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オフィス2020 2004年座談会

中食の台頭、ライフスタイルの変化で縮小する外食市場


出席者

神山泉:(株)エフビー・代表取締役
王利彰:(有)清晃・代表取締役

司会
緒方知行・本誌主幹

(敬称略・発言順)

 

編集部 今日のテーマは新春を記念して、外食業界にどのような変化が起こっているのか。どういいった企業が主役なのかというテーマで先生方にお話いただきたいと思います。よろしくお願いします。


神山 外食産業全体の課題というと、やはり市場の縮小、シュリンクですね。これをどう捉えるかということは非常に重要です。金額ベースで考えると、六年間で二○%くらい落ちています。客単価、来店頻度の二つとも落ちている。いろいろな数値を見ていくと、やはり中食にかなり持っていかれていると思いますね。

王 コンビニエンスストアなどは中食に分類されませんが、そこまで含めるとさらに大きな部分を持っていかれているでしょう。

編集部 なんといっても、セブン-イレブンはの中食部門の売上は約一兆円企業ですからね。

神山 セブン-イレブンの売上げの約三○%が外食と競合する部分、いわゆるファーストフードです。セブン-イレブンだけでなく、他のコンビニエンスストアを含めると三兆円弱になり、それに加えてスーパーマーケットも素材から惣菜へとシフトしている。ここのブロックがかなり大きい。中食か外食かという境界線は非常にあいまいです。オリジンはどう見ても中食ですが外食に分類されますし、一七○四〇〇億円売っているという、すかいらーくの宅配部門も外食ですからね。全体として、外食業界全体が中食に向かっているという指摘ができると思います。

編集部 ヨシケイなんかもそうでしょう。

神山 食の外部化比率をトータルで見ると、外食・中食を両方含めた市場は膨らんでいるんです。にもかかわらず、外食が不振である一番の原因はレストランに行って食事をするという形態が非常に弱まってきているから。これには高齢化という背景もあります。そのためにお客のニーズがテイクアウトやデリバリーといった、家庭内外食、オフィス内外食という形をとりはじめた。ですから外食の不振というよりも、むしろ構造変化と捉えた方がいいのかもしれませんね。
 考えてみると、日本はファーストフードが弱いですよ。マクドナルドやモスバーガーといったオールドブランドがそのまま居座り続けている。新陳代謝がないんです。アメリカではこのカテゴリーは非常に流動的です。日本のファーストフード業界には、市場活性化のファンダメンタルない。モスバーガーが唯一「ファーストカジュアル」と言って新たな動きを始めてはいますが、新しい潮流がなさすぎると思います。
その代わり日本はほか弁が強い、オリジンが強い。コンビニエンスストアが強い。これらがアメリカにおけるファーストカジュアルの代替になっているんでしょう。日本はファミリーレストランも強いですね。なかでも低価格を売りにしているところが元気。ガスト、サイゼリヤ、ジョイフルといった類の企業です。これがアメリカと違う特徴だと思いますね。

コンビニエンスストアが推し進めた、内食放棄

編集部 カフェのような業態については、日本とアメリカとを比べてどうでしょうか。

神山 これは日本とアメリカではあまり変わらないと思います。日本のコーヒーは昔からレベルが高い。しかし、アメリカではおいしいコーヒーがなかったから、スターバックスの登場は革命的だったんです。スターバックスで消費者がコーヒーの味に目覚めたといっても過言ではありません。アメリカでもスターバックスは今でも強いですし、それに続くカフェチェーンも出てきています。

