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「海外情報 外食事情Overseas」 ドイツの病院用セントラルキッチンと老人ホーム学校


今回の欧州視察旅行の目的はドイツの調理施設だ。最適厨房研究会では厨房環境の研究をしており、ドイツの厨房規格が明確な数値を設定しているので、その実態を見学しようというものだ。厨房環境というとまず、厨房の空調が効いているかということだ。日本の通常のレストランでは未だに空調が十分に効いておらず、厨房の温度は夏場には最高40℃にもなるのは当たり前だ。
ドイツの規格では25℃以下の温度を実現しているだけでなく、厨房内の空気汚染も問題にしている。空気汚染とは厨房で肉や魚などを焼いたりしたときに発生する煙、揚げ油の油煙、などだ。それらの煙や油煙には発癌性物質が含んでおり、健康障害を引き起こす危険があるといわれている。ドイツでは温度だけでなく、空気汚染も留意した厨房設計をしているという。その実態を見学しようというのが今回のおもな視察旅行の目的だ。
まず、ドイツのフランクフルト郊外の病院用セントラルキッチンを見学することにした。マイン・タウヌス・クリニクム(Main Taunus Klinikum)グループのセントラルキッチンだ。3年前にMTKグループのセントラルキッチンとして建設された。グループ所属施設のほぼ中央に位置している。所属施設にはバッド・ゾーデンの病院、ホーフハイムの病院、ホーフハイムの専門病院、エプシュタインの高齢者施設、ホーフハイムのレハ・センター、バードゾーデンの高齢者施設があり、ほかに学校4校にも配食。クック・チル・システムで調理をしている。施設の担当者はヘルマン氏(Mr.Helmut Herrmann)という方で厨房の責任者を務めている。

住所:Siemensstra?e 25, 65779 Kelkheim
Tel: 06195−6777 17(厨房)セントラルキッチン
   06196―656(病院) Bad Soden
Fax: 06196−657001(病院) Bad Soden
ホームページ http://www2.kliniken-mtk.de

セントラルキッチンの厨房は2005年に完成した。
・管轄の患者:約600人
・同建物内でランチとして約500食を3つの病院に配食、他、3つの老人施設、4つの学校等に約600食(温食)を配食している。病院や老人施設向けの朝食は700食を配食。配食のエリアはセントラルキッチンを中心に10kmほどの距離であり、製造能力は最大3500食まで可能。
・スタッフ:38人(コック、栄養士、調理補助)
・食事代は1日19ユーロ
セントラルキッチン内を責任者のヘルマン氏にご案内いただいた。周囲を畑に囲まれたのどかな工場団地にある施設はこじんまりした外観だ。まだ3年しか経っていない施設であるので、大変綺麗に保たれていた。食材の受取と保管もきちんと区分けされ衛生的な管理をしている。ジャムなどは一人向けの容器に入っているが、同じジャムで複数の容器がある。これは配食先の食事代が異なるためで、高単価の料理は小型のビン入りを使っている。
メインの調理場の空調は置換換気空調システムを使用しており、ガラス窓からは外の景色が見えるようになっており、明るく広々としている。クックチルで使用するメインの調理機器はケトルと大型のスチームコンベクションオーブン。そして大型のブラストチラーだ。クックチルの調理は食材の中心温度を75℃まで加熱している。
ケトルはLainox社のProvenoというコンビケトル機種3台で、加熱調理後に冷却水を循環させ冷却できるようになっている。攪拌機能もついており、攪拌しながら自動調理と冷却ができるようになっており、ソースやスープ類などの液体のクックチルで使用されている。
http://www.lainox.com/detail.php?id=24
スチームコンベクションオーブンはラショナル社の大型ロールインタイプ3台とカウンタートップタイプ1台。その他の調理器具はブレイジング・パン2台と通常のケトル、電磁調理タイプのコンロだ。
調理した料理はカートインタイプのブラストチラーで冷却する。チラーはスルータイプになっており、調理場の反対側の冷蔵保管庫にそのまま運ぶ。
次に見学したのは盛付場だ。必要な食数と処方箋に基づき食器に盛付け、トレーに載せていく。盛付している料理はパンとハム、チーズ等の簡単な料理で、夕食用だ。盛付したトレーを配食用のカートに設置してトラックに積み込る。配食カートの冷却システムは機械式ではない。トラックに積み込むまで大型冷蔵庫に保管し、トラックに積み込む直前にカート上部に炭酸ガスを吹き込み、ドライアイスを作るのだ。この方式だと、冷却システムなどが不要で、清掃やメインテナンスが楽だ。機械式の冷却システムは複雑な形状であり、脂汚れなどがたまりやすく、ゴキブリなどの巣になりやすい。洗浄水をかけると電気系統にトラブルを引き起こすこともあり、メインテナンスが難しいという問題を抱えている。その点、ドライアイスを使用するカートは衛生的な観点から考えると丸洗いできるので大変優れていると思えた。
帰ってきた食器類を洗浄する洗浄ラインはやや狭いのだが、きちんと整理整頓している。洗浄器は食器やトレイ別に分けて2台を使用している。その他、食缶洗浄器も使用している。通常は厨房の片隅の薄暗い場所に洗浄機を設置するが、この洗浄ラインの部屋には大きな窓ガラスを設けており、開放的な雰囲気をもたらしている。
病院用の給食であるので処方箋を使い、患者により食事の献立を変えている。その処方箋による献立を作る専用の部屋があり、そこで一括して献立を印刷し、調理場と盛付場に渡すようになっている。

