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オフィス2020 1997.12(VOL.151)
「誌上討論2000年!」


特集 同質・類型化した流通・外食チェーンに訪れた恐るべき瓦解の時代 

[誌上研究討論会]
外食チェーン不振の構造を探る
ソフトウェア・イノベーションの不在がつくりだした時代の変化対応力の喪失

古田 基
(株)フードシステム 代表取締役社長  JVCアメリカ社長、日本ビクター(株)企画室長を経て独立。現在は機器などの輸入代理、テイクアウトデリカ"キッチントマト"の展開をはじめ、流通、外食、中食などの幅広いコンサルティング、講演を行う。

王 利彰
(有)清晃 代表取締役 ダンキンドーナツやマクドナルドで、現場から本部まで幅広く活躍し、独立。現在は外食、小売、ホテル旅館などのコンサルティング、調理機器、店舗システムの開発、及び執筆・講演を行なう。

記者A
主に外食チェーンビジネスを追い続けている第一線ジャーナリスト。

司会
流通・外食ビジネスにとどまらず、サービス業全般に幅広く精通。

「プロがお客の近くにいなくてどうするんだ!」規模に頼って楽をしようとする外食チェーンの経営者が増えているが、オーナーが店にいなくては売上は落ちてしまう。

苦戦続く外食産業

司会)まずは主要外食チェーンの現況をまとめていきましょう。

記者A) どのチェーンも既存店の業績が落ちる一方で、ここ3年間のマクドナルドの価格戦略は大きなインパクトを与えたと言えるでしょう。ハンバーガーは130円というスタンダードを打ち立ててしまった意味は大きい。一方、牛丼の吉野家は400円の価格と内税の死守、そのキャンペーンが消費者の圧倒的な支持を得て、この半年は対前年比が110%です。ファミリーレストランではジョナサンだけがほぼ3年間対前年比をクリアしつづけている。なぜジョナサンだけが好調なのかは検討する必要がある。

司会)それから回転寿司、居酒屋、フレッシュパスタなどで職人やプロが前面に出ている店が受けている。今は外食産業が頼っている仕入れ業者が低価格の回転寿司屋などを経営し始め、ディナー時間帯だけで儲けて、他の時間帯の儲けは考えないというやり方です。こういった店にはお客が集まっている。その他は苦戦しているところが多い。人々の胃袋が小さくなっているわけでもないのに、どうして店にお客が来ないか、来ないお客はどこへ行ったのか。

王) 吉野家は牛鮭定食という商品開発をしっかりやって女性客を増やした。広告戦略、お客へのアピールをきちんとやっています。

記者A) 昔の暗いイメージはなくなりましたね。

司会)あれだけ儲ければ何でもできる(笑)。

記者A) ジョナサンも既存店の改修投資には熱心で、年間60〜70店の補修をしている。これが既存店の堅調を支えている。

王) そうすることによってイメージもよくなるし、他チェーンの店のお客をジョナサンが吸収している。

記者A) 今年一番衝撃を受けたのはアメリカのHMRの繁盛店、イーチーズのオーナーが言った次の言葉。「顧客第一主義というのなら、プロがお客のそばにいなくてどうするんだ」。これが日本の外食業者に欠けていた。昔は200店の規模になっても創業者は店に出ていたが、今は20店ぐらいの展開の段階で株式上場、企業家の方向へ行ってしまう。外食の魅力であるライブ感やシズル感などのダイナミズムがどんどん現場から失われています。

古田) これだけたくさんの店ができると確かにお客の選択肢は広がるが、外食の経営者は規模に頼って楽をしようとする人が多い。世の中、楽なことなどないのに。店舗展開すればそれだけ自己矛盾が生まれます。日本の外食チェーンはプロとお客の距離を広げることばかりやってきたのではないか。 繁盛することは店にとっては好都合だが、お客にはちっとも好都合じゃない。店頭公開して偏差値の高い社員がたくさん集まっても、「いらっしゃいませ」ひとつ言えない人間まで入ってきたんじゃ話しにならない。また最近の経営者はほとんど現場へ行かない。むずかしいことじゃありません。自分の店のものを食べてみればいいんです。店に行けば大概のことは分かる。