王 アメリカではコーヒーと軽食を外で買って食べる、朝食というマーケットが非常に大きい。

神山 それに加えてその反面、日本の外食産業は朝食というマーケットをとれていない。

王 確かに。日本の外食企業の課題は朝食だろうね。マーケティングをやりかけてはやめてばかりで、その間にコンビニエンスストアにだいぶ食われてしまった。

編集部 外食ビジネス全体を考えたときに、アメリカと日本ではどんな違いがありますか。日本の方が競争が多様で厳しいということかな。

王 ファーストフードで考えると、マクドナルド、ケンタッキーという一大チェーンがあって、その次に続く中堅チェーンがない。

神山 弱小はあっても、中堅がない。日本のファーストフードというのは、ある意味競争相手がガラガラの市場ですよ。

編集部 そしてニッチなところから、コンビニが入り込んでいる。

王 確かに完全にコンビニエンスストアにとられちゃってるね。

神山 競争という視点だけではなく、人々がコンビニによって内食放棄を進めたとことが、大きいと思う。コンビニという業態はもともとアメリカからの輸入品なのに、セブン-イレブンが日本のマーケットの中で徹底的に自己変革をしていった。コンビニというもののあり方を変えていきましたからね。その結果、日本人の食生活のあり方までも変えてしまった。

編集部 そうすると、狙うラインとしては低価格ということになりますか。

神山 そうですね。今のままではやはり価格が高いですよ。特に朝食とランチは、ものすごくプライスコンシャスのマーケットだから。朝食は三○○円、ランチは四○○円から七五○円。これを外食ではなかなか実現できないでしょう。

王 大学院で社会人に教えているときに、みんなが何を買っているかを見ていると、おにぎり一個とか菓子パン一個といった食事ですよ。時間がないから、何かをしながら食べられるものがいいということらしい。お皿があってナイフとフォークで食べるのが、面倒くさいと考えている人が多い。こうなると、ライフスタイルが再び変わらないと、外食に人々が戻ってこないでしょうね。

安心・安全・健康の部分で遅れをとった外食産業

編集部 もう一つはね、下手な外食よりもコンビニ商品の方が味がうまくなっちゃってる。

王 特にセブン-イレブンはそうですね。今年の夏驚いたのは、焼き鳥シリーズ。あのレベルだと下手な外食は太刀打ちできない。

神山 「安心・安全・健康」といった重要なテーマもコンビニが先取りしてしまっている。この分野では、外食はかなり遅れていますよ。まったく新しいマーケットの動きにアジャストできていない。

編集部 最近ではいわゆる町の小さな飲食店なんていうのも、大部分はコンビニと比べると高いし、味もそれほどたいしたことないというような印象がありますね。

王 以前、コンビニは「アンチヘルシー」というイメージがあったけれども、セブン-イレブンなんかが先頭にたって、変えていった。コンビニのほうが安心・安全・健康だという認識になってきていますよね。

編集部 今度新しく出るおにぎりなんかは、科学的に分析すると、食感や味が、冷えてもほとんど変わらなくなったらしいですよ。そうなると外食に残されたのは、食べる場所の雰囲気だけ、といったところ。そう考えていくとコンビニ一人勝ちみたいだけど、このままじゃつまらないよね。

神山 一つの突破口としては、和の外食、牛丼、そば、うどんといった和のファーストフードがどこまでできるかということでしょうね。このジャンルが、ポテンシャルに比べて意外とマーケットの伸びが弱い。とくに牛丼がBSEでひどい状況になってしまったから、和の牽引者がいない。うどんもコンビニにとられているし、スープ麺の登場も大きかった。実際食べてみると、そこらの店のうどんよりも、コンビニの方がおいしいですからね。

編集部 カレーはどうですか。

神山 カレーはこれから可能性があると思っています。結局ね、ファーストフードの立地というのは、坪七万以下だと成立しないでしょう。それくらい地代が高いところじゃないと、採算がとれない。すると、限られた場所の争奪戦になる。今のところその争奪戦に勝っているのはスターバックス。おしゃれなイメージがあって、料理店ほどビルを汚さないからスターバックスはどこでも歓迎される。したがって、スタバとそれに順ずるカフェチェーンはいい立地をとりやすいですが、それ以外のフードチェーンは苦戦している。いい立地がとれないということで、和のマーケットが広がっていかない。関係者に聞きますと、採算がとれているのはある程度きちんと集客できる家賃が高いところだと言うんです。安物買いをしたところは、すべて採算がとれていない。

編集部 ファーストフードの立地はすごく限られているということですね。新陳代謝が起これば、空いた場所に入れるということもあるのではないですか。

新業態の開発が難しい、ファーストフード

王 そうですね。ですが、新業態がなかなかでてこない。日本は天丼のてんや以降、あまりないでしょう。新しいトライをしていた牛丼チェーンも、BSEでガタガタになりましたからね。

