは、鉄板の厚さ、サーモスタットの感知である。幾らグリドルのガス入力があっても鉄板が薄かったり、サーモスタットの感知が悪くては温度は低下し肉の焼成は旨く行かないのである。

  5. 消費エネルギーチェック

    1時間の最大能力の半分の200枚の冷凍ミートを調理し、そのガス使用量を計測する。そのガス使用量から3)で計測した1時間あたりの静特性時のガス使用量を差引き、焼成した200枚で割ると1枚あたりの消費エネルギーを算出できる。

    この計算を行うことにより、正確な原価コントロールが可能になる。また、エネルギー使用量に問題があるときには、商品の販売個数から妥当なエネルギーコストを算出でき、問題点の発見が容易になる。

グリドルの仕様

以上で試作機の性能のチェックと開発は終了した訳であるが、この後さらに細かい仕様を定めなければならない。

  1. 各規制による設計基準

    グリドルの仕様を作成するに当たり、ガス、電気、衛生、消防、建築、仕様者の安全、などの各種の法規制を満たすものでなければならない。

    米国の機械であれば、ガスの場合AGA、電気はUL、衛生はNSF、安全はOSHAの各基準を満たしている必要がある。米国のこれらの基準はOSHAをのぞいて、民間の団体の自主規制であるが、これらの規制がない場合、火災保険などの保険に加入できず、なにか事故が発生したときには、使用者の責任になるので殆どその基準を満たすようになっている。また、その基準を作成するのは、各厨房機器メーカーや、電気、ガス、消防の専門家が参加し常に現実に見合うように見直しをされている。日本の場合、基準は厳しいが常に例外規定があり、現実とかけ離れている例が多く、規制官庁を跨ぐ場合、変更にかなり時間がかかるという問題がある。行政の簡素化を行いもっと民間で基準を合理的に作成運用する必要があるだろう。

  2. グリドルの材質、特に鉄板の材質

    グリドルの耐用年数は10年とし、各部品は消耗品をのぞき等しいものとする。グリドルの奥行き、幅、高さは作業の生産性を左右するので慎重に設定する必要がある。

    鉄板の材質は大変重要である。特に鉄板の硬度が十分に高くないとミートの焦げかすをとる際に表面を傷つけるし、その金属カスが肉に付着し異物混入事件となる。

    また、グリドルの表面が傷つき平面度が保てないと肉の焼けムラを発生し、十分に焼けず、食中毒を発生する原因となる。

  3. 入力の設定

    ガス

    使用ガス種類と対応のオリフィスの口径

    各ガス種類によりマニフォールド内ガス圧とオリフィスの口径を決定する。マニフォールド内ガス圧の決定は余裕を見て決めるべきである。現在は天然ガスや、LPGが普及し問題は少なくなったが、いまだに都市ガス特に5Cとか6Cなどのむずかしいガスも残っており、設定ガス圧も余裕を持つべきである。筆者の経験ではCガスの場合設定マニフォールド圧を45mmH2Oにしている。

    妥当なガス圧の設定には、グリドルを店舗に設置してから、全てのガス機器を燃焼させ(湯沸かし器を忘れてはならない)、グリドルの全てのバーナーに点火して、マニフォールド圧を計測する。実際の場合ガス機器の稼働率は50〜70%位にすぎないが、周囲のガスの使用状況がわからないのでここまで慎重に設定するのだ。

    電気

    電気グリドルの場合、ガスより構造がシンプルであるが、大きい電気容量を必要とするので、電気を遮断するコンタクターの信頼製のチェックが必要である。電気グリドルのトラブルは多くはコンタクターの焼損である。厨房の空気には調理によるオイルミストが多く含まれており、それがコンタクターに付着し焼損の原因となる。元々容量が多くスパークを発生するので耐久力に問題があることが多い。最近ではコンタクターを使用しないマーキュリーリレーの使用が増加しており、信頼性は高いようだ。また、接点を使用しない比例制御のトライアックなどを使用する例も増加してきたが、周囲温度などを低く保つ必要があるので注意が必要だ。