司会)おっしゃるとおりで、10〜20店程度の規模で元気がいい店の経営者は、たいてい店にいますね。

古田) アメリカで大繁盛しているベーカリーのオーナーの言葉に「フードサービスはオーナーが店にいても売上げは伸びないが、いなければ間違いなく落ちる」というのがある。

記者A) トップが企業規模の拡大にばかり目を奪われてはおしまいだ。

古田) 自動車産業などのやり方を見て、外食産業は錯覚を起こした。大量生産大量販売で品質はよくなり、価格が下がるという錯覚です。だが、外食産業の柱であるサービスというものは、たくさん作っても決してよくなりません。それに株式公開して株価が下がる外食業も珍しくない。230円の株が500円になったが、他も500円だからいいだろう、などという理屈がありますか。大きくなることの自己矛盾や問題点をつかんでいない。 吉野家とマクドナルドの業績アップについては、それぞれ背景が違うと思う。マクドナルドがサンキューセットを始めた時、ハンバーガーの規格が決まり、その結果マクドナルドに競争相手はいなくなった。吉野家の場合は社長が現場に詳しいから、500店舗を超えた現在でも大会社という感じはしない。

司会)確かに企業イメージほど店数は増えていませんね。

記者A) 頻度は低いから大きな商圏が必要です。単品商売のひとつの壁ではありますね。

古田) すごい流動人口がいる。

記者A) だから一等地を押さえなくてはならない。吉野家の1店の商圏に対して、モスバーガーならば3〜5店は投入できるそうです。

古田) 最近の地下鉄の乗降客の減り方も店の客足に響きますからね。

司会)ちなみに学生の通学定期券の売上が、東京でも大阪でもドラスティックに減っているそうです。流動人口は確実に減っていますね。

王) 一番苦しいのはファミリーレストランじゃないですか。ファミリーレストランというけれど、ファミリーは減る一方ですからね。

古田) 問題の本質は、20年前の仕組みが今も続いていることですよ。世の中がこれだけ変わっているのに、レストランの調理場はほとんど何も変わっていない。

記者A) おっしゃるとおりで、何のイノベーションもありません。

王) しかもカッコよさやときめきがありません。

古田) 繁盛する店はオープンキッチンで、出来立てのものを出し、香りや動きがある、五感を訴える売り方です。一方ファミレスはエキサイティングな要素もシズル感もない。

記者A) ガストとスカイラーク・ガーデンズの一部で食べ放題を始めました。確かにお客はずいぶん来てるのですが、今やるべきことなのでしょうか。今は本来のフォーマットをきちんと固めるときだと思うのですがね。

古田) しかしアメリカやヨーロッパではサービスコストは平均18%ですよ。オーダーを聞いて商品を運び、最後ににっこり笑って18%。しかし日本で700〜800円の商品に、200円以上のサービスコストがかかっているというのは納得できない。昔のファミレスは1,500円の価格帯が主流だったからよかったものの、1,500円時代の仕組みを700〜800円の時代に持ち込むこと自体がおかしいのです。 今は調理した人が売る時代です。調理コストだサービスコストだなど言ってはいられないはず。あるファミレスに行った時、早朝で我々二人しか客はいなかったのに注文をとった店員は「ご注文の品を繰り返します」といって繰り返す。二人で一杯ずつのコーヒーを頼んだだけなのに。そしてコーヒーを持ってきた時は「ご注文の品はお揃いですか」というお決まりのセリフ。いい加減にしてくれよと言いたい。

司会)ではファミリーレストランは今後ノー・サービスということですか。

古田) いや、新しい状況に即した正しいサービスが必要だといっているのです。その中のひとつを挙げれば、バイキングですが、それもただバイキングにすればいいわけではなく、たとえばビュッフェ・カウンターの後ろでシェアしたりしないと、お客は来なくなるでしょうね。

記者A) 料理の出し方もさまざまで、例えば「ピザが焼けました!」と大声で言うと、お客がワッと集まる。

王) しかしバイキングはある日突然人気が上がったと思うと、また突然人気が落ちていく。アラカルトで価格が安いから受けたのに、急に高コストになってきたんだから。例えばスカイラーク・ガーデンズはスペシャリティ・レストランだからシズル感を出す方向に行けばいいのに、すかいらーくと同じ方向になってしまい、今はひどい。食べられるものがない。

