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月刊厨房
今、ユーザーが求めるファーストフードの厨房設計

シリーズ第三回

ドーナツの厨房


ドーナツの厨房

日本ではドーナツのファーストフードというとやや時代遅れで、マーケットが小さく余り参考にならないと思われている。米国のファーストフードの中で最も参考にされているのが、マクドナルド等のハンバーガーチェーンである。ハンバーガーチェーンのオペレーションシステムや、マニュアルは確かに優れているが、実はレストランチェーンのオペレーションとは全く異質な物なのである。ハンバーガーチェーンの厨房内では熟練した調理人は全く必要がない。食材は全て、原材料メーカーで必要なポーションサイズに加工され、店舗では全く加工する必要がなく、グリドルやフライヤーで加熱調理するだけである。包丁やまな板は存在しないのである。

レタス等の野菜も洗浄殺菌され、カット後袋詰めされ店舗に搬入される。ソース類も事前に調合され、カートリッジに詰められており、店舗ではソースガン等で、ワンポーションづつディスペンスするだけである。ハンバーガーチェーンではシステム全体の設計が重要であり、個店単位のレストランが真似をするには、店舗全体のシステムをきっちり設計しないと、かえって矛盾が生じるのである。

ドーナツのチェーンは、ドウの仕込から発酵、フライまで店舗で実施する。その為ドーナツマンという専門職の養成が必要になってくる。普通、パン屋の職人は一人前になるまでに何年もの徒弟奉公をし、先輩の仕事を見よう見真似で覚えるという、前近代的な人材育成方法である。それでは急速なチェーン展開はおぼつかないので、ドーナツマンの養成を効率よく短期間でおこなうべく、ドーナツ大学というトレーニングセンターを作り、30日で養成出来るようにした。また、粉を事前にプリミックスし、温度調節をした一定量の水を合わせれば自動的にドウが出来るようなっている。

ドーナツ大学というと、何か学問を教えるように思うが製造の実務が中心であり、ただひたすらにドーナツを作るのである。従来のパン職人の養成と異なるのは、原材料がもったいないからと言って店舗で作り方を教えるのと違い、トレーニング中の完成したドーナツは惜しげもなく捨ててしまう事である。これにより、普通3ー4年かかる発酵技術の難しいイースト菌のドーナツの製造を、1カ月で教えてしまうのである。

卒業試験が変わっている。8時間以内に2、000個のドーナツを完成しなければならない。どんなに良い形のドーナツを作っても、数が2、000個に満たないと卒業出来ないのである。このようにして職人を短期間で養成するというシステムはハンバーガー等のチェーンシステムより、日本の職人芸的なレストランチェーンの展開に大変向いているのである。

今回は、ドーナツの厨房とシステムがどうなっているか見てみよう。

ドーナツの種類は大きく分けると、イーストドーナツ、ケーキドーナツ、チョコレートケーキドーナツ、フレンチクルーラの4種類のミックスである。イーストドーナツはパンと同様に発酵をしなければならないので、アルバイトでは製造出来ない。その他のドーナツはベーキングパウダー等で膨らませている為、アルバイトでも製造出来る。

ドーナツの製造を見てみよう。朝7時に店舗を開店するには、開店4時間前の3時には店舗に入り仕込を開始しなければならない。

  1. 製造方法

    イーストドーナツ

    配合

    ミックス20kg,水10リットル,生イースト1kg、これで60ダースのドーナツが出来る。

    温度調整

    生地の出来上がり温度が28℃になるように粉温度、摩擦熱を計算し、水温を算出する。こねあげ後の温度が低いと、発酵がうまく行かず生地のボリュームが出なく固くなる。温度が高すぎると、発酵が早すぎ、途中で生地が縮んだり、酸味が出る。

    ミキシング

    水と生イーストを先に混ぜ、次にミックスを徐々に入れスロースピードでゆっくり混ぜる。次にハイスピードで10〜15分間ミキシングする。ミキシング時間は粉の特性により異なってくる。季節の変動により粉の性質に違いがあり、吸水率が変わるので十分注意し調整する。一般的にドウが出来上がる時には、バタバタという音によってそれを判別する。更に小量のドウを取り、それを延ばし、きれいに透明になるように延びれば、完全な出来上がりである。

    1次発酵

    出来上がったドウをミキサーボウルに入れたまま発酵させる。ドウの出来上がりは室温湿度により異なるが、30〜40分間である。

    分割丸め

    1次発酵の終わったドウは、元の倍くらいに膨らむ。それを取りだし、カッティングベンチの上で分割し、丸める。10分間ほど放置し、カッティングを行う。

    カッティング

    分割した生地が柔らかくなったら、それをドウローラーで一定の厚さに延ばし、ドーナツリングの形状のカッターで型を抜いていく。40〜60分間かかる。1個あたり42〜45gであり、誤差は±2gである。

    2次発酵

    カットしたドーナツは網に置き、ドーナツラックに入れる。全部の型抜きが終わったら、ドーナツラックごと、発酵機(プルーファー)に入れる。発酵時間は季節により異なるが、45分間である。発酵機の温度は30〜40℃、湿度は50〜90%である。温度、湿度はドーナツの状況によりコントロールする。温度が高いとドーナツは乾燥し上に膨らみ、フライすると中に空洞が出来る。湿度が高いと横に膨らみ、油を吸い易い。適度なバランスが必要である。