  4. 温度コントロールと安全装置

    温度コントロール装置は安全管理上最も重要であり、その仕様はよく検討する必要がある。

    口火が点灯しない場合の安全対策

    口火が消えていないのに、温度が下がったことを感知して生ガスが流れると、ガス爆発の危険性があるので、生ガスが流れない対策が必要である。一般的には熱電対を使用し口火が消えたらガスバルブを閉じるようにしている。最近では、自動点火装置の普及により、フレームロッド方式で、燃焼状態を監視する方式もあり安全性を増している。フレームロッド方式のメリットは口火が風で消えてしまっても自動的に再点火するので、知らずにグリドルの温度が下がり調理できなくなるという問題がなく作業上優れている。

    フレームロッド方式には二種類あり、バーナーが点火する際に毎回点火する方式で口火を省略する方法と、朝スイッチを入れたときに一回口火に点火し、後は口火が消えたときに再度自動点火する方式である。

    前者の場合は口火を常時点灯していないのでグリドル表面の温度を均一に保つことができ、かつ省エネルギーになるので最も一般的である。ただし、点火する際のイグナイターのノイズがコンピューターを使用している機器を誤動作する場合があるので注意が必要だ。また、信頼製の低下もあるので定期的な点検と交換が必要になる。

    温度センサー

    温度センサーには、メカニカルタイプの液膨張タイプ、サーミスター、熱電対、白金抵抗体などがある。

    液膨張タイプは米国のロバートショー等が主なものであるが、種類が3種類ある。旧型では温度に比例してガスの流量を制御するもので、表面温度を一定に保てる点で優れていたが、冷凍ミートには対応が遅く、熱効率も悪いので今では余り使われていない。そのほかスナップアクション、スローアクションのタイプがある。スナップアクションは接点容量が大きいので良く使用されているが、作動にフリクションがあるため、温度の幅が大きく応答速度が遅い、という問題がある。スローアクションは液膨張を直接接点の開閉に使用するので応答が早く、精度も高い。ただしグリドルに使用するにはセンサーの直径と形状が異なるので、互換性はない。

    サーミスターの作動原理は温度により変化する抵抗を利用し、微電流のミリアンペアーを計測し温度に変換する。比較的に安価で、特定の温度帯で精度が高いというメリットがある。しかし、使用する温度幅が広い場合には、温度カーブが直線的でないので、精度が低くなるという問題がある。

    熱電対は温度カーブが比較的直線的であるので、一般的に使用されている。熱電対の原理は異なった金属の接触面を加熱すると、電気を起こすというものである。CAというセンサーはクロメルとアルメルという金属の頭文字であり、金属の組み合わせにより特性が異なる。電気といっても微電力であるから、それを増幅するために回路がきちんと設計する必要があり、サーミスター方式より高価になる。しかし、形状がフレキシブルであるためグリドルで使用されるようになってきた。 白金抵抗体は最も精度の高い方式である。原理はサーミスターと同様であるが、抵抗値はどの温度帯でも直線的であり精度が高いという特徴がある。しかし、グリドルなどでは加工上の問題から、余り使用されていない。

    温度センサーの取付方法

    旧型のグリドルではセンサーをグリドルの下に取り付けているタイプがあるが、応答が悪いので現在はグリドル鉄板に埋め込みタイプが主流である。鉄板に埋め込む位置の選定はユーザーの調理パターンにより変わるので慎重に設定しなければならない。また、表面から近い方が応答性が良いが、余り近いとグリドルの表面が削れて露出するという問題があるので、深さとグリドル材質の硬さを慎重に設定する必要がある。

    開けた穴にセンサーを埋め込む場合、隙間があると熱が伝わりにくく応答が悪いので、熱伝導を向上するシーラーを埋め込む。

    *温度コントロールの表示方法はアナログとデジタルがある。温度調整をする場合デジタルの方が容易であり、普及し出している。

    その場合、温度コントロールの表示が狂った場合の誤差修正が簡単に出来ないとならない。

    加熱防止器

    どんなに精度の高い温度計を使用していても、壊れる可能性はあり、安全のため加熱防止器が必要である。加熱防止器は温度固定のメカニカルタイプを使用し、温度コントロールとは異なるバルブを使用しなければならない。

    また、グリドルを加熱するときに排気ダクトファンが稼働していないと、加熱し火災の危険がある。特に、点火する前にダクトを作動しないと危険であるので、ダクトブレーカーとのインターロック回路の設定をし、ダクトのスイッチを入れないと点火しないようにする必要がある。