 厨房見学の後はランチを試食した。当日のメニューは魚、チキン、ベジタリアンの3つのメニューだった。魚料理は白身魚のソテー・クリームソースかけ、付け合せはほうれん草のソテーとじゃが芋。チキンはハムとチーズを挟んだ鳥胸肉のパン粉揚げ、いわゆるチキンカツだ。付け合せはグリーンピースとじゃが芋のグラタン。ベジタリアンメニューは植物蛋白で作ったミートボールのトマトソースかけ、付け合せはじゃが芋。
 この鳥料理が大変美味しかった。レストランの料理にも負けない味つけだった。ベジタリアンもまるで本当の肉を使ったミートボールのような味付けと食感であった。
それぞれの料理には飲み物とデザートがついている。病院食といいながら、健康な人が食べるメニューであるので結構カロリーがありそうであった。


次に訪問したのはAltk?nig-Stiftアルトケーニッヒ 老人施設だ。
老人施設 アルトケーニッヒス・シュティフトEG
(Alk?nigs-Stift EG)
厨房見学:担当者:クルマン氏(Mr.Kullmann)厨房チーフ
住所: Feldbergstra?e 13-15, 61476 Kronberg
Tel. 06173 - 310
Fax 06173-63303
ホームページ http://www.altkoenig-stift.de/
施設は4棟あり、入居者は650人(クラスはA、B、C、Dに分かれている)
1,厨房   9年前改装
・スタッフ 調理士6人、治療食調理士2人、パティシエ2人、
      調理補助5人、調理手伝(女性)7人
・生産方式 クック・サーブ方式
      650〜700食/日
・メニュー
  常食  3食
  治療食 易消化食2種、ベジタリアン食、減塩食2種、
糖尿病食2種
※メニューによっては常食で代用