神山 あとは鉄火丼屋だね。

編集部 なぜでしょうか。いま、ベンチャーマインドは、唯一外食業界にあるような気がするんだけれど。

神山 私が思うには、ファーストフードは開発が難しい。最近話題になった新規事業はほとんどテーブルサービスじゃないですか。ファーストフードというのは、非常に強い競争力のある商品があって、超高速回転の仕組みのなかでフル回転できる。こういうトータルな仕組みがなければできません。ところが、ほとんどの企業ではマクドナルドに匹敵する精度の高い仕組みがつくりきれていない。マクドナルドを超えるところが一つもでてきていないのは、ファーストフードが結局生産性の戦いだからです。

王 リンガーハットはかなりがんばっているけどね。

神山 そうですね。リンガーハットは生産工程をすべて変えて、今までは人手を非常に使った工程だったものを、すべて機械に変えた。吉野家は和のファーストフードのシステム構築としては一番完成度が高かったけれども、肝心の食材がなくなっちゃっては手も足も出ない。

王 あれは気の毒だけれども、商品の多角化を早めにやらなかったのが、効いてしまった。マクドナルドでも牛だけでなく豚、鳥と分散させている。ある程度規模が大きくなったら、やはりリスクは分散しておかないと、足元をすくわれるということでしょうね。

編集部 牛丼全体の落ち込みはどうですか。

神山 やはり吉野家が一番落ち込みが大きい。前年比で吉野家が六○数%、他チェーンも八○数%です。とにかくこれまで強みであったものがこういう状況になってくると、逆に弱みとして出てきてしまった。

王 しかし、調理システムについては松屋の方が格段にいいですよ。吉野家に対抗するために効率を維持しつつメニューを多角化しましたから。一番ファーストフードに近い形になっています。

神山 牛丼だけでやっていたら、絶対に吉野家にはかなわないですからね。松屋のメニューの多角化はこういう状況で強みとして出てきたわけですよね。私は牛肉輸入の再開は来年の一○月以降だと見ています。

編集部 吉野屋には、BSE問題がもっと早期解決するという、誤算があったんでしょうね。

神山 これまで、あまりにも吉野家の効率がよすぎたんです。強すぎる商品があると、なかなかそこから抜けられない。効率のものさしで考えると、たとえ新しいフォーマットを開発しようという動きがあったとしても、牛丼と比べて割りがあわないと感じてしまう。

王 リスク分散という意味では必要だったのでしょうが、吉野家には難しかったのでしょうね。

地方で快進撃を続けるジョイフル

神山 話を外食業界全体に戻すと、私はもう少し先には、かなりの世代交代が進んでいくと思う。たとえばファミリーレストラン。ジョイフルがこれからは頭角を現してくる。あの社長は傑出しています。あの経営に対する徹底した割り切りの良さは特筆すべきものがある。ガスト、サイゼリヤの出店がスローダウンしているなかで、首都圏はやめた。田舎で攻め切ると断言している。特に九州なんかでは、ガストがジョイフルに歯がたたない状況ですよ。

王 ランチが税込みで三九九円。ガストは絶対にかなわない。

神山 ジョイフルは今後、人件費率と原価率をほんの少し変える。一%か二%上げたら天下をとると思っています。みんなコストダウンでやっているなかで、あえて逆をやる。この時代に商品とサービスのバリューアップをやれば、天下が取れるのではないでしょうか。

王 でも、今の価格帯は限界に近いのではないでしょうか。

神山 ただ最近は価格はそのままで商品のレベルも上がってきています。商品レベルが上がると、ファミリー客が戻ってくる。いま、サイゼリヤにはファミリーが戻ってきている。実際、商品がよくなっています。サラダもいいし、パスタもいい。オーストラリアの工場がうまく機能しはじめて、いま、いいポジションにいる。最近、グラッチェガーデンに行ってみたけど、ピザ、パスタはサイゼリヤを抜いてるように感じた。