    また、内部の上下左右で、湿度温度のバラツキがあるので、ローテーションをしなければならない。従来は最も技術の必要な所であったが、最近、精度の高い湿度コントロールのついた発酵機が出てきたので管理が容易になった。発酵機からドーナツラックごと出し、10分間ほど乾燥させる。さもないと、ドーナツの吸油が多くなる。

    フライ

    温度は、大きさにより変わるが、180〜190℃で、片面30秒づつ揚げる。大きな物は油の中に沈めて揚げる。合計のフライングタイムは30分間である。仕込から合計3〜4時間はかかるのである。

    フィニッシング

    リング状のドーナツは熱い内にハニーディップ等のコーティングをする。その他のドーナツは冷却し、クリームやジャムを詰め、シュガーコーティングをする。このフィニッシュングの作業は、アルバイトでも可能である。

    作業の組み合わせ

    厨房の図面を見てみると、以上の作業の流れに沿って製造がスムーズに行くようになっている。厨房は基本的にドーナツマンが一人で効率良く作業が出来るように、コンパクトに設計してある。その為、如何に効率よく時間を配分し最大限の生産量を確保するかが、生産性向上のノウハウである。例えば、イーストドーナツのミキシングの後、発酵に時間がかかるので、すぐにケーキドーナツ類の仕込にかかる。ケーキドーナツはミキシング後すぐにカッティングし、フライする事が可能である。イーストドーナツの製造は時間がかかるので、販売量の多い店舗では一晩中製造する必要がある。その為、ドーナツチェーンの店舗では24時間営業が多いのである。

  2. 現状の問題点

    米国でもドーナツマンの仕事は過酷なので、今では海外からの米国移住者の人がフランチャイジーになっている状況が多く見られる。米国では、人手不足と言っても、3Kと言われる作業環境の悪い職場でも、収入が良ければ働くのである。しかし、日本のように労働者に階級がない国では、夜間のドーナツマンの成り手が少なくなってきている。特に日本でのチェーン展開に際して、フランチャイジーを選ぶときに、個人のやる気のある人よりも、財政的に余裕のある企業を選んでしまったのである。当初のチェーン展開においてはそれは大きく貢献し、短時間の間に、数百店のチェーンを展開する事に成功した。しかしながら、人手不足の時代になるとドーナツマンの確保という問題が発生してきた。そこで、工場での製造の検討がなされるようになって来たのである。

    米国でも20年ほど前より全自動のドーナツ製造機械、のテストをしていたが、人のコストと比べ採算があわず、また、まだ働くフランチャイジーがいる為、必要性を感じず、実用化には程遠いのが現状である。そこで日本独自の開発が試みられてきた。冷凍の生地を使い店舗で解凍後発酵しフライするというシステムである。

    原理的にはインストアーベーカリーと同じであり、冷凍生地をドーコンディショナーで解凍後、発酵するわけである。インストアーベーカリーとの大きな違いは、店舗の設備投資を抑えなければいけないという事である。インストアーベーカリー用のドウコンディショナーは高価である為、安価なドーナツ用の専用機の開発が必要になった。その為、発酵機に、正確な湿度センサーと、タイマーを組み合わせた、簡易型のドウコンディショナーを開発している。

    ドーナツショップは元々粉から作るので、大型の冷凍庫の設備がなかった為に、冷凍庫の増設も必要になったり、冷凍生地を作る大型工場の確保も必要という事であり、開発にかなり時間をかけ、今年度から導入が開始されるようである。

  3. 今後の方向、食事化

    ドーナツはおやつとしての用途がメインであり、食事としては、朝食としてとられているのみであり、食事という巨大なマーケットを拡大するには力不足である。その為、M社ではマーケットを拡大するために、中華点心等の飲茶の導入を予定している。メニューは肉まん、海老餃子、シューマイ等であり、従来の設備にたいして、スチーマーや保温庫を導入する。一般的に飲茶は蒸して温かい内に提供する物であり、保管するのが難しい物であったが、特殊な機器を開発し保管時間を2時間にする事が可能になった。

    投資額は飲茶関係で750万円で総額1300万円もの投資額になる。この飲茶の導入により、1店舗あたりの月間売上は、30%増しの1、450万円を見込んでいる。食材は冷凍で店舗に搬入される。中華食材は機械化が難しい為、輸入食材を一部使用するのではないかと思われる。

    また、D社は昼食マーケットを開発する為に、クロワッサンサンドイッチを販売し売上の増加をはかっている。

    新商品を売り出すという事で、売上の上昇効果はあるのであるが、新たな問題も発生してくる。

    ドーナツチェーンは元々大きな投資が不要であり、食品原価も低いので利益率が高く、フランチャイズチェーンの展開に大変適していたが、冷凍食品や、工場加工した食材を使用するようになると、食品原価が上昇したり、他のチェーンに真似をされ易くなるという危険性がある。今後どうなるか注目される業界である。


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