 フランクフルト郊外の小高い丘に建っている老人施設だ。林に囲まれて何棟かのビル棟がたたずんでいる。まるで軽井沢のリゾート地にあるような素晴らしい環境だ。周囲は比較的裕福な人たちが住んでいる住宅地となっている。各部屋のベランダには綺麗に花を植えた植木鉢が設置され、見た目にも普通の高級マンションのようだ。メインの入り口はまるでホテルのように綺麗で、入り口広場には花が綺麗に植えられている。入り口の横はカフェになっており、人々が集ってお茶を楽しんでいる。入り口のロビーは吹き抜けで太陽光が差し込んで老人ホームの暗い雰囲気は微塵もない。ロビーにはゆったりとしたソファーが備えられている。
 ホテルのようなロビーから調理場に向かい、調理責任者のクルマン氏にご説明を受けた。
4棟に650人の入居者がおり、厨房は9年前に改造した。スタッフは調理6名(5年の経験を持つマイスターの資格を持っている)とその他、16名がいる。
1日の調理食数は650〜700食で、クックチルではなくクックサーブで提供している。入居者は650名だが、300名の職員や外部からの訪問者が食べるため(場合によっては750食になる)700食になることもある。クルマン氏はホテル勤務の経験のあるベテラン調理人で、クックチルを使用していないのは、ホテルのサービスのような付加価値をつけるためのようだ。
朝食は3種類、昼食は、柔らかい食事、ベジタリアン、減塩食、糖尿病食、等に分かれている。クルマン氏にカロリーや塩分を伺ったが、カロリーを控えめにしたり塩分を少なめにするという、レストランのシェフとしての味付けだそうで、病院のような厳格なコントロールはしていない。
昼食がメインで700食前後、朝食は25食〜35食のみ。夕食は10〜50食に過ぎない。居住室には調理施設があるので、それを利用する人も多いようだ。昼食が多い理由は、昼食を一緒に食べないで部屋に閉じこもるのは精神的にも問題があるので、入居者に昼食は必ず一緒に食べることを義務付けているためだ。
昼食に重点を置くもう一つの理由は、ドイツでは昼食が一日のメインの食事だからだ。メインの食事は先ほどのセントラルキッチンで食べた食事のようにボリュームたっぷりの肉や魚料理だ。夕食はパンとチーズ、ハム類などの冷たい食事となる。朝食はフルーツやパンなどとコーヒーというシンプルなもの。日本のように3度暖かい食事を食べるという食生活とはだいぶ異なる、合理的な食事だ。クックチルを使わないでクックサーブでやっていけるのはそのドイツの食生活のお蔭だろう。厨房というのはその国の食生活に大きな影響を受けるのだなと感じさせられた。
さて、厨房だが、小型のブレージングパンが主力調理機器で、スチームコンベクションオーブンはラショナルの大型1台、小型の機種が3台。ブレージングパンは大型3台、小型のものが6台ほどある。幾つかのブレージング・パンは軽く圧力がかけられるようになっている。その他、電磁調理器のコンロがある。ヨーロッパも電磁調理機器が普及しつつあるようだ。排気は置換換気の天井排気システムを使用している。この厨房も広々とした窓ガラスがあり、外の樹木を見れるようになっていた。
広々とした食堂はカーペットが敷き詰められ、テーブルには本格的なレストランのようにテーブルクロスを使っている。中庭の植栽を眺めながらゆったりと食事を楽しめるようになっている。
ロビー入口にあるカフェは、ガラス張りの天井で明るく太陽光が差し込んでいる。冬の長いドイツの工夫のようだ。カフェでは、コーヒーの他に、ケーキなどが楽しめる。入口のカウンターは高級なカフェのような立派な施設で、回転式のガラスショーケースには美味しそうなケーキが並べられている。客席はカーペットが敷き詰められており、丁寧な従業員によるサービスも完璧だ。白いテーブルクロスを敷いた各テーブルにはお花が活けてある。厨房見学後の質疑応答の後は、このカフェでお茶を楽しむことにした。
 両施設を見学して感じたのは厨房の設計と調理機器の採用はその国の料理の種類に大きく影響されるということだ。ドイツの料理は煮物とソテーが多く,炒めものや揚げ物が少ない。揚げものもディープファットフライヤーで揚げるのではなく、ブレージングパンなどに少なめに入れた油で揚げ、衣が固まったらオーブンなどでじっくりと火を通すようにしている。そのために、煮物、ソテー、フライパン、の多機能を持つブレージングパンとスチームコンベクションオーブンでほとんどの料理に対応できるわけだ。また、スープやソースを作り際に使用するケトルも、調理後、冷水や冷却液を通して急速冷却できるので、保存が簡単である。
 ドイツの食事は昼食がメインで、朝食はパンとコーヒーフルーツ、夕食はパンやチーズなどの簡単な料理のため、昼食をきちんと作ればよいので、従業員の作業スケジュールの組み立てが簡単となっている。日本のように3食を手間暇かけて作る必要がないので大変合理的だ。この料理の違いは厨房設計や調理機器に大きな影響を与えるわけで、海外の調理機器が日本でなかなか採用されないのが理解できた。
 この2つの施設を見学してもうひとつ印象的であったのは、外光を取り入れる窓を大きく設置してることであった。両厨房とも腰から天井まで大きな窓を設置しており、狭い厨房が広く開放的に感じるようになっている。また、窓の位置も考慮しており、外の樹木を見れる側に窓を設置している。病院のセントラルキッチンの厨房の位置は道路より小高い場所にあるために道路側にある木々の緑を眺められるようになっている。老人施設の調理場はやや高い位置にあり、庭の植栽を楽しめる工夫を凝らしていた。責任者のクルマン氏は改装の際に植栽が見える位置に窓を設置するように工夫をしたと言っていた。
 日本や米国の厨房は窓の設置がないのが一般的で、それに比べると大変開放的で、快適に働けるのが印象的であった。もちろん、窓を開けて太陽光が入ると、いろいろ問題があるのも事実である。夏場などに換気のために窓を開ければ昆虫類や異物の侵入の危険もあるし、太陽光による問題も発生する。太陽光が油脂類に当たると油脂の酸化が進み食当たりの原因となるからだ。両施設のガラス窓を拝見したところ、どうも特殊なガラスを使って太陽光が悪い影響を与えないような工夫をしているようだ。厨房環境というと温度や換気のことばかり考えてしまうが、外光を取り入れて開放的な雰囲気を醸し出し、従業員の働く意欲を引き出すという考え方は大変参考になった経験であった。


 


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