王 サイゼリヤはすごいですよ。どこで儲けているかということを、お客に見せない。グラッチェガーデンはそれが垣間見えてしまう。そこに差がありますね。

神山 確かに。最近のサイゼリヤはアソートメントの楽しさを実現している。だから客単価が上がる。値上げではなく、メニュー数を増やし、お客が自由に選んだ結果として客単価が上がった。パスタとサラダともう一品、となるから客層が変わってきた。ファミリーが使うようになったということです。単身者は単品しか頼みませんからね。

編集部 私はセブン-イレブンの特徴は、スケールメリットをすべてバリューアップに使っていることだと思う。そこが大事なんですよ。

神山 それが外食にできるかどうか。

編集部 神山さんの指摘どおり、ジョイフルもそうでしょう。原価率なんかをいいほうにもって行けば、強くなるね。イメージもあがるし。

王 ジョイフルの原価率はすでに高い。特にこの冬は肉、野菜の価格の高騰でダブルパンチでしょう。あれでは売上げが落ちなくても利益率はあがらない。

これからは絞り込みとクオリティアップの時代

神山 価格の問題に戻りますが、八○年代はファーストフードもファミリーレストランもメニュー拡大の時代。それによって客数も増やしてきました。もともと洋のファミリーレストランが和もやり、中華もやった。九○年代から二○○二年までは価格の低さで客数をとっていた。でも、二○○二年を境に、その時代は完全に終わった。私はこの五年で若干価格を戻ってくると見ています。いま、牛丼をみても、三五○円くらい。本音としては四○○円に戻したいところでしょう。これからの二○○○年代は、絞り込みとクオリティアップの時代です。明確な来店動機をもってその店に行けるかどうか。それだけのバリューが商品にあるかどうか。バリューを出すためには絞り込みをせざるを得ない。結果、価格を若干あげることになる。

編集部 そのためには価格を戻すに値する、納得できるようなバリューがないとね。

王 アメリカではファーストフード全体の客単価があがっている。健康志向に訴えて、いい食材を出しているからです。さらに景気が戻ってきて安心感が広がれば、財布の紐はゆるみます。

神山 ファーストカジュアルのトレンドもそれですよ。ファーストフードをジャンクと決め付け、ファーストフードを仮想敵に設定して差別化を図っている。うちは違いますよということでね。実際はそれほど違わないかもしれないけれど、そのメッセージの出し方がうまいですよね。健康志向を捉え、でも低単価で、ディスカウンターじゃないところ。クオリティの高いものを提供するところが勝っていくでしょう。

編集部 フランチャイズビジネスについてはどうでしょうか。

神山 成功しているところは珍しいですね。

王 オリジナルが良すぎるからでしょう。

神山 とにかく開発マインドがない。自分たちの力で開発してきていないから、その力がない。デニーズも新業態を全く開発できていない。

王 その通りですね。

神山 いわゆるミドルプライス、客単価千円くらいのところ。ここらへんは今後、面白いと思うね。

王 そのくらいの価格帯では、和食の「ゆめや夢庵」が一生懸命やったけど、いきなり失速したでしょう。

神山 しかし、夢庵は最近良くなったよ、大戸屋をはじめとする定食屋が、はあそこには全部負ける。天ぷらにしてもそばにしてもうまいし、定食ニーズが高い女の子が来店しています。定食ニーズは定食屋だけじゃなくて、ああいうところにもある。ただ関西は若干苦戦していますが。

超高齢化社会の到来で、膨らむ和食へのニーズ

王 関西は「さと」がありますからね。さとはすごい。商品開発もきっちりやっている。和食の職人の本場だから、プライドがある。好立地も的確に押さえてるし。

神山 和の日常性の定食的なニーズは、今後も高齢化にあわせてかなり膨らむと思う。ただ、これまでとは立地が変わってくる。郊外から駅前立地になるということですね。実際行ってみると、やっぱり高齢者のお客が多い。

王 まいどおおきに食堂もいいですね。食堂スタイルは、ファミレス的な伝わり方をしていますね。和食は難しいけど、成功するとパイが大きい。

神山 ただ和食はオリジンの惣菜弁当やセブン-イレブンとぶつかる。そういう意味ではすごく難しいけれども、やはり日常の食だからね。そのなかではゆめや夢庵が一つ抜けたんじゃないだろうか。

