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月刊厨房
今、ユーザーが求めるファーストフードの厨房設計

シリーズ第11回

キッチンレイアウトとフロー


キッチンレイアウトとフロー

調理方式による厨房レイアウトとフロー

前回述べたようにM社の厨房は、従来のコーヒーショップの厨房と同じ考え方であり、売上が上がると導線の重複という問題をかかえだしたのである。さらにドライブスルーの売上が上がり、図ようなダブルウインドーのドライブスルーが出現すると、さらに厨房の導線が複雑化するという問題点も出てきたのである。

B社の調理方式と厨房のレイアウト

後発チェーンのB社はM社の導線の問題点に気がつき独自の調理方法と厨房のレイアウトを考案した。

図1
米国のハンバーガーは元々、野外でやるバーベキューでの代表的な調理方法であり、ミートを網の上に乗せ、炭火で焼くのが本格的な調理法である。炭で焼くと肉汁が真っ赤に燃えた炭の上に落ち、ジュワーッと煙がでて、その煙でミートが香ばしい匂いになるのである。

そこで、網をコンベアーにして循環させ、コンベアーの上のミートを上下から、赤外線ヒーターで焼く方式を考えだした。上下から同時に焼くことにより、ミートを途中でひっくり返すことがなく、どんどん連続に焼くことができるようになった。また、調理時間もコンベアーのスピードでコントロールできるので、安定したミートの焼けを実現でき、品質と生産性が向上した。

従来のM社の調理方法はオーダーが入ってから1サイクルの調理個数を決め、それが出来てから次の調理サイクルに入る方式であり、バッチ調理方式(一括調理)といわれている。それに対して、B社の調理方法はコンティニューアス(連続的調理)調理方式である。図1のB社の図面を見てみよう。オーダーが入るとミートフリーザーからミートを取り出し、コンベアーの網に乗せる。同時に同じ数のバンズをコンベアーに乗せる。これにより、一人の人間がミートの数と、バンズの数をコントロールするわけであり、間違いがなくなる。

M社では焼け上がったバンズにすぐにケチャップなどのコンディメント(調味料)をドレスする。そして、焼け上がった肉をのせ、紙容器に包み、ウオーマーディスプレーに入れるストック・ツー・オーダー方式であった。保管時間は10分間であった。10分間というのはケチャップなどが染み込まない時間であり、それ以上長くするのは難しいものであった。そして、10分間を越えると廃棄処分しなければならず、保管するハンバーガーの個数は、お客様が待たないですみ、かつ、廃棄をしないで済むように、常に売上を予測しなければならない、大変熟練の必要な作業であった。また、米国のお客様はグリルオーダーといい、ケチャップや、マスタード、ピクルスなどを除いてくれという特別注文が多く、保管してあるハンバーガーとは別に新たに調理する必要があり、オペレーションに混乱をきたしていた。

そこで、B社は焼け上がったミートとバンズをすぐにドレスするのではなく、スチーマーに10分間保管するようにした。そして、必要に応じてハンバーガーを組み立てて、完成したハンバーガーはお客様を待たせない程度にディスプレーウオーマーに10分間保管しておく。つまり、焼き上がったミートとバンズを20分間保管することを可能にしたのである。これを、アッセンブル・ツー・オーダーという。これにより、売上の波にも対応出来るようになり、サービスのスピードが向上し、かつ、廃棄処分の金額も少なくて済むようになった。 もう一つのメリットは、お客様の特別注文に対してすばやく対応できることである。カウンターにマイクロフオンを置いて、注文が直接調理担当者に伝えるようにしたので、特別注文のスピードが早くなり、特にドライブスルーのスピードが大きく向上した。

B社の厨房のレイアウト

B社の厨房のレイアウトとフローを見てみよう、裏の入り口から入った資材は、常温保管のものはすぐに棚に、冷蔵品、冷凍品はウオークインに保管する。資材は各作業スペースのそばにあり、必要なときに簡単に取り出せるようになっている。ミートハンバーガーの調理はコンベアーブロイラーから、スチーマー、ドレステーブル、オーブン、ディスプレーウオーマーと導線が重複することがなく、厨房のフローがスムーズになり、資材の供給と人の導線が重ならないようになり、生産性が向上した。