自然科学とデータの欠落

古田) パートやアルバイトをコストと考えるのは問題です。外食はお金とものを交換しているわけじゃない。お客はサービスを期待し、お金を払う。経営者が従業員をコストと考えると、働くほうも言われたとおりにやればいいと考え始める。バリューとは、お客の立場で考えられるかどうかです。レストランはもっと付加価値がつくようなサービスをすべきだ。お客の立場で考えられる教育や仕組みがなければ、お客が入るわけがない。

記者A) ファミリーレストランは一部を除けばほとんど敗退気味だということですか。

王) お客の目は肥え、昔のようなだましが利かなくなっている。だから店もレベルアップしないといけないのに、進歩しないからお客から見放されたんです。

古田) それに比較的対象が多くなれば、お客の要求は厳しくなる。

王) リストラで店員の教育レベルを落とし、多業態化した店は利益率が落ちています。

古田) それていて多店舗化だけは進めるから、そのツケがお客にくる。

記者A) 昔のファミレスは業績が落ち込むと店長が夜逃げ同然に辞める傾向があったが、最近では取締役の一歩手前ぐらいの中堅幹部がゴッソリ辞めていく現象が見られる。おそらくトップから「おまえらもコストだ」という言い方をされているんでしょう。

古田) 現場の人はよく分かっていますよ、このまま働き続けても将来がないと。

記者A) かなり荒廃していますね。

王) 業績が伸びている時は出世するから頑張るけど。

記者A) たとえ伸びている時でも昔のトップはスーパーバイザーや商品開発など、いろいろな職種の人材の必要性を認めていたが、今はハードワーカーとしての店長がいればいいとしか考えなくなっているのではないでしょうか。

古田) サービス業の本質が失われ、コストだ何だと言い始めるとおかしくなる。これは百貨店にもスーパーにも同じことが言えると思う。

記者A) 今時信じられないような話があります。あるファミリーレストランに、そこの町会長が5,000円の町会費を徴収しに来たら、店長が「うちの店ではその費用は上から許可が下りませんから、お断りします」と言ったというのです。

王) まだそんなことやってるんですか。

記者A) この5,000円をケチったばかりに、少なくとも半径500mの地域のお客は絶対に来なくなりますよね。

王) 昔はそういうことはよくあったようですが、今ではこの程度の判断は店長に任せているところが多いはずです。その時に5,000円を払っても、それで地域の人々とうまくコミュニケーションをとって最後に利益を出せればいいのだから。

記者A) その程度の裁量権もないほど、店長がロボット化している。

司会)しかし、考えないとサービスという付加価値はつかない。

王) 現場にある程度の裁量権がないと身動きがとれなくなる。この裁量権があまりに狭いと、店長も中堅社員も辞めていく。

記者A) 人件費率25%という場合、昔は1年の平均で25%と考えた。だから頭のいい社長は、最初は30%超えるくらいに余分に人をとっておいて、営業の中でアルバイトを鍛えて、少数精鋭にもっていく。そして最終的に25%に落とし込んでいく。それだけの力量を店長が持っていたものです。でも今は最初からガチガチに25%を達成しようとしているのです。そして、商品やサービスのクォリティを削ってしまっている。これでは店のレベルが上がるはずがない。

王) 今の外食業は科学的ではないのです。

古田) ある人が、外食は科学の世界だ、その時のお客の考えと雰囲気に対応できなければいけないから、社会科学を自然科学に近づけるべきだと言った。しかし人件費率25%というのは、まさにこの自然科学の押しつけでしかない。トヨタも新日鉄もそれぞれの業界で常に1位だが、外食産業での1位は目まぐるしく変わる。ベストテンに顔を連ねた企業が消え去るのも珍しくない。これが社会科学の恐ろしさだが、これを何とか楽にするために自然科学を言い、多店舗展開、株上場する。だが公開した時の株価が3分の1になったら株主は怒りますよ。5,000円の町内会費どころじゃない(笑)。

王) コンビニ、特にセブン-イレブンはデータに基づく科学でやってる。日本のファミリーレストランは、数百店舗の規模になっても科学的にもならず、相変わらず経験と勘だ。それなのに人を大事にしないから悲惨ですよ。ろくにデータも取っていない。 この前久しぶりにすかいらーくに行って、新メニューのあさりのスパゲティを注文したら売切れだという。しかし午後5時頃のことだったので、売り切れはおかしいと思って聞いてみたら、バイトの女の子が「この時間帯はいつも切れるんです」という。フードコストをぎりぎりに落としているからこうなる。たとえばセブン-イレブンでは、機会ロスを出さないようデータを見ながら管理する。廃棄処分するものが出ても機会ロスを出さない。だからコンビニは伸び、外食は落ちる。