王 多少経営の好不調の波があるけれどね。多角化しているのが原因かもしれないですね。

神山 話は変わるけど、びっくりランドはラーメンが一八○円。これはラーメン屋で飛びぬけている。餃子とラーメンを一緒に提供できる、この仕組みは他にはない。味も、毎日食べても飽きない味に仕上げている。お客を見てると、しょうゆラーメンが一八○円、塩ラーメンが二八○円、セットが四○○円台。しょうゆラーメンだけ頼むお客は少ない。一八○円はキャッチフレーズですよ、。とにかく仕組みがすごい。厨房の生産性がぴかいちです。おいしくないけど、まずくないというのは、ファーストフードの原点でしょう。今のところ立地でうまくいっていないところもあるけど、そこをクリアできればすごい力になる。

「家庭内調理」の放棄への対応

神山 いま、高齢者の家庭内調理の放棄ってすさまじいね。買い物も放棄しているくらいです。

王 子どもが学校を出たら弁当をつくらないから、まず朝食をつくる必要がない。四○代後半で子どもが家を出たらから独立したら、夕飯もつくらなくなるんじゃないの。

神山 「隣の晩御飯」っていう番組があるけれど、訪問する家を探すのが大変らしい。みんな、家族がそろって飯なんか食っていない。あの番組に出ているのは例外ですよ。

編集部 調理するのが大変というと、鍋物とかになるの。

神山 鍋物すら面倒なんですよ。切ったり後片付けをしたりとか。

王 この間も野菜業者と話をしましたが、生産者と消費者の考えには、大きな隔たりがあるそうです。生産者は大きくて立派なのがいいとばかり思っている。例えば玉葱など大玉が良いと思う。ところが消費者は小家族なので、かえって小さな玉の方が喜ぶというギャップがあるそうです。
特に葉モノは小さいものを好みます。

編集部 それではますますコンビニにお客が流れるね。

神山 コンビニ弁当というのは、主流はまだまだ独身男性のように感じています。

王 いや、もうファミリーもだいぶ増えてきていますよ。

神山 そういう動きはあるけど、少なくともコンビニの弁当は、基本は男弁当です。牛肉をつかっていたり、ポーションが大きかったり、商品内容がそのまま名前になっている。

王 ただ、コンビニはネーミングを変えるなどして積極的に女性客も狙ってきています。女性客を見据えた商品づくりを感じることが増えてきていますよ。

編集部 セブン-イレブンはイメージとして吉行和子をCMに登場させるなど、私たちの店と言っているんだから。セブン-イレブンの側としては、独身男性のウエイトは下がってきているように感じます。

神山 そこのマーケティングが本当に成功したら、また外食のブロックになってしまいますね。

編集部 物事というのは、常に矛盾した関係が起こるでしょう。買い物したくない、つくりたくないという傾向と同時に、逆にたまにはちゃんとしたレストランにいこうとか。こういうのはどうなんでしょう。

王 それはありますね。安い居酒屋は苦戦してますけど、ちょっとアッパーなところは繁盛している。人々の気持ちのそういうところを汲んでいるんでしょうね。

編集部 夫婦そろって映画や芝居でも見て、帰りに何か食べていこうよとかね。

神山 そこらへんのニーズは確実にあるんだろうけど、きちんとお客をつかんでいる店が少なすぎる。自分の金で行くところのマーケティングが弱い。四千円から五千円くらいは出すけれど、居酒屋に満足しきれない人たちは多いからね。居酒屋も同質化が進んでしまって、これから苦しくなる。

王 商業施設も同質化が進んでいますね。丸ビルができて、六本木ヒルズができて、汐留ができたけど、すべて同じことをやっている。プロデューサーが限られてるので同じ雰囲気になってしまう。