  5. ガスバーナー

    都市ガス、天然ガス、LPGに対応すること。少なくと部品交換ですべてのガス種に対応しなければならない。

    バーナーは交換可能であり、耐久力があり、頻繁な清掃を必要としないこと。 燃焼したガスの排気中の一酸化炭素と二酸化炭素の比率をチェックし、基準以内でなければならない。

  6. 周辺機器

    グリドルのガス配管の直径は十分なガスを供給するものであること。

  7. グリドルの清掃方法

    鉄板焼きステーキハウスなどでは鉄板を清掃するのに、ステンレス製の金タワシなどを使用するが、グリドル表面が傷つき、消耗が早く、鉄屑が食品に混入するという危険性がある。現在では、グリドルクリーナーという耐熱製のアルカリ系の洗剤で洗浄する。この場合グリドルの上に残留する危険があるので、食品添加物などの安全な配合にしなければならない。また、アルカリ系の洗剤は目に入ると危険であり、最近では非アルカリ系の洗剤が使用されるようになってきた。

    また、引き出して清掃できるようにフレキシブルホースを使用し、ホースを簡単に脱着できるようにする。ときどき引き出してグリドルの後部などや下部の油の堆積を清掃し、火事にならないようにしなければならない。

    また、地震の際の安全対策上建物に固定出来るようにする。

クラムシェルグリドルの仕様

元々サンドイッチグリドルなどと呼ばれていたが、上板の開く様が二枚貝の形状に似ているのでクラムシェルグリドルと呼ばれている。

クラムシェルグリドルは普通のグリドルに上から加熱するグリドルを組み合わせるように思っている方が多いようであるが、実は設計の次元が全く異なる調理機器である。

作動原理

クラムシェルの原理は普通のグリドルでミートを焼くときに、片側を焼いてから、もう片方を焼くためにひっくり返す必要があるが、それを同時に焼くというものだ。ハンバーグをグリドルの上においた時に鉄板にうまく密着してきれいに焦げ目が付く様に、軽くターナーで押さえつける必要がある。しかし、あまり強く押さえつけると、旨味成分の肉汁が出てしまい、肉がぱさぱさして美味しくなくなる。

間隔調整

クラムシェルグリドルの最も難しいのはそのミートの押さえ方である。1〜2枚を焼く場合にはあまり強くてはいけないが、12枚を同時に焼くときには、強くなくてはいけない。本来は押さえる力を自動調整できればよいのだが、構造が複雑になるため、現在のクラムシェルグリドルは上下の鉄板の間隔を自動調整する方法をとっている。これがクラムシェルを製造する上での最大の問題なのだ。筆者の経験では上下の間隔の精度は±0.1mmでないと良い品質のミートを焼くことは出来ない。

グリドルの硬度

グリドルの清掃にはスクレーパーという金属の刃でカーボンをこすり落とし、閉店時には金たわしでこするのが一般的だ。金属でこすると言うことは当然グリドルの表面金属を削り取ることであり、平滑度を損なうのだ。その結果上下のグリドルの間隔は一定でなくなりミートを美味しく、且つ完全に焼くことが出来なくなる。そのため、一般のグリドルよりより高い硬度の金属を使用する必要がある。ところが硬い金属のグリドルを製造するには、グリドル表面をフラットにする加工が大変難しくなるのだ。

上部加熱板の材質と加工の注意

次に上の板の材質である。クラムシェルの形状から、ガスでの加熱は難しい。また、上下に動かす必要からあまり重い材質では困る。電気シーズヒーターを鋳込んだアルミ板を使用する。このアルミ板の製造が最大のノウハウなのだ。アルミ板の最大の問題は材質が柔らかく、歪みがでやすいということである。歪みが出ると上下の間隔が一定でなくなり焼けなくなる。

シーズヒーターのアルミ板への鋳込む位置により、歪みやすくなったり、温度が均一でなくなる。アルミの鋳造のテクニックにはいろいろあるが、手作業の分野であり、品質の安定が大変で歩留まりの低い部品である。鋳込むときに気泡が出来たり、ヒーターがずれてはいけないのでかなりのベテランが作業しなければならない。また、アルミを注入する際の型の余熱温度などかなりの注意が必要だ。