記者A) ある程度のロスは、始めから組んでおかなければいけない。

チェーン店と単独店のサービス

記者A) 個人的な好みで言って、チェーン店で最近よく使うのはスターバックスとバーミヤンですね。

王) 両方とも商品がいいですね。バーミヤンはメニューづくりもいいし、内装もきれいです。メニューブックを見ると店のよし悪しがすぐ分かりますが、バーミヤンのメニューはファミレスの中で一番いい。

司会)やはり中華は強いですね。消費不況のあおりというより、内在的な構造が要因になっているといえるでしょう。

記者A) でも生活防衛で外食に行かないことが問題です。

古田) 生活がよくなったから空腹感もない。サラリーマンやOLの昼食でも、わざわざレストランまで行かない。

記者A) 確かにその行動パターンは変わりましたね。

古田) これからはテイクアウトを増やさないと駄目です。朝、東京駅の日本食道には行列ができる。しかし店の前にはサンドイッチや弁当を積み上げているだけ。あれじゃキオスクであって、レストランじゃない。シズル感のあるものをテイクアウトできるような新しい仕組みを作らなければいけないのに「ひな型がない」という。ひな型がなければ何もできないのか。

司会)ブレイクスルーは何から始まるのでしょうか。

古田) 新規参入でしょう。プロに革命は起こせない。プロといってもたかだか15年か20年で、たいしたことはないが。

司会)「馬車屋は鉄道屋になれない」と言いますが、日本のフードサービス業界に鉄道は現われないのでしょうか?

古田) 百貨店、スーパー、レストランなども含め、設備投資産業は人材が育ちにくい。商社などは人間だけが頼りだから教育も徹底するが、店という箱がある商売は、すぐに箱の中に逃げ込んでしまう。

王) 大阪のちゃんとフーズのセミナーをのぞくと、あそこが人を大事にしているのがよく分かる。従業員がやる気を出すシステムで、ボスと従業員の距離がない。それでいて厳しく、従業員同士の競争もある。あれは新しい世代でしょう。

記者A) 加えて従業員に考えさせる仕組みがあるかどうかが大切ですね。

王) 各店でメニューが違うんです。マニュアル化せず従業員に考えさせるためだという。考えさせるのは難しそうだが、カラーテレビで育った時代は、盛り付けなど白黒テレビ世代よりもずっと上手だそうだ。やる気を起こさせればちゃんとできる。店によってバラツキはあるけどユニークです。ちょっとした盛り付けが変われば随分違う。人の使い方はすごくうまい。

記者A) チェーンを否定するつもりはありませんが、自分の生活の中で本当に必要な飲食チェーンは本当に少ない。

司会)経営者がイージーな方向に行き、記者Aさんが考える方向とは違ってしまった。上場すれば優良企業だという判断レベルでは何も残らない。

古田) お客は鋭いですよ。うわべではごまかされない。説得でなくて納得させなきゃ店に客は来ない。

記者A) また従業員が働いていて楽しかったと思える業界にしたいですね。

王) 記者Aさんのチェーン論は間違っていない。外見だけアメリカの真似をしたチェーンが間違っていた。接客でも何でも人がやることなのに、そのソフトが入ってこなかった。アメリカでは人の使い方が最近ますますうまくなっている。

古田) 日本人は効率に落とし込むのは得意だが、お客を喜ばせるという効果的な部分が非常に下手です。それからサービスの努力と報酬が結びつかず、仕組みにすらなっていない。

王) アメリカから入ってきたロイズ、味は賛否両論だがサービス精神がちゃんとしており、お客を楽しませる店だ。何より驚いたのは従業員が皆名刺を持っていること。

古田) うちはロイズさんと商売しているが、業者にも極めて丁重ですね。

王) リーダーエントリーもアメリカ手法を持ってきている。この最大の欠点は料理が一度に出てしまうことなのですが、同社はそれを補うためのハードもソフトもしっかり押さえている。日本では料理の出し方などについては、どの教科書にも書いていない。アメリカの本には、どれにも書いてあるのに。