神山 ああいう話題のビルというのは、移動していく。次はどこ、次はどこ、とお客が移動していくんですよ。

王 いま一番苦戦しているのは汐留でしょう。お客が行く理由がない。丸ビルはやっぱり便利ですよ。それに比べて汐留めは回遊性がなさすぎる。

編集部 六本木ヒルズもそう。採算とれてる店がほとんどないという話も聞きます。

王 店を見ても価格帯がばらつきがありますからね。

ショッピングセンターの大型化にともなう、外食業界の変化

編集部 だけどそれは、東京の話が中心ではないでしょうか。地方でも都心回帰みたいな動きは起こっていると思いますか。

王 地方ではショッピングセンターの大型化が進んで立派になってはいるけれど、外食は従来どおりだからね。

神山 ショッピングセンターができると、人間の動きががらりと変わる。そのおかげで、旧来のレストラン街道はがらがらですよ。イオン、ダイヤモンドシティ。一極集中化ですよ。もちろんマクドナルドなども出ていますが、新しい動きとしてはローカルの強いところが出てきはじめている。それからフードコートが変わってきた。フードコートのコーディネーションが、一つのビジネスみたいな形になってきていますね。

編集部 ナムコのフードテーマパークみたいなものが、増えてきているということでしょうか。

神山 フードパークよりももっと多品種で、バリエーションがある。たとえば三菱商事系のクリエイトレストラン。ここは飲食フロア全部を請け負って、多業種を手広くやっています。店選びから何から全部ですよ。

王 高齢化でショッピングセンターにも大人が増えている。大人が満足できるきちんとした食事を出せるようにする。大人でも耐えられる料理にすることが大事でしょうね。

編集部 フードコートという立地条件に特化した業態をつくるとか。

神山 ショッピングセンターはフードコートに魅力がないと弱い。地方では、外食の核がショッピングセンターに戻りつつありますね。

編集部 全国各地の商店街がさびれている。フードコート型の商店街再開発なんておもしろいんじゃない。

王 高齢者にとっていまの商店街は使いづらい。高齢者だって車を使うし、車で行けないと不便なんですよ。

神山 商店街は外食も悲惨だよね。特に人口一五万位ないくらいのところ。

編集部 地方都市にはアミューズメントがない。東京に住んでいれば芝居に行こう、歌舞伎に行こうとなるけど、それができるのは東京と大阪くらいでしょう。

王 アメリカにはライフスタイルショッピングモールというのがある。それがまさにエンターテイメント型なんですよ。昼間は閑散としていますが、いろいろ遊ぶ施設もあるから夜になると人が集まってくる。オレンジカウンティなどに、そういうところができています。そこにかっこいいレストランをつけて、繁華街をつくる。そういうのは日本でも可能性があると思います。

地方からはじまる、新しい潮流

神山 どういうところがこれか伸びてくるかということなんだけど、一つはエンターテイメント型。たとえばすかいらーくのニラックスが展開しているイタリアンバイキングレストラン「パパゲーノ」。これはほぼフードコート専門です。一部の店はカーニバルプラザと名前をつけているけど、非常に楽しい店です。それから札幌の大丸の上にある、ザ・ビュッフェ。ここは年商八億以上売っていますよ。ビュッフェ(バイキング方式のレストラン)というと、昔はチープな店が多かったけど、今は家族全体で楽しめます。
それからオーガニックビュッフェの登場。大分・大山町の農協がはじめた、木の花ガルテン。これが爆発的に当たっている。生産者がみようみまねでやったビュッフェだけれど、月商二千万円以上売っています。福岡県岡崎町の野のぶどう。ここも地域密着ですよ。ロイヤルのシズラーがだめになった店の場所に出して、三千万売っている。糟屋郡のダイヤモンドシティにも出店しています。フランチャイズで拡大していって、最近、横浜の青葉台にも出ましたね。もともとはピザーラのフランチャイジーだった人が始めました。それからティア。ここのスタイルが爆発的に支持されている。やはり健康志向ですよ。健康志向で、なおかついっぱい食べられる。単価は二千円くらい。野のぶどうはディナーは二千六百円、昼が一四○○円。オーガニックビュッフェはブームです。