アルミ板の厚さは歪みが出にくい様に十分に必要だが、あまり厚すぎると重くなるのでバランスが必要だ。あまり重くなるとアルミ板を上下させる機構の耐久力に問題が発生する。

アルミ板で直接ミートを焼くことは出来ない。ミートが付着しやすいし、スクレーパーなどで清掃すると、簡単に傷が付いてしまうからだ。そこで強度を増すために、ニッケルやクロームなどの金属メッキをする。これにより表面硬度を増加するのだ。メッキがアルミ板にきれいに密着し、平滑度を高くするためには、アルミ板の研磨を慎重にやらなければならない。表面仕上げはミクロン単位の精度が要求される。また、表面研磨したときに気泡がある場合には使用できない、汚れが溜まりカーボンとなり調理能力を落とすからだ。

清掃方法

次にメッキの密着度が重要だ。簡単にはがれるとそこから、どんどんメッキが剥がれていくのだ。メッキの重要性は単に強度だけではない。清掃の際の洗剤に耐える材質でなければならないからだ。いくらメッキをしてあっても金属タワシでこすっては、あっと言う間に磨耗してしまう。そこでアルカリ系のグリドルクリーナーで洗浄する必要がある。しかしアルミはアルカリ洗剤で洗うとあっと言う間に腐食し、月面のクレーターの様に穴凹だらけになってしまう。そのためにメッキをするのだ。

しかし、メッキをしても長年使用するうちにピンホールが出来てそこからアルカリ洗剤がアルミ材を腐食する危険がある。そのために、非アルカリ系のアルミを腐食しない洗剤を使用しなけれならない。また、洗剤を使用するのは普通100℃以下であるが、温度を下げるために水をかけられるとアルミ板が歪む危険があるので、高温の状態で洗剤が効果を出るようにする必要がある。クラムシェルを使用するときには専用洗剤を使用することを忘れてはならないし、ユーザーにしっかり指導することが重要だ。

こびり付き対策

表面をミクロン単位で研磨し、メッキをすると強度は増すが、油が浸透しないと言う問題がある。そうするとミートを焼いたときに板表面にミートが焦げ付いて離れなくなる。また、焦げ付いたカーボンを取り去るのは大変なので、テフロンシートを取り付ける。

テフロンシートは消耗品なので簡単に脱着し、緩みが出ないようにしなければならない。閉店後は毎日きれいにタオルで汚れをふき取り表裏を交互に使用すると長く使用できる。

アルミ板の清掃には柔らかい材質のスクレーパーを開発しなければならない。また、アルバイトが作業するときに十分注意して丈夫のアルミ板を傷つけないようにトレーニングする必要がある。

食材の品質管理

クラムシェルグリドルの上下の間隔がいかに正確にコントロールできても、使用するミートパティの品質が良くなくては、きれいに焼くことは出来ない。

ミートで大事なのは厚さだ。クラムシェルの間隔の精度は±0.1mmであるから、当然ミートの厚さの精度も同じでなければならない。

次に重要なのは温度管理である。冷凍ミートはー18〜ー22℃で保管するわけだが、工場などからの配送途中で温度が上昇し、表面が解凍して、再冷凍すると表面が白く変色し乾いてしまう。そうすると同じ時間では充分火が通らなくなる。 また、工場での製造行程も慎重にしなければならない、ミートをグラインド、ミンチにする段階の温度管理、ミキシングの程度、脂肪含有量により、焼成時間と焼成後温度が変わってしまうのだ。従来の目で焼けを見る方式であれば良いが、クラムシェルのように高速に自動的に焼く場合には大きな問題になる。

最後に

以上にように、クラムシェルなどの高精度の調理機器の場合、ガス燃焼、金属材料、計測機器、などの機械メーカーとしての知識だけでなく、作業方法、清掃方法、洗剤、食材、など幅広い知識がなければ良い機械を作ることは出来ないことをおわかりいただけたと思う。

最近の良い例ではインピンジメント方式のコンベアーオーブンがある。ガストが導入して各ファミリーレストランは競って導入しようとしているが、機械を導入するだけではうまく行っていないのだ。もっとも重要なのはそれにマッチした食材の開発と、オペレーションの開発なのである。 これから、それらの項目を分かりやすく説明し調理機器の設計に役に立てるようにして行きたい。


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