フレンチフライやフライ食品には、ディスプレーウオーマーの横にフライヤーとドレスステーションを設けて調理している。フレンチフライを調理する人間は、カウンターの方向を向いて売上を見ながら調理でき、売上の波に対応することができるので作業性がよい。B社の厨房の生産性の高さはM社に比べ30%以上高いといわれている。

M社のグリドルの改善

さて、このB社の調理方式は大成功し、生産性の高さを生かしてNO.1のハンバーガーチェーンになるべく大躍進を開始したのである。大きなインパクトを受けたM社は、 17〜8年前からフローの悪い旧式の厨房を改造せざるをえなくなった。

厨房の改造の前にグリドルの改善に取り組む必要があり、B社のコンベアーブロイラーを製造しているN社にコンベアー型のグリドルの製造を依頼した。M社は伝統的に鉄板でミートを焼いており、そのシステムを変更することは望まなかった。そこで、上下から加熱した鉄板でミートをサンドイッチ式に調理する方式と、その鉄板にミートを自動的に供給するコンベアーを組み合わせた、全自動型のグリドルを試作した。この方式でM社は特許を数多く取得した。しかしながらこのシステムは店舗に導入することなく消え去ってしまった。

メニューの多角化が厨房に与えた影響

17〜8年ほど前よりハンバーガーチェーンの間で、メニューの多角化が進められるようになった。ハンバーガーというのは、昼食時の食べ物であり、従来は朝の10時からしか営業していなかったのである。そこで売上を延ばすために、朝食メニューの開発を行ったのである。米国の伝統的な朝食はスクランブルエッグや、目玉焼き、ハム、ベーコン、ソーセージ、ホットケーキなどであり、グリドルで調理するものであった。もし、全自動のグリドルを採用しても、朝食用のグリドルを置くか、それ専用の自動調理機器を導入する必要があった。

そのため、全自動コンベアーグリドルをあきらめ、数多くのメニューに対応できるグリドルの改良を考えた。それが、クラムシェルグルドルである。2枚貝のような形状をしているので、クラムシェルグリドルと名付けられた。ミートを焼かないときは、上の鉄板の電源を切り、下部の鉄板で調理し、昼時にミートを調理するときに通電するようにした。つまり、一つのグリドルで、朝食メニューとミートサンドイッチを調理できるようにしたのである。 朝食のメニュー開発に成功したM社は大躍進を遂げたが、コンベアー式ブロイラーを使用しているB社は朝食の開発に時間がかかり、M社に大きく売上を離されてしまったのである。

コンベアー方式のコンティニューアス調理方式は生産性が高い反面、調理する品目をきちんと設計し同じ時間、温度で調理が可能になるように綿密な商品開発が必要なのであり、調理にも工夫が必要である。チェーン展開の途中で全く異なった調理方式のメニューを導入するのは困難なのである。

勿論B社は長い間米国の大手食品会社の傘下にあったので、食品のメニュー開発ではM社より力はあったのであるが、それでも苦労している。しかしながら、いったん開発に成功すると品質の安定性及び味は大変良いものがある。その典型的なメニューが、グリル焼きのチキンサンドイッチである。両社を食べ比べるとわかるが、B社のチキンサンドイッチは抜群の美味しさで、年間の優秀商品に選ばれた位である。

M社の厨房レイアウト改善

M社は次に厨房のレイアウトの改善に取りかかった。厨房レイアウトを図2のようにして、フローを改善したこのレイアウトにより資材の流れがスムーズになったのである。しかしながら、ストック・ツー・オーダー方式で調理をする限り、グリドル、バンズ、ドレスの作業導線の重複を避けることが出来ないし、お客様の特別注文にも対応できず、ドライブスルーのサービススピードの向上も難しかったのである。