王 ただ、食材が集まらないから、オーガニックと謳うのは難しい。

神山 雰囲気用語として、自然派とかナチュラルビュッフェという形になっていくでしょうね。本当のオーガニックをやると、メニューにバリエーションが出ない。それから新宿のルミネの健康食彩レストラン「三尺三寸箸」も元気。ここは柿安ダイニングがやっています。
用賀にタケシカンパニーのピッツェリア「マルデナポリ」ってところがあるんだけど、ピザもケーキもうまくてすごい。出したところ全部当たっています。もともと中国・四国地方から出てきていて、ゆめタウンにも入っていますが、イズミとフジが取り合いですよ。ここが松山の全日空の中で銀次郎っていう居酒屋をはじめたんだけど、五千万売ってる。タケシカンパニーの米屋武史社長は宇和島出身。料理人出身のアイディアにあふれる人物です。地方を見ていると、そういう世代交代が起こっていますよ。

王 確かにいま、地方が強いね。

神山 地方は人口が少ないから、普遍性のるつぼで鍛えられている。特殊立地で特殊商売をやれる東京とは違う。東京って鍛えられないんですよ。

編集部 大都会にいると、商売に関する割り切りがつかない。

神山 いろんなニーズが錯綜しているから、高度経済成長期の企業みたいになってしまう。

編集部 他業種を見ても、ダイソーは広島からだし、ユニクロは山口からでしょう。しまむらだって埼玉から。東京から出てくるものは、なかなか普遍にはならない。地方というのは一つのテーマになるね。イノベーターは常に地方から出てきますからね。ところでいま、回転寿司はどうですか。

神山 くら、スシローはがんばってはいますね。でも、私は回転寿司はそんなに安定成長はできないと思う。なぜならあまりにも利益率が低い。原価が高いところが勝っちゃうから。みんな原価率が五二とかで、原価で刺し違えてしまいます。

王 いま、BSEで焼肉チェーンがやられていますから、それの代替としてあるだけで、牛肉が戻ってきたら、厳しいね。

神山 すかいらーくが魚屋路(ととやみち)で原価調整しはじめたら、大失速でしょう。立ち直るのはなかなか難しいですよ。

編集部 お客はおいしさに敏感だからね。

神山 ただし、寿司もデリバリー、テイクアウトは強い。寿司なんて持って帰ったっていいんだから。

王 出店コストをかけてまで、やらなくてもいいということですね。
ライフスタイルの変化で縮小する、居酒屋市場

編集部 居酒屋はどうですか。

王 若い人が酒を飲まなくなってきていますから。昔は五○人、六○人の団体というのもあったけど、今はない。会社でも飲み会は減っていますし。

編集部 今は忘年会シーズンでも、九時で電車が超満員。二次会に行くことはなくなったのかな。
王 とにかく若い人が酒を飲まないですからね。それから団塊の世代がごっそり店に行かなくなった。それが大きいんじゃないの。

神山 団塊の世代の少し上の層ですよ。そういう人がリタイヤしちゃって、いい店のパトロンがいなくなった。

編集部 しかし、外食のビジネスは変わってきたね。ところで団塊から上の世代の女性たち。そのパワーたるやすごいじゃないですか。

王 確かにそうですね。新しい駅ビルはそういう人たちをターゲットにして店を選んでいます。

神山 ランチマーケットで三千円台。先ほどのビュッフェなんかもそのマーケットをきちんと捉えてますよね。

編集部 この層は旅行なんかにもお金を使う。

神山 ただ、新店をつまみ食いする層だから、非常に流動的。この人たちが新しいところに大挙して移動しています。

編集部 このあとにはアンアン、ノンノ層が控えているからね。ここもパワーがありそう。

神山 外食も、ますます女性のマーケットになりますね。男は年を重ねると、家に閉じこもる。会社を辞めると友達がいないんですよ。地域コミュニティもないから行くところがない。

編集部 男が一日過ごせる店があれば支持されるかもしれない。スターバックスなんかはどうなの。

神山 スターバックスでは落ち着かない。可能性があるとしたら、いわゆる場所貸し業としての喫茶店ですよ。滝沢なんかはコーヒー千円ですけど、いつも満席ですよ。本を読んだり書き物をしているシニア層が大勢いる。
和のファーストフードの確立が、外食再生の切り札になる