古田) 日本のサービス業の生産性がこれだけ低い最大の原因は、お客が欲することをやっていないからです。それをやれば、お客は喜んで金を払う。ものや時給ではない。お客サイドで考える経営者がいるかいないかです。

記者A) 倫理性の問題でなく、従業員が調理でも接客でもプロの技術を身につける。そうする以外に飲食ビジネスの生産性は上がらないのです。

古田) さらによくあることだが、店にいる間だけお客で金をもらったら後は知らないという態度。お客が帰る時に、この次もまた来たいと思わせることができないか。事後評価が事前の期待値を上回るような努力をしたらどうだろうかと思いますね。

世の中はこんなに変わってきているのに、外食チェーンは一向に変化しない。客単価が下がっているのに、依然と同じシステムのオペレーションをしていては、自ずと限界がくるに決まっている。

組織制度がサービスを左右する。

記者A) 今、チェーン店ばかりがやり玉に挙げられているが、一部の例外を除いて、生業店や単独店もサービスという点ではひどいものです。

王) 日本人はサービスというものを勘違いしている。発想は茶道の一期一会なんですが、実際にはうわべの一期一会にしかなっていない。本来は気持ちが入ってこその一期一会なのに、気持ちが入らなければただの慇懃無礼ですよ。

記者A) 日本の外食チェーンのマニュアルサービスが非難されているけど、そのレベルまでいっていないのが生業店、単独店の実情です。料理がうまいだけでサービスのサの字も知らない従業員にサービスを受けなきゃいけない。飲食店の基本的なものが失われている店が多すぎます。

司会)その点ではマクドナルドの店員はウィットのある会話ができ、話しかけて応対してくれる。それは作業の練度が高くて、それなりの余裕があるからじゃないでしょうか。

王) 昔のマクドナルドにはアルバイトの階級制度があった。あれを皆いいものだと勘違いしているが、今のマクドナルドにはそんなシステムはない。階級制度は社員が欲しがるシステムで、アルバイトはそうじゃない。そんな制度を導入すると何もやらないボスができる。ファミリーレストランでもそうだが、古い連中がボス的な存在になっているわけ。ちょっと経験が長くなると、店長より偉いボスができてしまう。それが結果的にサービスを落とす。

古田) それはお客からサービス料をもらっているという意識がないからだ。

記者A) 「この店のために命を捧げます」みたいなパートの古だぬきがある意味で一番のガンだと言えるでしょう。均質で安定したサービスを提供する気持ちが全然ない。

司会)マンネリになっても誰も遠慮して言わず、正しい評価制度の基準がないから、だんだん慢心してしまうのですね。

記者A) あるファミリーレストランは改装する際、従業員をいったん全員解雇して全く新しい店としてオープンするようです。

王) それは他のチェーンでもやっていた。しかしいい面もあるが、すごく乱暴だし、危険なやり方だ。

司会)それをやれるすかいらーくは店の鮮度がいいんですよ。でもアルバイトをそう冷酷に切ってしまうと、町会費問題じゃないけど、悪い評判が立つんじゃない?

王) 今はアルバイトの時給が下がって店の人件費は楽になったから、余計に乱暴になってしまう。

古田) コミュニティ・リレーションへの鈍感さが露呈されたということです。

トップの陳腐化とイノベーション欠如

古田) 会社経営で一番むずかしいのは現状否定です。だから無理やり方向転換しようとして変な方向に広げるくらいなら、新しい会社を作ったほうがよほど面白いものができます。既存店でのイノベーションはむずかしいと思う。店舗数は関係ない。 一番大きいファクターは人間です。人を変えるしかない。ましてや日本では人が入れ替わる時に引継ぎをやるから、それまでの悪いところがそのまま残っていく。社長が変わっても事態はちっとも変わらない。

司会)アメリカのように他チェーンや他産業から人が入ってこないと、組織が変わらない面もある。

記者A) トップはどうしても陳腐化する。トップの考えがダイレクトに戦略と結びつくビジネスですから、陳腐化したらおしまいです。その点ファミリーレストランのすかいらーくは、トップは驚異的なほどアイデアフルですね。でも逆に思いつきが優先してあまり検証しないで新フォーマットが出る弊害がある。まずは十分検証してスタンダード、基準を作って出発すべきでしょう。

