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「海外情報 外食事情Overseas」 フランスの料理学校


人口減少時代を迎える日本を活性化しようと政府は外国人観光客誘致に力をいれ、ビジット・ジャパンというキャンペーンを行い、昨年には800万人近い外国人観光客誘致に成功した。その外国人観光客を2000万人まで増やそうと2008年末に観光庁を設立した。外国人観光客が増加すれば宿泊するホテルや旅館の需要が増加し、厨房新設のニーズも出てくると期待がされている。
 さて、外国人観光客数2000万人と言う数字を皆さんはどのように評価するだろうか。そんな数字は不可能だと思われるだろうか、それとももっと観光客が増えると思われるだろうか。
 世界で最も外国人観光客が多い国はフランスで、2005年には7600万人とフランスの人口を上回る数字を記録している。日本の目標2000万人の4倍近い数値だ。勿論、フランスはヨーロッパ大陸にあり、隣国からの訪問が容易だという特殊性はあるにせよ、人口よりも観光客が多いということは注目される。
観光客の誘致には、ユネスコの世界遺産、景観などの自然資源や、神社仏閣お城などの歴史的建造物、お洒落な近代的な街、等が必要だ。フランスのパリ市の魅力は、歴史のある建造物やルーブル美術館等の文化的な施設、女性にはブランドショップやシャンゼリゼ等の雰囲気のある街、そして美味しいフランス料理店、等だろう。
 一昨年にはフランスのミシュランガイドが日本に進出し注目を浴びている。ミシュランガイドは、フランスのタイヤメーカーのミシュランが作成している。フランス全国のレストランの評価をガイドブックに仕立て上げ、読者にそのガイドブックを片手に車を走らせ、タイヤの販売に役に立てようと言うものだ。ミシュランガイドの詳細なレストラン評価は観光客にも高く評価されており、フランス観光にも大きく貢献している。
 また、フランスは人口7000万人程度の国であるのにも関わらず、国際社会に大きな影響力を持っており、国連や国際会議での公用語のひとつがフランス語だ。また、国際的な会議などで提供される料理は基本的にフランス料理をベースにしたコース料理となっている。日本を公式訪問する外国要人を宮内庁で接待する公式料理はフランス料理となっているくらいだ。
 では、この美味しいフランス料理はなぜ高い評価を受けているのだろうか?偶然、人気が出たのだろうか?
筆者が2008年10月にドイツ,フランスの給食施設の見学をした際に、パリ市の料理学校フェランディー校を訪問した。同校は(株)東京ガスの運営するフランス料理文化センターの提携先だ。フランス料理文化センターはフェランディー校から先生を派遣してもらい、実践的なプロの調理人の再教育を行っているので有名だ。

 フェランディー校を訪問し,施設を見学の後、学長に説明を受けた。フェランディー校は料理だけを教えるのではなく、フランスの手工芸分野の職人を養成している。職種は10数種類あり学生数の半分は調理人志望だ。通常は高校卒業後入学し、3年間学ぶ。半年座学で学んだ後は、市内のレストランに半年間インターンとして実際に働く、そして、また半年座学を学ぶ。と言う、座学と実践を組み合わせた実用的な調理学校だ。新卒だけでなく、大学を出て他の仕事を経て、手仕事を身につけたいと入ってくる社会人向けのコースも設けている。

 では、この学校の内部をご紹介しよう。まず、教室を見学した。料理法をプレゼンテーションする100名弱が座れる階段教室の調理システムが素晴らしいのに感心した。設置してある調理機器はスチームコンベクションオーブン、ガスレンジ、電子レンジ、サラマンダー、グリドル兼イーブンヒートトップレンジ、Frimaの複合調理機器1台と最新のものだ。ガスレンジの台の部分には水が流れるようになっており、調理の汚れがつかないようになっている。Frima VarioCooking Centerという機械はフライヤー、グリドル、スチーマー、と多用途に使えるようになっている。写真のように中央に小型のフライヤーがあり、両サイドに小型のブレージング・パンが設置されている。ブレージング・パンは深めで、油を入れればフライヤーに、何も入れなければグリルになる。勿論、蒸したり煮たりすることも出来る。調理温度と時間を設定することが出来るし、フライヤーであればオートリフトがついているので、揚げすぎの心配も要いらない。この調理機器を見ると米国とヨーロッパの考え方の違いが良く分かる。  
米国の調理場では調理長は技術を持っているが、それ以外の料理人は職人と言うよりパートタイマーで、しっかりした技術を持っていない。そんな調理人でないパートが使う機械であるから、単純で壊れないようにするのが基本だ。例を挙げればヨーロッパで普及しているスチームコンベクションだ。ヨーロッパの厨房でスチームコンベクションオーブンはごく普通の調理機器だ。しかし、米国では未だにスチームコンベクションオーブンが普及していない。米国の調理人は米国は広いのだから、高い調理機器一台よりも、スチーマーとオーブンを別々に使えばよいではないかと未だに言っている。蒸気と高温を組み合わせたコンビモードの性能や、低温調理の品質の良さを理解できないのだ。このFrima VarioCooking Centerを米国人に見せても永遠にそのメリットが理解できないだろう。
http://www.frima-international.com/en/products/variocooking-centersupregsup/index.html