編集部 外食ビジネスの経営の中で、少子高齢化というのは重要なテーマでしょう。

神山 それが、残念ながら意外と意識されていないんですよ。

王 チェーンオペレーションは海外から来たシステムだから、日本の和食に対応していない。だから高齢者に好まれる和食の分野で新業態が出てこない。

編集部 中華はどうでしょう。

神山 中華でコンスタントに売れ続けているところは本当に少ない。ラーメン、チャーハン、餃子プラス何かというのなら強いけど。

王 来店頻度でいうと、絶対的に和食ですよ。

神山 外食に和のファーストフードが確立されれば、中食から再びパイを奪うことができる。巨大な市場になりますよ。

編集部 セブン-イレブンの商品開発では、次に和菓子とそばを始めるそうです。それを見ても全体が和へとシフトしています。GMSでも、衣料、家庭用品は売れなくなるなか、どんどん食の比率が高くなっているでしょう。外食産業全体のマーケットは縮小しているといったけど、じつは食全体を考えると、市場は拡大している。食を楽しもうという気持ちが人々にあるからです。でも、食は飽きやすい。セブン-イレブンの商品開発は一年間で二千アイテムだそうですよ。

神山 食というのは飽きも早いけど、一方でコンサバティブですからね。

編集部 たとえば和食でいうと、セブン-イレブンには肉六、野菜六のPCセンターがあって、商品づくりは二百の専門工場がある。ここをベースにして、地域の味を徹底的につくりこんでいる。ダシ一つとっても関西がこんぶ、九州はいりこというふうに。

 

王 こういうところに本気で店内調理をやられると、外食は厳しいでしょうね。

編集部 セブン-イレブンがおむすび革命に取り組んだのは、町のおにぎり屋に勝つものをつくれるようにということ。その戦いで、三年四年かかって商品開発をしている。機械で米がつぶれないように。一個あたりの米粒の数はいくつ、とね。

王 そこまで商品開発をやっているところは外食ではないよね。

神山 今後、そこを乗り越えたオリジンみたいなところが出てこれるかどうかだね。

日本の居酒屋は海外にそのまま持っていけるビジネスモデル

王 日本は元気がないけれど、海外に出るというのはどうだろう。中国だけじゃなくて、欧米諸国も含めて。

神山 グローバル、ちゃんと、ピザーラ、牛角。それからえんも出たでしょう。特に今は和食ブームで日本のテーマが受け入れられる素地があるし、レベルは高いし。カジュアルレストランとしての展開の可能性はありますよね。価格帯が高いところのほうが、そこそこのチェーンはつくりやすい。出るとしたら、やっぱり中国でしょう。中国では居酒屋がどこも大ヒットですよ。みんなあれが和食だと思っています。値段は日本の八掛けですが、十割でも恐らく大丈夫。中国人はああいうシェアレストラン的なものが好きだから、ほとんど当たってるんじゃないですか。

王 日本の居酒屋はそのまま持っていけるビジネスモデルですよ。えんなんかを韓国に持っていっても、絶対あたると思う。

編集部 中国でファーストフードみたいな業態開発はできないのかね。

神山 ラーメンは中国でいけるでしょうね。出たところはどこもあたってますよ。でも、あれがもとは中華だとは誰も思ってなくて、和の変形バージョンだと捉えられているようです。中国人は日本のラーメンが大好きですよ。

編集部 牛丼はどうなんでしょうか。

王 あんまりにも貧しくてダメらしいです。中国も韓国でも受けない。

神山 牛丼がダメというよりも、カウンタースタイルで一人で食べる文化がない。居酒屋みたいにたくさんメニューが並ぶのがいい。だからいま、上海でサイゼリヤがあたってる。

王 最初は苦戦していたみたいですがね

神山 値段を下げてから、大行列だそうです。もう一つ可能性があるのはパスタ&ピザ。私はファミリーレストランの七割はここにシフトすると思っている。これは全世界にも出せる仕組みです。

編集部 外食産業は、十年くらいのスパンで見ると、本当に新陳代謝が激しいですね。

神山 メジャーなチェーンも刻一刻と変化しています。ベーシックな市場は彼らがとっていくんでしょうね。その間にたくさん細かい市場があって、そこから新たなおもしろい動きが起こっていくと思います。

編集部 本日はありがとうございました。



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