王) 問題が起きてから直そうとするから、しくじってしまう。ガストも最初からきちんとフォーマットすればもっと成功したはずです。中にはバーミヤンとジョナサンのようにうまくいっているのもあるが、あれを他が下手に真似すると悲惨なことになる。

司会)添加物や防腐剤を使わず、目の前で火を入れるフレッシュな商品が外食産業の特色だ。それがありながら、どうして外食業がコンビニ商品に負けてしまうのでしょうか。

古田) オーディオの世界で考えれば、技術屋が揃ってステレオシステムに頭を悩ましているうちに、ウォークマンの便利性にやられてしまった。お客が何を選ぶかがすべてを左右するのです。

司会)レストランはライブ感を追及するしかないでしょうね。おそらく便利性には徹底しきれないだろうし。

王) 何を武器にするかはそれぞれ分かれていくしかない。お客のニーズはひとつじゃないですから。

古田) それに加え新しいニーズを開拓しなければ。レストランではここ20年間、コンビニエンスストアのようなイノベーションは何もないと言えるでしょう。

記者A) やっているのは、ここ3年間のマクドナルドだけでしょう。マクドナルドは顧客の創造をした。

王) マクドナルドは7、8年前からセブン-イレブンを徹底的にマークしています。モスバーガーとか他のハンバーガーチェーンは全く問題にしていない。

古田) コンビニももう終わりですよ。

記者A) でもある世代には必要不可欠の存在でしょう。

古田) そのとおりだが、末端の経営者は多くの万引きと戦い、大量の賞味期限切れのロスで悩んでいるが、それへの解決策がない。拡大しすぎた故に現場の問題点が解決できない点は、ファミリーレストランと変わらないといえるのではないだろうか。 また、かつて日本で輸出だ輸出だと盛んに言われたが、そのうちアメリカへ失業を輸出しているとか、輸出をやりすぎちゃまずいとか言われるようになった。世の中は突然変わるんです。前からの弾は避けられるけど、後ろから来る弾は避けられません。本当に世の中恐いです。

司会)だからお客が求め、世間が理解し支持してくれることがすごく大事なんです。環境問題などは後ろから来る弾です。

記者A) そういう対応を全部コストだと考えるから、腰が重くなり、前向きな対応策が出てこない。

王) コストとして考えるか、奉仕として考えるかの違いですね。

お客との出会いを一期一会として本当の意味で気持ちを込めてサービスにあたらないと、ただの慇懃無礼になってしまって、お客の気持ち、そして働く人自身の心を豊かにすることにはならない。

ハッピービジネス ハッピーライフ

古田) 資本主義は無限大に売上を拡大していかなければ成り立たない仕組みだが、日本の場合はもうそんなに拡大しない。だからどこをただし、落とし込んでいくかが今の課題だ。落とし込むところは多様で、しかもまだまだ隙間はたくさんある。

王) でも、この不況下で確実に伸びているところはありますしね。

古田) そうですよ。マーケットは大きい。

記者A) 繁盛している店は結局、原価率が高くても成立するような仕組みをつくったところです。

古田) これだけ物価が下がっているんだから、原価率が低い時代など考えられない。

王) いや、それはトータルのバリューによるものではないでしょうか。

記者A) 原価率が適正限界値でもかまわないけど、かけられる余裕のある仕組みができ、それを突出させたときにお客は飛びついていますよ。

司会)ファミリーレストランの人から、放っておいても原価率の高い順に売れていくと聞きますね。一方、居酒屋などバリューの高いものを注文しながら同時に低いものも買ってくれるのは、雰囲気とかサービスの力じゃないでしょうか。

王) だからトータル原価ではなくて、目玉商品として価値のある商品があるというのが正解なんじゃないですか。

記者A) でも、やはり原価率が高いのが勝ちでしょう。問題はレイバーコストをどう下げるかですね。

司会)原価じゃなくても、お客さんに得したと思わせるかどうか。その仕組みの構築が大切ではないでしょうか。

記者A) 奥さんがつくる食事よりもおいしくて、金もそうかからないなら、みんな外へ出てきて食事をしてくれるでしょう。でも現実はそうじゃない。ちっとも家から出てきてくれない。