 さて、この調理階段教室の後ろには料理や素材の味見をするパネルテストの部屋がある。目隠しをしたテーブルが並んでおり、ここで、チーズやワインの味見の勉強をしたり、商品開発の際のパネルテストで使う。味だけではなく、香りを出す機械も設置してフレーバーの勉強もできるようになっている。

 階段教室の後は調理実習室を見学した。素晴らしいのは実践的な調理実習をするために、全てガス式の調理機器を使った実習室、電化機器だけを使った実習室、電気とガスの両方を組み合わせた実習室がある。実際の店舗では色々な調理機器を組み合わせるので、3種類の実習室を作っているのだ。
また、古い実習室も残っていて、40年以上前の調理機器も現役で使っている。数年前にオーバーホールしたのだが、新式の機械に変えるよりも3倍のコストがかかったそうだ。しかし、使える機械は徹底的に大事に使うのがフランス式だそうで、お金がかかっても大事に使うのだと言っていた。この古い物を大事に使うというフランス気質がフランスの古い町並みや美術品を大事に保存している原動力なのだと納得させられた。

 フランス料理につき物がフランスパン。パンの製法を考えても、パン専門店の調理施設と、フランス料理店が出す数種類のパンを作る設備とは機器の種類や大きさが異なる。このフェランディー校ではパン専門店の調理施設で学ぶパン職人のコースもあるが、調理人が学ばなければいけないパン作りを学べる、調理室におく小型パン調理機器を使う実習室も設置すると言う実践的な教育を行う。
また、大型のホテルで使用するクックチルや調理技術の一つとしての真空調理はフランス料理の技術としては必修であるが、クックチルや真空調理には厳格な衛生管理が必要であり、ここでは、クックチルや真空調理用の下拵え室や調理室を備えているなど、あらゆる調理技術を習得できるようになっている。

 訪問した日は月に数回おこなう実習日で、学生が調理とサービスを担当して、実際のお客様にフルコースの料理を提供する。勿論、お客様は料金を支払って食事をする。学生の家族や友人たち、それから一般の街の人たちも入れるようになっている。見学の後、私たちもその食事をいただくことにした。

 客席は70席ほどで、ワインやカクテルのサービスもある。この学校のコースにはサービスコースもあるからだ。客席横の実習調理室では、先生の厳しい叱咤激励のもとで、学生が真剣な表情で調理をしている。

 さて、本日のメニューは
アミューズ
トリュフオイル風味のトビナンブールのクリーム入りコック貝
アントレ
蟹とアヴォガドのカネロニ、マキアート風コンソメ
サラダ仕立てのブーダンのりんご添え

魚料理
リースリング風味の鱒、2色のスパッツエル
ホウレン草に乗せたヒメジ、マトロートソース、トウモロコシのピュレ

肉料理
牛テールのシャルトルーズ
鳩のロースト、イチジクとフォアグラ、秋の野菜添え

チーズ
山羊チーズのブリック

デザート
サヴァニヤンとドライフルーツ風味の洋梨、ブルタニュー風サブレ、クルミのアイス
 ラム酒風味のババ、異国のフルーツのミルリトン
 パッションフルーツとミルクチョコレートのマカロン、マカサー、
プッリネ・ヘーゼルナッツのチュイル

食後のコーヒー、紅茶

だった。

料理の盛付も素晴らしいし、味もしっかりしていた。この時に感心したのはサービスの良さだ。サービスというと技術が必要だと思われるが、サービスをする従業員の真剣さがより重要なのだ。学生たちの手つきはまだぎこちないが、その眼差しに心を打たれた。そして、料理やワインの質問をすると、分からなければ先生に質問をして、丁寧に答えてくれた。そんな、真剣な気持ちがうれしかった。こんな実践的な教育を学ぶことが出来るフランス人の若者が本当にうらやましく思えた。そして、こんな実践的な教育をきちんとしていることがフランスの料理を支えているのだなと実感させられた。
さて、皆さん、この実践的な教育をするフェランディー校を運営しているのは誰だと思いますか?政府?パリ市?
いいえ、なんとパリ市の商工会議所なのです。パリ市の商工会議所は1803年にナポレオンが創設したもので、その商工会議所が80年前に開校したのが、このフェランディー校なのです。
 パリ市の観光資源のフランス料理を提供するレストランは偶然出来たと思っていたのですが、フランス料理店を支える調理人の育成を商工会議所が担当していたとは驚きました。観光振興のために何をすればよいのか大変参考になった1日でした。
 
フェランディー校HP
http://www.egf.ccip.fr/
フランス料理文化センターHP
http://www.ffcc.jp/

 


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