そこで、M社もB社と同様のアッセンブル・ツー・オーダー方式を採用することにした。最初は、アッセンブル・ツー・オーダー方式に否定的であったが、朝食メニューの増加の為、卵料理を特別開発の加湿保温庫で保管をするようになった。このシステムの採用により、サービングタイムを大幅に短縮し、かつ品質も向上したことに気がつき、ついにはミートやバンズも保管するようになったのである。この導入によりM社の厨房は大幅な変化をとげ、それが新たなビジネスチャンスを生みだしたのである。

新しいビジネスチャンス

ここ数年米国のハンバーガーチェーンは売上の減少に悩まされてきた。理由は、景気が悪いことと、競合店の数(自社の店舗の競合も含んで)である。従来の大型店舗では損益分岐点が高く利益がでないので、新店舗を出せない、そうするとチェーン全体の売上が延びないという悪循環に陥ったのである。

ところがその中で、ペプシコーラグループのタコベルがリエンジニアリング革命で大成功を納めだしたのである。リエンジニアリングの成果は、店舗での調理を合理化し厨房を小型にすることにより、同じ大きさの建物で客席を倍増したことである。さらに、店舗での調理を簡単にしたために(ゼロキッチンと呼ばれている)、学校給食や、スーパーマーケット、ガソリンスタンド、エアーポートなどの、従来出店することができなかった、人の集まる場所に出店することが可能になり、売上を急成長させているのである。

そのタコベルの成功に元気ずけられたハンバーガーチェーンも、従来の厨房よりコストの低い店舗を従来と異なった場所、つまり、お客のいるところに出ようではないかと考えだした。厨房の作業の合理化にアッセンブル・ツー・オーダー方式を使えば、現場で調理する必要がないことに気がついたハンバーガーチェーンは、タコベルと同様にあらゆる人の集まる場所に出店を開始し出したのである。

日本でのコンベアー調理の可能性

以上、同じハンバーガーチェーンであっても、バッチ方式の調理方法、コンティニュアス方式の調理方法と、システムへの取り組み型は異なっているのである。日本ではM社が独走状態のために、飲食業の型はM社の厨房レイアウトを参考にする例が多いようであるが、先に説明したように、M社が真似をするくらいB社の厨房レイアウトは優れているのである。

B社の開発したコンティーニュアス調理方式のコンベアー調理機は労働生産性が高く、アルバイトの人件費を大きく削減でき、かつ調理が簡単なために、品質も向上するというメリットがある。そのため、日本ではガストがコンベアー式のエアーインピンジメントオーブンを、てんやがコンベアー式遠赤外線フライヤーを採用し、独自に商品開発を行い、コストを大幅に下げ商品売価を下げることに成功し、この不況の中大成功しているのである。

しかし、このコンベアー方式のコンティニューアス調理方式は生産性が高い反面、調理する品目をきちんと設計し同じ時間、温度で調理が可能になるように綿密な商品開発が必要なのであり、調理にも特別な工夫が必要である。そして、チェーン展開の途中で全く異なった調理方式のメニューを導入するのは困難なのであることを理解し開発をする必要がある。

たとえば、てんやの場合、ふつうのてんぷらは1分30秒で揚げているが、大型の海老はいったん油に沈み、しばらくして、油から浮いてからコンベアーに流す。かき揚げはコンベアーの上部の油の中にステンレス板を敷き、その上の型に流し込み整形しそれからコンベアーに流す(3分間ほど揚げる)などの工夫をしている。ガストでも大型のハンバーグを鉄板で焦げ目をつけてからコンベアーに流すなどの工夫をこらしている。

以上のように厨房のレイアウトは、調理方式と調理機器のシステムに大きく影響されるものである。そして、システムの組み方次第で企業の戦略や将来が大きく左右されるのだということが理解されたと思う。

次号

さて、以上2種類の厨房の調理システムをとレイアウトを説明したが、次号では、商品をどうやって迅速に、大量販売するかを考えていく。


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