古田) しかし今後は流通が変わってくるから、それに伴ってコストはもっと下がりますよ。今は相対的に物流コストが上がっているから、今度は物流の合理化です。カテゴリー別は駄目になり、トータルサプライする人が大勢出て、流通問屋だけでも21万人ぐらいの失業者が出るだろうと言われている。その兆候はすでに現われているのです。これが進展してくると店にとってはやりやすくなる。

司会)いいチャンスとも言えるわけですね。

古田) 商品、サービス、システムすべてをトータルで考えなければならない。小手先でやっても駄目。

司会)だとすると、ブレイクスルーできたのはマクドナルドだけだということになりますか。

王) いや、中小ではいい所がありますよ。

記者A) しかしそういうのは、出ては消え出ては消えでしょう。

王) それをどう維持するかです。マクドナルドにしても日本で3,000店を超えているし、世界では2万軒もある。彼らはこれを維持しているのです。 もうひとつの問題は、教育論が抜けていること。だからサービスは落ちるし、人は辞めていく。

司会)どのチェーンにとっても厳しい現状ではありますが、個性的で多様なニーズは、今後増えることはあっても減ることはありません。画一的なものを選んで食べる人間はいないですからね。

楽しく外食ビジネスするために

記者A) ロッテリアの88円バーガーというのはどうなんでしょう。

王) 立ち上がりはいいようですね。やはりマクドナルドに対抗するものが出てこなければ市場が面白くない。よくやったと思います。果敢なチャレンジですよ。

記者A) 逆にいうと、10年前には99円のハンバーガーなど、どこも出せるわけないと思われていたけどやればできる。

古田) しかし、ロッテリアがやるなら、マクドナルドの99円バーガーの前にやるべきだった。消費税が上がった時に88円で出せばもっとインパクトがあった。これでは後手後手に回っているといえるでしょう。

司会)そうはいっても頑張って競争してくれないと。マクドナルドの一人勝ちじゃ面白くないでしょう。

記者A) こうなってくると、モスバーガーは価格的にはグルメバーガーですね。

司会)比較の次元を変えれば、マクドナルドかモスバーガーじゃなく、おにぎりや弁当などいろいろある。ハンバーガー屋をハンバーガー屋同士で比較するのはあまりにも平面的です。

古田) また、これからはどれだけ多くのフレッシュな野菜を入れるかですよ。中華でも野菜のメニューが売れています。ハンバーガーはレタスやキュウリやトマトといったお決まりの野菜ばかりだ。

記者A) その点、バーミヤンは野菜の使い方がうまい。

司会)中華は加熱された野菜をいっぱい摂れますからね。

王) ファーストフードで野菜を充実させるのは難しいですよ。安定した量を供給するにはレタスやトマトやキュウリのようなお決まりの野菜ぐらいしかない。

記者A) しかもファーストフードでは温度が冷えてしまうでしょう。温野菜というわけにはいかない。

王) それがファーストフードの限界で、コンビニの弁当と同じ悩みです。

記者A) ということは、外食だけが出来るものは何かを明確にして、それを提供できたところが勝ちだということです。

古田) しかし残念ながら、あるホテルの料理長に「野菜を調理させて日本で一番うまいのは誰か」と聞いたら答えられない。野菜なんか料理したって金にならないと思っているからです。ものを見てお客を見ていない。レストランでも、5,000円の料理を売る者は500円の料理を売る人間より偉いという感覚がある。安い価格で価値を生むのは大変なことだということが分かっていない。

記者A) 問題は、外食産業30兆円ビジネスといわれながら何のイノベーションもないこと。厨房も何も変わっていない。電子レンジが入ったぐらいでしょう。

王) 衛生問題でも対策ができず、食中毒対策もひどい。あれで当たり前だと思っている。

古田) 昔は食中毒で会社がつぶれることはなかったけど、今後は食中毒で訴訟が起こります。

記者A) これは編集者としての反省だが、これまで大事なものを訴えてこなかった気がする。「楽しくて金が入って、ああこの業界に入ってよかったというようなビジネスをやろう」という主張をしてこなかったような気がします。

古田) でも、店をやるなら本当に面白いことが毎日あるはずじゃないですか。

司会)しかも試すとすぐ反響となって返ってくる。

王) 昔はハッピービジネスということが言われていたけど、最近は言われなくなった。自分たちがハッピーならば、お客だってハッピーになれるはずなのです。


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